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日本と中国における特許分割出願に関する時期的要件の比較

2019年10月08日

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■概要
(本記事は、2024/12/3に更新しています。)
 URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/40020/

⽇本と中国においては、それぞれ所定の期間、特許出願について分割出願を行うことができる。ただし、中国においては、原出願からの分割出願を更に分割する場合には、原則、原出願に基づく時期的要件を満たす場合にのみ可能であるとの制限がある。
■詳細及び留意点

<日本における特許出願の分割出願に係る時期的要件>

 

 特許法第44条は、特許出願の分割に関する規定であり、下記の(1)~(3)のいずれかの時または期間内であれば分割出願することができる。

 

(1) 願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる時または期間内(第44条第1項第1号)

 なお、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について、補正をすることができる時または期間は、次の(i)~(iv)である。

 (i) 出願から特許査定の謄本送達前(拒絶理由通知を最初に受けた後を除く)(第17条の2第1項本文)

 (ii) 審査官(審判請求後は審判官も含む。)から拒絶理由通知を受けた場合の、指定応答期間内(第17条の2第1項第1号、第3号)

 (iii) 拒絶理由通知を受けた後第48条の7の規定による通知を受けた場合の、指定応答期間内(第17条の2第1項第2号)

 (iv) 拒絶査定不服審判請求と同時(第17条の2第1項第4号)

 

(2) 特許査定(次の(i)および(ii)の特許査定を除く)の謄本送達後30日以内(第44条第1項第2号)

 (i) 前置審査における特許査定(第163条第3項において準用する第51条)

 (ii) 審決により、さらに審査に付された場合(第160条第1項)における特許査定

 なお、特許「審決」後は分割出願することはできない。また、上記特許査定の謄本送達後30日以内であっても、特許権の設定登録後は、分割出願することはできない。また、(2)に規定する30日の期間は、第4条または第108条第3項の規定により第108条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなされる(第44条第5項)。

 

(3) 最初の拒絶査定の謄本送達後3月以内(第44条第1項第3号)

 (3)に規定する3か月の期間は、第4条の規定により第121条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなされる(第44条第6項)。

条文等根拠:特許法第44条

 

日本特許法 第44条(特許出願の分割)

 特許出願人は、次に掲げる場合に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる。

 一 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる時又は期間内にするとき。

 二 特許をすべき旨の査定(第百六十三条第三項において準用する第五十一条の規定による特許をすべき旨の査定及び第百六十条第一項に規定する審査に付された特許出願についての特許をすべき旨の査定を除く。)の謄本の送達があつた日から三十日以内にするとき。

 三 拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があつた日から三月以内にするとき。

2 前項の場合は、新たな特許出願は、もとの特許出願の時にしたものとみなす。ただし、新たな特許出願が第二十九条の二に規定する他の特許出願又は実用新案法第三条の二に規定する特許出願に該当する場合におけるこれらの規定の適用及び第三十条第三項の規定の適用については、この限りでない。

3 第一項に規定する新たな特許出願をする場合における第四十三条第二項(第四十三条の二第二項(前条第三項において準用する場合を含む。)及び前条第三項において準用する場合を含む。)の規定の適用については、第四十三条第二項中「最先の日から一年四月以内」とあるのは、「最先の日から一年四月又は新たな特許出願の日から三月のいずれか遅い日まで」とする。

4 第一項に規定する新たな特許出願をする場合には、もとの特許出願について提出された書面又は書類であって、新たな特許出願について第三十条第三項、第四十一条第四項又は第四十三条第一項及び第二項(これらの規定を第四十三条の二第二項(前条第三項において準用する場合を含む。)及び前条第三項において準用する場合を含む。)の規定により提出しなければならないものは、当該新たな特許出願と同時に特許庁長官に提出されたものとみなす。

5 第一項第二号に規定する三十日の期間は、第四条又は第百八条第三項の規定により同条第一項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。

6 第一項第三号に規定する三月の期間は、第四条の規定により第百二十一条第一項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。

7 第一項に規定する新たな特許出願をする者がその責めに帰することができない理由により同項第二号又は第三号に規定する期間内にその新たな特許出願をすることができないときは、これらの規定にかかわらず、その理由がなくなった日から十四日(在外者にあっては、二月)以内でこれらの規定に規定する期間の経過後六月以内にその新たな特許出願をすることができる。

 

 

 

<中国における特許出願の分割出願の時期的要件>

 

1.出願係属中および出願人が特許査定通知を受領した日から2月(すなわち登録手続きの期限)の期間が満了するまで分割出願可能

2.拒絶査定通知を受領した日から3か月以内であれば、不服審判請求提出後、または不服審判に対する審決取消訴訟期間中でも分割出願可能

3.二次分割出願をする場合、原出願の時期的要件が上記1、2を満たさなければ、一次分割出願がそれを満たしていても、分割出願が認められない。ただし、一次分割出願に単⼀性の不備があるため、出願⼈が審査官の拒絶理由通知書に基づき再度分割出願をする場合は例外とする

 

 原出願からの分割出願(一次分割出願)から更に分割出願(二次分割出願)をする場合、その二次分割出願の時期的要件は、原出願に基づいて審査される。すなわち、二次分割出願の出願日が原出願に基づいた上記時期的要件が満たされない場合には、一次分割出願が出願係属中であっても分割出願することができない。

