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日本とフィリピンにおける特許分割出願に関する時期的要件の比較

2024年02月29日

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■概要
日本およびフィリピンにおいては、それぞれ所定の期間内に、特許出願について分割出願を行うことができる。フィリピンにおいては、自発的な分割出願は、親出願が取り下げられ、または特許を付与された日から4か月以内に係属出願について任意の分割出願を行うことができる。また、単一性違反の指令後の分割は、分割の指令が確定した日、または不服申立の決定があった日から4か月以内に分割出願が可能である。なお、分割指令による分割出願の場合は、必要であれば、2か月の期間延長が認められる場合がある。
■詳細及び留意点

1.日本における特許出願の分割出願に係る時期的要件
 日本特許法第44条は、下記の(1)~(3)のいずれかの時または期間内であれば、2以上の発明を包含する特許出願の一部を1または2以上の新たな特許出願とすること(分割出願すること)ができることを規定している。

(1) 願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる時または期間内(第44条第1項第1号)
 なお、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について、補正をすることができる時または期間は、次の(i)~(iv)である。
 (i) 出願から特許査定の謄本送達前(拒絶理由通知を最初に受けた後を除く)(第17条の2第1項本文)
 (ii) 審査官(審判請求後は審判官も含む。)から拒絶理由通知を受けた場合の、指定応答期間内(第17条の2第1項第1号、第3号)
 (iii) 拒絶理由通知を受けた後第48条の7の規定による通知を受けた場合の、指定応答期間内(第17条の2第1項第2号)
 (iv) 拒絶査定不服審判請求と同時(第17条の2第1項第4号)

(2) 特許査定(次の(i)および(ii)の特許査定を除く)の謄本送達後30日以内(第44条第1項第2号)
 (i) 前置審査における特許査定(第163条第3項において準用する第51条)
 (ii) 審決により、さらに審査に付された場合(第160条第1項)における特許査定
 なお、特許「審決」後は分割出願することはできない。また、上記特許査定の謄本送達後30日以内であっても、特許権の設定登録後は、分割出願することはできない。また、(2)に規定する30日の期間は、第4条または第108条第3項の規定により第108条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間に限り、延長されたものとみなされる(第44条第5項)。

(3) 最初の拒絶査定の謄本送達後3月以内(第44条第1項第3号)
 (3) に規定する3か月の期間は、第4条の規定により第121条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなされる(第44条第6項)。

日本特許法第44条(特許出願の分割)
特許出願人は、次に掲げる場合に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる。
 一 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる時又は期間内にするとき。
 二 特許をすべき旨の査定(第百六十三条第三項において準用する第五十一条の規定による特許をすべき旨の査定及び第百六十条第一項に規定する審査に付された特許出願についての特許をすべき旨の査定を除く。)の謄本の送達があつた日から三十日以内にするとき。
 三 拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があつた日から三月以内にするとき。
2 前項の場合は、新たな特許出願は、もとの特許出願の時にしたものとみなす。ただし、新たな特許出願が第二十九条の二に規定する他の特許出願又は実用新案法第三条の二に規定する特許出願に該当する場合におけるこれらの規定の適用及び第三十条第三項の規定の適用については、この限りでない。
3 第一項に規定する新たな特許出願をする場合における第四十三条第二項(第四十三条の二第二項(前条第三項において準用する場合を含む。)及び前条第三項において準用する場合を含む。)の規定の適用については、第四十三条第二項中「最先の日から一年四月以内」とあるのは、「最先の日から一年四月又は新たな特許出願の日から三月のいずれか遅い日まで」とする。
4 第一項に規定する新たな特許出願をする場合には、もとの特許出願について提出された書面又は書類であって、新たな特許出願について第三十条第三項、第四十一条第四項又は第四十三条第一項及び第二項(これらの規定を第四十三条の二第二項(前条第三項において準用する場合を含む。)及び前条第三項において準用する場合を含む。)の規定により提出しなければならないものは、当該新たな特許出願と同時に特許庁長官に提出されたものとみなす。
5 第一項第二号に規定する三十日の期間は、第四条又は第百八条第三項の規定により同条第一項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。
6 第一項第三号に規定する三月の期間は、第四条の規定により第百二十一条第一項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。
7 第一項に規定する新たな特許出願をする者がその責めに帰することができない理由により同項第二号又は第三号に規定する期間内にその新たな特許出願をすることができないときは、これらの規定にかかわらず、その理由がなくなった日から十四日(在外者にあっては、二月)以内でこれらの規定に規定する期間の経過後六月以内にその新たな特許出願をすることができる。

2.フィリピンにおける特許出願の分割出願の時期的要件
 フィリピンでは、2022年にフィリピン知的財産施行規則(以下、「施行規則」という。)が改正され、これに伴い、分割出願に関する時期的要件も改正された(2022年9月20日施行)。
 自発的な分割出願は、改正前は、親出願が取り下げられ、放棄されまたは特許を付与される前である係属中の出願について、いつでも行うことができたが、改正後は、親出願が取り下げられ、または特許を付与された日から4か月以内に係属出願について任意の分割出願を行うことができることとされた(施行規則 規則611)。
 単一性違反の指令後の分割(フィリピン知的財産法第38条第2項)は、改正前は、その指令書発行から4か月以内または4か月を超えない範囲で認められる追加の期間内に分割出願ができたが、改正後は、分割の指令が確定した日、または分割指令に対する不服申立の決定があった日から4か月以内に分割出願が可能とされた(施行規則 規則604、610、928b)。分割指令による分割出願の場合は、必要であれば、2か月の期間延長が認められる場合がある。

