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インドネシアにおける商標異議申立制度

2022年11月15日

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■概要
インドネシアでは、商標出願に対する異議申立制度が、「商標及び地理的表示法」に規定されており、2016年11月25日から実施されている。また、2020年11月2日に成立した法律第11/2020号(通称オムニバス法)により、その一部(第20条、第23条、第25条)が改正された。商標出願は、全ての方式要件を満たした時点で出願日が付与され、遅くとも出願日の15日後から始まる2か月の公告期間に異議申立が可能である。出願人は、異議申立書の写しの送達日から2か月以内に、答弁書を提出することができる。答弁書の提出期限から1か月以内に、当該出願の実体審査において、異議申立書および答弁書が審査資料として検討される。
■詳細及び留意点

 インドネシアにおいて、商標出願に対する異議申立は、「商標及び地理的表示法」第20/2016号第14条、第15条、第16条および第17条に規定されている。以下に述べる異議申立手続は、2016年11月25日から実施されている。
 法律第11/2020号による改正(以下、「商標法2020」)により、これまでの実体審査が公開期間終了後30日以内に開始され、150日以内に完了とされていたものが、公開期間終了時に開始され、異議のない出願については30日以内、異議のあった出願については90日以内に終了しなければならないとされた。
 異議申立は、商標出願の公告期間中に提起することができる。商標法2020第13条に従い、商標出願は全ての方式要件を満たした時点で出願日が付与される。法定の公告期間は、遅くとも出願日の15日後から始まる2か月間である。
 商標出願が認可されると、インドネシア知的財産総局(Directorate General of Intellectual Property Rights;以下、「DGIP」)は商標公報およびDGIPのウェブサイトにおいて出願を公告する。公告は、2か月間にわたり実施される。
 商標法2020第16条(1)項に従い、上記の公告期間中に、何人も、DGIPに書面による異議申立を提起することができる。異議申立の際には、オフィシャルフィーを支払わなければならない。
 異議申立の際に要求されるオフィシャルフィーは、法務人権省(Ministry of Justice and Human Rights Affairs)内で適用される非課税収益の種類および料金に関する政令第28/2019号に定められており、金額は商標出願1件につき100万ルピアである。

1.異議申立の理由
 異議申立の理由は、商標法2020に下記のように規定されている。

(1) 商標法2020第20条

次の商標は登録できない:
a. 国家のイデオロギー、法規、道徳規範、宗教、倫理、公序良俗に反するもの;
b. 登録対象の商品/サービスと同じ名称、これを説明するもの、又はその単なる言及に過ぎないもの;
c. 登録対象の商品/サービスの出所、品質、形式、サイズ、種類、又はその使用目的について、公衆を誤認させる可能性のある要素を含んでいるもの、又は同類の商品/サービスに対し保護対象となっている植物品種の名称。
d. 生産された商品/サービスの品質、便宜又は効能と一致しない情報を含んでいる。
e. 識別性を有する特徴がないもの;
f. 一般名称、公有財産の象徴となっているもの;
g. 機能的な形態が含まれているもの。

 2020年の改正により、機能的な形態が含まれる標章の商標登録ができないとされた。

(2) 商標法2020第21条

1) 商標の要部又は全体が、次のいずれかと類似する場合、出願は拒絶される;
a. 同類の商品/サービスに関して既に登録又は出願されている、他者の所有する商標;
b. 同類の商品/サービスに関して、他者の所有する周知商標;
c. 特定の条件を満たす、同じ種類ではない商品/サービスに関して他者の所有する周知商標;又は
d. 登録済みの地理的表示
2) 次に該当する商標は拒絶される;
a. 有名人の名前、略称、写真又は他者が所有する法人の名称に相当する、又はこれと類似するもの。但し、正当な権利者の書面による同意がある場合を除く。
b. 国家又は国内もしくは国際機関の名称又は略称、旗、紋章、シンボル又は象徴を模倣する、又はこれと類似するもの。但し、管轄当局の書面による同意がある場合を除く;
c. 国家又は政府機関によって使用される公的な標識、印章又は証印を模倣する、又はこれと類似するもの。但し管轄当局の書面による同意がある場合を除く。
3) 出願人が悪意をもって提出した商標出願は拒絶される。
4) 1)項a項~c項までにいう、商標出願の拒絶に関する更なる詳細な規定は、大臣令により定められる。

