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日本とシンガポールにおける意匠の新規性喪失の例外に関する比較

2019年10月10日

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■概要
シンガポールにおける意匠出願の新規性喪失の例外規定の適用要件は、意匠法第8条及び第8A条に規定されている。2017年改正意匠法第6条の施行日(2017年10月30日)以降に生じた開示については、公開から12か月以内(従来は6か月)に出願することを条件として、新規性喪失の例外を主張することが可能である。日本における意匠出願の新規性喪失の例外期間は平成30年改正意匠法により延長され、公開から1年以内(従来は6か月)となった。
■詳細及び留意点

日本における意匠出願の新規性喪失の例外

 日本においては、新規性を喪失した意匠の救済措置として、新規性喪失の例外規定が定められている。新規性喪失の例外規定の適用要件は以下のとおりである。

 

1 出願に係る意匠が、意匠登録を受ける権利を有する者(創作者または承継人)の意に反して公開されたこと(第4条第1項)または

2 出願に係る意匠が、意匠登録を受ける権利を有する者(創作者または承継人)の行為に基づいて公開されたこと(第4条第2項)

 

 上記いずれの場合についても、以下の要件を満たす必要がある。

 

(1)意匠登録を受ける権利を有する者が意匠登録出願をしていること

(2)意匠が最初に公開された日から1年以内に意匠登録出願をしていること

 

 なお第4条第2項に記載される自己の行為に基づく新規性喪失については、さらに以下の手続が必要となる。

 

(3)出願時に、意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする旨を記載した書面を提出、あるいは願書にその旨を記載すること(第4条第3項)。

(4)出願の日から30日以内に、公開された意匠が新規性喪失の例外規定の適用を受けることができる意匠であることを証明する「証明書」を証明書提出書とともに提出すること(第4条第3項)。平成26年改正により、意匠法第4条第4項が追加され、証明書提出者がその責めに帰することができない理由により30日以内に証明書を提出できない場合の救済措置の拡充が図られている。

 

 「証明書」には、意匠が公開された事実(公開日、公開場所、公開された意匠の内容等)とともに、その事実を客観的に証明するための署名等を記載することが必要である。なお、第三者によらず、出願人自身が署名・捺印したものであっても一定の証明力があるものとして許容される*)。

*)「意匠審査基準の改訂」、p115脚注(https://www.jpo.go.jp/news/shinchaku/event/seminer/text/document/isho_text_h29/shiryou_02.pdf

 上記要件を満たした場合、その意匠登録出願に限り、その公開意匠は公知の意匠ではないとみなされる。

 

条文等根拠:日本意匠法第4条

 

日本意匠法 第4条 意匠の新規性の喪失の例外

第四条 意匠登録を受ける権利を有する者の意に反して第三条第一項第一号または第二号に該当するに至った意匠は、その該当するに至った日から一年以内にその者がした意匠登録出願に係る意匠についての同項および同条第二項の規定の適用については、同条第一項第一号または第二号に該当するに至らなかったものとみなす。

 

2 意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して第三条第一項第一号または第二号に該当するに至った意匠(発明、実用新案、意匠または商標に関する公報に掲載されたことにより同項第一号または第二号に該当するに至ったものを除く。)も、その該当するに至った日から一年以内にその者がした意匠登録出願に係る意匠についての同項および同条第二項の規定の適用については、前項と同様とする。

 

3 前項の規定の適用を受けようとする者は、その旨を記載した書面を意匠登録出願と同時に特許庁長官に提出し、かつ、第三条第一項第一号または第二号に該当するに至った意匠が前項の規定の適用を受けることができる意匠であることを証明する書面(次項において「証明書」という。)を意匠登録出願の日から三十日以内に特許庁長官に提出しなければならない。

 

4 証明書を提出する者がその責めに帰することができない理由により前項に規定する期間内に証明書を提出することができないときは、同項の規定にかかわらず、その理由がなくなった日から十四日(在外者にあつては、二月)以内でその期間の経過後六月以内にその証明書を特許庁長官に提出することができる。

 

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シンガポールにおける意匠出願の新規性喪失の例外

 2017年10月の改正により、意匠の新規性喪失の例外規定の適用範囲および適用期間が従来の6か月から12か月に拡大された。従来は適用対象外であった意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因する公知についても、例外規定を適用すべく、意匠法第8A条が追加された。改正法の適用対象は、改正法の施行日(2017年10月30日)以降に公知となった意匠である。

 

条文等根拠:シンガポール意匠法第8条、第8A条、意匠規則17

 

シンガポール意匠法 第8条 特定の日より前の意匠の開示等

8.―(1)本条(2A)項に該当する場合、以下の理由のみでは、シンガポール意匠登録出願は拒絶されることはなく、また、シンガポール登録意匠が無効とされることはない。

(a)所有者から第三者になされた意匠の開示であって、その第三者による意匠の使用または開示が信義則に反するとされるような状況でなされた開示

(b)所有者以外の第三者により信義則に反してなされた意匠の開示

(c)意匠登録を受けようとする意匠が新規のまたは独創的な織物の意匠の場合は、その意匠を付した商品に対する最初の機密の注文の受領

(d)所有者による政府省庁もしくは庁への、または政府省庁もしくは庁により権限を与えられた審査を行う者への意匠の伝達、またはその伝達の結果なされた事項

 

