インドにおける特許審査および口頭審理
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中国および台湾における技術常識(中国:「公知常識」、台湾:「通常知識」)の立証責任の所在
1. 中国
1-1. 公知常識
中国専利審査指南第2部第4章3.2.1.1(3)(i)では、「公知常識」は、当該分野において技術的問題を解決する通常の手段、または教科書もしくは参考書などで開示された技術的問題を解決するための技術的手段、および当該分野において特定の技術的問題を解決する通常の手段が含まれると例示されている。すなわち、関連技術分野の具体的な技術問題を解決するために、当該分野における一般技術者が容易に想到しかつ用いる技術的手段のことを示している。「公知常識」の判断主体は「発明が属する技術分野の通常知識を有する者」であり、通常知識とは、世間の民衆全員が知っている事実であるとは限らず、出願日より前に当該分野の一般技術者に公知となっていた一般的な技術常識を示している。
この他、以前は革新的と認められていた技術が、科学技術の発展に伴い、多くの分野、商品で広範に利用され、また多くの特許文献もしくは科学出版物等で開示され、多くの特許文献で引用された結果、これらの広範に開示された技術は、当該分野の技術者に熟知され「公知常識(公知技術)」になると中国における実務でも認められている。
1-2.「公知常識」の立証責任
(1) 実体審査段階
中国専利審査指南第2部第8章4.10.2.2(4)では「審査官が審査意見通知書(拒絶理由通知書)において引用した当分野の「公知常識」は、確実なものでなければならない。出願人が審査官の引用した「公知常識」について異議を申し立てた場合には、審査官は理由を説明するか、あるいは相応の証拠を提供して、これを証明できるようにしなければならない」と規定されている。出願人が審査官の引用した「公知常識」について異議を申し立て、かつ審査官に立証を求めた場合、審査官は申立てを直接却下することはできず、改めて審査意見書を通知することになる。
審査意見において、通常は「公知常識」は引用文献と組み合わせて用いられる。「公知常識」が当該特許の技術的特徴を開示し、引用文献がその他の技術的特徴を開示している場合、公知常識と引用文献を組み合わせて当該特許の進歩性が否定される。
なお、公知常識を示す証拠の類型について、2023年の中国専利審査指南の改正により、復審・無効審判の規定と同様に、実体審査に関する中国専利審査指南第2部第4章3.2.1.1の文献の列挙に「技術用語辞典、技術マニュアル」が追加され、技術用語辞典、技術マニュアルからも公知常識の関連情報を探すことが可能であることが明確にされた。
(2) 無効審判段階
中国専利審査指南第4部第8章4.3.3では、当事者である請求人もしくは被請求人が、ある技術的手段は「公知常識」であると主張した場合には、その主張を行った者がその主張に対して立証責任を負うことになる、と規定されている。立証の形式には、教科書、技術用語辞典、技術マニュアル等の提出といった法律で規定された一般的方法による立証や、当該技術的手段が既に広範にわたり使用されていることを証明する証拠、例えば、特許文献、学術文章、商品説明等を提出し立証することが可能である。
(3) 行政訴訟段階
中国最高人民裁判所が2020年9月10日に公布した「最高人民法院による専利の権利付与・権利確定に係る行政事件の審理における法律適用の若干問題に関する規定(一)」の第28条において、「公知常識」や「慣用設計」に関する立証責任について、以下のように規定されている。
「当事者が、関連する技術内容が公知常識に属すると主張する場合、または関連する意匠の特徴が慣用設計に属すると主張する場合、人民裁判所は、当該当事者に対して、証拠を提供し証明するよう、または説明を行うよう要求することができる。」
2. 台湾
2-1. 通常知識
台湾審査基準第2篇第3章の特許要件「3.2.1当該発明の属する技術分野における通常知識を有する者」では、以下のように規定されている。
「当該発明の属する技術分野における通常知識を有する者とは、出願時における当該発明の属する技術分野の一般知識(general knowledge)および普通技能(ordinary skill)を有し、出願時の先行技術を理解し利用できる者として、想定された者を指す。」
さらに、以下のように説明されている。
「一般知識には、参考書や教科書などに記載された周知(well-known)の知識が含まれ、普遍的に使用(commonly used)される情報や経験則から理解される事項も含まれる。普通技能とは、日常業務や実験を行うための普通の能力を指す。一般知識および普通技能を合わせて「通常知識」と称する。」
2-2.「通常知識」の立証責任
(1) 実体審査段階
台湾審査基準第2篇第3章の特許要件「3.6審査時の注意事項」(5)では、以下のように審査官が進歩性を否定する場合、「一般知識」すなわち「通常知識」については、その理由を十分説明をしなければならないとされ、「通常知識」の立証責任はそれを主張する審査官にある。
「特許出願に係る発明は進歩性を有しないと認定する場合には、原則として関連する先行技術の引用文献を添付しなければならない。ただし、当該技術が一般知識である場合には、引用文献を添付しないこともできるが、審査意見通知(拒絶理由通知)および拒絶査定書において、理由を十分に説明しなければならない。」
(2) 無効審判段階