 ただし、一次分割出願の単一性の欠陥を審査意見通知書で指摘された場合に、その審査意見に基づいて再度分割出願することはできる。

 

条文等根拠:専利法実施細則第42条、専利法実施細則第54条、専利審査指南第1部分第1章5.1.1.(3)

 

※専利法実施細則とは日本における特許法施行規則に相当。専利審査指南とは日本における特許・実用新案審査基準に相当。

 

中国専利法実施細則 第42条

 一つの特許出願に二つ以上の発明、実用新案または意匠が含まれる場合、出願人は本細則第54条第1項に規定する期限が満了するまでに、国務院特許行政部門に分割出願を申し出ることが出来る。但し、特許出願が既に却下され、取り下げられまたは見なし取り下げとされた場合、分割出願を申し出ることは出来ない。

 国務院特許行政部門は、一つの特許出願が専利法第31条と本細則第34条または第35条の規定に合致しないと考える場合、指定期限内にその出願について補正を行なうよう出願人に通知しなければならない。期限が満了になっても出願人が回答しない場合、当該出願が取り下げられたものと見なす。

 分割出願は元の出願の類別を変更してはならない。

 

中国専利法実施細則 第54条

 国務院特許行政部門が特許権を付与する旨の通知を出した後、出願人は通知を受領した日より起算して2ヶ月以内に登録手続きを取らなければならない。出願人が期限内に登録手続きを取った場合、国務院特許行政部門は特許権を付与し、特許証を交付し、公告しなければならない。

 期限が満了になっても登録手続きを取らない場合、特許権を取得する権利を放棄したものと見なす。

 

専利審査指南第1部分第1章5.1.1.(3) 分割出願の提出日

 出願人は、専利局から原出願に対して専利権を付与する旨の通知書を受領した日より2ヶ月の期間(即ち登録手続きの期限)の経過前までに分割出願を提出しなければならない。前記期限が満了した後、或いは原出願が却下され、或いは原出願が取り下げられ、又は原出願が取下げとみなされかつその権利が回復されなかった場合は、一般的に分割出願を再び提出することができない。

 審査官により却下査定がなされた原出願に対して、出願人は却下査定を受領した日より3ヶ月以内に、復審請求の有無に拘わらず分割出願を提出することができる。復審請求の提出後および復審決定を不服とし、行政訴訟を提起している期間中でも、分割出願を提出することができる。

 方式審査において、分割出願の提出日が前記の規定に合致しない場合、審査官は分割出願が未提出とみなす通知書を発行し案件終了の処理を行う。

 出願人が分割出願した出願について更に分割出願を提出する場合、再度提出される分割出願の提出時間は、依然として原出願を基に審査する。再分割出願の出願日が上記の規定に合致しない場合、分割出願をすることができない。

 ただし、分割出願に単一性の欠陥があるため、出願人が審査官の審査意見に基づき再度分割出願をする場合は例外とする。このような例外の場合、出願人は再度分割出願をすると同時に、単一性の欠陥が指摘された審査官による審査意見通知書または分割通知書のコピーを提出しなければならない。上記規定に合致した審査意見通知書または分割通知書のコピーを提出しなかった場合は、例外として取り扱うことができない。上記規定を満たさないものに対して、審査官は補正通知書を発行し、出願人に補正するよう通知しなければならない。期間が経過しても補正されない場合、審査官は取下げとみなす通知書を発行する。出願人が補正した後も尚規定に合致しない場合、審査官は分割出願が未提出とみなす通知書を発行し案件終了の処理を行う。

 

日本と中国における特許分割出願に関する時期的要件の比較

 

日本

中国

分割出願の時期的要件

1.補正ができる時または期間

(i)出願から特許査定の謄本送達前(拒絶理由通知を最初に受けた後を除く)

(ii)審査官から拒絶理由通知を受けた場合の指定応答期間内

(iii)拒絶理由通知を受けた後第48条の7の規定による通知を受けた場合の指定応答期間内

(iv)拒絶査定不服審判請求と同時

 

2.特許査定の謄本送達後30日以内(以下の(i)(ii)の特許査定を除く)

(i)前置審査における特許査定

(ii)審決により、審査に付された場合における特許査定

 

3.最初の拒絶査定の謄本送達後3月以内

 

1.出願係属中および出願人が特許査定通知を受領した日から2月(すなわち登録手続きの期限)の期間が満了するまで分割出願可能

 

2.拒絶査定通知を受領した日から3月以内であれば、不服審判請求提出後、または不服審判に対する審決取消訴訟期間中でも分割出願可能

 

3.二次分割出願をする場合、原出願の時期的要件が上記1、2を満たさなければ、一次分割出願がそれを満たしていても、分割出願が認められない

(ただし、一次分割出願の単⼀性の不備による審査官の拒絶理由通知書に基づく再度の分割出願をする場合は例外)

■ソース
・特許法
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=334AC0000000121 ・中国専利法実施細則(日本語訳)
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/admin/20100201.pdf ・中国専利審査指南(日本語訳)
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/section/20100201.pdf
■本文書の作成者
日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期

2018.12.19

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