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日本とタイにおける特許分割出願に関する時期的要件の比較

2024年01月18日

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■概要
日本およびタイにおいては、それぞれ所定の期間内に、特許出願について分割出願を行うことができる。タイにおいては、分割指令を受領した日から所定期間以内に分割出願を行うことができるが、出願人が自発的に分割出願を行うことはできない。
■詳細及び留意点

1.日本における特許出願の分割出願に係る時期的要件
 日本国特許法第44条は、下記の(1)~(3)のいずれかの時または期間内であれば、2以上の発明を包含する特許出願の一部を1または2以上の新たな特許出願とすること(分割出願すること)ができることを規定している。

(1) 願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる時または期間内(第44条第1項第1号)
 なお、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について、補正をすることができる時または期間は、次の(i)~(iv)である。

 (i) 出願から特許査定の謄本送達前(拒絶理由通知を受けた後を除く)(第17条の2第1項本文)
 (ii) 審査官(審判請求後は審判官も含む。)から拒絶理由通知を受けた場合の、指定応答期間内(第17条の2第1項第1号、第3号)
 (iii) 拒絶理由通知を受けた後第48条の7の規定による通知を受けた場合の、指定応答期間内(第17条の2第1項第2号)
 (iv) 拒絶査定不服審判請求と同時(第17条の2第1項第4号)

(2) 特許査定(次の(i)および(ii)の特許査定を除く)の謄本送達後30日以内(第44条第1項第2号)

 (i) 前置審査における特許査定(第163条第3項において準用する第51条)
 (ii) 審決により、さらに審査に付された場合(第160条第1項)における特許査定
 なお、特許「審決」後は分割出願することはできない。また、上記特許査定の謄本送達後30日以内であっても、特許権の設定登録後は、分割出願することはできない。また、(2)に規定する30日の期間は、第4条または第108条第3項の規定により第108条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間に限り、延長されたものとみなされる(第44条第5項)。

(3) 最初の拒絶査定の謄本送達後3か月以内(第44条第1項第3号)
 (3)に規定する3か月の期間は、第4条の規定により第121条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間に限り、延長されたものとみなされる(第44条第6項)。

日本国特許法第44条(特許出願の分割)
特許出願人は、次に掲げる場合に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる。
 一 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる時又は期間内にするとき。
 二 特許をすべき旨の査定(第百六十三条第三項において準用する第五十一条の規定による特許をすべき旨の査定及び第百六十条第一項に規定する審査に付された特許出願についての特許をすべき旨の査定を除く。)の謄本の送達があつた日から三十日以内にするとき。
 三 拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があつた日から三月以内にするとき。
2 前項の場合は、新たな特許出願は、もとの特許出願の時にしたものとみなす。ただし、新たな特許出願が第二十九条の二に規定する他の特許出願又は実用新案法第三条の二に規定する特許出願に該当する場合におけるこれらの規定の適用及び第三十条第三項の規定の適用については、この限りでない。
3 第一項に規定する新たな特許出願をする場合における第四十三条第二項(第四十三条の二第二項(前条第三項において準用する場合を含む。)及び前条第三項において準用する場合を含む。)の規定の適用については、第四十三条第二項中「最先の日から一年四月以内」とあるのは、「最先の日から一年四月又は新たな特許出願の日から三月のいずれか遅い日まで」とする。
4 第一項に規定する新たな特許出願をする場合には、もとの特許出願について提出された書面又は書類であって、新たな特許出願について第三十条第三項、第四十一条第四項又は第四十三条第一項及び第二項(これらの規定を第四十三条の二第二項(前条第三項において準用する場合を含む。)及び前条第三項において準用する場合を含む。)の規定により提出しなければならないものは、当該新たな特許出願と同時に特許庁長官に提出されたものとみなす。
5 第一項第二号に規定する三十日の期間は、第四条又は第百八条第三項の規定により同条第一項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。
6 第一項第三号に規定する三月の期間は、第四条の規定により第百二十一条第一項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。
7 第一項に規定する新たな特許出願をする者がその責めに帰することができない理由により同項第二号又は第三号に規定する期間内にその新たな特許出願をすることができないときは、これらの規定にかかわらず、その理由がなくなった日から十四日(在外者にあっては、二月)以内でこれらの規定に規定する期間の経過後六月以内にその新たな特許出願をすることができる。

2.タイにおける特許出願(発明特許出願および小特許出願)の分割出願の時期的要件
 タイでは、分割指令を受領した日から所定期間内*)に分割出願することができる(タイ特許法第26条)が、出願人が自発的に分割出願を行うことはできない。

