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日本とタイにおける特許審査請求期限の比較

2023年10月26日

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■概要
日本における特許出願の審査請求の期限は、優先権主張の有無にかかわらず日本出願日から3年であり、タイにおける特許出願の審査請求期限は、方式要件等を満たした出願について行われる出願公開の日から5年である。
■詳細及び留意点

1.日本における審査請求期限
 日本においては、特許出願の審査を受けるためには出願審査請求を行う必要がある。出願審査請求は出願の日から3年以内に行うことができ(特許法第48条の3第1項)、この期限内に出願審査請求がされない場合は、その特許出願は取り下げられたものとみなされる(特許法第48条の3第4項)。ただし、所定の期間内に出願審査の請求がなされなかったことにより特許出願が取り下げたものとみなされた場合であっても、当該期間を徒過したことについて「故意によるものでない」ときは、出願審査の請求をすることができるようになった日から2か月以内で、期間経過後1年以内に限り、出願審査の請求を行うことができる(特許法第48条の3第5項)。

 出願が国内優先権の主張を伴う場合や、パリ条約による優先権の主張を伴う場合においても、請求期間の起算日は、優先日(先の出願の出願日)ではなく、優先権主張を伴う出願(後の出願)の実際の出願日である(工業所有権法逐条解説 特許法第48条の3趣旨)。

 PCTルートの場合は、国内書面を提出し、手数料の納付を行った後(外国語特許出願である場合はさらに翻訳文を提出した後)でないと、出願審査請求をすることができない(特許法第184条の17)。この場合の審査請求期限は、国際出願日から3年である。

 また、特許出願の分割に係る新たな特許出願、意匠登録出願または実用新案登録出願の変更に係る特許出願、実用新案登録に基づく特許出願については、原出願から3年の期間経過後であっても、分割または変更による特許出願の日から30日以内に限り、出願審査の請求をすることができる。
 なお、審査請求は出願人だけでなく、第三者も行うことができる。(特許法第48条の3第1項)。

条文等根拠:特許法第48条の2、第48条の3第1項、第2項、第3項、第4項、第5項、第184条の17

日本国特許法 第48条の2(特許出願の審査)
 特許出願の審査は、その特許出願についての出願審査の請求をまって行なう。

日本国特許法 第48条の3(出願審査の請求)
 特許出願があつたときは、何人も、その日から三年以内に、特許庁長官にその特許出願について出願審査の請求をすることができる。

2 第四十四条第一項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願、第四十六条第一項若しくは第二項の規定による出願の変更に係る特許出願又は第四十六条の二第一項の規定による実用新案登録に基づく特許出願については、前項の期間の経過後であっても、その特許出願の分割、出願の変更又は実用新案登録に基づく特許出願の日から三十日以内に限り、出願審査の請求をすることができる。

3 出願審査の請求は、取り下げることができない。

4 第一項または第二項の規定により出願審査の請求をすることができる期間内に出願審査の請求がなかつたときは、この特許出願は、取り下げたものとみなす。

5 前項の規定により取り下げられたものとみなされた特許出願の出願人は、経済産業省令で定める期間内に限り、経済産業省令で定めるところにより、出願審査の請求をすることができる。ただし、故意に、第一項に規定する期間内にその特許出願について出願審査の請求をしなかつたと認められる場合は、この限りでない。

(第6から第8項省略)

日本国特許法 第184条の17(出願審査の請求の時期の制限)
 国際特許出願の出願人は、日本語特許出願にあつては第百八十四条の五第一項、外国語特許出願にあつては第百八十四条の四第一項又は第四項及び第百八十四条の五第一項の規定による手続をし、かつ、第百九十五条第二項の規定により納付すべき手数料を納付した後、国際特許出願の出願人以外の者は、国内書面提出期間(第百八十四条の四第一項ただし書の外国語特許出願にあつては、翻訳文提出特例期間)の経過後でなければ、国際特許出願についての出願審査の請求をすることができない。

2.タイにおける審査請求
 タイにおいては、実体審査を受けるためには出願審査請求を行う必要がある。出願審査請求は、特許法第9条および第17条に規定された方式要件等を満たすと認定された出願について行われる出願公開(特許法第28条第2項)の日から5年以内に行うことができ、出願審査請求がされない場合は、その特許出願は取り下げられたものとみなされる(特許法第29条)。
 なお、出願から公開までの期間は、2022年度の実績では平均39.8か月(タイ出願人:27.2か月、タイ以外出願人:41.0か月)である。
 *JETRO「ASEANにおける産業財産権の検索データベースの調査2022」198頁https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/asean/ip/pdf/report_202303_asean.pdf
 審査請求は出願人のみが行うことができる(特許法第29条)。なお、出願人がタイ国内に居住していない場合には、出願人を代理するタイ弁理士を通じて審査請求されなければならない(特許規則第13条)。

