アジア / 法令等 | 出願実務 | アーカイブ
韓国における商標出願の拒絶理由通知に対する対応
2017年09月12日
■概要
(本記事は、2021/5/13に更新しています。)URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/19860/
韓国特許庁に商標出願して拒絶理由通知を受ける場合、性質表示標章に該当(商標法第33条第1項第3号)、あるいは、引用商標と同一または類似(商標法第34条第1項第7号、第35条第1項)、指定商品に関するものとして、包括名称または不明確に該当(商標法第38条)という内容が多い。拒絶理由通知を受けた場合、通知書の発送日から2ヶ月以内に意見書および補正書を提出することができ、この期間は1ヶ月ずつ4回まで延長が可能である。また、意見書提出期間内に意見書を提出できなかった場合、その期間の満了日から2ヶ月以内に商標に関する手続きを継続して進行することを申請し、拒絶理由に対する意見書を提出することもできる(商標法第55条第3項)。
■詳細及び留意点
商標出願に対する審査官の拒絶理由の内容は、主に次のように分類することができる。
(1)性質表示標章に該当(商標法第33条第1項第3号)
(2)引用商標と同一または類似(商標法第34条第1項第7号、第35条第1項)
(3)指定商品が包括名称または不明確(商標法第38条)
以下、順に詳述する。
(1)性質表示標章に該当(商標法第33条第1項第3号)
出願商標が性質表示標章に該当するという拒絶理由を受ける場合がある。この場合、出願商標の意味が指定商品の性質の直接的な表示に該当するのか、単に指定商品の性質を暗示または強調するものに過ぎないのか等を把握して対応しなければならない。上記に関連し、最高裁判所(韓国「대법원」(大法院))の判例は「その商標が指定商品の品質、効能、形状等を暗示、強調するものとみえるとしても、全体的な商標の構成からみる時、一般取引者や需要者らが指定商品の単純な品質、効能、形状等を表示するものであると認識することができないものは、これに該当しない(最高裁判所 1987.3.10 宣告、86후18判決)と判断している。
意見書提出時には、参考資料として類似の商標の登録事例および判例、日本等外国での登録事例等を提出して対応する場合が多い。しかし、実際には、性質表示ではないという客観的な立証を行うのは難しいため、拒絶理由の解消は困難といえる。
(2) 引用商標と同一または類似(商標法第34条第1項第7号、第35条第1項)
引用商標と同一または類似するという拒絶理由を受ける場合がある。この場合は、まず、引用商標と抵触する指定商品が削除可能であるものかを確認し、可能な場合には削除する。特許庁は、商品の類否を判断するために類似群コードを運用しており、ニース分類による商品区分と関係なく類似群コードが同一であれば、原則的に類似の商品と推定する(類似・商品サービス業審査基準)。
引用商標に係る拒絶理由において、出願商標と引用商標が外観、称呼、観念が同一または類似して拒絶理由の解消が難しい場合がある。そのときは、引用商標について使用の有無を調査し、不使用と判断できる場合には不使用取消審判を請求する方法をとることが多い(不使用取消審判については、本データベース内コンテンツ「韓国における商標の不使用取消審判制度」参照)。引用商標について不使用取消審判を請求して取消が確定された場合、拒絶理由が取消されるとし、出願は維持される。
(3) 指定商品が包括名称または不明確(商標法第38条)
指定商品が不明確または包括名称に該当するという拒絶理由を受ける場合がある。これに対しては商標法施行規則で定める商品区分表に例示された商品名に準じて、商品の用途および材料等を限定または特定するのがよい。
専門的な用語で詳しすぎて、細密に説明した指定商品は、むしろ不明確であるという理由で拒絶理由が出される傾向がある。この時は、できれば業界で一般的に使用する名称に補正するのがよい。例えば、「ぜんまい式卓上時計」は認められるが、「ぜんまいを巻いて針が周り、時間を知らせる機械」と書いた場合に、指定商品不明として拒絶理由が出るようなケースもある。
(4) 一部指定商品等が拒絶理由に該当する場合
多区分で出願した場合において、一部指定商品に対して拒絶理由が出される場合がある。この対応策として意見書を提出したが、その意見が受け容れられない場合は、全体が拒絶されてしまうため、拒絶理由に該当する指定商品類または該当指定商品を分割出願することも一案である(本データベース内コンテンツ「韓国における商標の一出願多区分制度について」参照)。
(5) 商標の類否判断
韓国では従来は部分観察(分離観察)の傾向が強かったが、最近は全体観察へと少しずつ移行している。外観、称呼および観念等を客観的、全体的、離隔的に観察して、該当指定商品の取引で一般需要者や取引者が商標に対して感じる直観的認識を基準として商品の出所に対する誤認、混同を起こす恐れがあるか否かによって判断されるべきとする最高裁判決(最高裁判所 1993.7.13 宣告 92후2120)もあり、審査基準の記載も部分観察からやや全体観察へ移行しているように見受けられる。しかし、まだ必ずしも全体観察の原則がとられているわけではないので出願に際しては十分な検討が必要である。例えば、識別力が弱い文字と識別力のある図形の結合商標で、全体として識別力があるように見受けられる場合は、登録される可能性はあるが、分離観察されて拒絶される可能性も否定できないので、文字部分と図形部分の分離が不可能な程度に密接させる等の工夫が必要である。
(6) 拒絶理由通知への対応の期限
拒絶理由通知を受けた場合、通知書の発送日から2ヶ月以内に意見書および補正書を提出することができ、この期間は1ヶ月ずつ4回まで延長が可能である。意見書提出期間内に意見書を提出できなかった場合、その期間の満了日から2ヶ月以内に商標に関する手続きを継続して進行することを申請し、拒絶理由に対する意見書を提出することができる(商標法第55条第3項)。
【留意事項】
拒絶理由に該当する引用商標が不使用を理由により取消されれば、拒絶理由は解消される。したがって、引用商標と同一または類似するという拒絶理由を受けた場合の対応の一つとして、引用商標に対して不使用取消審判を請求することが挙げられる。
■ソース
・韓国商標法・韓国商標法施行規則
・類似商品・役務審査基準
・最高裁判所 1987.3.10 宣告、86후18判決
http://glaw.scourt.go.kr/jbsonw/jbsonc08r01.do?docID=351128E269D6B0CEE0438C013982B0CE&courtName=???&caseNum=86?18&pageid ・最高裁判所 1993.7.13 宣告 92후2120判決
http://glaw.scourt.go.kr/jbsonw/jbsonc08r01.do?docID=35124F6B9B86F012E0438C013982F012&courtName=???&caseNum=92?2120&pageid
■本文書の作成者
崔達龍国際特許法律事務所■協力
日本技術貿易株式会社■本文書の作成時期
2017.02.23