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日本とロシアにおける特許分割出願に関する時期的要件の比較

2019年09月19日

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  • 特許・実用新案

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■概要
日本およびロシアにおいては、それぞれ所定の期間、特許出願について分割出願を行うことができる。ロシアにおいては、(1)原出願が取り下げられていないこと(取下とみなされていないこと)、(2)原出願について、拒絶査定に対する不服申立期間が満了していないこと、(3)原出願に係る特許が登録されていないこと、のいずれかの条件において、分割出願を行うことができる。
■詳細及び留意点

<日本における特許出願の分割出願に係る時期的要件>

 

 特許法第44条は、特許出願の分割に関する規定であり、下記の(1)~(3)のいずれかの時または期間内であれば分割出願することができる。

 

(1) 願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる時または期間内(第44条第1項第1号)

 なお、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について、補正をすることができる時または期間は、次の(i)~(iv)である。

 (i) 出願から特許査定の謄本送達前(拒絶理由通知を最初に受けた後を除く)(第17条の2第1項本文)

 (ii) 審査官(審判請求後は審判官も含む。)から拒絶理由通知を受けた場合の、指定応答期間内(第17条の2第1項第1号、第3号)

 (iii) 拒絶理由通知を受けた後第48条の7の規定による通知を受けた場合の、指定応答期間内(第17条の2第1項第2号)

 (iv) 拒絶査定不服審判請求と同時(第17条の2第1項第4号)

 

(2) 特許査定(次の(i)および(ii)の特許査定を除く)の謄本送達後30日以内(第44条第1項第2号)

 (i) 前置審査における特許査定(第163条第3項において準用する第51条)

 (ii) 審決により、さらに審査に付された場合(第160条第1項)における特許査定

 なお、特許「審決」後は分割出願することはできない。また、上記特許査定の謄本送達後30日以内であっても、特許権の設定登録後は、分割出願することはできない。また、(2)に規定する30日の期間は、第4条または第108条第3項の規定により第108条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなされる(第44条第5項)。

 

(3) 最初の拒絶査定の謄本送達後3月以内(第44条第1項第3号)

 (3)に規定する3か月の期間は、第4条の規定により第121条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなされる(第44条第6項)。

条文等根拠:特許法第44条

 

日本特許法 第44条(特許出願の分割)

 特許出願人は、次に掲げる場合に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる。

 一 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる時又は期間内にするとき。

 二 特許をすべき旨の査定(第百六十三条第三項において準用する第五十一条の規定による特許をすべき旨の査定及び第百六十条第一項に規定する審査に付された特許出願についての特許をすべき旨の査定を除く。)の謄本の送達があつた日から三十日以内にするとき。

 三 拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があつた日から三月以内にするとき。

2 前項の場合は、新たな特許出願は、もとの特許出願の時にしたものとみなす。ただし、新たな特許出願が第二十九条の二に規定する他の特許出願又は実用新案法第三条の二に規定する特許出願に該当する場合におけるこれらの規定の適用及び第三十条第三項の規定の適用については、この限りでない。

3 第一項に規定する新たな特許出願をする場合における第四十三条第二項(第四十三条の二第二項(前条第三項において準用する場合を含む。)及び前条第三項において準用する場合を含む。)の規定の適用については、第四十三条第二項中「最先の日から一年四月以内」とあるのは、「最先の日から一年四月又は新たな特許出願の日から三月のいずれか遅い日まで」とする。

4 第一項に規定する新たな特許出願をする場合には、もとの特許出願について提出された書面又は書類であって、新たな特許出願について第三十条第三項、第四十一条第四項又は第四十三条第一項及び第二項(これらの規定を第四十三条の二第二項(前条第三項において準用する場合を含む。)及び前条第三項において準用する場合を含む。)の規定により提出しなければならないものは、当該新たな特許出願と同時に特許庁長官に提出されたものとみなす。

5 第一項第二号に規定する三十日の期間は、第四条又は第百八条第三項の規定により同条第一項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。

6 第一項第三号に規定する三月の期間は、第四条の規定により第百二十一条第一項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。

