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アルゼンチンにおける商標の使用と使用証拠

2022年11月29日

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■概要
アルゼンチンにおいて、登録商標を更新する際、商標権者は、当該商標の満了日前の5年以内に商取引において当該商標を使用したことを宣誓しなければならない。また、登録商標の取消は、アルゼンチン産業財産権庁(以下、産業財産庁)によって宣言されるが、これに対する不服は連邦民事商事審判所によって審理される。第三者により不使用取消が請求された日前の5年以内に、当該商標が商取引において使用されていなかった場合、産業財産権庁により取り消されるおそれがある。
■詳細及び留意点

1.商標の使用
 アルゼンチン商標法第20条の規定に従い、登録商標を更新する際、商標権者は、当該商標の満了日前の5年以内に商取引において当該商標を使用したことを宣誓しなければならない。この使用宣誓は、少なくとも一つの指定商品または役務に関して宣誓すれば良く、宣誓した使用を裏づける証拠を提出する必要はない。

1-1.不使用取消
 商標法第26条の規定に基づき、第三者により不使用取消が請求された日前の5年以内に、区分に関係なくいずれかの所定の商品または役務に関して商標が商取引において使用されていなかった場合、産業財産権庁は当該商標に関して商標の取消を宣言する。商標の取消に関する決定は、決定通知後30就業日以内に連邦民事商事審判所への直接の申立を通じて審判請求することができ、当該審判請求は産業財産権庁宛てに提出するものとする。
 商標の使用とみなされる行為を定義づける規定は存在しない。しかし、上記に引用された商標法の各条項は、商取引において少なくとも一つの商品または役務に関して商標が使用されていなければならないことを明示しており、不使用による商標権の取消は、全部取消し、または、使用されなかった商品または役務に関してのみの部分的取消しを請求することができ、部分的取消し請求が成立した場合、請求された商品または役務に関してのみ商標が取り消されることとなり、この場合、取消が請求されなかった商品や役務に関しては、引き続き登録の範囲として存続する。
 なお、この部分的取消という制度は2018年に改正された商標法により導入されたものである。

 また、商標法第26条の規定に基づき、商標権の使用はアルゼンチン国内で行われていなければならず、かかる商品または役務が、国内市場に存在しなければならない。
 なお、インターネットサイトにおいて商標を表示し、当該商標を付した商品・役務について国内から海外に納品、海外から国内に納品または国内間の納品など国内での商取引を示すことができれば、当該商標の有効な使用として認められる。

1-2.使用証拠
 商標法、商標規則に規定は見られないが、実務上、商標の広告が有効な商標の使用とみなされるには、市場における当該商品または役務の実際の提供が広告後に行われなければならない。販売を伴わない単なる広告は十分ではない。
 一般的な使用証拠は、依頼人、顧客または販売店に対して発行された当該商標が明確に表示されている請求書、または表示されている商品番号等から当該商標を容易に特定できる請求書である。ただし、このような使用が有効であるとみなされるためには、現地での商取引、すなわち、アルゼンチン市場内で行われた取引であることが必要である。
 証拠としてよく用いられる手段として、権利者の商業帳簿を見て明確に使用を判断できる会計処理の専門家証人による宣言書がある。これは請求書と共に、最も効果的な手段である。
 さらに、使用は登録時の商標を用いるものでなければならない。ただし、商標権者が識別性に影響を及ぼさない方法で、自己の登録商標の軽微な変更で、かつ実質的な変更が無い方法で使用する場合には、当該変更後の商標の使用は、登録時の商標の使用とみなされる。これはアルゼンチンが批准したパリ条約の第5条(C)の適用を考慮している。

 取消請求または審判において、商標権者により主張された使用証拠が不十分であった場合、当該商標は取り消され、登録簿から削除されることになる。

2.未登録商標
 アルゼンチンにおいては、商標の登録は義務づけられていない。ただし、未登録の商標を商取引において継続的に使用し、相当の期間にわたり当該商標に関する顧客を生み出している場合、当該商標は事実上の商標(de facto trademark)とされ、これに基づいて、出願の異議申立や、無効請求など、第三者に対する権利行使を行える可能性がある。なお、権利行使可能な当該商標の要件は、個々の事例に応じて判断される。

■ソース
・アルゼンチン商標法
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/argentine-shouhyou.pdf
・アルゼンチン商標規則
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/argentine-shouhyou_kisoku.pdf
・パリ条約
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/paris/patent/chap1.html
■本文書の作成者
日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期

2022.08.23

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