現行台湾専利審査基準には、無効審判段階での「通常知識」の立証責任に関する特別な規定はない(台湾専利審査基準第5篇第1章2.4.3)。無効審判の証拠は審判請求人により提出されるが、法理上、当事者が自らに有利な事実を主張する場合、その主張をする者が立証責任を負うべきであるとされているため、審判請求人が「通常知識」の立証責任を負うべきと考えられる(次節(3)の裁判例を参照。)。
(3) 行政訴訟段階
台湾知慧財産法院は、台湾智慧財産局が提出した証拠に関して、それが「通常知識」であることを立証せずに拒絶査定を下したことについて、台湾智慧財産局による当該拒絶査定を取り消す旨の判決を下したことがある(知慧財産法院2011年度行専訴字第71号行政判決)。当該判決では、以下のように、「通常知識」の立証は客観的な事実に基づくものであり、通常知識の存在を主張する者(当該判決では台湾智慧財産局)が、通常知識の存在を立証する責任を負うべきであるとされた。
「「通常知識」とは、当該発明の属する技術分野において既知の一般知識を指し、公知の若しくは普遍的に使用される情報及び教科書若しくは参考書に記載された情報、または経験則から理解される事項を含む。したがって、当該発明の属する技術分野の者が有する通常知識は、他の分野の者にとっては当該分野の専門知識である可能性があるが、当該発明の属する技術分野の者にとっては一般的かつ通常的な知識である。その知識が当該発明の属する技術分野における特殊な知識であり、当該発明の属する技術分野の通常知識を有する者が普遍的に有する知識ではない場合、その知識を発明の進歩性有無の判断基準として援用することはできない。また、『通常知識』が当該発明の属する技術分野に存在するか否かは、具体的な証拠によって証明できる客観的な事実であり、当該発明の属する技術分野の者の根拠のない主観的な判断に基づくものではない。通常知識は、当該発明の属する技術分野の者にとっての一般的かつ通常的な知識である上、公知のまたは普遍的に使用される情報及び教科書または参考書に記載された情報でない場合、経験則から理解される事項に該当すると言えるため、通常知識の情報が記載された教科書や参考書を提出し通常知識の存在を証明したり、または具体的な証拠を提出し特定の経験則の存在及び経験則から通常知識を推測し得ることを証明したりできる。もし当事者間で特定の通常知識が存在するか否かの事実について争いがある場合、特定の通常知識の存在を主張する者が、当該特定の通常知識の存在を立証する責任を負うべきであり、特定の通常知識の存在を主張する者が当該発明の属する技術分野の者であるという理由だけで、特定の通常知識の存否をその者の主観的かつ恣意的な判断に基づき認定してはならない。」(太字、下線は執筆者記入)
インドネシアにおける特許・実用新案・意匠年金制度の概要
1. 特許権
1-1. 存続期間
インドネシアにおける特許権の権利期間は、出願日(PCT条約に基づく特許出願の場合は国際特許出願日)から20年である。権利期間は延長できない(インドネシア特許法第22条(1)および(2) )。
なお、以下、本記事の根拠規定の表示において、単に「特許法」とある場合は、本記事末にある【ソース】に紹介する「インドネシア特許法(2016年法律第13号)および解説(英語または日本語)」を参照し、「2024年特許法」とある場合は、同じく【ソース】に紹介する「インドネシア特許法改正法(2024年法律第65号)および解説(インドネシア語または日本語)」を参照されたい。
1-2. 年金の納付期限
年金の納付手続は、出願の審査中には発生せず、特許が付与されてから発生する。出願に対して特許が付与されると、出願日から起算した初年度分から特許が付与された年の翌年分までの年金を特許付与日から6か月以内に納付しなければならない。この特許付与時の納付年金を累積年金と言う(*下記参照)。累積年金の納付後の各年の年金は、毎年の出願日に対応する日の1か月前までに、次年度分を納付しなければならない(2024年特許法第126条(1)から(3)、およびこれに添付の「解説」の「II.逐条解説」第126条の説明参照)。
*累積年金とは、一般的には、年金納付義務が特許査定前から存在し、かつ特許査定が下されてから納付が開始される国において、登録の手続の際に納付すべき年金のことを指す。指定された年度から査定された年度までをカバーする年金をまとめて納付し、それ以降は年払いに移行する。なお、査定された時期と年金納付日の関係によっては、指定された年度から査定された年度の次の年度の分までを納付することになる場合もある。インドネシアにおける累積年金の納付に関する規定には、納付時期等やや異なる面もあり、詳細は上記のとおりである。
1-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
納付期限日までに年金が納付されなかった場合、権利は取消となる(2024年特許法第128条(1)))。なお、期限までに年金を納付しなかった場合、6か月間の猶予期間が与えられるが、未納付に係る年金に対し100パーセントの罰金(倍額納付)が科される(2024年特許法126条(4))。なお、非常事態が生じたことにより納付期限を徒過した場合は、特許権者は緊急事態の期間終了後の3日の期間内に年金を納付することができる(特許出願に関するインドネシア共和国法務・人権省令 2018年第38号)第101条)。
1-4. 権利回復制度
商務裁判所の判決に基づいて行われる場合を除き、インドネシアには、失効した特許権に対する権利回復手続は原則ない(特許法第141条)。
1-5. 年金の誤納
