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日本とシンガポールにおける特許出願書類・手続の比較
2019年11月07日
■概要
日本で出願された特許出願を優先権の基礎としてシンガポールに特許出願する際に、必要となる出願書類および関連する法令についてまとめた。日本とシンガポールにおける特許出願について、出願書類と手続言語についての規定および優先権主張に関する手続を比較した。■詳細及び留意点
1.日本における特許出願の出願書類
(1)出願書類
所定の様式により作成した以下の書面を提出する。特許出願日の認定を受けるためには、特許法第38条の2第1項に規定する3つの要件を満たす必要がある。3つの要件を満たしていない場合、出願人に対してその旨の通知がされ、出願人は補完手続を行うことが可能であるが、手続補完書を提出した日が特許出願の日として認定されることに留意が必要である。
・願書
・明細書
・特許請求の範囲
・必要な図面
・要約書
条文等根拠:特許法第36条、第38条の2
日本特許法 第36条 特許出願
特許を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない。
一 特許出願人の氏名または名称および住所または居所
二 発明者の氏名および住所または居所
2 願書には、明細書、特許請求の範囲、必要な図面および要約書を添付しなければならない。
3 前項の明細書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 発明の名称
二 図面の簡単な説明
三 発明の詳細な説明
4 前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
一 経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。
二 その発明に関連する文献公知発明(第29条第1項第3号に掲げる発明をいう。以下この号において同じ。)のうち、特許を受けようとする者が特許出願の時に知っているものがあるときは、その文献公知発明が記載された刊行物の名称その他のその文献公知発明に関する情報の所在を記載したものであること。
5 第2項の特許請求の範囲には、請求項に区分して、各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない。この場合において、一の請求項に係る発明と他の請求項に係る発明とが同一である記載となることを妨げない。
6 第2項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
一 特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。
二 特許を受けようとする発明が明確であること。
三 請求項ごとの記載が簡潔であること。
四 その他経済産業省令で定めるところにより記載されていること。
7 第2項の要約書には、明細書、特許請求の範囲または図面に記載した発明の概要その他経済産業省令で定める事項を記載しなければならない。
日本特許法 第38条の2 特許出願の日の認定
特許庁長官は、特許出願が次の各号のいずれかに該当する場合を除き、特許出願に係る願書を提出した日を特許出願の日として認定しなければならない。
一 特許を受けようとする旨の表示が明確でないと認められるとき。
二 特許出願人の氏名若しくは名称の記載がなく、又はその記載が特許出願人を特定できる程度に明確でないと認められるとき。
三 明細書(外国語書面出願にあっては、明細書に記載すべきものとされる事項を第36条の2第1項の経済産業省令で定める外国語で記載した書面。以下この条において同じ。)が添付されていないとき(次条第1項に規定する方法により特許出願をするときを除く。)。
2 特許庁長官は、特許出願が前項各号のいずれかに該当するときは、特許を受けようとする者に対し、特許出願について補完をすることができる旨を通知しなければならない。
3 前項の規定による通知を受けた者は、経済産業省令で定める期間内に限り、その補完をすることができる。
4 前項の規定により補完をするには、経済産業省令で定めるところにより、手続の補完に係る書面(以下「手続補完書」という。)を提出しなければならない。ただし、同項の規定により明細書について補完をする場合には、手続補完書の提出と同時に明細書を提出しなければならない。
5 第3項の規定により明細書について補完をする場合には、手続補完書の提出と同時に第36条第2項の必要な図面(外国語書面出願にあっては、必要な図面でこれに含まれる説明を第36条の2第1項の経済産業省令で定める外国語で記載したもの。以下この条において同じ。)を提出することができる。
