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日本と韓国における意匠の新規性喪失の例外に関する比較

2023年11月14日

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■概要
韓国における意匠の新規性喪失の例外規定の要件は、日本と類似している。例えば、公知日から1年以内に出願する時期的要件や、公開を証明する書類の提出に関する要件が韓国にも存在する。また、2023年12月21日施行のデザイン保護法改正により、書類の提出期間が緩和され、出願後はいつでも書類を提出することができるようになる。
■詳細及び留意点

1.日本における意匠出願の新規性喪失の例外
 日本においては、新規性を喪失した意匠の救済措置として、新規性喪失の例外規定が定められている。新規性喪失の例外規定の適用要件は以下のとおりである。

(1) 出願に係る意匠が、意匠登録を受ける権利を有する者(創作者または承継人)の意に反して公開されたこと(意匠法第4条第1項)または
(2) 出願に係る意匠が、意匠登録を受ける権利を有する者(創作者または承継人)の行為に基づいて公開されたこと(ただし、発明、実用新案、意匠または商標に関する公報に掲載された場合を除く)(意匠法第4条第2項)

 上記いずれの場合についても、以下の要件を満たす必要がある。

(a) 意匠登録を受ける権利を有する者が意匠登録出願をしていること
(b) 意匠が最初に公開された日から1年(平成30年6月9日以降の出願に適用)以内に意匠登録出願をしていること。ただし、平成29年12月8日までに公開された意匠については、平成30年6月9日以降に出願しても、改正意匠法第4条の規定は適用されないので注意が必要。
 なお、意匠法第4条第2項に記載される自己の行為に基づく新規性喪失については、さらに以下の手続が必要となる。
(c) 出願時に、意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする旨を記載した書面を提出、あるいは願書にその旨を記載すること(意匠法第4条第3項)。
(d) 出願の日から30日以内に、公開された意匠が新規性喪失の例外規定の適用を受けることができる意匠であることを証明する「証明書」を証明書提出書とともに提出すること(意匠法第4条第3項)。

 「証明書」には、意匠が公開された事実(公開日、公開場所、公開者、公開された意匠の内容等)とともに、その事実を客観的に証明するための署名等を記載することが必要である。
上記要件を満たした場合、その意匠登録出願に限り、その公開意匠は公知の意匠ではないとみなされる(意匠審査基準 新規性喪失の例外)。
条文等根拠:意匠法第4条、意匠審査基準 第Ⅲ部 第3章 新規性喪失の例外(【ソース】参照)

日本意匠法第4条(意匠の新規性の喪失の例外)
1 意匠登録を受ける権利を有する者の意に反して第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至った意匠は、その該当するに至った日から一年以内にその者がした意匠登録出願に係る意匠についての同項及び同条第二項の規定の適用については、同条第一項第一号又は第二号に該当するに至らなかったものとみなす。

2 意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至った意匠(発明、実用新案、意匠又は商標に関する公報に掲載されたことにより同項第一号又は第二号に該当するに至ったものを除く。)も、その該当するに至った日から一年以内にその者がした意匠登録出願に係る意匠についての同項及び同条第二項の規定の適用については、前項と同様とする。

3 前項の規定の適用を受けようとする者は、その旨を記載した書面を意匠登録出願と同時に特許庁長官に提出し、かつ、第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至った意匠が前項の規定の適用を受けることができる意匠であることを証明する書面(次項において「証明書」という。)を意匠登録出願の日から三十日以内に特許庁長官に提出しなければならない。

4 証明書を提出する者がその責めに帰することができない理由により前項に規定する期間内に証明書を提出することができないときは、同項の規定にかかわらず、その理由がなくなった日から十四日(在外者にあっては、二月)以内でその期間の経過後六月以内にその証明書を特許庁長官に提出することができる。

2.韓国における意匠出願の新規性喪失の例外
 韓国デザイン保護法(日本における意匠法に相当。)には、新規性喪失の例外規定として以下の規定が存在する。韓国における意匠の新規性喪失の例外規定の要件は、日本と類似している。新規性喪失の例外規定の適用要件は以下のとおりである(韓国デザイン保護法第36条第1項)。

(1) デザイン登録を受けることができる権利を有する者のデザインが第33条第1項第1号(公知、公用)または第2号(刊行物等公知)に該当するようになった場合
(2) そのデザインが条約若しくは法律によって国内又は国外で出願公開又は登録公告された場合は除外される。

 ただし、デザインが上記(1)に該当するに至った日から12か月以内にその者がデザイン登録出願をする必要がある。

 書類の提出時期に関しては、2023年12月21日施行のデザイン保護法改正において第36条第2項が削除され、書類の提出期間が緩和された。すなわち、旧法では①出願時(30日補充期間あり)、②意匠登録決定、拒絶査定通知書の発送前、③異議申立への答弁書提出時、④無効審判への答弁書提出時、とされていた書類提出時期の制限がなくなったことにより、出願後はいつでも書類を提出できるようになる。

条文等根拠:デザイン保護法第36条、デザイン保護法施行規則第34条

韓国デザイン保護法 第36条 新規性喪失の例外
①デザイン登録を受けることができる権利を有する者のデザインが第33条第1項第1号または第2号に該当するようになった場合、そのデザインはその日から12ヶ月以内にその者がデザイン登録出願したデザインに対して同条第1項及び第2項を適用する時には同条第1項第1号又は第2号に該当しないものとみる。但し、そのデザインが条約若しくは法律によって国内又は国外で出願公開又は登録公告された場合にはこの限りでない。

韓国デザイン保護法施行規則第34条 新規性喪失の例外適用対象証明書類の提出
デザイン保護法第36条第2項により新規性が喪失しなかったものと適用を受けようとする者が、その証明書類を提出する場合には、「特許法施行規則」別紙第13号書式の書類提出書を添付しなければならない。ただし、次の各号の書類提出と同時にその証明書類を提出する場合には、各号の書類に証明書類提出の趣旨を記すことにより書類提出書に代えることができる。
 1. 別紙第1号書式の意見書、答弁書または疎明書
 2. 別紙第2号書式の補正書または手続補完書
 3. 別紙第3号書式のデザイン登録出願書

日本と韓国における意匠の新規性喪失の例外に関する比較

日本 韓国
新規性喪失の例外の有無
例外期間 公開日から1年 公開日から12か月
意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因する公知行為の限定の有無
■ソース
・日本国意匠法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=334AC0000000125 ・意匠審査基準 第Ⅲ部 第3章 新規性喪失の例外
https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/design/shinsa_kijun/document/index/isho-shinsakijun-03-03.pdf ・韓国デザイン保護法(韓国語)
https://www.law.go.kr/LSW/lsSc.do?p1=&menuId=1&query=디자인보호법&y=0&x=0#undefined ・韓国デザイン保護法(日本語)
http://www.choipat.com/menu31.php?id=23 ・韓国デザイン保護法施行規則(韓国語)
https://www.law.go.kr/LSW/lsSc.do?p1=&menuId=1&query=디자인보호법+시행규칙&y=0&x=0#undefined ・韓国デザイン保護法施行規則(日本語)
http://www.choipat.com/menu31.php?id=25&category=0&keyword=
■本文書の作成者
日本国際知的財産保護協会
■協力
宋眞旿(韓国弁理士)
■本文書の作成時期

2023.08.29

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