実務上、意図しない特許権に対して年金を誤って納付してしまった場合や、所定の納付金額以上の額を誤って納付した場合にも、一度納付した年金は返還されないことがあるため注意されたい。
1-6. その他
年金の納付金額は、請求項の数により変動する(インドネシア知的財産総局(以下、「知的財産総局」という。)サイト内 料金表)。年金の納付は、特許権者または代理人により行うことができるが、特許権者がインドネシア共和国内に住所または居所を有さない場合は、インドネシア在住の代理人により行われなければならない(特許法第127条(1)、(2))。
上記の通り、年金納付期限日または猶予期間経過までに年金が納付されない場合、特許権は取消となるが、権利の取消を求める内容の法務人権大臣宛の書面を知的財産総局に提出することにより、自発的に権利の放棄を行うことも可能である(特許法130条(a)、131条(1))。特許権者の申立てによる権利の取消の場合も、特許法141条が適用されるため、特許権の権利回復手続は、原則ない。
登録後の年金は、旧法においては、連続して3年間納付しなかった場合に初めて権利が消滅し、その間の年金は負債として残るという制度であったが、2016年のインドネシア特許法の改正により、1年度分だけでも納付されなかった場合には権利が消滅する制度となった。
なお、2024年特許法128条(1)は、納付期限までに特許年金の納付がなかった場合は、「取消しが宣言される(dinyatakan dihapus)」と規定しており(旧法から変更なし)、日本の特許法第112条5項または6項のように、期限までに納付しなかった場合に遡って権利が消滅した又は初めから権利が存在しなかったものとみなされるという規定になっていないため、納付期限経過後も権利が消滅せず、年金債務が発生する可能性があるという点は注意する必要がある。また、権利消滅後も既に発生した年金債務(未納分)については支払義務があるところ、完納しない限り当該権利者の新規の出願が処理されないという事態が発生している。2024年特許法も、権利消滅後の既発生の未納年金債務について特段の規定を設けていないため、今後も同様の事態が発生する可能性があることに注意が必要である。
2. 実用新案権
2-1. 存続期間
実用新案権の権利期間は、出願日から10年である。権利期間の延長はできない(特許法第23条(1)および(2))。
2-2. 年金の納付期限
特許法121条により、原則として同法の特許に関する規定は実用新案権にも準用されることから、年金に関する規定は、特許権の場合と同じである。年金の納付手続は、出願の審査中には発生せず、実用新案権が付与されてから発生する。出願が登録を受けると、出願日から起算した初年度分から実用新案権が付与された年の翌年分までの年金(累積年金)を実用新案付与日から6か月以内に納付する必要がある(2024年特許法第126条(1)、(2))。累積年金の納付後の各年の年金は、毎年の出願日に対応する日の1か月前までに、次年度分を納付しなければならない(同条(3))。
2-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
追納に関する規定は、特許と同様である(特許法第128条)。
2-4. 権利回復制度
特許権と同様、商務裁判所が決定した場合を除き、取消された実用新案権に対する権利回復の手続は原則ない(特許法第141条)。
2-5. 年金の誤納
実務上、意図しない実用新案権に対して年金を誤って納付してしまった場合や、所定の納付金額以上の額を誤って納付した場合であっても、一度納付した年金は返還されないことがあるため注意されたい。
2-6. その他
年金の金額は請求項の数により変動する(知的財産総局サイト内 料金表)。年金の納付は、実用新案権者または代理人により行うことができるが、実用新案権者がインドネシア共和国内に住所または居所を有さない場合は、インドネシア在住の代理人により行われなければならない(特許法第127条(1)、(2))。
上記の通り、年金納付期限日または猶予期間経過までに年金を納めない場合、実用新案権は取消されるが、権利を放棄したい旨を記した法務人権大臣宛の書面を知的財産総局に提出することにより、自発的に放棄を行うことも可能である。書面提出による権利放棄の場合も、実用新案権の権利回復手続は原則ない。
3. 意匠権
3-1. 存続期間
意匠権の権利期間は、出願日から10年である(インドネシア意匠法第5条(1))。権利期間の延長に関する規定はない。
3-2. 年金の納付期限
インドネシアにおいて意匠権を維持するための年金納付に関する規定はなく、納付の必要はない。
3-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
該当なし。
3-4. 権利回復制度
該当なし。
3-5. 年金の誤納
該当なし。
3-6. その他
意匠権者が権利を放棄したい場合は、意匠登録の取消を求める旨を記載した書面を知的財産総局に提出することにより、自発的な放棄が可能である(インドネシア意匠法37条(1)、43条)。意匠法には権利回復に関する規定が設けられていない。
台湾における専利(特許/実用新案/意匠)の案件状態の調べ方-台湾経済部智慧財産局(TIPO)での専利査定または無効審判
1. 案件状態および経過情報確認
(1) 台湾経済部智慧財産局(TIPO、中国語(繁体語)「台灣經濟部智慧財產局」、https://www.tipo.gov.tw/tw/mp-1.html)のウェブサイトを開く。

