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シンガポールにおける特許法改正の概要(2014年2月14日施行、2017年10月30日一部改正)

2019年10月15日

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  • 特許・実用新案

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■概要
シンガポールでは、改正特許法が2012年7月10日に成立し、2014年2月14日に施行された。同改正により、自己査定型の特許制度(self-assessment patent system)から肯定的結果に基づく付与制度(positive grant system)へシフトし、シンガポール知的財産局が発行する審査内容に関する報告書が肯定的な出願のみが特許を付与されることになった。その後、特許法および規則が2017年10月30日に改正(補充審査廃止)され、2020年1月1日以降の出願から補充審査の制度は利用できなくなる。
■詳細及び留意点

 シンガポールでは改正特許法が2012年7月10日に成立し、シンガポール知的財産庁によって草案は公告され、2014年2月14日から施行された。以下にその概要を説明し、さらに2017年に改正があった点についても言及する。

 

(1)重要な改正点

 重要な改正点は、自己査定型の特許制度(self-assessment patent system)から肯定的結果に基づく付与制度(positive grant system)へシフトしたことである。

 

 改正前は、出願した発明が新規性等の特許要件を満たしているかの判断は審査官ではなく、出願人が自ら行って登録が認められる自己査定型の特許制度であったため、実際には新規性等の特許要件を具備しない発明にも特許が付与されていた。これは、シンガポール知的財産局が独自の調査および審査能力を有していなかったという事情からであった。

 

 改正特許法においては、出願人の請求に基づいてシンガポール知的財産局が発行する審査内容に関する報告書が肯定的な出願にのみ、特許を付与することになった。また、「スロー/ファストトラック」システム(“slow/fast-track”prosecution system)も改正され、「ファスト」または「スロー」の選択肢のない単一のトラックシステムに統合された。

同時に、シンガポール知的財産局は上記改正を考慮して、有効な調査および審査能力の構築を提案した。

 

(i)「肯定的結果に基づく付与制度」および新たなタイムライン

 改正特許法の下で出願人が利用可能な審査手続は、以下の4つである(シンガポール特許法第29条(1)、特許規則38(2)、43)。

 

 (a)調査とその後の審査

 この場合、出願日(優先日)から13か月以内に調査を請求し、調査報告書に基づいて出願日(優先日)から36か月以内に審査請求を行う。

 

 (b)調査および審査

 この場合、出願日(優先日)から36か月以内に調査および審査の請求を行う。

 

 (c)対応する出願(corresponding application)、対応する国際出願(corresponding international application)、関連する国内段階の出願(related national phase application)の調査報告書を基礎とした審査。この場合、出願日(優先日)から36か月以内に審査請求を行う。

 なお、「対応する出願」および「対応する国際出願」とは、オーストラリア、カナダ(英語による出願のみ)、日本、ニュージーランド、韓国、英国、米国の特許庁および欧州特許庁(英語による出願のみ)へなされた出願または特許協力条約に基づきなされた出願であり、(ア)出願人のシンガポールにおける出願の優先権の主張の基礎となる出願、(イ)出願人のシンガポールにおける出願に基づき優先権を主張する出願、(ウ)出願人のシンガポールにおける出願と同じ出願を基礎として優先権を主張する出願をいう。「関連する国内段階の出願」とは、「対応する出願」と同様の国の特許庁等へなされたPCT出願に基づく出願であり、シンガポール国内段階へ移行した出願をいう(同法第2条(1)、特許規則41)。

 

 (d)対応する出願、対応する国際出願、関連する国内段階の出願の最終審査結果を基礎とした補充審査(supplementary examination)

 2014年改正前は、対応する出願の最終審査結果に依拠することを選択することができたが、2014年の改正により、対応する出願の最終審査結果を利用する場合についても、シンガポール知的財産局における審査(補充審査)が行われることとなった。この場合、出願日(優先日)から54か月以内に補充審査の請求を行う。

 

 上記(a)~(d)について、審査官による審査内容(判断結果)に関する報告書((a)(b)(c)の場合は審査報告書(examination report)、(d)の場合は補充審査報告書(supplementary examination report)と呼ばれる)が拒絶理由を含んでいない場合に、登録官により「特許付与適格通知(Notice of Eligibility to Proceed to Grant)」が発行される。その後、出願人は特許付与に関する費用の支払手続に入る。

 

 審査報告書または補充審査報告書が1またはそれ以上の拒絶理由を含んでいる場合は、登録官により「出願拒絶を意図する通知」が発行される。この場合、出願人は拒絶理由を克服する提案を記載した書面を含む所定の書式を提出し、可能な場合には同時に修正し、審査報告書または補充審査報告書の再審理を要求する。その後、再審理が完了し、登録官により拒絶理由がないと判断された場合は「適格性通知」が発行される。再審理を経ても拒絶理由があると判断された場合は、「拒絶通知」が発行される。

 

 その後、2017年特許法第29条および特許規則43の改正により2020年1月1日以降の出願には補充審査は利用できなくなることとなった。

 