条文等根拠:特許法第5条、第9条、第17条、第28条、第29条、特許規則第13条

タイ特許法 第5条
 第9条に従うことを条件として、特許は、次の条件が満たされた発明に対して付与されるものとする。
(1) その発明が新規であること
(2) 進歩性を有すること、及び
(3) 産業上利用できること

タイ特許法 第9条
 次の発明は、本法に基づく保護を受けないものとする。
(1) 自然発生する微生物及びそれらの成分、動物、植物、又は動物若しくは植物からの抽出物
(2) 科学的又は数学的法則及び理論
(3) コンピュータ・プログラム
(4) 人間及び動物の疾病の診断、処置又は治療の方法
(5) 公の秩序、道徳、健康又は福祉に反する発明

タイ特許法 第17条
 特許出願は、省令に定める規則及び手続に従わなければならない。特許出願書類には、次の事項が含まれていなければならない。
(1) 発明の名称
(2) 発明の特徴及び目的に関する簡単な説明
(3) 当該発明が帰属するか又は最も密接に関連する技術分野において通常の知識を有する者が当該発明を実施及び使用することができるような完全、簡潔、明瞭かつ正確な言葉で記され、かつ発明者が自らの発明を実施する上で企図する最良の態様が示された、発明の詳細な説明
(4) 明確かつ正確な 1 又は複数のクレーム
(5) 省令に定めるその他の事項
タイが特許に関する国際協定又は国際協力に加盟した場合、かかる国際協定又は国際協力の要件を満たす特許出願は、本法に基づく特許出願とみなされる。

タイ特許法 第28条
担当官が長官に審査報告書を提出した場合において、
(1) 長官は、本出願が第17条の規定に合致していない、又はその発明が第9条の規定に基づいて特許できないと認めるときは、その出願を拒絶するものとし、担当官は、かかる拒絶があった日から15日以内に配達証明付書留郵便又は長官の定めるその他の方法で出願人に拒絶の通知をしなければならない。又は
(2) 長官は、本出願が第17条の規定を具備し、かつその発明が第9条に基づく不特許事由に該当しないものであると認めるときは、省令に定める規則及び手続に従ってその出願の公開を命じるものとする。かかる公開に先立って担当官は、長官の定める方法又は配達証明付書留郵便により出願人に公開手数料を納付するよう通知する。出願人が通知を受領した日から60日以内に公開手数料を納付しない場合、担当官は、再度配達証明付書留郵便をもって出願人に通知を行う。かかる再度の通知を受領した日から60日が経過しても公開手数料を支払わない場合、出願人は、その出願を放棄したものとみなされる。

タイ特許法 第29条
第28条に基づく出願の公開後、出願人は、その出願の公開後5年以内か、又は異議申立及び審判請求が提出されているときはその最終決定後1年以内の何れか遅くに満了する期限内に、担当官にその発明が第5条に合致するか否かの審査の開始を請求しなければならない。出願人がその期間内に請求を提出しないときは、その出願を放棄したものとみなす。
(以下、略)

タイ特許規則 第13条
タイの居住者でない出願人、異議申立人、答弁人または審判請求人は、その者の代理人としてタイ国内で行為する者として長官に登録された代理人を任命しなければならない。委任状は長官に提出するものとする。
(以下、略)

 日本の基礎出願について優先権を主張し、タイに特許出願した場合には、以下のようになる。

日本とタイにおける特許審査請求期限の比較

日本 タイ
審査請求期間 3年 5年
起算日 日本の出願日 タイの出願公開日
■ソース
・日本国特許法(昭和34年法律第121号)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=334AC0000000121_20230401_503AC0000000042&keyword=特許法
・工業所有権法逐条解説 特許法第48条の3趣旨 第210頁
https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/kaisetu/kogyoshoyu/document/chikujokaisetsu22/tokkyo.pdf
・タイ特許法
(日本語)https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/thailand-tokkyo.pdf
・タイ特許規則
(日本語)https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/thailand-tokkyo_kisoku.pdf
■本文書の作成者
日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期

2023.08.07

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