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韓国における特許・実用新案の審査請求の留意点
2022年11月29日
■概要
(2024年6月13日訂正:本記事のソース「韓国特許法」、「特許法施行規則」、「特許法施行令」、「特許・実用新案審査基準」および「韓国実用新案法」のURLを修正いたしました。)
韓国における特許(2017年3月1日から)および実用新案の審査請求期間は出願日から3年以内であり、その期間内に審査請求をしなければ出願は取下げられたものとみなされる。なお、分割出願、分離出願および変更出願は、その出願日から30日以内に審査請求することができる。また、優先審査を申請することができ、2021年6月から優先審査の対象となる出願が追加された。
■詳細及び留意点
1.審査請求の期間
特許および実用新案は、出願日(国際特許出願の場合は国際出願日)から3年以内に審査請求をすることができる(特許法第59条第2項、第210条/実用新案法第12条第2項、第38条)。
分割出願、分離出願および変更出願については、出願時に既に原出願日が起算日の審査請求期間を経過している場合であっても、分割、分離および変更出願日から30日以内に審査請求をすることができる(特許法第59条第3項/実用新案法第12条第3項)。
なお、審査請求は取下げることができない(特許法第59条第4項/実用新案法第12条第4項)。また、期限までに審査請求しない場合、その出願は取下げられたものとみなされる。(特許法第59条第5項/実用新案法第12条第5項)
2.審査請求ができる者
審査請求は、誰でもすることができる(特許法第59条第2項/実用新案法第12条第2項)。つまり、出願人以外の第三者も審査請求をすることができる。ただし、未成年者など行為無能力者が審査を請求する場合は、法定代理人によって手続をしなければならない(特許・実用新案審査基準 第5部第1章5.1(2))。
3.審査着手の順位および審査期間
審査は審査請求順に行われることが原則となっている。ただし、分割、分離、変更出願の場合は、原出願の審査請求順位に従って審査される(特許法施行規則第38条、特許・実用新案審査事務取扱規定第20条、第21条)。一般審査の場合、審査請求から審査着手まで通常1年程度かかる(JETRO 知的財産ニュース 「韓国特許庁の優先審査制度、「21年度積極行政法制優秀事例」に選定」https://www.jetro.go.jp/world/asia/kr/ip/ipnews/2021/211228a.html)。
優先審査または審査猶予申請をした場合は例外となる(特許・実用新案審査事務取扱規定第59条、第66条、第21条の2)。優先審査の申請が可能な出願は国内出願人のみ対象となるものもあるが、「特許出願人が特許出願された発明を実施している場合や実施準備中である特許出願(特許法施行令第9条第1項第8号)」に対する優先審査の申請については外国人による出願にも活用することができる(特許・実用新案審査基準 第7部第4章3.1.1(3))。
また、日韓特許審査ハイウェイ(PPH)を利用する場合は優先審査に該当し(特許法施行令第9条第1項第10号)、2~3か月程度でFA(First Action)を受領することができ、平均6か月程度で最終的な審査結果が出される(PPHポータル「統計情報」https://www.jpo.go.jp/toppage/pph-portal-j/statistics.html)。
さらに、2021年6月から「医療・防疫物品と直接関連する特許出願」、「認証を受けた災難安全製品と直接関連した特許出願」および「災難による緊急した状況に対応する場合の対象となる特許出願」が優先審査の対象に規定された(特許法施行令第9条第2項)。
なお、優先審査申立の取下げは、優先審査決定の通知があった場合には認められない(特許実用新案審査基準第7部第4章3.2.3)。
4.留意事項
(1) 韓国は審査が他国に比べて早く行われ、また厳しいという評価がある。審査請求を早く行い、他国よりも先に審査されて拒絶査定を受けると、他国出願に影響を及ぼすこともあり得る。
そのため、近年、日本からの出願では、日韓特許審査ハイウェイをよく利用する傾向が見られる。日本でまず登録を受け、これを根拠に請求範囲を合わせて日韓特許審査ハイウェイを利用して韓国に出願すれば、優先審査とともに特許を受けることが有利になる。この日韓特許審査ハイウェイを利用するためには、日本でまず特許査定が下りるように審査請求時期を調整し、審査時期を合わせる必要がある。韓国で審査が着手されたとしても、上記日韓特許審査ハイウェイによる優先審査を請求することはできる。
(2) 審査請求料は請求項に基づいて計算されるため、審査請求前に不必要な請求項は削除するのが良い。
(3) 特許出願の審査が着手され、拒絶理由通知書(韓国語「의견제출통지서(意見提出通知書)」)を受け、分割出願する場合、原出願日(または国際出願日)から3年(旧法は5年)が経過していないかを必ず確認する必要がある。経過している場合は、分割出願日から30日以内に審査請求をしなければいけないので、分割出願と同時に審査請求を行うのが安全である。
(4) 2021年11月に施行された特許法改正により、拒絶理由通知または特許決定の謄本送達前までに特許出願を取下げまたは放棄する場合、審査請求料を全額返還され、また、拒絶理由通知書(意見提出通知書)を受領後の意見提出期間内(延長した期間も含む)にも、その特許出願を取下げまたは放棄すれば審査請求料の3分の1を返還されるようになった(特許法第84条第1項第5号および第5号の2、特許実用新案審査基準第1部第7章4.(1))。
■ソース
韓国特許法https://www.choipat.com/menu31.php?id=14&category=0&keyword=
特許法施行規則
https://www.choipat.com/menu31.php?id=16&category=0&keyword=
特許法施行令
https://www.choipat.com/menu31.php?id=15&category=0&keyword=
特許・実用新案審査基準(2021年12月30日改訂)(日本語)
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/kr/ip/law/sinsasisin20230322.pdf
韓国実用新案法
https://www.choipat.com/menu31.php?id=125
韓国特許・実用新案審査事務取扱規定(특허·실용신안 심사사무취급규정)
https://www.law.go.kr/LSW/admRulLsInfoP.do?admRulSeq=2100000202129
PPHポータル「統計情報」
https://www.jpo.go.jp/toppage/pph-portal-j/statistics.html
JETRO 知的財産ニュース 「韓国特許庁の優先審査制度、「21年度積極行政法制優秀事例」に選定」
https://www.jetro.go.jp/world/asia/kr/ip/ipnews/2021/211228a.html
■本文書の作成者
日本国際知的財産保護協会■本文書の作成時期
2022.09.08