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日本とロシアにおける意匠の新規性喪失の例外に関する比較
2019年09月17日
■概要
ロシア意匠出願における意匠の新規性喪失の例外規定に関しては、民法第1352条4項に規定されている。ロシアでは、日本と同様に創作者による開示行為も、新規性喪失の例外規定の適用を受けることが可能である。また、この開示日から12月以内に出願をする必要があるが、公開の証明資料は提出不要である。■詳細及び留意点
<日本における意匠出願の新規性喪失の例外>
日本においては、新規性を喪失した意匠の救済措置として、新規性喪失の例外規定が定められている。新規性喪失の例外規定の適用要件は以下のとおりである。
1 出願に係る意匠が、意匠登録を受ける権利を有する者(創作者または承継人)の意に反して公開されたこと(第4条第1項)または
2 出願に係る意匠が、意匠登録を受ける権利を有する者(創作者または承継人)の行為に基づいて公開されたこと(第4条第2項)
上記いずれの場合についても、以下の要件を満たす必要がある*)。
(1)権利者の行為に起因して公開された意匠の公開日から1年以内に意匠登録出願すること
(2)意匠登録出願時に意匠の新規性喪失の例外規定の適用を受けようとする旨を記載した
書面を提出すること(願書に【特記事項】の欄を加え、当該規定を受けようとする出願である旨を明記することで代用可能。)
(3)意匠登録出願の日から30日以内に、意匠の新規性喪失の例外規定の適用の要件を満たすことを証明する書面(証明書)を提出すること
*)意匠の新規性喪失の例外規定についてのQ&A集(https://www.jpo.go.jp/system/design/shutugan/tetuzuki/ishou-reigai-tetsuduki/document/index/ishou-reigai-qa.pdf)
「証明書」には、意匠が公開された事実(公開日、公開場所、公開者、公開意匠の内容等)とともに、その事実を証明する者の署名、捺印等を記載することが必要である。なお、第三者によらず、出願人自身が署名・捺印したものであっても一定の証明力があるものとして許容される**)。
**)「意匠審査基準の改訂」、p115脚注
(https://www.jpo.go.jp/news/shinchaku/event/seminer/text/document/isho_text_h29/shiryou_02.pdf)
条文等根拠:意匠法第4条
・日本意匠法 第4条(意匠の新規性の喪失の例外)
1 意匠登録を受ける権利を有する者の意に反して第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至った意匠は、その該当するに至った日から一年以内にその者がした意匠登録出願に係る意匠についての同項及び同条第二項の規定の適用については、同条第一項第一号又は第二号に該当するに至らなかったものとみなす。
2 意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至った意匠(発明、実用新案、意匠又は商標に関する公報に掲載されたことにより同項第一号又は第二号に該当するに至ったものを除く。)も、その該当するに至った日から一年以内にその者がした意匠登録出願に係る意匠についての同項及び同条第二項の規定の適用については、前項と同様とする。
3 前項の規定の適用を受けようとする者は、その旨を記載した書面を意匠登録出願と同時に特許庁長官に提出し、かつ、第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至った意匠が前項の規定の適用を受けることができる意匠であることを証明する書面(次項において「証明書」という。)を意匠登録出願の日から三十日以内に特許庁長官に提出しなければならない。
4 証明書を提出する者がその責めに帰することができない理由により前項に規定する期間内に証明書を提出することができないときは、同項の規定にかかわらず、その理由がなくなった日から十四日(在外者にあっては、二月)以内でその期間の経過後六月以内にその証明書を特許庁長官に提出することができる。
<ロシアにおける意匠出願の新規性喪失の例外>
ロシアでは民法第1352条4項に意匠に関する新規性喪失の例外規定がある。この中で、出願に係る意匠が出願前に公知になった場合であっても、新規性喪失の例外の適用を受けることにより、当該公知意匠を新規性および独創性の判断における公知意匠から除くことができると規定されている。
また創作者による開示行為も、新規性喪失の例外規定の適用を受けることが可能である。この開示日から12月以内に出願をする必要があるが、公開の証明資料は提出不要である。
条文等根拠:民法第1352条第4項
・ロシア民法 第1352条(意匠の特許性の条件)
- 意匠の新規性及び独創性を確認するときは,(先の優先権の条件で)その他の者によりロシア連邦でなされた発明,実用新案及び意匠に係るすべての出願並びに商標及びサービスマークの国による登録を求める出願,及び本法第1385条第2段落,第1394条第2段落及び第1431条第1段落に従い何人も閲覧する権利を有するこれらの出願に関係する書類も考慮に入れるものとする。
意匠についての情報のその創作者,出願人又はそれらから当該情報を直接又は間接に受領した者による開示(博覧会で意匠を展示した結果によるものを含む)で,当該意匠の本質に関する情報を公衆に利用可能にしたものは,当該意匠の特許性を妨げる事情とはならないが,ただし,当該情報開示の後12月以内に,当該意匠に係る特許出願が知的所有権を所管する連邦行政機関になされることを条件とする。意匠の本質に関する当該情報開示が当該意匠の特許性の認定を妨げない事情が存在することの立証責任は,出願人が負う。
日本とロシアにおける意匠の新規性喪失の例外に関する比較
|
日本 |
ロシア |
新規性喪失の例外の有無 |
有 |
有 |
例外期間 |
公開日から1年 |
開示日から12月 |
公知行為の限定 |
無 |
有 |
公知行為とはみなされない公開 |
1.出願に係る意匠が、意匠登録を受ける権利を有する者(創作者または承継人)の意に反して公開されたこと 2.出願に係る意匠が、意匠登録を受ける権利を有する者(創作者または承継人)の行為に基づいて公開されたこと |
意匠についての情報のその創作者,出願人またはそれらから当該情報を直接または間接に受領した者による開示(博覧会で意匠を展示した結果によるものを含む)で,当該意匠の本質に関する情報を公衆に利用可能にしたものは,当該意匠の特許性を妨げる事情とはならない |
証明する書面(証明書) |
公開の事実等を記載した証明書を提出する必要がある |
証明書の提出は不要である |
■ソース
・意匠法https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=334AC0000000125 ・ロシア民法(日本語訳)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/russia-minpou_no4.pdf
■本文書の作成者
日本国際知的財産保護協会■本文書の作成時期
2018.11.19