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台湾商標、専利訴訟手続き概要(不服申立型)
2013年05月02日
■概要
(本記事は、2021/6/15に更新しています。)URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/20125/
台湾特許庁(中国語「智慧財產局」)が行った出願に対する拒絶査定又は無効審判の審決に不服がある場合、訴願法の規定に従って行政不服申立を行う。この訴願による決定を受けた後でなければ、知的財産裁判所(中国語「智慧財產法院」)に拒絶査定又は審決の取消を求めることはできない。この知的財産裁判所の判決に不服がある場合は、最高行政裁判所(中国語「最高行政法院」)に提訴することができる。ここでは、訴願法による不服申立の決定(訴願決定)に不服がある場合の知的財産裁判所への手続と最高行政裁判所への上訴について説明する。
■詳細及び留意点
以下に、拒絶査定又は無効審判から最高行政裁判所までの全体の流れの図と、訴願から最高行政裁判所までの詳細の流れの図を示す。
(1) 訴訟の提起
(ⅰ)提訴期間
訴願決定送達の翌日から2ヶ月以内(訴願法第90条、智慧財産法院組織法第2条)。
(ⅱ)訴状
訴状には当事者、訴訟物及び請求の趣旨などを記載(行政訴訟法第105条)。
(2) 知的財産裁判所での審理
(ⅰ)書面の提出
・ 訴状受理後に副本が被告に送付され、被告は答弁書を提出して反論する。
・ 原告は口頭弁論の準備のため、準備書面を提出する(行政訴訟法第120条)。
(ⅱ)準備手続
口頭弁論に先立ち、必要に応じて準備手続きが行われる。当事者や法定代理人が立ち会い、当事者が帳簿、外国語の文書の訳、その他の文書を提出し、検証、鑑定や証拠調査が行われる(行政訴訟法第121条)。
(ⅲ)口頭弁論
・ 準備手続きを経て、裁判長が期日を指定して行われる。原則として訴状の送達から10日以上経過した後に行われる。
・ 口頭弁論は、当事者が請求した起訴事項の読み上げで始まり、当事者による事実又は法律について陳述や弁論が行われる(行政訴訟法第109条、同第122条)。
(ⅳ)判決
・ 口頭弁論の全内容及び証拠に基づき、論理的に経験則に沿って審理される(行政訴訟法第188-190条)。
・ 判決の送達は、書記官が原本を受領してから10日以内に行われる(行政訴訟法第210条第1-3項)。
(3) 最高行政裁判所への上訴手続き
(ⅰ)上訴期間
知的財産裁判所の判決の送達後翌日から20日以内(行政訴訟法第241条本文、智慧財産法院組織法第2条)。不変期間である。
(ⅱ)書類
・ 上訴状の理由補充は、上訴提起後20日以内に行うことができる(行政訴訟法第244-246条)。
・ 上訴状が送達された被上訴人は、上訴状又は上訴理由書の送達後15日以内に答弁書を提出できる。
・ 被上訴人は判決前に、最高行政裁判所へ答弁書又は追加書状を提出することができる(行政訴訟法第248条)。
(ⅲ)審理
最高行政裁判所では、一定の場合を除き、口頭弁論は行われない(行政訴訟法第253、254条)。
(ⅳ)判決
上訴に理由がない場合は棄却判決を行い、上訴に理由がある場合は、原判決を破棄して知的財産裁判所に差戻すか、破棄自判する判決を行う(行政訴訟法第255-261条)。
【留意事項】
・ 台湾特許庁が行った出願に対する拒絶査定又は無効審判の審決に不服がある場合、知的財産裁判所に提訴するためには訴願法による不服申立を経る必要があるため、直接知的財産裁判所に提訴することができない。
・ 台湾智慧財産案件審理法第33条では、口頭審理終結前までに提出された取消理由の新たな証拠を斟酌するように裁判所に求めていることから、期限までに発見した証拠については期限内であれば提出することが望ましい。
■ソース
・台湾行政不服法(中国語「訴願法」)(英語版)http://law.moj.gov.tw/Eng/LawClass/LawAll.aspx?PCode=A0030020 ・行政訴訟法
http://law.moj.gov.tw/LawClass/LawAll.aspx?PCode=A0030154 ・智慧財産法院組織法(日本語版)
http://ipc.judicial.gov.tw/ipr_japan/index.php?option=com_content&task=view&id=19&Itemid=117 ・智慧財産案件審理法(日本語版)
http://ipc.judicial.gov.tw/ipr_japan/index.php?option=com_content&task=view&id=20&Itemid=121
■本文書の作成者
聖島国際特許法律事務所(作成:2012年10月3日)特許庁総務部企画調査課 根本雅成(改訂:2013年5月2日)
■協力
一般財団法人比較法研究センター 木下孝彦■本文書の作成時期
2013.05.02