6 第2項の規定による通知を受けた者が第3項に規定する期間内にその補完をしたときは、その特許出願は、手続補完書を提出した時にしたものとみなす。この場合において、特許庁長官は、手続補完書を提出した日を特許出願の日として認定するものとする。
7 第4項ただし書の規定により提出された明細書は願書に添付して提出したものと、第5項の規定により提出された図面は願書に添付して提出したものとみなす。
8 特許庁長官は、第2項の規定による通知を受けた者が第3項に規定する期間内にその補完をしないときは、その特許出願を却下することができる。
9 特許を受けようとする者が第2項の規定による通知を受ける前に、その通知を受けた場合に執るべき手続を執つたときは、経済産業省令で定める場合を除き、当該手続は、その通知を受けたことにより執った手続とみなす。
(2)手続言語
日本語
(3)手続言語以外で記載された明細書での出願日確保の可否
英語その他の外国語により作成した外国語書面を願書に添付して出願することができる。その特許出願の日から1年4か月以内に外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。翻訳文の提出がない場合には、出願人にその旨の通知が行われ、2か月以内に翻訳文の提出が可能である。
条文等根拠:特許法第36条の2、第25条の7、特許法施行規則第25条の4
日本特許法 第36条の2
特許を受けようとする者は、前条第2項の明細書、特許請求の範囲、必要な図面及び要約書に代えて、同条第3項から第6項までの規定により明細書又は特許請求の範囲に記載すべきものとされる事項を経済産業省令で定める外国語で記載した書面及び必要な図面でこれに含まれる説明をその外国語で記載したもの(以下「外国語書面」という。)並びに同条第7項の規定により要約書に記載すべきものとされる事項をその外国語で記載した書面(以下「外国語要約書面」という。)を願書に添付することができる。
2 前項の規定により外国語書面及び外国語要約書面を願書に添付した特許出願(以下「外国語書面出願」という。)の出願人は、その特許出願の日(第41条第1項の規定による優先権の主張を伴う特許出願にあっては、同項に規定する先の出願の日、第43条第1項、第43条の2第一項(第43条の3第3項において準用する場合を含む。)又は第43条の3第1項若しくは第2項の規定による優先権の主張を伴う特許出願にあっては、最初の出願若しくはパリ条約(1900年12月14日にブラッセルで、1911年6月2日にワシントンで、1925年11月6日にヘーグで、1934年6月2日にロンドンで、1958年10月31日にリスボンで及び1967年7月14日にストックホルムで改正された工業所有権の保護に関する1883年3月20日のパリ条約をいう。以下同じ。)第4条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願又は同条A(2)の規定により最初の出願と認められた出願の日、第41条第1項、第43条第1項、第43条の2第1項(第43条の3第3項において準用する場合を含む。)又は第43条の3第1項若しくは第2項の規定による2以上の優先権の主張を伴う特許出願にあっては、当該優先権の主張の基礎とした出願の日のうち最先の日。第64条第1項において同じ。)から1年4月以内に外国語書面及び外国語要約書面の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。ただし、当該外国語書面出願が第44条第1項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願、第46条第1項若しくは第2項の規定による出願の変更に係る特許出願又は第46条の2第1項の規定による実用新案登録に基づく特許出願である場合にあっては、本文の期間の経過後であっても、その特許出願の分割、出願の変更又は実用新案登録に基づく特許出願の日から2月以内に限り、外国語書面及び外国語要約書面の日本語による翻訳文を提出することができる。
3 特許庁長官は、前項本文に規定する期間(同項ただし書の規定により外国語書面及び外国語要約書面の翻訳文を提出することができるときは、同項ただし書に規定する期間。以下この条において同じ。)内に同項に規定する外国語書面及び外国語要約書面の翻訳文の提出がなかったときは、外国語書面出願の出願人に対し、その旨を通知しなければならない。
4 前項の規定による通知を受けた者は、経済産業省令で定める期間内に限り、第2項に規定する外国語書面及び外国語要約書面の翻訳文を特許庁長官に提出することができる。