2.異議申立の内容
 商標法2020第16条(2)項に従い、異議申立は、十分な理由と共に、出願商標が商標法2020に基づき登録されるべきではない、または拒絶されるべきであることを証明する証拠を提出することができる。

 異議申立は、異議理由を示す異議申立書に異議理由を裏付ける証拠を添付して提出される。異議申立を提出する際に必要な証拠の量に関する規定は存在しない。異議申立時に提出されなかった追加の証拠がある場合、異議申立人は、異議申立日から2週間以内であれば追加証拠を提出することができる。

商標法2020第16条

1) 第14条にいう公告期間中、何人もそれぞれ大臣宛の書面で手数料を支払い、当該の出願に異議を申立てることができる。
2) 1)項にいう異議申立ては,出願されている商標が本法に基づき、登録不可能又は拒絶されるべきであることが、証拠を伴う十分な理由がある場合に申立てることが出来る。
3) 1)項にいう異議申立てがあった場合,異議申立受理日から起算して14日間以内に,当該異議申立書の写しが出願人又は代理人宛に送達される。

3.異議申立の手続期間
 商標法2020第16条(3)項に従い、異議申立が提出されると、DGIPは異議申立を受領した日から遅くとも14日以内に、異議申立書の写しを出願人に送付する。
 出願人は、DGIPから送付された異議申立書の写しの送達日から2か月以内に、異議申立に対する答弁書を提出することができる(商標法2020第17条(2)項)。
 商標法2020に定められた異議申立手続は、3つの段階からなる。第1段階は異議申立人による異議申立書の提出であり、第2段階は出願人による答弁書の提出であり、最後の段階はDGIPにより下される異議決定である。さらに、異議申立人および出願人は、異議申立書または答弁書について説明するために、DGIPにヒアリングを要求することができる。ヒアリングはDGIPにおいて行われる。
 DGIPは、答弁書の提出期限から1か月以内に、当該出願の実体審査において、異議申立書および答弁書を審査資料として検討する(商標法2020第23条(2)項および(4)項)。
 DGIPは、公告期間の満了日もしくは答弁書提出期限から、異議のない場合は30営業日以内に、異議のあった場合は90営業日以内に、当該出願の実体審査を完了する。
 審査官が実体審査の結果、商標出願を認可できないと判断した場合、DGIPは出願人に対し、当該出願は登録できない、または拒絶される旨を書面で通知する。その場合、出願人は、当該通知の送達日から30日以内に応答する機会を与えられる(商標法2020第24条(3)項)。
 審査官が実体審査の結果、商標出願を認可できると判断した場合、当該出願は商標登録簿に登録される(商標法2020第24条1)項)。
 DGIPは、実体審査の結果について、異議申立人にも書面で通知する。

商標法2020第17条

1) 出願人又は代理人は、第16条にいう異議申立てに対する答弁書を提出する権利を持つ。
2) 1)項にいう答弁書は、大臣によって異議申立書の写しが送達された日付から起算して2カ月間以内に書面で提出されること。

商標法2020第23条

1) 実体審査とは、商標登録出願に対し、審査官が行う審査である。
2) 第16条及び第17条にいう異議申立て又は答弁は全て、1)項にいう実体審査において考慮対象とされる。
3) 公告期間満了日までに異議申立が提起されなかった場合、出願の実体審査が実施される。
4) 3)項にいう実体審査は、30日以内に完了するものとする。
5) 第17条にいう答弁書の提出期限最終日から起算して30日以内に、異議申立てが提起された場合、出願の実体審査が実施される。
6) 5)項にいう実体審査は、最長で90日以内に完了するものとする。
7) 実体審査実施のための必要に応じて、審査官以外の商標審査専門家を配置することが出来る。
8) 7)項にいう商標審査専門家によって行われた実体審査結果は、大臣の承認によって、審査官によって行われた実体審査結果と同等とみなすことが出来る。