(2) 図1のトップページ「專利」のアイコンをクリックすると図2の専利の画面が表示される。

(3) 図2の申請專利の下にある赤枠の「專利檢索」をクリックすると、図3の「專利檢索」の選択肢画面が表示される。

(4)出願経過情報検索は 図3赤枠の「2. 專利審查公開資訊查詢」を選択する。クリックすると図4の検索画面が表示される。

初期設定では「中文」のタブが表示されている。日本語表示で検索する場合は赤枠「日本語」をクリックする。青枠「番号」の欄に出願番号、公開番号、登録番号のいずれかの番号を入力し、緑枠の「認証コード」欄の右側に表示される英字を入力し「検索」をクリックすると検索結果が表示される。
入力した番号の桁数が適切でない場合、「查詢失敗:查詢號碼輸入錯誤,請確認長度是否正確。(検索失敗:番号の入力に誤りがあります。桁数が正しいか確認してください。)」と表示される。また、検索結果が見つからない場合、図5に示すように「データなし!!」と表示されるが、「番号」の欄に適切な番号を入力すると改めて検索することが可能である。

図4の右側の「說明」の「發明案件(特許)」、「新型案件(実用新案)」、「設計案件(意匠)」、「舉發案件(無効審判請求案件)」の確認したい項目をクリックすると、検索対象とされる案件の範囲と内容の解説がそれぞれ表示される。例えば、「發明案件」をクリックすると、図6の画面が表示される。

(5) 図7aおよび図7bは図4の番号欄に意匠出願番号「108307488」を入力し検索した案件の詳細画面の例である。

図7aに示す案件詳細画面の上部には以下のような案件の書誌事項が表示される。
・出願番号
・出願日
・出願人
・登録番号
・代理人
・発明の名称
・同じ創造が複数の出願の声明:1件の出願において複数の意匠が含まれているか。
・特許の種類
・Dossier Information Exchange(各国の特許出願情報):各国に出願されたファミリー特許があれば、その情報を見ることができる。
・ケースのステータス(案件状態)
・関連情報:無効審判請求の記録が表示される。青字の番号をクリックすると、詳細を確認することができる(後述「2. 無効審判案件の検索」では別の検索方法を紹介している。)。

図7bが示す案件詳細画面の下部「收發文歷程(経過情報)」には、審査過程で出願人が提出した文書およびTIPOが発行した文書のリストが表示される。
青枠の表示は出願人からの提出文書(收文)、緑枠表示はTIPOが発行した文書(發文)である。
各項目の右側に表示される青字の文書名をクリックすると、該当文書が表示される。

図8は中国語の案件詳細画面である。図7bの日本語版画面の翻訳表示に適切でない部分があるため、中国語版画面を例に掲載されている書類を紹介する。
・申請設計專利(意匠出願)
・初審審查意見通知函(拒絶理由通知)
・申覆核駁理由(意見書)
・初審核准審定(登録査定)
・請領專利證書(特許性証明書の申請)
・函知證書作廢勿再使用(証明書が無効であり、再使用しないことを通知)
(6) 中国語版画面では、書類の全選択ボタンがある。また、書類を選択すると「下載」ボタンが表示され、ダウンロードすることができる。
例えば、「申請書」を選択し、「下載」ボタンをクリックすると、図9の画面が表示される。ダウンロードには、「即時下載(直接ダウンロード)」または「寄送連結下載(ダウンロードリンクを送信)」の選択肢がある。