7 第一項に規定する新たな特許出願をする者がその責めに帰することができない理由により同項第二号又は第三号に規定する期間内にその新たな特許出願をすることができないときは、これらの規定にかかわらず、その理由がなくなった日から十四日(在外者にあっては、二月)以内でこれらの規定に規定する期間の経過後六月以内にその新たな特許出願をすることができる。

 

 

 

<ロシアにおける特許出願の分割出願の時期的要件>

 

 ロシアにおいて、特許出願を分割して出願するためには、以下のいずれかの要件を満たす必要がある(民法第1381条第4項)。

(1) 原出願が取り下げられていないこと(取下げとみなされていないこと)

(2) 原出願について、拒絶査定に対する不服申立期間が満了していないこと

(3) 原出願について特許付与の査定がなされた場合、原出願に係る特許が登録されていないこと

 上記「取下げとみなされていないこと」に対して、「取下げとみなされる」状況とは、以下の点が考えられる。

(A)実体審査請求期限(出願から3年以内(2月の延長可))までに、実体審査請求がなされない場合(民法第1386条第1項)

(B)指令書に対する応答期限(3月以内(10月の延長可))までに、出願人が応答しない場合(民法第1386条第6項)

(C)審査結果通知に対する応答期限(6月以内)までに、出願人が応答しない場合(民法第1387条第1項、民法第1387条第2項)

(D)登録料納付期限(6月以内)までに、出願人が登録料を納付しない場合(民法第1393条第2項)

条文等根拠:民法第1381条第4項、民法第1386条第1項、第6項、民法第1387条第1項、第2項、民法第1393条第2項

 

ロシア民法 第1381条第4項(発明,実用新案又は意匠の優先権の確立)

  1. 分割出願のもとでの発明,実用新案又は意匠についての優先権は,知的財産権を所管する連邦行政機関に対し同一出願人が当該発明,実用新案又は意匠を開示する最初の出願を提出した日により決定され,原出願のもとでより早い優先権が存在している場合は,最先の優先権の日付により決定されるものとする。但し,分割出願の提出日において,発明,実用新案又は意匠に係る原出願が取り下げられておらず,かつ取り下げられたものと見なされていなかったこと,及び本法に定める原出願の下で特許の付与を拒絶する査定に対する不服申立期間満了前に,又は原出願を基礎として特許付与の査定がなされた場合は,当該発明,実用新案又は意匠の登録日の前に,分割出願が出願されたことを条件とする。

 

ロシア民法 第1386条第1項、第6項(発明出願の審査)

  1. 特許出願時又は出願日から3年以内に,かつ方式審査の結果が肯定的であることを条件として,出願人又は第三者が知的財産権を所管する連邦行政機関に申立を提出したときは,当該発明出願は,実体審査を受ける。当該連邦行政機関は,第三者から申立を受領したときは出願人に通知するものとする。

知的財産権を所管する連邦行政機関は,提出期限前に出願人が提出する請求に基づき,発明出願の実体審査に係る申立の提出期限を2月を越えない範囲で延長することができる。

発明出願の実体審査を求める申立が所定の期間内に提出されない場合は,出願は取り下げられたものとみなされる。

  1. 発明出願の実体審査の間,知的財産権を所管する連邦行政機関は,実体審査又は特許の付与に関する決定に不可欠な追加資料(補正されたクレームを含む)を,出願人に要求することができる。この追加資料は,出願の実体を変更することなしに,要求又は出願に反駁する資料の写しの送付から3月以内に提出されるものとする。ただし,当該写しに関しては,当該連邦行政機関による要求から2月以内に,出願人がこれを請求することを条件とする。所定の期間内に出願人が請求された資料を提出するか又は期間の延長を求める申立を提出しない限り,出願は取り下げられたものとみなされる。当該連邦行政機関は,請求資料の出願人による提出のために定められた期間を10月を越えない範囲で延長することができる。