(2)本条(2A)項に該当する場合、以下の理由のみでは、シンガポール意匠登録出願は拒絶されることはなく、また、シンガポール登録意匠が無効とされることはない。

(a)意匠の表示または意匠が用いられた物品が、意匠の所有者の同意を得て、国際的な博覧会で展示されたこと

(b)(a)に規定する展示後および博覧会の開催中に、意匠の表示または意匠が用いられた物品が、所有者の同意を得ずに、第三者によって展示されたこと

(c)(a)に規定する展示が行われたがゆえに、意匠の表示が公表されたこと

ただし、シンガポール意匠登録出願が、博覧会開催後6か月以内になされたことを条件とする。

 

(2A)本条は以下の場合に適用する;

(a)本条(1)項(a)または(b)に該当する開示,

(b)本条(1)項(c)に該当する受領,

(c)本条(1)項(d)に該当する伝達、またはその伝達の結果なされた事項,

(d)本条(2)項(a)または(b)に該当する展示,または

(e)本条(2)項(c)に該当する公表

であって、2017年意匠法改正法第6条の施行日以前に生じたもの。

 

(3)本条において、「国際的な博覧会」とは、公式のまたは公式的に認められた国際博覧会で、1928年11月22日にパリで署名された国際博覧会条約の用語、および随時改正または修正される同条約の議定書に該当するものを意味する。

 

シンガポール意匠法 第8A条 特定の日以降の意匠の開示

8A.―(1)以下の理由のみでは、シンガポール意匠登録出願は拒絶されることはなく、また、シンガポール登録意匠が無効とされることはない。

(a)意匠の創作者、または創作者の承継人以外の者に対する意匠の開示であって、秘密保持を条件とする場合(明示的にまたは黙示の場合),

(b)意匠の創作者、または創作者の承継人による意匠の開示であって、意匠出願前12か月以内に行われた場合,

(c)意匠の創作者、または創作者の承継人以外の者による意匠の開示であって、意匠の創作者、または創作者の承継人による情報の提供の結果としてまたはその他の行為により、意匠出願前12か月以内に行われた場合, または

(d)意匠の開示であって、意匠出願前12か月以内に、意匠の創作者、または創作者の承継人に対する濫用(abuse)の結果として行われた場合。

 

(2)本条は、本条(1)項(a),(b),(c),および(d)において言及する開示であって、2017年意匠法改正法第7条の施行日以降に生じたものについてのみ適用する。

 

シンガポール意匠規則 17 機密の開示に関する陳述

17.―(1)出願人は、自己の出願に対して意匠法第8条、8A条、または8B条の適用を受けようとする場合は、願書にその旨の陳述を記載する。

 

(2)陳述は次のとおりとする―

(a)自己の出願において以下の内容を特定する―

(i)本条第(1)項に該当する意匠;および

(ii)上記意匠へ適用する意匠法第8条、8A条、または8B条の特定

(b)開示に関する日付を含め、意匠の開示が行われた状況を説明し;そして

(c)出願人が意匠法第8条第(2)項を出願に対して適用することを求める場合、博覧会の名称、開催日、開催場所、および意匠の最初の開示日。

 

(3)出願人は、自己の主張を裏付ける追加の情報または書類を提出することができる。

 

 2017年改正意匠法第6条の施行日より前に生じた開示については、第8条が適用され、第8条(1)に該当する開示の後(期間制限はない)、または第8条(2)に該当する博覧会閉会後6か月以内に意匠を出願すれば、新規性は喪失しない。

 

 2017年改正意匠法第6条の施行日以降に生じた開示については、第8A条が適用され、第8A条(1)(a)に該当する開示の後(期間制限はない)、または第8A条(1)(b)~(d)に該当する開示から12か月以内に意匠を出願すれば、新規性は喪失しない。

 

日本とシンガポールにおける意匠の新規性喪失の例外に関する比較

 

日本

シンガポール

新規性喪失の例外の有無

例外期間

公開日から1年

開示日から12か月

公知行為の限定

公知行為とは見做されない公開

1.出願に係る意匠が、意匠登録を受ける権利を有する者(創作者または承継人)の意に反して公開されたこと

2.出願に係る意匠が、意匠登録を受ける権利を有する者(創作者または承継人)の行為に基づいて公開されたこと

1.意匠登録を受ける権利を有する者(創作者または承継人)以外の者による意匠の開示であって、意匠登録を受ける権利を有する者による情報の提供の結果等により開示された場合

2.意匠登録を受ける権利を有する者(創作者または承継人)により開示された場合

証明する書面(証明書)

公開の事実等を記載した証明書を提出する必要がある

証明書の提出は不要である

■ソース
・日本意匠法
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=334AC0000000125 ・2017改正シンガポール意匠法(第266章)
https://sso.agc.gov.sg/Act/RDA2000 ・シンガポール意匠規則2017修正2版(REGISTERED DESIGNS (AMENDMENT NO. 2) RULES 2017)
https://sso.agc.gov.sg/SL/RDA2000-R1?DocDate=20171006&ValidDate=20171030 ・シンガポール知的財産庁による2017年10月30日施行の意匠関連法改正に関する通達 (Circular No. 6/2017, dated 6 October 2017)
https://www.ipos.gov.sg/docs/default-source/resources-library/design/circulars/2017/(2017)-circular-no-6---designs-related-legislative-amendments-to-enter-into-force-on-30-october-2017.pdf
■本文書の作成者
ナガトアンドパートナーズ
■協力
日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期
2018.12.20
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