5 前項に規定する期間内に外国語書面(図面を除く。)の第2項に規定する翻訳文の提出がなかったときは、その特許出願は、同項本文に規定する期間の経過の時に取り下げられたものとみなす。
6 前項の規定により取り下げられたものとみなされた特許出願の出願人は、第4項に規定する期間内に当該翻訳文を提出することができなかったことについて正当な理由があるときは、経済産業省令で定める期間内に限り、第2項に規定する外国語書面及び外国語要約書面の翻訳文を特許庁長官に提出することができる。
7 第4項又は前項の規定により提出された翻訳文は、第2項本文に規定する期間が満了する時に特許庁長官に提出されたものとみなす。
8 第2項に規定する外国語書面の翻訳文は前条第2項の規定により願書に添付して提出した明細書、特許請求の範囲及び図面と、第2項に規定する外国語要約書面の翻訳文は同条第2項の規定により願書に添付して提出した要約書とみなす。
日本特許法施行規則 第25条の7 翻訳文の様式等
4 特許法第36条の2第4項の経済産業省令で定める期間は、同条第3項の規定による通知の日から2月とする。
5 特許法第36条の2第6項の経済産業省令で定める期間は、同項に規定する正当な理由がなくなった日から2月とする。ただし、当該期間の末日が同条第4項に規定する期間の経過後1年を超えるときは、同項に規定する期間の経過後1年とする。
日本特許法施行規則 第25条の4 外国語書面出願の言語
特許法第36条の2第1項の経済産業省令で定める外国語は、英語その他の外国語とする。
(4)優先権主張手続
優先権主張の基礎となる出願の出願国と出願日を記載した書類を経済産業省令で定める期間内に特許庁長官に提出し、最先の優先権主張日から1年4か月以内に特許庁長官に提出しなければならない。優先権証明書の提出がない場合には、出願人にその旨の通知が行われ、2か月以内に提出が可能である。
条文等根拠:特許法第43条
日本特許法 第43条 パリ条約による優先権主張の手続
パリ条約第4条D(1)の規定により特許出願について優先権を主張しようとする者は、その旨並びに最初に出願をし若しくは同条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願をし又は同条A(2)の規定により最初に出願をしたものと認められたパリ条約の同盟国の国名及び出願の年月日を記載した書面を経済産業省令で定める期間内に特許庁長官に提出しなければならない。
2 前項の規定による優先権の主張をした者は、最初に出願をし、若しくはパリ条約第4条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願をし、若しくは同条A(2)の規定により最初に出願をしたものと認められたパリ条約の同盟国の認証がある出願の年月日を記載した書面、その出願の際の書類で明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲及び図面に相当するものの謄本又はこれらと同様な内容を有する公報若しくは証明書であってその同盟国の政府が発行したものを次の各号に掲げる日のうち最先の日から1年4月以内に特許庁長官に提出しなければならない。
一 当該最初の出願若しくはパリ条約第4条C(4)の規定により当該最初の出願とみなされた出願又は同条A(2)の規定により当該最初の出願と認められた出願の日
二 その特許出願が第41条第1項の規定による優先権の主張を伴う場合における当該優先権の主張の基礎とした出願の日
三 その特許出願が前項、次条第1項(第43条の3第3項において準用する場合を含む。)又は第43条の3第1項若しくは第2項の規定による他の優先権の主張を伴う場合における当該優先権の主張の基礎とした出願の日
3 第1項の規定による優先権の主張をした者は、最初の出願若しくはパリ条約第4条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願又は同条A(2)の規定により最初の出願と認められた出願の番号を記載した書面を前項に規定する書類とともに特許庁長官に提出しなければならない。ただし、同項に規定する書類の提出前にその番号を知ることができないときは、当該書面に代えてその理由を記載した書面を提出し、かつ、その番号を知つたときは、遅滞なく、その番号を記載した書面を提出しなければならない。
4 第1項の規定による優先権の主張をした者が第2項に規定する期間内に同項に規定する書類を提出しないときは、当該優先権の主張は、その効力を失う。