出願の実体審査において,発明の単一性要件が満たされていないことが確認された場合は,本法第1384条第4段落の規定が適用される。

出願人が追加資料を提出した場合は,当該資料が出願の本質を変更する(第1378条)ものであるか否かが確認される。

出願の本質を部分的に変更する追加資料は検討されない。出願人は,かかる資料を独立出願として提出することができる。知的財産権を所管する連邦行政機関は,この旨を出願人に通知するものとする。

 

ロシア民法 第1387条第1項、第2項(発明特許の付与,付与拒絶又は出願取下の宣言に関する決定)

  1. 発明出願の実体審査により,出願人が提出した発明クレームにおいて提示されている請求された発明が,本法第1349条第4段落に記載されている客体に関連せず,本法第1350条に規定する特許性の条件及び本法第1375条第2段落第1副段落から第4副段落までに言及されかつ出願日に提出された出願書類中の請求された発明の本質に合致し,かつ,発明の形成を適切に開示すると認められた場合は,知的財産権を所管する連邦行政機関は,当該発明に特許を許可する旨を決定するものとする。当該決定は,発明出願の出願日及び発明の優先日を明記するものとする。

発明出願の実体審査において,出願人が提出した発明クレームに表示されている請求された発明が本段落第1副段落にいう少なくとも1つの特許性の要件若しくは条件の何れにも合致しないか又は本段落第1副段落にいう出願書類が本段落に定める要件に合致しないことが確認された場合は,知的財産権を所管する連邦行政機関は,特許の付与を拒絶するものとする。

知的財産権を所管する連邦行政機関は,特許の付与を拒絶する旨を決定する前に,請求された発明の特許性の確認の結果を通知すると共に,通知に記載された理由に応答する主張を求める。かかる理由に関する出願人の応答は,通知が送付された日から6月以内に提出しなければならない。

  1. 発明出願は,知的財産権を所管する連邦行政機関の決定に基づき,本章の規定に基づいて取り下げられたものとみなされる。

 

ロシア民法 第1393条第2項(発明,実用新案又は意匠の国家登録及び特許付与手続)

  1. 発明,実用新案又は意匠の国家登録及び特許付与は,適用される特許税の納付をもって完了する。出願人が所定の手続に基づいて特許税を納付しなかった場合は,当該の発明,実用新案又は意匠は登録されないものとし,対応する出願は,知的財産権を所管する連邦行政機関の決定により,取り下げられたものとみなされる。

発明特許,実用新案又は意匠の付与決定が本法第1248条の手続に従って争われたときは,出願取下の決定は行われない。

 

 

日本とロシアにおける特許分割出願に関する時期的要件の比較

 

日本

ロシア

分割出願の時期的要件

1.補正ができる時または期間

(i)出願から特許査定の謄本送達前(拒絶理由通知を最初に受けた後を除く)

(ii)審査官から拒絶理由通知を受けた場合の指定応答期間内

(iii)拒絶理由通知を受けた後第48条の7の規定による通知を受けた場合の指定応答期間内

(iv)拒絶査定不服審判請求と同時

 

2.特許査定の謄本送達後30日以内(以下の(i)(ii)の特許査定を除く)

(i)前置審査における特許査定

(ii)審決により、審査に付された場合における特許査定

 

3.最初の拒絶査定の謄本送達後3月以内

 

条文等根拠:特許法第44条

1.原出願が取り下げられていない、または取下げとみなされていないこと

 

2.拒絶査定に対する不服申立期間満了前

 

3.特許付与の査定がなされた場合、登録日の前

 

 取下げとみなされる状況は、

 (A)実体審査請求期限までに審査請求がなされない場合(出願から3年以内(2月の延長可))

 (B)指令書に対する応答期限までに応答しない場合(指令から3月以内(10月の延長可))

 (C)査定結果通知に対数応答期限までに応答しない場合(通知から6月以内)

 (D)登録料納付期限までに登録料を納付しない場合(査定から6月以内)

 

条文等根拠:民法第1381条第4項

 

 

■ソース
・特許法
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=334AC0000000121 ・ロシア民法(日本語訳)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/russia-minpou_no4.pdf
■本文書の作成者
日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期
2018.11.29
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