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オーストラリアにおける商号の保護

2016年06月03日

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■概要
オーストラリアにおいて、商号の保護は、商号そのもののみならず、事業名や商標に及ぶ問題といえる。事業名、商号および商標は、それぞれ異なった法制度により保護されている。事業名は、その事業を示すために使用される商号とは異なる名称(屋号、商号の略称等)であり、オーストラリアで事業を営む法人および個人にとって事業名の登記は義務となっている。商号は、設立が認可された会社の正式名称である。事業名および商号は、いずれもオーストラリア証券投資委員会(Australian Securities & Investments Commission; ASIC)に登記される。
■詳細及び留意点

【詳細】

事業名または商号が登記された場合、当該法人がオーストラリアの商事法令の要件を満たしていることを意味する。ただし、事業名または商号を登記しても、以下には注意が必要である。

(1)他者による類似の事業名および商号の登記を阻止できない。

(2)当該事業名または商号を使用するための所有権または排他的権利が付与されるわけではない。

(3)既に同一名称を商標登録している商標権者が当該登録商標を使用することを阻止できない。

(4)商標権侵害等の権利行使に対して防御できない。

 

1.事業名の登記

 2011年11月3日より施行されている事業名登記法では事業名の登記を認めているが、次の場合には登記できない。

(1)既に登記されている事業名と同一またはほぼ(nearly)同一のもの。

(2)使用が禁止されている言葉または表現を含むもの(ASICから同意を得ているものを除く)

(3)次の理由により、ASICが使用できない名称として決定しているもの。

 (a)公衆に不快感を与える可能性があること。

 (b)誤認混同のおそれがあること。(例:政府関係組織であると誤認させるもの。)

 

 ASICが発行する「事業名登記実務」(2015年版)では、既に登記されている事業名と「同一またはほぼ同一」であるかを判断するための基準が示されている。この判断を行う際、事業名登記実務では、次の事項は判断の対象としない。

(1)冠詞の使用(例:a、an、theを事業名の最初に付すこと。)

(2)事業形態の使用(例:協会、組合、合弁会社、有限会社等の使用)

(3)単語が複数形か単数形か(例:Children とChild)

(4)文字の大きさ、フォント、大文字か小文字か、アクセント、スペース、句読点

(5)単語の順序

(6)インターネット・ホスト名の使用(例:www、net、org、com)

 

 事業名登記実務では、既に登記されている事業名と「同一またはほぼ同一」であるかの判断において、同等として扱うべき単語について言及している。例えば、CorporationとCorp、AustralianとAustは、「同一またはほぼ同一」とされている。また、事業名登記実務では、同じ意味を持つため、「同一またはほぼ同一」と判断される単語または表現として、次のような例を上げている。

(1)accom、accomodationおよびholiday accomodation

(2)body care、skincareおよびskin therapy

(3)coffee bar、coffee house、coffee lounge、coffee shopおよびespresso bar

 

 事業名は、発音が同じであれば、「同一またはほぼ同一」と判断され得る。例えば、Creative@Workは、Kre8tive at work と「同一またはほぼ同一」と判断される。

 「同一またはほぼ同一」の判断基準は狭いため、類似の事業名であれば登記される。例えば、ASICは、The Pretty CupcakeはPretty Cupcakesと「同一またはほぼ同一」と判断するが、Mike’s BikesはMike’s Bikes and Skatesと「同一またはほぼ同一」ではないと判断する。

 

2.商号の登記

 2001年7月15日より施行されている会社法第147条では商号の登記を認めているが、次の場合には登記できない。

(1)既に登記されまたは仮登記されている商号と同一のもの。

(2)既に登記されまたは登記保留となっている事業名と同一のもの。

(3)会社法規則により、登記が認められていないもの。(例:不快感を与える言葉を含むもの、あるいは政府関係組織または王室関係組織であると誤認させるもの。)

会社法における上記(2)および(3)の規定は、多少の差異はあるものの、事業名登記法の規定と概ね一致している。

 登記要件に関して、会社法と事業名登記法における根本的な差異は、上記(1)に関する規定である。つまり、会社法においては、「ほぼ同一」の商号は不登記事由となっておらず、「同一」の商号のみ不登記事由となっている。したがって、商号に関しては、ASICにより類似の商号が登記されてしまう可能性が高い。また、会社法は、公衆に混同が生じるおそれがないと判断できる場合、ASICに対して同一の商号の登記を認める裁量権を与えている。

商号が「同一」であるかを判断する基準は、2001年の会社法規則に規定されており、事業名登記実務の規定と概ね一致している。

 ASICは、商号および事業名を調査するためのデータベースを提供している。商号および事業名が登記可能かどうか、あるいは市場において混同のおそれがないかどうかを判断するために、商号および事業名の調査を行うことが推奨される。さらに、オーストラリア知的財産庁の商標データベースを用いて、商標の調査を行うことが賢明である。

 

3.類似の事業名または商号

 会社法および事業名登記法は、「同一」の商号および事業名または「ほぼ同一」の事業名の登記を禁止しているが、類似の商号および事業名の登記は禁止していないため、先行権利者との間で争いが生じるおそれがある。争いが生じる場合には、公衆に混同が生じることによってブラントや名声に損害を与えるおそれがあること、もしくは先行権利を侵害していることが理由となる。例えば、登録商標に対する商標権侵害、コモンロー上の権利に対する権利侵害、または消費者保護法違反といった理由が含まれる。

 

 ある事業名の登記に対して、先行権利者が当該登記の抹消または取消を意図している場合、事業名登記法は次の二つの手段を認めている。

(1)事業名登記法第56条に基づき、先行権利者は、当該事業名の登記に対してASICへ再審請求することができ、ASICの決定に不服の場合は、行政控訴裁判所へ提訴することができる。再審は、当該事業名の登記により相当な損害を被る危険がある場合、当該事業名の登記日より15ヵ月以内に請求することができる。先行権利者が当該事業名の登記に気付かなかった正当な理由がある場合には、再審請求期限の延長が認められる。

(2)事業名登記法第51条に基づき、当該事業名が商標権侵害であることを争った訴訟において、当該商標権者が勝訴した場合、裁判所は当該事業名の登記の取消を命じることができる。

 

 会社法は、商号に関して、上記の事業名登記の抹消または取消の手段に相当する規定を有していない。自己の商号に対する名声を保護し、当該商号の使用に関する排他的権利を得ようとする場合、ASICは当該商号を商標登録すべきであると推奨している。

 

 上記の法的手段以外に、先行権利者は、類似の商号または類似の事業名の所有者に対して、直接警告することもできる。場合によっては、類似の商号または類似の事業名を有する相手方と、相互に許容できる和解条件について交渉することができる。このような警告や和解交渉においては、専門家の適切なアドバイスを得ることが必要である。

■ソース
・オーストラリア事業名登記法
・オーストラリア事業名登記実務
・オーストラリア会社法
・オーストラリア会社規則
■本文書の作成者
Spruson & Ferguson Pty Limited
■協力
日本技術貿易株式会社
■本文書の作成時期
2015.11.10
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