5 第2項に規定する書類に記載されている事項を電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。)によりパリ条約の同盟国の政府又は工業所有権に関する国際機関との間で交換することができる場合として経済産業省令で定める場合において、第1項の規定による優先権の主張をした者が、第2項に規定する期間内に、出願の番号その他の当該事項を交換するために必要な事項として経済産業省令で定める事項を記載した書面を特許庁長官に提出したときは、前2項の規定の適用については、第2項に規定する書類を提出したものとみなす。
6 特許庁長官は、第2項に規定する期間内に同項に規定する書類又は前項に規定する書面の提出がなかったときは、第1項の規定による優先権の主張をした者に対し、その旨を通知しなければならない。
7 前項の規定による通知を受けた者は、経済産業省令で定める期間内に限り、第2項に規定する書類又は第5項に規定する書面を特許庁長官に提出することができる。
8 第6項の規定による通知を受けた者がその責めに帰することができない理由により前項に規定する期間内に第2項に規定する書類又は第5項に規定する書面を提出することができないときは、前項の規定にかかわらず、経済産業省令で定める期間内に、その書類又は書面を特許庁長官に提出することができる。
9 第7項又は前項の規定により第2項に規定する書類又は第5項に規定する書面の提出があったときは、第4項の規定は、適用しない。
特許法43条1項の「経済産業省令で定める期間」は、以下のとおりである。
優先日(優先権主張書面を提出することにより優先日について変更が生じる場合には、変更前の優先日又は変更後の優先日のいずれか早い日。次号において同じ。)から1年4月の期間が満了する日又はこれらの規定による優先権の主張を伴う特許出願の日から4月の期間が満了する日のいずれか遅い日までの間(出願審査の請求又は出願公開の請求があった後の期間を除く。)(特許法施行規則27条の4の2第3項1号の一部抜粋)。
特許法第43条7項の「経済産業省令で定める期間」は、以下のとおりである。
特許法第43条第6項(同法第43条の2第2項(同法第43条の3第3項において準用する場合を含む。)及び第43条の3第3項において準用する場合を含む。)の規定による通知の日から2月とする。(特許法施行規則27条の3の3第5項の一部抜粋)。
<参考URL>
(特許庁:優先権書類の提出省略について(優先権書類データの特許庁間における電子的交換について))
https://www.jpo.go.jp/system/process/shutugan/yusen/das/index.html
2.シンガポールにおける特許出願の出願書類(パリルート)
(1)出願書類
所定の様式により作成した以下の書面を提出する。
・願書
・明細書
・特許請求の範囲
・必要な図面
・要約
・特許を受ける権利についての陳述書(様式8)を所定の期間内に提出
条文等根拠:特許法第25条(3)、第26条(1)、第24条(2)、特許規則第18条(1)、(1A)
シンガポール特許法第25条 出願手続
(3)各特許出願書類には、次のものを含めなければならないが、本項は、第26条(1)に従った書類による出願を妨げるものではない。
(a)特許付与を求める願書
(b)明細書、これに含まれる発明の説明、クレームおよび当該説明またはクレームにおいて言及される図面、ならびに
(c)要約
シンガポール特許法第26条 出願日
(1)本法の規定に従うことを条件として、特許出願の出願日は、出願を開始するために登録局に提出される書類が次の条件を満たす最初の日と解する。
(a)特許を求めていることが当該書類で示されていること
(b)当該書類で特許出願人が特定されること、ならびに
(c)当該書類に次のものが含まれていること
(i)当該特許出願を求める発明の説明となるか若しくは説明となると認められる事項、または
(ii)当該出願において若しくはそれに関連して第17条(2)に基づく宣言が行われている場合は、
(A)当該宣言で指定する先の関係出願の言及
(B)先の関係出願に関する所定の情報、および
(C)当該特許出願を求める発明の説明が、当該先の関係出願の引用により当該特許出願に組み入れられており、かつ、出願時での当該先の関係出願に完全に含まれている旨の陳述
「特許を受ける権利についての陳述書」は出願人と発明者が一致しない場合に提出する書類であって、出願人が、いかにして特許を受ける権利を有したかを示す陳述書であり、様式8により優先日から16か月以内に提出する必要がある。
シンガポール特許法第24条 発明者の明記
(2)特許出願人は,本項にいう情報を登録局に与えていない限り,所定の期間内に,
(a)発明者であると出願人が信じる者を特定し,かつ
(b)出願人が単独の発明者でなく又は複数出願人が共同発明者でない場合は,特許を付与されるべき権原を示す陳述書を登録局に提出しなければならず,
