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韓国司法実務における均等論についての規定および適用

2018年09月27日

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■概要
韓国では、2000年の大法院判決で初めて、5要件を満たす場合に均等侵害を認めて以来、様々な判決を通じて均等侵害法理が発展してきた。そして、比較的最近の大法院2014.7.24言渡2012フ1132判決は、第1要件の「課題の解決原理が同一」要件に関し、既存の「本質的部分」という表現の代わりに「特許発明に特有の解決手段の基礎となる技術指導の核心」かどうか、という判断準則を導入した。これにより、韓国大法院判決は、外見上日本の判例とは異なる原則を有するものと見えるかも知れないが、日本知的財産高等裁判所判決を分析してみると、各見解に実質的な差はないものと理解できる。
■詳細及び留意点

1.における特許均等侵害理論の導入

 

 韓国特許法第97条は、特許発明の保護範囲という標題の下、「特許発明の保護範囲は請求の範囲に記されている事項によって定められる」と規定している。

 

 これにより、特許権を侵害するのかどうかは相手方が製造、販売などをしている物や方法が、特許発明の保護範囲である特許請求の範囲に記載された事項を直接的または間接的に実施していているかによって定められる。すなわち、特許請求の範囲に記載された発明の構成要素と、侵害であると主張される物または方法とを、互いに具体的に対比し、法文上原則的には、上記物または方法が特許請求の範囲に記載された全ての構成要素を備えた場合に侵害を構成する(いわゆる「構成要素完備の原則」)。

 

 なお、大法院2005.5.30.言渡2004フ3553判決は、「登録請求の範囲の請求項に記載された必須の構成要素のうちの一部のみを備えており、残りの構成要素が欠如している場合には、原則的にその確認対象考案は登録考案の権利範囲に属さず、請求項に記載された構成要素のうち、一部を権利行使の段階で登録考案の比較的重要ではない事項として無視することは、事実上登録請求の範囲の拡張的変更を事後に認めることになって許容されない」と判示している。

 

 しかし、構成要素完備の原則をあまりにも厳格に適用すると、微細な設計変更で特許侵害を回避でき、特許権が有名無実になる結果を生みだす可能性がある。そこで、韓国法院は、韓国以外の様々な国家と同様に、特許請求の範囲の構成要素と実質的に同一であると認められる場合にも、例外的に侵害を認めている(いわゆる「均等侵害理論」)。韓国における均等侵害理論は、特許法条項によるものというよりは、継続的な判例の蓄積および発展を通じて定立されたと言える。

 

 特許の属地主義の原則上、特許侵害判断も各国の特許実務に従って別個に判断されるが、各国の特許制度および実務の統一化を追求する最近の傾向に応じて、特許均等侵害に関する実務も各国間で類似性を持っていると考えられる。本稿では、韓国均等論適用の要件および判例法理の発展を詳察し、最近言渡された大法院判決について紹介した後、日本と韓国の均等論法理に関し比較して詳察する。

 

2.均等論適用の要件および判例法理の

 

 韓国大法院は、2000年に言渡した判決において、最初に均等論の適用要件に関する法理を提示し、均等侵害を認めた(大法院2000.7.28言渡9フ2200判決)。上記判決において大法院は、下記(1)~(5)の5つの要件を満たす場合、均等侵害が認められるとした。

 

(1)両発明の技術的思想ないし課題の解決原理が共通あるいは同一であること

(2)置換された構成要素が、特許発明の構成要素と実質的に同一の作用効果を奏すること

(3)置換すること自体が、通常の知識を有する者であれば当然容易なこと

(4)確認対象発明が、当該特許発明の出願時に既に公知となった技術であるか、その公知技術から容易に発明可能な技術ではないこと

(5)確認対象発明の置換された構成要素が、特許出願手続で請求の範囲から意識的に除外されたものでないこと

 

 実務的に上記均等侵害の要件中、第1~3要件は積極的要件として、特許権者が主張、立証しなければならず、第4~5要件は消極的要件として、確認対象発明の実施者が主張、立証しなければならないとされている。

 

 均等侵害の上記5つの要件は、その後、韓国大法院の判例で完全に同一には適用されず、一部法理の変化を経てきた。特に、上記要件中、実務的に最も論議が多い要件が「課題解決原理の同一性(第1要件)」である (参考文献 1)。次項で言及する焼き海苔切断機事件以前の大法院判例の法理の発展に関し、まず考察する。

 

