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日本と台湾における意匠の新規性喪失の例外に関する比較

2019年01月24日

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■概要
台湾での意匠出願の新規性喪失の例外規定の適用要件には、出願人自らの刊行物による公開が含まれている。例外が認められる期間は、日本では法改正により、平成30年6月9日以降の出願から1年となったが、台湾では意匠が公開された日から6か月である。新規性喪失の例外規定を適用しても、新規性を喪失した日に出願日が遡及するわけではない。つまり、新規性喪失の例外の適用を受けて意匠出願をしても、第三者が同じ技術を当該出願前に公知にしていれば、その意匠出願は新規性がないとして拒絶される。また、第三者が同じ意匠を先に意匠出願している場合も、先願主義に従い、後の意匠出願は拒絶される。新規性喪失の例外の適用を受けられる場合でも、このようなリスクを避けるため、できるだけ早く出願する必要がある。
■詳細及び留意点

日本における意匠出願の新規性喪失の例外

 日本においては、新規性を喪失した意匠の救済措置として、新規性喪失の例外規定が定められている。新規性喪失の例外規定の適用要件は以下のとおりである。

1 出願に係る意匠が、意匠登録を受ける権利を有する者(創作者または承継人)の意に反して公開されたこと(第4条第1項)または

2 出願に係る意匠が、意匠登録を受ける権利を有する者(創作者または承継人)の行為に基づいて公開されたこと(第4条第2項)

 上記いずれの場合についても、以下の要件を満たす必要がある。

(1) 意匠登録を受ける権利を有する者が意匠登録出願をしていること

(2) 意匠が最初に公開された日から1年(平成30年6月9日以降の出願に適用)以内に意匠登録出願をしていること。ただし、平成29年12月8日までに公開された意匠については、平成30年6月9日以降に出願しても、改正意匠法第4条の規定は適用されないので注意が必要。

 なお第4条第2項に記載される自己の行為に基づく新規性喪失については、さらに以下の手続が必要となる。

(3) 出願時に、意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする旨を記載した書面を提出、あるいは願書にその旨を記載すること(第4条第3項)。

(4) 出願の日から30日以内に、公開された意匠が新規性喪失の例外規定の適用を受けることができる意匠であることを証明する「証明書」を証明書提出書とともに提出すること(第4条第3項)。

 「証明書」には、意匠が公開された事実(公開日、公開場所、公開された意匠の内容等)とともに、その事実を客観的に証明するための署名等を記載することが必要である。上記要件を満たした場合、その意匠登録出願に限り、その公開意匠は公知の意匠ではないとみなされる。

条文等根拠:意匠法第4条

 

日本意匠法 第4条 意匠の新規性の喪失の例外

1 意匠登録を受ける権利を有する者の意に反して第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至った意匠は、その該当するに至った日から一年以内にその者がした意匠登録出願に係る意匠についての同項及び同条第二項の規定の適用については、同条第一項第一号又は第二号に該当するに至らなかったものとみなす。

 

2 意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至った意匠(発明、実用新案、意匠又は商標に関する公報に掲載されたことにより同項第一号又は第二号に該当するに至ったものを除く。)も、その該当するに至った日から一年以内にその者がした意匠登録出願に係る意匠についての同項及び同条第二項の規定の適用については、前項と同様 とする。

 

3 前項の規定の適用を受けようとする者は、その旨を記載した書面を意匠登録出願と同時に特許庁長官に提出し、かつ、第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至った意匠が前項の規定の適用を受けることができる意匠であることを証明する書面(次項において「証明書」という。)を意匠登録出願の日から三十日以内に特許庁長官に提出しなければならない。

 

4 証明書を提出する者がその責めに帰することができない理由により前項に規定する期間内に証明書を提出することができないときは、同項の規定にかかわらず、その理由がなくなった日から十四日(在外者にあっては、二月)以内でその期間の経過後六月以内にその証明書を特許庁長官に提出することができる。

 

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台湾における意匠出願の新規性喪失の例外

 台湾における意匠出願の新規性喪失の例外規定は、以下のとおり専利法および専利審査基準に規定されている。(専利とは日本における特許、意匠、実用新案に相当。以下「専利」。)

 

 適用要件には、出願人自らの刊行物による公知が含まれている。日本と同様に、意匠が公知となった日から6か月以内に出願しなければならない。新規性喪失の例外規定を適用しても、新規性を喪失した日に出願日が遡及するわけではない。つまり、新規性喪失の例外の適用を受けて意匠出願をしても、第三者が同じ技術を当該出願前に公知にしていれば、その意匠出願は新規性がないとして拒絶される。また、第三者が同じ意匠を先に意匠出願している場合も、先願主義に従い、後の意匠出願は拒絶される。新規性喪失の例外の適用を受けられる場合でも、このようなリスクを避けるため、できるだけ早く出願する必要がある。注意すべきは、新規性喪失の例外を適用させるためには、刊行物に掲載された日から6か月内に主張すべきであるということである。

 

条文等根拠:専利法第122条、専利審査基準2.6、2.6.1、2.6.2

 