出願人がそれを怠るときは,当該出願は放棄されたものとして取り扱う。
シンガポール特許規則 第18条
(1)規則28並びに規則86(8)及び(8A)に従うことを条件として,第24条(2)適用上の所定の期間は,
(a)宣言された優先日が存在しない場合は,特許出願の出願日から16月,又は
(b)宣言された優先日が存在する場合は,当該宣言された優先日から16月,とする。
(1A)第24条(2)に基づいて提出する陳述書は,特許様式8によるものとする。
(2)手続言語
英語
(3)手続言語以外で記載された明細書での出願日確保の可否
特許規則上は認められる。
翻訳文の提出がない場合には、出願人にその旨の通知が行われ、2か月以内に翻訳文の提出が可能である。
条文等根拠:特許規則第19条(10)~(12)
シンガポール特許規則第19条 特許付与を求める出願
(10)(a)特許出願を開始するために登録局に提出された書類に、
(i)特許を求めている発明の説明である、もしくは説明であると認められる事項であって、
(ii)英語以外の言語によるものが含まれており、かつ
(b)出願人により当該事項の英語翻訳文が提出されていない場合は、
登録官は、当該事項の英語翻訳文が必要である旨を出願人に通知する。
(11)出願人は、(10)に基づいて通知を受けた場合は、当該通知の日付から2月以内に、当該事項の英語翻訳文を提出しなければならない。
(12)出願人が(11)に従わない場合は、登録官は、その特許出願を拒絶する。
(4)優先権主張手続
優先権主張を出願と同時に行う必要があるが、所定の場合には出願後に行うことができる(優先日から16か月以内)。優先権証明書は、特許庁より提出の要請があった場合には、要請の通知の日から2か月以内に提出する必要がある。
条文等根拠:特許法第17条、特許規則第9条、第9B条
シンガポール特許法第17条 優先日
(1)本法の適用上、特許出願に係わる発明の優先日および当該出願に含まれる何らかの事項(当該発明と同一であるか否かを問わない)の優先日は、本法の規定に定める場合を除き、当該出願の出願日とする。
(2)特許出願(本条において問題の出願という)においてまたはそれに関連して、出願人またはその前権利者が、規則の関連要件に従ってかつ当該出願人またはその前権利者により行われた1または2以上の先の関係出願を本条の適用上指定して宣言を行い、かつ、問題の出願が(2A)(a)または(b)にいう期間内に出願日を有する場合において、
(a)問題の出願の対象である発明が先の関係出願において開示された事項により裏付けられるときは、その発明の優先日は、問題の出願を行った日ではなく、当該事項が開示されていた関係出願の出願日とするか、または当該事項が2以上の関係出願で開示されていたときは、それらのうち最先の出願の出願日とし、
(b)問題の出願に含まれていて先の関係出願にも開示されていた事項の優先日は、当該事項が開示された先の関係出願の出願日とするか、または当該事項が2以上の関係出願で開示されていたときは、それらのうち最先の出願の出願日とする。
(2A)(2)の適用上、期間とは、
(a)指定された先の関係出願、もしくは関係出願が2以上あるときは、それらのうち最先のものの出願日直後12月の期間、または
(b)登録官が(2B)に基づく請求を認めた場合は、(a)にいう期間の直後に開始し、かつ、所定の期間の終了時に終了する期間、
をいう。
(2B)出願人は、登録官に対し、(2)にいう宣言を(2A)(a)にいう期間の経過後に行うことを請求することができる。
(2C)出願人が(2B)に基づく請求を行う場合において、問題の出願を(2A)(a)にいう期間内に行わなかったときは、問題の出願を(2A)(a)にいう期間内に行わなかったことが次の何れに該当するかを請求書中に示さなければならない。
(a)事情に応じて必要とされる当然の注意を払ったにも拘らず生じた。
(b)故意によるものではなかった。
(2D)登録官は、次の場合に、(2B)に基づく請求を認める。
(a)当該請求が所定の期間内に所定の方法で行われて、所定の要件を満たしており、かつ
(b)出願人が問題の出願を(2A)(a)にいう期間内に行わなかったときに、登録官が、出願人が問題の出願を(2A)(a)にいう期間内に行わなかったことが次の何れかに該当することを認めた場合
(i)事情に応じて必要とされる当然の注意を払ったにも拘らず生じた。
(ii)故意によるものではなかった。
シンガポール特許規則第9条 第17条(2)適用上の優先権の宣言
(1)(2)に従うことを条件として、特許出願(本条規則ならびに規則9Aおよび規則9Bにおいて「問題の出願」という)においてまたはこれと関連して行われる第17条(2)適用上の宣言は、問題の出願を行う時に行わなければならない。
