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インドネシアにおける特許の分割出願に関する留意点
2019年09月03日
■概要
インドネシアにおける特許分割出願は係属中であればいつでも行うことができる。分割要件は日本のそれよりも狭いが、実態として日本で登録された分割出願はインドネシアでも登録されている。■詳細及び留意点
2016年特許に関する法律第13号(以下、特許法)は、出願人の自発および/または大臣の提案により特許出願の分割をすることができると定めている(第38条第1項)。
1.分割出願の時期
分割ができる時期については、特許付与の決定が行われる前であればいつでも行うことができる(第38条第2項)。特許付与の決定後になされる分割出願は拒絶される(第63条第1項a号)。
2.分割出願の要件
特許法第41条第1項によれば、「発明の単一性を構成しない複数の発明からなる出願」は、分割することができる。ただし、第63条第1項c号には「分割出願の発明が原出願と単一性を有しない場合」拒絶されるという矛盾した規定がある。(下記、「原出願発明の単一性について」のコラム参照)
また、同条第2項は、「分割された各出願で求められる保護の範囲が原出願で申請された保護の範囲を拡大するものではない」ことを条件としている。この要件を満たさない分割出願は拒絶される(第63条第1項b号)。この規定は、分割出願の発明が、原出願における出願当初の明細書または図面に記載されていたものでなければならないとする日本の規定に比べて厳しい。(下記、「分割出願の原出願における開示程度」のコラム参照)
<原出願発明の単一性について> 特許法第41条第1項は、「発明の単一性を構成しない複数の発明からなる出願」の分割を認めており、これらの規定を見ると、日本では可能とされている単一性を有する複数の発明、例えば物の発明とその物を製造する方法の発明を分割することは、許されないと解される。 その一方で第63条第1項c号は、「分割出願の発明が原出願と単一性を有する発明とはいえない場合」分割出願を拒絶すると規定しており、親出願の発明が単一性を有しないことを要件とする第41条第1項の規定と矛盾している。 類似の規定は2001年特許法にも存在するが、実際の運用ではインドネシアでの審査は日本等他国の審査結果に追随することが多く、参照国で分割出願が登録されていれば、インドネシアでも同様に分割が認められており、その際原出願の発明単一性の有無はほとんど審査の対象になっていないように見受けられる。 |
<分割出願の原出願における開示程度> 特許法第41条第2項によれば、分割出願は「分割された各出願で求められる保護の範囲が原出願で申請された保護の範囲を拡大するものではない」ことを条件に認められる。 日本では、分割出願の発明が、原出願における出願当初の明細書または図面に記載されていたものであれば足りるのに対して、インドネシア特許法第41条第2項の規定では、分割出願の発明が原出願で申請された保護の範囲に留まることが求められており、より厳しい条件となっている。 類似の規定は2001年特許法にも存在するが、実際の運用ではインドネシアでの審査は日本等他国の審査結果に追随することが多いため、参照国で分割出願が登録されていれば、インドネシアでも同様に分割が認められており、その際原出願の請求の範囲を拡大しているかどうかは、審査においてほとんど考慮されていないように見受けられる。 |
3.分割出願の効果
これらの要件を満たす分割出願は、原出願と同じ日に出願されたものとみなされる。(特許法第41条第3項)
4.分割出願の審査請求
特許法第51条は分割出願の審査請求が分割出願と同時に行われなければならないと規定している(第7項)。もし審査請求が分割出願と同時にされない場合、分割出願は取り下げられたのとみなされる(第8項)。
【留意点】
・分割出願の審査請求は分割出願と同時に行うこと。
・要件として、原出願が単一性を有していないことと、分割出願発明が原出願の請求の範囲に留まることが規定されているが、旧法の運用ではこれらは考慮されておらず、これらの要件を満たさずとも、他国で分割出願が登録されていれば、インドネシアでも分割が認められている。
■ソース
・インドネシア特許法(2016年特許に関する法律第13号)■本文書の作成者
ハキンダ・インターナショナル■協力
日本国際知的財産保護協会■本文書の作成時期
2018.12.21