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日本とベトナムにおける特許分割出願に関する時期的要件の比較
2024年01月16日
■概要
日本およびベトナムにおいては、それぞれ所定の期間内に、特許出願について分割出願を行うことができる。ベトナムにおいては、拒絶査定または特許査定されるより前であれば、いつでも分割出願を行うことができる。■詳細及び留意点
1.日本における特許出願の分割出願に係る時期的要件
日本国特許法第44条は、下記の(1)~(3)のいずれかの時または期間内であれば、2以上の発明を包含する特許出願の一部を1または2以上の新たな特許出願とすること(分割出願すること)ができることを規定している。
(1) 願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる時または期間内(第44条第1項第1号)
なお、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について、補正をすることができる時または期間は、次の(i)~(iv)である。
(i) 出願から特許査定の謄本送達前(拒絶理由通知を受けた後を除く)(第17条の2第1項本文)
(ii) 審査官(審判請求後は審判官も含む。)から拒絶理由通知を受けた場合の、指定応答期間内(第17条の2第1項第1号、第3号)
(iii) 拒絶理由通知を受けた後第48条の7の規定による通知を受けた場合の、指定応答期間内(第17条の2第1項第2号)
(iv) 拒絶査定不服審判請求と同時(第17条の2第1項第4号)
(2) 特許査定(次の(i)および(ii)の特許査定を除く)の謄本送達後30日以内(第44条第1項第2号)
(i) 前置審査における特許査定(第163条第3項において準用する第51条)
(ii) 審決により、さらに審査に付された場合(第160条第1項)における特許査定
なお、特許「審決」後は分割出願することはできない。また、上記特許査定の謄本送達後30日以内であっても、特許権の設定登録後は、分割出願することはできない。また、(2)に規定する30日の期間は、第4条または第108条第3項の規定により第108条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間に限り、延長されたものとみなされる(第44条第5項)。
(3) 最初の拒絶査定の謄本送達後3か月以内(第44条第1項第3号)
(3)に規定する3か月の期間は、第4条の規定により第121条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間に限り、延長されたものとみなされる(第44条第6項)。
日本国特許法第44条(特許出願の分割) 特許出願人は、次に掲げる場合に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる。 一 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる時又は期間内にするとき。 二 特許をすべき旨の査定(第百六十三条第三項において準用する第五十一条の規定による特許をすべき旨の査定及び第百六十条第一項に規定する審査に付された特許出願についての特許をすべき旨の査定を除く。)の謄本の送達があつた日から三十日以内にするとき。 三 拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があつた日から三月以内にするとき。 2 前項の場合は、新たな特許出願は、もとの特許出願の時にしたものとみなす。ただし、新たな特許出願が第二十九条の二に規定する他の特許出願又は実用新案法第三条の二に規定する特許出願に該当する場合におけるこれらの規定の適用及び第三十条第三項の規定の適用については、この限りでない。 3 第一項に規定する新たな特許出願をする場合における第四十三条第二項(第四十三条の二第二項(前条第三項において準用する場合を含む。)及び前条第三項において準用する場合を含む。)の規定の適用については、第四十三条第二項中「最先の日から一年四月以内」とあるのは、「最先の日から一年四月又は新たな特許出願の日から三月のいずれか遅い日まで」とする。 4 第一項に規定する新たな特許出願をする場合には、もとの特許出願について提出された書面又は書類であって、新たな特許出願について第三十条第三項、第四十一条第四項又は第四十三条第一項及び第二項(これらの規定を第四十三条の二第二項(前条第三項において準用する場合を含む。)及び前条第三項において準用する場合を含む。)の規定により提出しなければならないものは、当該新たな特許出願と同時に特許庁長官に提出されたものとみなす。 5 第一項第二号に規定する三十日の期間は、第四条又は第百八条第三項の規定により同条第一項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。 6 第一項第三号に規定する三月の期間は、第四条の規定により第百二十一条第一項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。 7 第一項に規定する新たな特許出願をする者がその責めに帰することができない理由により同項第二号又は第三号に規定する期間内にその新たな特許出願をすることができないときは、これらの規定にかかわらず、その理由がなくなった日から十四日(在外者にあっては、二月)以内でこれらの規定に規定する期間の経過後六月以内にその新たな特許出願をすることができる。 |
2.ベトナムにおける特許出願の分割出願の時期的要件
ベトナムでは、出願人は、特許出願についての保護証書付与の拒絶通知の決定あるいは付与の決定(日本での拒絶査定、特許査定に相当)の前であれば、いつでも出願を分割することができる(ベトナム知的財産法(以下、「知的財産法」という。)第115条)。
知的財産法 第115条 工業所有権登録出願の補正,補充,分割及び変更 1. 国家工業所有権庁が保護証書の付与の拒絶通知又は付与の決定を行うまで,出願人は,次の権利を有する。 a) 出願に補正又は補充を行うこと b) 出願を分割すること c) 出願人の名称又は宛先の変更を記録するよう請求すること d) 契約に基づく譲渡の結果として,相続,遺贈の結果として,又は当局の決定に基づい て出願人変更を記録するよう請求すること dd) 発明特許に係る願書付きの発明登録出願を,実用新案特許に係る願書付きの発明登 録出願に変更すること,及びその逆に変更すること 2. 本条1項に規定する手続について請求する者は,手数料及び料金を納付しなければならない。 3. 工業所有権登録出願に対する如何なる補正又は補充も,出願書類において開示され又は明記された主題の範囲を拡張してはならず,かつ,当該出願において登録を求めた主題の内容を変更してはならず,また出願の単一性を確保しなければならない。 4. 出願の分割の場合は,分割された出願の出願日は,原出願の出願日と決定されるものとする。 |
日本とベトナムにおける特許分割出願に関する時期的要件の比較
日本 | ベトナム | |
分割出願の時期的要件*) | 補正ができる期間 | 拒絶査定または特許査定より前であればいつでも |
*) 査定(特許査定または拒絶査定)前の時期的要件の比較
■ソース
・日本国特許法https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=334AC0000000121 ・ベトナム知的財産法(日本語)
https://www.jica.go.jp/Resource/project/vietnam/059/materials/lqgpft0000005lvu-att/intellectual_property_law_2022.pdf
■本文書の作成者
日本国際知的財産保護協会■本文書の作成時期
2023.10.19