 大法院2005.2.25.言渡2004ダ29194判決では、上記大法院2000.7.28に言渡された97フ2200判決の均等論要件中、一部内容を修正した。具体的には、第1要件である「技術的思想ないし課題の解決原理が共通あるいは同一なこと」を「課題の解決原理が同一なこと」に変え、第2要件である置換の可能性要件において、「置換によっても特許明と同じ目的を達成できること」という部分を追加し、第3要件から「当然」を削除した。

 

 大法院2009.6.25.言渡2007フ3806判決では、第1要件である「課題解決原理の同一性」の意味を具体的に明示した。大法院は、「両発明で課題の解決原理が同一であるということは、確認明で置換された構成が、特許明の非本質的な部分であるため、確認明が特許明の構成を有することを意味し、特許発明の特徴的構成を把握するときには、特許請求の範囲に記載された構成の一部を形式的に抽出するのではなく、明細書の発明の詳細な説明の記載と出願当時の公知技術などを参酌し先行技術と対比してみて、特許発明に特有の解決手段の基礎となる課題の解決原理が何かを実質的に探求して判断すべきである」と判示し、第1要件の判断基準を明確にした(参考文献 2)。

 

 大法院2012.6.14.言渡2012フ443判決では、均等論第1要件を再度整理した。すなわち、「課題の解決原理が同一であるということは、置換された構成が特許明の本質的な部分ではないため、置換したにもかかわらず、特許明の構成が確認明にそのまま存在することを意味する。そして、特許発明の特徴的構成を把握するときには、特許請求の範囲に記載された構成の一部を形式的に抽出するのではなく、明細書に記載された発明の説明と出願当時の公知技術などを参酌して先行技術と対比してみて、特許発明特有の解決手段の基礎となる課題の解決原理が何かを実質的に探求して判断すべきである」とした。上記大法院判決に対しては、従前の大法院2009.6.25.言渡2007フ3806判決での均等論第1要件が「両発明の課題の解決原理」が「置換された部分が発明の重要ではない非本質的部分」という内容を指していると誤解されるおそれがあるため、「課題の解決原理が同一」であるという意味を再度整理し、さらに明確にしたという評価もある(参考文献 3)。

 

 そして最近、大法院2014.7.24.言渡2012フ1132判決で、均等論第1要件である課題解決原理の同一性要件を再度整理した。この大法院判決を、以下でより具体的に考察する。

 

3.均等論最近の韓大法院判決-焼き海苔切事件

 

 均等論と関連して、最近、意味のある大法院判決が言い渡された。この大法院2014.7.24.言渡2012フ1132判決(いわゆる「焼き海苔切断機事件」)に関し考察する。

 

 上記判決において大法院は、第1要件と関連し、「両発明で課題の解決原理が同一」であるかどうかを判断するときには、特許請求の範囲に記載された構成の一部を形式的に抽出するのではなく、明細書の発明の詳細な説明の記載と出願当時の公知技術などを参酌し先行技術と対比してみて、特許明に特有の解決手段の基礎となる技術思想の核心が何かを実質的に探求して判断すべきである」と判示した。

 

 上記大法院判決は、第1要件である両発明において「課題の解決原理が同一」かどうかの判断と関連し、従前の判決で使われていた「本質的な部分」、「特許発明の特徴的構成」という用語を用いずに、代わりに「特許発明に特有の解決手段の基礎となる技術思想の核心」により判断すべきであると判示した。

 

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 当該判決の具体的事案を考察する。

 

 特許発明は焼き海苔自動切断機に関する発明であって、装置の上部に多数の加圧切板(40)が設けられ、下部に下に行くほどその厚さが扇形に広くなる格子状切断刃(80)を備えている。上から加圧切板が下降しながら焼き海苔を加圧し、下部の格子状切断刃(80)により切断された海苔が扇形切断刃の傾斜面に沿って滑り自動収納される。

 

 これに比べ、確認対象発明は、上部に多数の加圧切板(140)と格子状切断刃(180)が設けられ、下部には下に行くほど厚さが扇形に広くなる傾斜面を有する格子状ボックス(185)を備えている。加圧切板(140)と格子状切断刃(180)が下降しながら、格子状切断刃により切断された焼き海苔が格子状ボックスの傾斜面に沿って滑り自動収納される。すなわち、確認対象発明は、特許発明における下部の傾斜面を有する格子状切断刃(80)の機能を、上部の格子状切断刃(180)と下部の傾斜面を有する格子状ボックスに分けた点で特許発明と差がある。

 