「即時下載(直接ダウンロード)」を選択した場合、操作したPCのダウンロード・フォルダにZip形式でPDFファイルとファイルリストをダウンロードすることができる。

「寄送連結下載(ダウンロードリンクを送信」を選択した場合、ダウンロード用リンクの送信先メールアドレスを入力すると、図11の画面が表示される。

15分から30分待つと入力したメールアドレスにダウンロード用のURLが送られてくる。そのURL(メール本文には青字で「檔案」と表示されている)をクリックすると、ファイルおよびファイルリストをダウンロードすることができる。ファイルの容量が50MBを超える場合、「ダウンロードリンクを送信」のみが選択可能である。
図12は、ダウンロードした書類(願書)の例である。

2. 無効審判案件の検索
(1) すべての無効審判案件を検索する場合は、図13(図3再掲)の「専利檢索」画面で「4.中華民國專利資訊檢索系統」を選択すると図14の検索画面が表示される。

(2) 図14の赤枠の「檢索設定(検索設定)」欄に無効審判案件の記号「N01」と入力してオレンジ枠の「檢索(検索)」をクリックすると、図15の検索結果の一覧が表示される。


図15の青枠の「案件狀態」で「核准」と表示されている案件は無効審判を経て登録維持となったもの、「消滅」と表示されている案件は無効になったもの、「撤銷」と表示されている案件は取下げになったものである。
赤枠の「公開公告號(公開・登録番号)」をクリックすると、案件の詳細を確認することができる。また、虫めがねアイコンをクリックすると、一覧の上部に図16の入力欄が表示され、検索結果に対して更に条件を設定して再検索することができる。