台湾専利法 第122条

 産業上利用することのできる意匠で、次の各号のいずれかに該当しなければ、本法により出願し、意匠登録を受けることができる。

1 出願前に既に同一または類似の意匠が刊行物に記載された場合

2 出願前に既に同一または類似の意匠が公然実施された場合

3 出願前に既に公然知られた場合

 意匠が、前項各号の事情に該当しなくても、出願意匠が属する技術分野の通常知識を有する者が、出願前の従来技術に基づいて容易に思いつくものであるときは、意匠登録を受けることができない。

 出願人が次の各号のいずれかの事情を有し、かつ、その事実の発生後6ヶ月以内に出願した場合、当該事実は、第1項各号または前項に言う意匠登録を受けることのできない事情に該当しない。

1 刊行物に発表された場合。

2 政府が主催する展覧会または政府の認可を受けた展覧会で展示された場合。

3 出願人の意図に反して、意匠が漏洩した場合

 出願人が前項第1号および第2号の事由を主張する場合、出願時に事実およびその事実が生じた年月日を明記し、ならびに審査官が指定した期間内に証明書類を提出しなければならない。

 

 なお、専利審査基準では新規性喪失の例外規定に関して以下のように規定されている。

 

台湾専利審査基準 2.6 新規性を喪失しない例外事情

 出願意匠は出願日前に専利法第122条の新規性を喪失する例外事情の一つに該当して、出願前に相同または類似する意匠は既に刊行物に掲載され、既に公然使用されまたは既に公衆に知られるものであれば、出願人は事実発生日から6ヶ月内に出願して、事実と関係する日を明記すると共に指定期間内に証明資料を添付すれば、該事実と関係する従来技術によって、出願意匠の新規性を喪失させることがない。

 新規性喪失の例外期間(公開日から6ヶ月)内に既に刊行物に掲載され、既に公然使用されまたは既に公衆に知られる、相同または類似する意匠は、出願意匠の新規性を喪失させる先行技術と見なさない。

 新規性喪失の例外期間の効果は優先権主張期間の効果と異なる。つまり、6ヶ月の例外期間は、意匠の登録要件の判断基準に影響しない。そのため、出願人は公開日から出願日の間に、他人が相同または類似する意匠出願を提出した場合、出願人が主張する新規性喪失の例外期間の効果は、他人の先願の事実を排除できない。そのため、先願の原則(先願主義)に基づいて、元の新規性の喪失の例外期間を主張する意匠出願は、意匠登録を許可されず、他人の先願も出願前に既に相同または類似する意匠が公開された事実があるため、意匠登録が許可されない。

 出願人が新規性喪失の例外期間を主張し、当該期間中に公開された意匠内容を、他人が公開しても(例えばマスコミの報導行為等に転載されても)、例外期間の効果に影響はないので、出願意匠の新規性は喪失しない。但し、出願人が例外期間中に自ら出願意匠を再公開した場合、当該再公開は、政府が主催しまたは認可した展覧会に陳列されたもの以外、その他の事情の再公開は、全て当該意匠の新規性を喪失させる。そして、政府が主催しまたは認可した展覧会に陳列されまたは出願人の意図に反して漏洩されたことによって公衆に知られた意匠と相同または類似する出願意匠は、新規性喪失の例外期間を主張できない。

 注意すべきは、新規性喪失の例外期間は、刊行物に掲載され、公然使用または公衆に知られた日から6ヶ月内に主張すべきであり、もし、別途に優先権を主張する場合は、それぞれの関係規定に基づいて審査すべきである。

 

台湾専利審査基準 2.6.1 政府が主催しまたは認可した展覧会に陳列されたもの

 専利法でいう展覧会は、台湾政府が主催しまたは認可した国内外の展覧会を指し、政府が認可するとは、台湾政府の各機関が認め、許可または同意等することを指す。物品または図表等の表現方式で、出願意匠を政府が主催しまたは認可した展覧会に陳列され、該意匠の内容を刊行物に掲載され、公然使用または公衆に知られることにより、公衆に知られることができるものなら、展覧日から6ヶ月内に出願すれば新規性を喪失しない。公衆は実際に閲覧したかどうかまたは本当に該意匠内容を知たかどうかは問題ではない。政府が主催しまたは認可した展覧会に陳列されたものを主張するものは、該主張する事実は展覧会に発行される展覧品を紹介する刊行物を含む。

 

台湾専利審査基準2.6.2 出願人の意図に反して漏洩されたもの

 出願人の同意なしに他人が出願意匠の内容を漏洩することで、該意匠が公衆に知られることができる場合、出願人は漏洩日から6ヶ月内に出願すれば新規性を喪失しない。公衆は実際に閲覧したかどうかまたは本当に該意匠内容を知たかどうかは問題ではない。出願人の意図に反して漏洩されたと主張する場合、該主張の事実は、他人が守秘する約束または契約を違反する意匠内容を公開する事情を含み、脅威、詐欺または窃盗等の違法手段で出願人または創作人から意匠内容を知った事情も含む。

 

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日本と台湾における意匠の新規性喪失の例外に関する比較

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■本文書の作成者
日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期

2018.06.22

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