 本件の原審判決では、特許請求の範囲に記載された「格子状切断刃」を特許発明の特徴的構成と見て、確認対象発明は、特徴的構成を変更したため第1要件を満たさないと判断された。

 

 これに対し、大法院は、請求の範囲の構成要素が本質的部分であるか、または特徴的構成であるか区分せず、発明の詳細な説明および出願当時の公知技術を参酌して「切断されたそれぞれの積層海苔が下降しながらガイドケースの下部に固定配置される格子状部材の外側傾斜面に沿って互いの間隔が広がるように誘導」することを特許発明の技術思想の核心として特定した。その上で、確認対象発明が特許発明の構成要素を上記のように変更したにもかかわらず、技術思想の核心が変わっていないため、第1要件を満たすと判断し、原審判決を破棄し差戻した。

 

 大法院は「特有の解決手段の基礎となる技術思想の核心」を特許請求の範囲に記載された構成より広く認め、確認対象発明もその技術思想の核心で差がないという理由から第1要件を満たすと判断した。

 

 上記大法院判決は、原審判決が既存の大法院判例の「置換された構成が特許発明の本質的部分ではないこと」という要件を誤解し、請求の範囲に記載された構成要素を細分化して本質的部分と非本質的部分に分けた後、本質的部分が置換・変更された場合には、第1要件が無条件に否定されると判断してしまった点を訂正したものと評価できる。

 

 また、大法院は、均等論第2要件と関連して従前の2004ダ29194判決で使われていた「目的の同一性」という部分を削除し、均等論第3要件で「置換することがその発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に考え出すことができる程度に自明であれば」という内容のうち、「自明」という用語を削除した。

 

 さらに、本判決は既存の大法院判決とは異なって、第4要件と第5要件を具体的に説示せずに、「特別な事情がない限り」に縮約して表現した。本件では、第4要件と第5要件は争点にならなかったため、上記のように具体的な要件に関し言及しなかったと見る余地もあるが、均等論の消極的要件が既存の第4要件および第5要件としてあえて限定する必要がないという考えからの判示である可能性もある。このような変更が、単純な表現上の変更であるか、判断要件上に実質的な変更をもたらすかは今後の大法院判決を詳察すべきであると思われる。

 

 一方、上記焼き海苔切断機事件と同一の特許発明を請求権原としながら他の製品に対する侵害差止を求める仮処分事件があったが、ソウル高等法院は均等論判断と関連して様々な興味深い法理に関する判断をした(ソウル高等法院2016.3.24.付2015ラ20318決定;大法院に再抗告せず確定)。

 

 本件決定は、「構成の変更にもかかわらず、(1)特許発明と課題の解決原理が同一であり、(2)特許発明と実質的に同一の作用効果を奏し、(3)そのような変更が通常の技術者であれば誰でも容易に考えることができるならば、その変更された構成は、特許発明の構成と均等なものである」と判示し、均等判断は、基本的に特許発明の構成と確認対象発明の変更された構成を対比・判断するものであると示した。

 

 また、均等判断においては、特許発明や確認対象発明の全体的な脈絡から、それぞれの構成が有する技術的意味や作用効果を実質的に探求しなければならないのであって、発明を離れ分離された構成それぞれの課題解決原理や作用効果に基づいて判断してはならないと明示した。

 

 この決定では、第2要件の「実質的に同一の作用効果」要件と関連して完全に同一の作用効果を奏することまで要求するのではなく、特許発明の技術思想の核心を具現できる程度の作用効果を奏すれば充分であり、技術思想の核心と関連のない慣用的技術手段を採択することによって付随的効果の差があっても実質的な作用効果に差があると見てはならないと説示した。

 

 また、この決定は、既存の大法院判決で提示されなかった第3要件判断における容易性の程度や判断時点に関する基準を提示した。すなわち、決定文は、均等理論は特許発明の実質的価値を保護するためのものなので、進歩性などの特許要件判断とはその観点が異なると説示しながら、相手方製品などの製造、使用などがあった時点を基準に、通常の技術者にその変更された部分が特許請求の範囲に記載されていることと同様に認識され得るか、または通常の技術者が特に技術的な努力なしにそのような構成の変更を採択できる場合であれば、第3要件を満たすものと判断した。

 

 ただし、上記決定で初めて認められた判断法理が、今後大法院でも認められ得るかは経過を見守る必要がある。

 

4.均等論大法院判決23件の調査結果

 

 均等論と関連し、2000年均等侵害が大法院で認められて以来、2011年まで大法院で均等侵害が判断された計23件の大法院判決を分析した結果が発表されたことがあるので、これについて紹介する(参考文献 4)。