図17の赤枠の「公開公告號(公開・登録番号)」列の「D208123」をクリックすると、図18の案件詳細画面が表示される。

(4) 図18の案件詳細画面で赤枠の「雜項(その他)」をクリックすると、図19の画面が表示される。

本件は、登録となった後に、無効審判が請求され、審判の結果、無効とされたものであるが、図19の赤枠の「理由」の欄に、その経緯が記載されている。
(注)上記第2項で使用した検索サイト「中華民國專利資訊檢索系統」の使用方法については、下記関連記事も参照されたい。
関連情報:
「台湾における専利(特許/実用新案/意匠)公報の調べ方―台湾経済部智慧財産局(TIPO)ウェブサイト」(2022.10.27)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/etc/26842/
日本と香港における特許分割出願に関する時期的要件の比較
1. 日本における特許出願の分割出願に係る時期的要件
日本国特許法第44条は、下記の(1)~(3)のいずれかの時または期間内であれば、2以上の発明を包含する特許出願の一部を1または2以上の新たな特許出願とすること(分割出願すること)ができることを規定している。
(1) 願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる時または期間内(第44条第1項第1号)
なお、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について、補正をすることができる時または期間は、次の(i)~(iv)である。
(i) 出願から特許査定の謄本送達前(拒絶理由通知を最初に受けた後を除く)(第17条の2第1項本文)
(ii) 審査官(審判請求後は審判官も含む。)から拒絶理由通知を受けた場合の、指定応答期間内(第17条の2第1項第1号、第3号)
(iii) 拒絶理由通知を受けた後第48条の7の規定による通知を受けた場合の、指定応答期間内(第17条の2第1項第2号)
(iv) 拒絶査定不服審判請求と同時(第17条の2第1項第4号)
(2) 特許査定(次の(i)および(ii)の特許査定を除く)の謄本送達後30日以内(第44条第1項第2号)
(i) 前置審査における特許査定(第163条第3項において準用する第51条)
(ii) 審決により、さらに審査に付された場合(第160条第1項)における特許査定
なお、特許「審決」後は分割出願することはできない。また、上記特許査定の謄本送達後30日以内であっても、特許権の設定登録後は、分割出願することはできない。また、(2)に規定する30日の期間は、第4条または第108条第3項の規定により第108条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間に限り、延長されたものとみなされる(第44条第5項)。
(3) 最初の拒絶査定の謄本送達後3月以内(第44条第1項第3号)
第44条第1項第3号に規定する3か月の期間は、第4条の規定により第121条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間に限り、延長されたものとみなされる(第44条第6項)。
日本国特許法第44条(特許出願の分割) 特許出願人は、次に掲げる場合に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる。 一 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる時又は期間内にするとき。 二 特許をすべき旨の査定(第百六十三条第三項において準用する第五十一条の規定による特許をすべき旨の査定及び第百六十条第一項に規定する審査に付された特許出願についての特許をすべき旨の査定を除く。)の謄本の送達があつた日から三十日以内にするとき。 三 拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があつた日から三月以内にするとき。 (第2項以下省略) |
2. 香港における特許出願の分割出願の時期的要件
香港における特許出願には、標準特許(R)出願、標準特許(O)出願、短期特許出願があり(香港特許条例(以下「条例」という。)第2条(1))、それぞれの出願について、分割出願することのできる時期的要件が異なる。
(1) 標準特許(R)について分割出願ができる時期
香港における標準特許(R)出願は、香港特許庁に直接出願するものではなく、指定特許庁※に出願された特許出願(指定特許出願)が公開された段階で、香港特許庁へ記録請求手続を行うものである(条例第15条(1))。その後、指定特許出願に対して指定特許庁で特許付与された段階で、その指定特許について香港特許庁へ登録付与請求手続を行うことで香港における標準特許(R)が付与される(条例第23条(1)、条例第27条(1))。
※ 指定特許庁として、以下の3つの特許庁が指定されている(条例第8条)※。
・中華人民共和国国家知識産権局
・欧州特許庁(英国を指定した特許に限る)
・英国特許庁
※香港特許庁ホームページ掲載サイト「Standard patent(R)」の「Designated patent application(指定特許出願)」参照 https://www.ipd.gov.hk/en/patents/faqs/standard-patent-r/index.html
標準特許(R)出願からの分割出願を香港特許庁へ直接行うことはできないが、標準特許(R)出願に対応する指定特許出願が指定特許庁で分割された場合に、その分割指定特許出願の公開日または記録請求公開日(当該標準特許(R)出願(親出願)の香港における公開日)のいずれか遅い方の後6か月以内に、その分割指定特許出願の記録請求(親出願の分割出願に相当)をすることができる(条例第22条(1))。
(2) 標準特許(O)について分割出願ができる時期
標準特許(O)出願とは、2019年に導入された制度であり、香港特許庁に直接行う特許出願をいい、香港特許庁の登録官によって実体審査が行われる(条例第2条(1)、第37A条、第37U条)。