シンガポール特許法

第29条 調査及び審査

(1)特許出願(本項において「当該出願」という)に係る出願人は,所定の期間内に,以下の項のうちの1つに従うこと。

(d)(11A)に関して,所定の様式で補充審査報告書を求める所定の文書と請求書を提出する。ただし

(i)出願人が以下の最終的な報告に依拠する場合,

(A)対応する出願,対応する国際出願又は関連国内段階出願の実体審査,若しくは

(B)国際段階における当該出願の実体審査(当該出願が第86条(3)に基づいて国内段階に移行した国際特許出願(シンガポール)である場合)

(ii)当該出願における各クレームが,少なくとも対応する出願,対応する国際出願又は関連する国内段階出願若しくは国際段階における当該出願におけるクレームの1つに関連する。及び

(iii)これらの結果により,当該出願における各クレームが新規性,進歩性(又は非自明性),産業上の利用可能性(又は有用性)の要件を満足する。

 

(10)(1)の規定に拘わらず,出願人が(1)(c)若しくは(3)に基づく審査報告書の請求又は(1)(b)に基づく調査及び審査報告書の請求を提出している場合は,出願人は次の対応をすることができる。

(b) (11A)に従うことを条件として,(1)(d)に基づく補充審査報告書の請求を,その請求のための所定の期間内に提出すること

 

(11A)(1)(d)及び(10)(b)は,次の場合を除いて適用されない。

(a)当該出願が第20条(3),第26条(11)又は第47条(4)にいう新規出願である場合-当該出願 の実際の出願日が所定の日より前である,又は

(b)その他の場合-当該出願の出願日が所定の日より前である。

 

シンガポール特許規則

規則43 調査及び審査報告の請求,審査報告の請求又は補充審査報告の請求の提出期間

(4) 第29条(11A)(a)及び(b)の所定の日は2020年1月1日

 

 (ii)2014年改正以前のシステムとの手続上の相違点

上記に記載した(a)から(d)の審査の選択肢は、これまでの自己査定型システムにおいても既に利用できたものである。このうち、選択肢(a)~(c)は、審査報告書に加えて「適格性通知」も発行されるようになったこと以外、大部分は同様のシステムが残っている。これに対し、選択肢(d)については、上記(1)(i)(d)で述べた通り、新しいシステムに移行したことで、「適格性通知」発行のために、補充審査の申請を新たに行うことが必要になった。

PCT出願に基づき所定の特許庁(上記(1)(i)(c)記載の特許庁)の国内段階に移行した出願/特許は、シンガポールに国内移行した出願/特許に対して「関連する国内段階の出願/特許」と定義されるに至った。これにより、改正前は共通する優先権主張によって関連づけられた「対応する出願」、「対応する国際出願」の調査報告書および審査報告書のみが上記の選択肢(c)および(d)において使用されていたが、当該「関連する国内段階の出願」から得られた調査報告書も、上記の選択肢(c)において利用可能となった。また、当該「関連する国内段階の出願」から得られた審査報告書も、上記の選択肢(d)において利用可能となった(同法第29条(1)(c)、(d)、規則41)。

 

(2)その他の留意すべき改正(2014年)

(i)付与後調査および審査の削除

 付与後調査および審査の規定(改正前第38A条)が削除された。

 

(ii)失効した特許の回復のための基準の引き下げ

 失効した特許について、更新料の支払いを失念したことにつき故意がないと登録官が認めた場合に、回復され得ることとされた(第39条)。2014年改正前は、登録官は権利者が更新料の支払いにつき「所定の期間内に納付されるよう適切な注意を払っていた」と認められることが必要であった。

 

【留意事項】

 2014年改正法は、2014年2月14日以降に出願される特許に適用されている。シンガポールでは、改正前は、自己査定型の特許制度であったため、実際は特許要件を満たさないものでも特許が付与されていたが、2014年改正によって、シンガポール知的財産局が発行する審査内容に関する報告書が肯定的な出願のみが特許を付与されることになった点に、留意が必要である。

また、対応する外国出願の最終審査結果を基礎とした出願の場合についても、補充審査の請求が必要になっている点にも留意すべきである。

ただし、補充審査は2017年10月30日の特許法および特許規則の一部改正により2020年1月1日以降の出願では利用できなくなる。

■ソース
・Patents Infopack by Intellectual Property Office of Singapore (IPOS)
https://www.ipos.gov.sg/docs/default-source/resources-library/patents/infopacks/patents-infopack-(final)_25042017.pdf ・模倣対策マニュアル シンガポール編(2012年3月、日本貿易振興機構)7頁
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/jpowp/wp-content/uploads/2013/09/1a888e0d4e8da846dd617f27ccbf9614.pdf ・特許法および規則改正(2017年10月30日施行)(Circular No.7/2017, dated 6 October 2017)
https://www.ipos.gov.sg/docs/default-source/resources-library/patents/circulars/(2017)-circular-no-7---amendment-to-patents-act-and-rules-to-enter-into-force-on-30-october-2017.pdf ・シンガポール特許法
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/singapore-tokkyo.pdf ・シンガポール特許規則
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/singapore-tokkyo_kisoku.pdf ・シンガポール特許法改正に伴う外国ルート(修正実体審査)の廃止について
https://www.jpo.go.jp/news/kokusai/sg/foreign_route.html
■本文書の作成者
日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期
2019.06.24
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