商標法2020第24条

1) 審査官が、出願を登録可能であると決定すると、大臣は:
a. 当該商標を登録する;
b. 当該商標が登録されたことを出願人又は代理人に通知する;
c. 商標証書を発行する;及び
d. 当該商標の登録を、電子及び非電子媒体の商標官報上で公表する。
2) 審査官が、出願を登録不可能である又は拒絶すると判断した場合、大臣は出願人又は代理人に、拒絶理由通知書を送る。
3) 出願人又は代理人は,2)項にいう通知書を受け取った日付から30日以内に,その応答の理由を記載した応答書を提出することが出来る。
4) 出願人又は代理人が、3)項にいう応答書を提出しなかった場合、大臣は当該出願の拒絶を決定する。
5) 3)項にいう応答書を出願人又は代理人が提出し、審査官がその応答書を検討可能であると判断した場合、大臣は1)項に記載した規定を実施する。
6) 出願人又は代理人が3)項にいう応答書を提出し、審査官がそれを検討不可能であると判断した場合、大臣はその出願の拒絶を決定する。
7) 4)項及び6)項にいうような拒絶は、その理由を記載した文書により、出願人又は代理人に通知される。
8) 第16条にいう異議申立てのある場合、大臣は登録又は拒絶の通知書の写しを、当該異議申立の提起者宛てに送達する。

4.異議申立の取下げ
 異議申立人は、審査官が出願の実体審査結果を決定する前であれば、DGIPに対して、異議申立の取下げ書を提出することができる。異議申立を取下げる一般的な理由としては、異議申立人と出願人との間で、商標譲渡契約、共存合意契約などを締結した場合が挙げられる。

5.審査官の拒絶査定に対する不服
 審査官の拒絶査定に対して不服がある場合、出願人は、商標審判委員会に審判請求を提起することができ、その写しは、オフィシャルフィーの支払いをもってDGIPに送付される(商標法2020第28条2)項)。

商標法2020第28条

1) 第20条又は第21条にいうような理由に基づく出願の拒絶査定に対しては、審判請求を提出することが出来る。
2) 審判請求は有料で、出願人又は代理人から商標審判委員会宛に書面を提出し、その写しは大臣に届けられる。
3) 審判請求書は、拒絶査定に対する不服の理由を添え、完全に説明した上で提出すること。
4) 3)項にいう理由は拒絶された出願を改善又は補足するためのものではないこと。

 審判請求書は、出願の拒絶査定の送達日から3か月以内に提出しなければならない(商標法2020第29条(1)項)。

商標法2020第29条

1) 拒絶された出願に対する審判請求は、拒絶査定の送達日から数えて90日以内に提出されること。
2) 1)項にいう審判請求が提出されなかった場合は、拒絶査定が出願者により受入れられたものとみなされる。

 なお、異議申立以外に、関連当事者は商事裁判所に取消訴訟を提起することができる(商標法2020第76条)。

商標法2020第76条

1) 商標登録の取消訴訟は、第20条又は第21条にいう事由に基づき、関連当事者によって提訴することが出来る。
2) 登録されていない商標の所有者は、大臣宛に商標登録の出願を行った後、1)項にいうような訴訟を提訴することが出来る。
3) 登録商標所有者に対する取消訴訟は、商事裁判所に提訴する。
■ソース
・インドネシア商標法(法律第20/2016号)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/indonesia-shouhyou_2016.pdf (日本語)
https://www.dgip.go.id/unduhan/download/uu-nomor-20-tahun-2016-tentang-merek-32 (インドネシア語)
・インドネシア・オムニバス法(法律第11/2020号)
https://peraturan.bpk.go.id/Home/Details/149750/uu-no-11-tahun-2020 (インドネシア語)
・インドネシア政令28/2019号
https://peraturan.bpk.go.id/Home/Details/106025/pp-no-28-tahun-2019 (インドネシア語)
■本文書の作成者
日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期

2022.08.18

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