標準特許(O)出願からの分割出願については、香港特許庁に直接行うことができる(条例第37Z条)。標準特許(O)について分割出願できる時期は、標準特許(O)出願(親出願)が登録査定された場合は登録公告の準備が完了する前まで(条例第37Z条(3)(a)(iii))、また標準特許(O)出願(親出願)について拒絶理由通知を受領した場合は、通知の日後2か月以内である(条例第37Z条(3)(a)(iv)、香港特許(一般)規則第31ZS条(2))。なお、標準特許(O)出願(親出願)が取下げられたか、取下げられたとみなされた後は、分割出願をすることができない(条例第37Z条(3)(a)(i),(ii))。
(3) 短期特許出願について分割出願ができる時期
標準特許(R)出願または標準特許(O)出願とは別に、香港特許庁へ直接出願する短期特許出願(日本の実用新案に相当、権利期間は出願から8年)もある(条例第2条(1)、第126条(1))。短期特許出願の場合には、その公開準備が完了する前まで、分割短期特許出願を行うことができる(条例第116条)。
香港特許条例 第22条 分割指定特許出願の場合の記録請求の規定 (1) 標準特許(R)出願において、次に該当する場合は、出願人は、分割指定特許出願の公開日又は本条例に基づく記録請求公開日の何れか遅い方の後6月以内に、登録官に対し、その分割指定特許出願を登録簿に記入するよう請求することができる。 (以下省略) |
香港特許条例 第37Z条 分割標準特許(O)出願 (1) (2)は、次の場合に適用される。 (a) 標準特許(O)出願(先の出願)がなされている場合、および (b) 出願人又は出願人の権原承継人が、(3)に定める条件を満たす新たな標準特許(O)出願をする場合 (2) 第103条(1)に従うことを条件として、 (a) 先の出願の出願日は、新たな出願の出願日とみなされる。また (b) 新たな出願は、優先権の利益を享受する。 (3) 条件は、次の事項である。 (a) 新たな出願が、次の通りなされること (i) 先の出願が取り下げられる前に (ii) 先の出願が取り下げられたものとみなされる前に (iii) 標準特許(O)が先の出願のために付与されている場合は、特許明細書の第37X条 (2)(a)に基づく公開のための準備が完了する前に、または (iv) 先の出願が登録官により拒絶された後所定期間内に、ならびに (b) 新たな出願が、 (i) 先の出願に含まれる主題の何れかの部分に関してなされること、および (ii) 所定の要件を遵守していること |
香港特許条例 第116条 分割短期特許出願 短期特許出願がなされた後、特許明細書の公開の準備が完了する第122条に基づく日付の前に、短期特許の新規出願が、所定の規則に従い原出願人または当該人の権原承継人によりなされた場合であって、出願が次に該当する場合は、当該新規出願は、先の短期特許出願の出願日をその出願日として有するものとして取り扱い、如何なる優先権の利益をも有する。 (a) 先の短期特許出願に含まれる主題の何れかの部分に関するものである場合 (以下省略) |
(条例の他の条文、および香港特許(一般)規則第31ZS条は、【ソース】の規定を参照されたい。)
日本と香港における特許分割出願に関する時期的要件の比較
日本 | 香港 | ||
分割出願の時期的要件(注) | 補正ができる期間 | 標準特許(R)出願 | 分割指定特許出願の公開日または記録請求公開日の何れか遅い方から6か月以内 |
標準特許(O)出願 | ・親出願が、登録査定された場合は、登録公告の準備が完了する前まで ・親出願が、拒絶理由通知を受領した場合は、通知の日後2か月以内 | ||
短期特許出願 | 公開準備が完了する前まで |
日本と香港における特許出願書類の比較
1. 日本における特許出願の出願書類
(1) 出願書類
所定の様式により作成した以下の書面を提出する(特許法第36条第2項)。
・願書
・明細書
・特許請求の範囲
・必要な図面
・要約書
(i) 願書
願書には、特許出願人および発明者の氏名(出願人が法人の場合は名称)、住所または居所を記載する(特許法第36条第1項柱書)。
(ⅱ) 明細書
明細書には、発明の名称、図面の簡単な説明、発明の詳細な説明を記載する(特許法第36条第3項)。
発明の詳細な説明は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載しなければならない(特許法第36条第4項第1号)。
(ⅲ) 特許請求の範囲
特許請求の範囲には、請求項に区分して、各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない(特許法第36条第5項)。
(ⅳ) 要約書
要約書には、明細書、特許請求の範囲または図面に記載した発明の概要等を記載しなければならない(特許法第36条第7項)。
(2) 手続言語
書面は、日本語で記載する(特許法施行規則第2条1項)。
(3) 手続言語以外で記載された明細書での出願日確保の可否
書面は日本語で作成するのが原則であるが、英語その他の外国語(その他の外国語に制限は設けられていない)により作成した外国語書面を願書に添付して出願することができる(特許法第36条の2第1項、特許法施行規則第25条の4)。この場合は、その特許出願の日(最先の優先日)から1年4か月以内(分割出願等の場合は出願日から2か月以内)に、外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない(特許法第36条の2第2項)。ただし、特許法条約(PLT)に対応した救済規定がある(特許法第36条の2第6項)。
(4) 優先権主張手続
外国で最初に出願した日から12か月以内に、パリ条約による優先権の主張を伴う日本特許出願をすることができる(パリ条約第4条C(1))。優先権主張の基礎となる出願の出願国と出願日を記載した書類を、最先の優先日から1年4か月または優先権の主張を伴う特許出願の日から4か月の期間が満了する日のいずれか遅い日までの間に、特許庁長官に提出しなければならない(特許法第43条第1項、特許法施行規則第27条の4の2第3項第1号)。優先権主張書の提出は、特許出願の願書に所定の事項を記載することで、省略することができる(特許庁「出願の手続」第二章第十二節「優先権主張に関する手続」)。また、最先の優先日から1年4か月以内に、特許庁長官に優先権証明書類を提出しなければならない(特許法第43条第2項)。