 

 これによれば、計23件の大法院判決中、均等侵害が認められた事例は5件である。また、計23件の大法院判決中、第1要件が判断された事例は計4件(17.4%)、第2要件が判断された事例は計6件(26.1%)、第5要件が判断された事例は計10件(43.5%)である。第5要件が判断された事例のうち、均等侵害が認められた事例は1件(大法院2002.9.6.言渡2001フ171判決)だけである。

 

 これを総合してみると、韓国での大法院事件で均等論と関連し、第5要件、第2要件、第1要件の順で多く争点になっている。そして、最も頻繁に争われる第5要件が大法院で満たされると認められ、均等侵害が認められる場合は稀だと言える。

 

5.日本と韓均等論にする法理比較

 

 韓国大法院の均等侵害適用要件は、日本の均等侵害理論の第1~第5要件と大きく異ならないものと思われる。ただし、先に説明した通り、韓国大法院は焼き海苔切断機事件で第1要件と関連し、既存の「本質的部分」という表現を用いず、その代わりに「特許発明に特有の解決手段の基礎となる技術思想の核心」であるという判断準則を導入しているので、一見日本の判例と差があると見えるかもしれない。

 

 しかし、韓国法律家の立場から、日本の下級審判例を検討してみると、法理を表現する方法は異なるかも知れないが、実際の判断では類似する面があると言うことができる。すなわち、日本知的財産高等裁判所2016.3.25.言渡平成27(ネ)10014判決(大合議体)は「特許発明の本質的部分は、…従来技術と比較して特許発明の貢献の程度が大きいと評価される場合には、特許請求の範囲の記載の一部について、これを上位概念化したものとして認定」されるとする一方、「第1要件の判断…を判断する際には、特許請求の範囲に記載された各構成要件を本質的部分と非本質的部分に分けた上で、本質的部分に当たる構成要件については一切均等を認めないと解するのではなく、上記のとおり確定される特許発明の本質的部分を対象製品等が共通に備えているかどうかを判断し、これを備えていると認められる場合には、相違部分は本質的部分ではないと判断すべきであり、対象製品等に、従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分以外で相違する部分があるとしても、そのことは第1要件の充足を否定する理由とはならない」と判断した。

 

 上記日本知的財産高等裁判所判決によると、「本質的部分」に対する判断を弾力的に運用しているものとして、韓国法律家が見た時には、韓国の大法院が焼き海苔切断機事件で示した見解と実質的には大きな差はないと思われる。

 

 一方、日本知的財産高等裁判所は上記2016.3.25.言渡平成27(ネ)10014判決(大合議体)の判決において、第5要件と関連して出願人が出願時に特許請求の範囲外の他の構成を、特許請求の範囲に記載された構成のうち他の部分に代替すると認識していたと客観的・外形的に見て認められる時、例えば、出願人が明細書でその他の構成による発明を記載していると見ることができる時や、出願人が出願当時、公表した論文などから特許請求の範囲外の他の構成による発明を記載している時には、出願人が特許請求の範囲に該当の他の構成を記載していないということは、第5要件の「特段の事情」に該当すると判示したことがある。

 

 上記4.項で考察した通り、韓国での均等論に関する大法院判決を見ると、出願経過禁反言に関する事例が最も多くはあるが、第5要件の「特段の事情」に関し、上記のような例を提示した判決はなかったものと思われる。

 

6.結び

 

 本稿では、均等論に関する韓国法院の見解を日本以外の他の国家と比較してはいないが、各国の均等論に関する判例、法理などを比較・分析することは、各国の特許法の法理発展に役立つ相当意味ある作業であることを申し上げ、結びとする。

■ソース
(1) キム・ビョンピル、「均等侵害要件のうち【課題解決原理の同一性】要件に関する考察」、知識財産研究第8巻第1号、韓国知識財産研究院韓国知識財産学会、2013、5頁
(2) ハン・ドンス、「均等侵害に該当するための要件」、知的財産権第32号、韓国知的財産権法研究院、2009、54頁
(3) ユン・テシク、「知財権侵害訴訟の最近の動向」、知識財産訴訟実務研修、大韓弁理士会、2016、157頁
(4) キム・ドンジュン、均等論と出願経過禁反言、成均館法学第23巻第3号(2011.12.)、925頁参照
■本文書の作成者
金・張法律事務所
■協力
日本技術貿易株式会社
■本文書の作成時期
2018.02.08
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