フィリピン知的財産法 第38条 発明の単一性
38.1 出願は、1の発明または単一の包括的発明概念を形成する一群の発明についてのみ行う。
38.2 単一の包括的発明概念を形成しない複数の独立した発明が1の出願において請求されている場合は、局長は当該出願を単一の発明に限定することを要求することができる。分割する発明についてされる後の出願は、最初の出願と同一の日に出願されたものとみなす。ただし、分割の要求が最終となった後4月以内または4月を超えない範囲で認められる追加の期間内に後の出願がなされることを条件とする。分割出願は、当初の出願における開示を超えてはならない。
38.3 発明の単一性を満たさない出願に特許が付与されたという事実は、特許を取り消す理由とはならない。

フィリピン知的財産施行規則 規則604 発明の単一性
(a) 出願は、1の発明又は単一の一般的発明概念を形成する1群の発明についてのみ行う。(IP法第38条(38.1))
(b) 単一の一般的発明概念を形成しない複数の独立した発明が1の出願においてクレームされている場合は、局長は、当該出願を単一の発明に限定するよう要求することができる。分割した発明についてなされる後の出願は、最初の出願と同一の日に出願されたものとみなす。ただし、分割の要求が確定した後4月以内又は規則928bの下2月を超えない範囲で認められる追加期間内に後の出願がなされることを条件とする。更に、各分割出願が当初の出願における開示の範囲を超えないことを条件とする。(IP法第38条(38.2))

フィリピン知的財産施行規則 規則610 選択されない発明の分離出願・強制分割出願
強制分割出願とは、先の又は親出願の主題を含む特許出願のことで、発明の単一性欠如による拒絶に伴う限定の場合に生じる可能性がある。1の出願が複数の分割出願を生じさせることができ、分割出願はそれ自体で1以上の分割出願を生じさせることができる。分割出願は、先の又は親出願と同様に審査され、先の又は親出願の優先権の利益を享受する。ただし、分割出願は、分割の要求が確定した日又は不服申立が決定された日から4月以内に提出されることを条件とする。4月の所定期間は、当該処分又は不服申立に対する決定の通知の郵送日から起算される。
先の分割出願から生じた後続の強制分割出願で、発明の単一性の拒絶が提起された場合は、4月の所定期間は、選択の日又は分割の要求が確定した日から起算される。
選択されなかった発明又は分割出願は、出願人が署名し作成した出願様式、ある場合は先の出願の要約書、明細書、クレーム及び図面の正確な謄本、関連しないクレーム又はその他の事項を取り消した補正クレーム案、図面に関する規則に従って作成された図面の写し、対応する出願手数料の全額納付とともに提出することができる。
分割の要求が確定した日から4月の所定期間を超えて提出された分割出願は、無効な分割出願として却下される。2月を超えない分割出願のための追加期間は、規則928bの下で認められる。
ただし、先の出願が特許を付与される前又は取り下げられる前に当該分割出願がなされた場合、かつ、それが出願された先の出願と同一である場合は、図面が同一であり、当該書類が、出願人が署名し作成した原文書の正確な謄本を構成するときは、出願人による署名及び作成を省略することができる。当該出願は、出願手数料及び図面に関する規則を遵守する図面の写しで構成することができ、同時に、関連しないクレーム又はその他の事項を取り消した補正案も添付することができる。
親出願と分割出願は、同一の主題をクレームしてはならない。すなわち、それらのクレームは、実質的に同一の範囲にあってはならず、異なる言葉であっても、他方でクレームされた主題をクレームしてはならない。両出願のクレームされた主題の違いは、明確に区別できるものでなければならない。

フィリピン知的財産施行規則 規則611 任意の分割出願
出願人は、親出願が取り下げられ、又は特許を付与された日から4月以内に係属出願について任意の分割出願を行うことができる。ただし、その主題が親出願の内容を超えないことを条件とする。
後続の任意の分割出願は、先の分割出願について出願し、検討することができる。ただし、先の分割出願が取り下げられ、又は特許を付与された日から4月以内に係属出願について後続の分割出願は提出されなければならない。
任意の分割出願は、親出願と同一の出願日が付与され、優先権の利益を得る。出願の様式に関する要件は、規則610に規定する要件と同じものとする。
親出願と分割出願は、同一の主題をクレームしてはならない。すなわち、それらのクレームは、実質的に同一の範囲にあってはならず、異なる言葉であっても、他方でクレームされた主題をクレームしてはならない。両出願のクレームされた主題の違いは、明確に区別できるものでなければならない。

日本とフィリピンにおける特許分割出願に関する時期的要件の比較

日本 フィリピン
分割出願の時期的要件 補正ができる期間 自発的な分割は、親出願が取り下げられ、または特許を付与された日から4か月以内

単一性違反の指令後の分割は、分割の指令が確定した日、または不服申立の決定があった日から4か月以内。2か月の延長が認められる場合あり。

■ソース
・日本特許法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=334AC0000000121
・フィリピン知的財産法(2013年法律第10372号により改正された法律第8293号2013年3月4日施行2015年版)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/philippines-tizai.pdf(日本語)
https://drive.google.com/file/d/0B2or2OrWYpIfN3BnNVNILUFjUmM/view?ts=58057027(英語)(*1)
(*1: 2023年11月現在「アクセス権が必要です」と表示され、閲覧することができない場合がある。)
・フィリピン知的財産施行規則(2022年特許・実用新案・意匠に関する改正施行規則)(2022年7月4日公布)
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/ph/ip/pdf/philippines-tizai_kisoku.pdf(日本語)
https://drive.google.com/file/d/1SGU-OvSLEasCzKhC7tt0dkUkIARYquWd/view(英語)
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