タイ特許法 第26条
出願審査において,その出願が単一の発明概念を構成する関連性ある発明に該当しない複数の異なる発明に関するものであると判断される場合,担当官は,出願人に通知して,かかる出願をそれぞれが単一の発明を対象とする複数の出願に分割するよう求めるものとする。
出願人が前段落の通知の受領後180日以内に分割出願した場合,その分割出願は,最初の出願の出願日に行われたとみなすものとする。
出願は,省令に定める規則及び手続に従って分割されるものとする。
出願人が出願を分割する要求に応じられないときは,120日以内に長官に対して審判請求することができる。長官の決定を最終とする。

タイ特許法 第65条の10
第II章の発明特許に関する第6条,第8条,第9条,第10条,第11条,第12条,第13条,第14条,第15条,第16条,第17条,第18条,第19条,第19条の2,第20条,第21条,第22条,第23条,第25条,第26条,第27条,第28条,第35条の2,第36条,第36条の2,第38条,第39条,第40条,第41条,第42条,第43条,第44条,第45条,第46条,第47条,第47条の2,第48条,第49条,第50条,第50条の2,第51条,第52条,第53条及び第55条の規定は,第III章の2の小特許について準用するものとする。

発明特許及び小特許出願審査マニュアル2019年改訂版 第1章 第1部 13.1
13.1複数の発明を有することによる分割出願
 出願の審査において、出願が単一の発明概念とみなすことができないほど互いに関連がない複数の発明を含んでいると認めたとき、担当官は特許出願人に発明ごとに出願を分割するよう通知する。
 特許出願人が担当官から通知を受けた日から120日以内に、第1項に基づき分割した発明の出願を行ったとき、最初に出願した日を出願日とみなす。
 出願の分割は省令の定める規則及び手続きに従わなければならない。特許出願人が担当官の命令に同意しないとき、120日以内に局長に対して審判請求できる。局長が決定及び命令を行なったとき、局長の命令を最終とする。
 この場合、審査官は、審査官からの出願分割命令があり、元の出願から分割された特許出願が当該命令の受領日から120日以内に提出されているか審査する。出願人が当該期間内に出願を提出した場合、元の出願からの分割出願は最初の出願の出願日に提出したものと見なされる。

発明特許及び小特許出願審査マニュアル2019年改訂版 第1章 第1部 14.1
14.1 複数の発明がある(小特許)出願の分割

 特許出願の審査において、担当官が単一の発明とみなすことができないほどお互いに関連がない複数の発明を含んでいる出願と認めたとき、担当官は特許出願人に発明ごとに出願を分割するよう通知する。
 特許出願人が担当官から通知を受けた日から120日以内に、第1項に基づき分割した発明の出願を行ったとき、最初に特許出願した日を出願日とみなす。
 出願の分割は省令の定める規則及び手続きに従わなければならない。
 特許出願人が担当官の命令に同意しないとき、120日以内に局長に対して審判請求できる。局長が決定及び命令を行なったとき、局長の命令を最終とする。
 この場合、審査官は、審査官からの出願分割命令があり、元の出願から分割された小特許出願が当該命令の受領日から120日以内に提出されているか審査する。出願人が当該期間内に出願を提出した場合、元の出願からの分割出願は最初の出願の出願日に提出したものと見なされる。

発明特許及び小特許出願審査マニュアル2019年改訂版 第1章 第3部 4.4.3
4.4.3 発明が単一性を欠く(Lack of Unity)場合の実務指針

 第18条に基づき、各特許出願においては発明一件のみ出願できる。複数の発明が同一の発明概念を構成する程度に関連している場合のみ、単一の特許出願として出願できる。
 第26条に基づき、出願の審査において、出願が単一の発明概念を構成する程には関連しない複数の異なる発明に対するものであることが認められた場合、担当官は単一性のある各発明に対する数の出願に分割するよう出願人に通知する。
 ●出願人が前段に基づく当該通知の受領から120日以内に分割出願を提出した場合、当該出願は最初の出願日に提出されたものと見なす。出願の分割は省令に定める規則及び手順に基づき行う。
 ●特許出願人が担当官から特許出願人に対しての分割出願の命令に同意しない場合、120日以内に局長に審判を請求しなければならない。局長が決定し命令した場合、局長の命令が最終となる。

*) 所定期間が、特許法と審査マニュアルで異なっているが、審査マニュアルの「実務指針」にあるように実務上は120日で運用されている。

    日本とタイにおける特許分割出願に関する時期的要件の比較

日本 タイ
分割出願の時期的要件**) 補正ができる期間 分割指令の受領日から120日以内

**) 査定(特許査定または拒絶査定)前の時期的要件の比較

■ソース
・日本国特許法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=334AC0000000121 ・タイ特許法(日本語)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/thailand-tokkyo.pdf ・発明特許及び小特許出願審査マニュアル 2019年改訂版(日本語)
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/th/ip/pdf/patent_manual2019_th_jp.pdf
■本文書の作成者
日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期

2023.10.20

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