(2)第17条(2)適用上の宣言は、次の場合は、出願日後に行うことができる。
(a)当該宣言を行うことにより、
(i)宣言された優先日を有さない問題の出願が優先日を有することになる場合、または
(ii)問題の出願の宣言された優先日がそれより前の日に繰り上げられることになる場合
(b)当該宣言を、
(i)(a)(i)が該当するときに、宣言された優先日から16月以内に行う場合、または
(ii)(a)(ii)が該当するときに、当該それより前の日から16月以内に行う場合
(c)当該宣言を特許様式57により行う場合
(d)所定の手数料を納付している場合、および
(e)(4)にいう条件を満たしている場合
シンガポール特許規則第9B条 第17条(2)に基づく宣言を裏付ける出願番号及び優先権書類の提出
(1)(3)に従うことを条件として,出願人は,宣言された優先日から16月の期間の終了前に,各優先出願の出願番号を登録局に提出しなければならない。
(2)(3)に従うことを条件として,出願人が優先出願に関して(1)に従わない場合は,第17条(2)適用上の宣言は,当該優先出願に関する限り無視される。
(3)当該出願が国際特許出願(シンガポール)である場合は,(1)及び(2)は,出願番号が特許協力条約に基づく規則の第4規則10(a)に従って表示されている優先出願に関しては適用されない。
(4)登録官が,出願人又は場合により所有者に送付する通知により,同人に対し,優先出願に関して,
(a)提出先の機関が認証している,又は
(b)それ以外で登録官が受理可能な,
優先出願の写しを登録局に提出するよう要求する場合は,出願人又は場合により所有者は,当該通知の日から2月以内に,
(i)登録官の要求に従うものとし,又は
(ii)当該優先出願の写しが登録局に保管されている場合は,登録官の要求に従う代わりに,(A)当該優先出願の写しが作成されるべき旨の請求書,及び
(B)作成された写しを認証するよう登録官に請求する様式CM12,
を提出しなければならない。
(5)出願人又は場合により所有者が優先出願に関して(4)に従わなかった場合は,第17条(2)適用上の宣言は,当該優先出願に関する限り,無視される。
日本とシンガポールにおける特許出願書類・手続の比較
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日本 |
シンガポール |
出願書類 |
所定の様式により作成した以下の書面を提出する。 ・願書 ・明細書 ・特許請求の範囲 ・必要な図面 ・要約書 |
所定の様式により作成した以下の書面を提出する。 ・願書 ・明細書 ・特許請求の範囲 ・必要な図面 ・要約 ・特許を受ける権利についての陳述書(様式8)を所定の期間内に提出 |
手続言語 |
日本語 |
英語 |
手続言語以外の明細書での出願日確保の可否 |
・可(英語その他の外国語)。 ・その特許出願の日から1年4か月以内に外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を提出しなければならない。 ・翻訳文の提出がない場合には、出願人にその旨の通知が行われ、2か月以内に翻訳文の提出が可能である。 |
・規則上は可能。 ・翻訳文の提出がない場合には、出願人にその旨の通知が行われ、2か月以内に翻訳文の提出が可能である。 |
優先権主張手続 |
・優先権主張の基礎となる出願国名と出願の年月日を記載した書面及び優先権証明書は、最先の優先権主張日から1年4か月以内に特許庁長官に提出しなければならない。 ・優先権証明書の提出がない場合には、出願人にその旨の通知が行われ、2か月以内に提出が可能である。 ・日本国特許庁と一部の外国特許庁、機関との間では、優先権書類の電子的交換を実施しており、出願人が所定の手続を行うことで、パリ条約による優先権主張をした者が行う必要がある書面(紙)による優先権書類の提出を省略することが可能となっている |
・優先権主張は、原則、出願と同時に行う。所定の場合には出願後に行うことができる(優先日から16か月以内)。 ・優先権証明書は、特許庁より要請があった場合は、通知から2か月以内に提出しなければならない。 |
その他 |
(シンガポールにおける「特許を受ける権利についての陳述書」に相当する書類の提出は不要。) |
「特許を受ける権利についての陳述書」は出願人と発明者が一致しない場合に提出する書類であって、出願人が、いかにして特許を受ける権利を有したかを示す陳述書であり、様式8により優先日から16か月以内に提出する必要がある。 |
■本文書の作成者
ナガトアンドパートナーズ■協力
日本国際知的財産保護協会■本文書の作成時期
2019.1.31