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インドにおける特許年金制度の概要
2018年05月15日
■概要
インドにおける特許権の権利期間は、出願日(PCT条約に基づく特許出願の場合は国際特許出願日)から20年である。権利期間の延長制度は存在しない。年金は出願日を起算日として3年次から発生するが、特許査定が下された場合にのみ納付が求められる。特許査定が下された後、特許庁が指定する期間内に3年次から査定された年までの累積年金の納付が求められ、その後の年金は出願応当日を納付期限として各年納付される。意匠権の権利期間は出願日もしくは優先権主張をしている場合は優先権主張日から15年である。意匠権が登録になると最初に起算日から10年の権利期間が与えられ、11年次に5年分の年金納付を1回のみ行うことで、計15年の権利期間を得ることができる。■詳細及び留意点
- 特許権
インドにおける特許権の権利期間は、出願日(PCT条約に基づく特許出願の場合は国際特許出願日)から20年である。権利期間の延長制度は存在しない。年金は出願日を起算日として3年次から発生するが、特許査定が下された場合にのみ納付が求められる。したがって、出願から3年以上経過した件であっても審査中には年金は発生しない。出願から特許査定までに3年以上を要した場合には、特許査定が下された後、特許庁が指定する期間内に3年次から査定された年までの年金を納付する必要がある。これを累積年金と言う(*下記参照)。その後の年金は出願応当日を納付期限として各年納付される。
特許権者が小規模団体あるいは個人である場合は、年金金額が減額される。年金納付は現地代理人のみが可能である。
また、権利を維持するには、上記の年金納付とは別に、インド特許庁に対して実施証明書を提出しなければならない。実施に関する書面の提出が行われなかった場合、最大で百万ルピーの高額な罰金もしくは禁固刑等の罰則が課される可能性がある。
特許権が登録になった後に、納付期限日までに年金の納付が行われなかった場合、期限日から6ヶ月以内であれば追納が可能である。追納期間中は所定の年金金額に加えて追徴金も同時に納付しなければならない。6ヶ月の追納期間を超えて年金納付がされない場合は、権利は追納期間の最終日をもって失効する。ただし、権利失効から18ヶ月以内であれば、インド特許庁に対して権利回復の請求を行うことが可能である。権利を回復するには、まず所定の書面を提出する必要がある。その後、インド特許庁が権利の回復を認めた場合には、その旨が公報に掲載され一般に公開される。公報掲載日から2ヶ月の間は権利回復に対する第三者からの異議申し立てが可能な時期であり、この期間中に異議申し立てがなければ、当該特許権の権利者は特許庁に未納付分の年金と回復費用を納付することができる。これらの金額の納付をもって、権利は回復する。
上記の通り、追納期間を超えて年金納付がされなかった場合に特許権は失効するが、権利を放棄したい旨を記した書面と所定の金額をインド特許庁に提出することにより積極的に放棄する手続もある。
- 意匠権
意匠権の権利期間は出願日もしくは優先権主張をしている場合は優先権主張日から15年であり、年金は意匠が登録査定を受けてから発生する。まず、意匠権が登録になると最初に出願日もしくは優先権主張をしている場合は優先権主張日を起算日として10年の権利期間が与えられる。その後、11年次に5年分の年金納付を1回のみ行うことで、計15年の権利期間を得ることができる。権利期間の延長制度は存在せず、年金納付の期限日は出願応当日である。
年金の納付に際して、インド特許庁に委任状等を提出する必要がある。意匠権者が小規模団体あるいは個人である場合は、年金金額が減額される。年金納付はインドにおける法曹資格を有する者であれば納付手続が可能である。
意匠権の場合、特許権と異なり追納制度が存在しない点に注意しなければならない。そのため、納付期限日までに年金の納付が行われなかった場合、権利は失効する。ただし、権利失効から12ヶ月以内であれば権利回復の請求を行うことができる。権利を回復するには、まず所定の書面を提出する必要がある。その後、インド特許庁が権利の回復を認めた場合には、その旨が公報に掲載され一般に公開される。公報掲載日から2ヶ月の間は権利回復に対する第三者からの異議申し立てが可能な時期であり、この期間中に異議申し立てがなければ、当該意匠の権利者は特許庁に未納付分の年金と回復費用を納付することができる。これらの金額の納付をもって、権利は回復する。
*累積年金とは、年金納付義務が特許査定前から存在し、かつ特許査定が下されてから納付が開始される国において、登録手続の際に納付すべき年金のことを指す。指定された年次から査定された年次までをカバーする年金をまとめて納付し、それ以降は年払いに移行する。なお、査定された時期と年金納付日の関係によっては、指定された年次から査定された年次の次の年次の分までを納付することになる場合もある。
■ソース
・インド特許法■本文書の作成者
日本技術貿易株式会社■本文書の作成時期
2017.11.30