ただし、日本国特許庁と一部の外国特許庁、機関との間では、優先権書類の電子的交換を実施しており、出願人が所定の手続を行うことで、パリ条約による優先権主張をした者が行う必要がある書面による優先権書類の提出を省略することが可能となっている(特許法第43条第5項)。
<参考URL>
特許庁:優先権書類の提出省略について(優先権書類データの特許庁間における電子的交換について)
https://www.jpo.go.jp/system/process/shutugan/yusen/das/index.html
2. 香港における特許出願の出願書類
香港における標準特許出願には、標準特許(R)出願と標準特許(O)出願があり(香港特許条例(以下「条例」という。)第2条(1))、それぞれの出願について必要とされる出願書類等が異なる。
2-1. 標準特許(R)出願
香港における標準特許(R)出願は、香港特許庁に直接出願するものではなく、指定特許庁に出願手続きを行い(指定特許出願)、指定特許出願が公開された段階で、香港特許庁に対して「記録請求手続」を行うものである(条例第15条(1))。その後、指定特許出願が指定特許庁により特許付与された段階で、その指定特許に基づき香港特許庁に対して「登録および付与請求」の手続をすることで香港における標準特許が付与される(条例第23条(1)、第27条(1))。
指定特許庁として、以下の3つの特許庁が指定されている(条例第8条)※。
・中華人民共和国国家知識産権局
・欧州特許庁(英国を指定した特許に限る)
・英国特許庁
※香港特許庁ホームページ掲載サイト「Standard patent(R)」の「Designated patent application(指定特許出願)」参照 https://www.ipd.gov.hk/en/patents/faqs/standard-patent-r/index.html
したがって、香港において標準特許(R)の権利化を求める場合は、中国出願、英国出願あるいは欧州出願(英国指定を含む)を行う必要がある。
(1) 出願書類
香港特許庁に対する記録請求手続は、指定特許庁での出願公開日から6か月以内に下記の情報および書類の提出が求められる(条例第15条(1)および(2))。
(i) 指定特許出願と共に公開された説明、クレーム、図面、調査報告または要約を含む、公開された指定特許出願の写し
(ⅱ) 指定特許出願が発明者の名称を含まない場合は、出願人が発明者と信じる者を特定する陳述書
(ⅲ) 請求人の名称および住所
(ⅳ) 請求人が指定特許出願に出願人として記載されている者とは別の場合、標準特許(R)出願の権利を説明する陳述書およびその陳述書を裏付ける所定の書類
(ⅴ) 優先権(条例第11B条)が主張されている場合は、次の詳細を示す陳述書
(a) 主張されている優先日
(b) 先の出願が提出された国
(ⅵ) 指定特許庁の法律の適用上新規性を害さない開示であった発明の先の開示について指定特許庁の法律に従って主張がなされていた場合は、当該先の開示についての所定の詳細を示す陳述書
(ⅶ) 書類送達のための香港における宛先
(2) 手続言語
特許出願は、公用語の一つで行わなければならない(条例第104条(1),(3))。香港の公用語は、中国語と英語である(香港基本法第9条)。
(3) 手続言語以外で記載された明細書での出願日確保の可否
指定特許出願の、手続言語へのまたは公用語の一つへの翻訳文は、必要とされない(香港特許(一般)規則(以下「規則」という。)第56条(4))ので、仮に香港特許庁への「記録請求」時に提出される指定特許出願の公開明細書の写し(上記提出書類(i))が手続原語以外で記載されていたとしても、公用語への翻訳文の添付なしで出願日が確保されると解されるが、指定特許庁は、上記2-1.に記載したとおりであるから、指定特許出願は一般的に中国語または英語で指定特許庁に出願されているため、手続原語以外で記載された明細書(写し)をもって香港特許庁に「記録請求」するケースはないと考えられる。
(4) 優先権主張手続
記録請求時における優先権主張の陳述書の提出(条例第15条(2)(e))、および登録付与請求時における優先権主張の裏付け書類の複写の提出(条例第23条(3)(c))を条件として優先権が与えられる(条例第11B条)。指定特許出願が享受する優先日が標準特許(R)出願の優先日とみなされる(条例第11C条)。
2-2. 標準特許(O)出願
標準特許(O)出願とは、2019年に導入された制度であり、香港特許庁に直接行う特許出願をいい、香港特許庁の登録官によって実体審査が行われる(条例第2条(1)、第37A条、第37U条)。
(1) 出願書類
標準特許(O)出願は,次のものを含まなければならない(条例第37L条(2))。
(ⅰ) 標準特許(O)の付与を求める願書
(ⅱ) 次の事項を記載した明細書
・出願の主題である発明の説明
・少なくとも1のクレーム
・説明またはクレームにおいて言及される図面
(ⅲ) 要約
(ⅳ) 新規性を損なわない開示の主張を望む場合は、要求される陳述書および証拠
(ⅴ) 出願人が先の出願の優先権の利用を望む場合、優先権陳述書および先の出願の謄本
(ⅵ) 発明がその実施のために微生物の使用を必要とする場合は、当該微生物の試料を公衆が利用できる可能性に関する情報
(2) 手続言語
特許出願は、公用語の一つで行わなければならない(条例104条(1))。香港の公用語は、中国語と英語である(香港基本法第9条)。
(3) 手続言語以外で記載された明細書での出願日確保の可否
特許出願は公用語で行わなければならず、提出する書類が公用語によらない場合は、公用語への翻訳文を含まなければならない(条例第104条(1)、規則第56条(1))。
(4) 優先権主張手続
先の出願の優先権の利用を希望する標準特許(O)出願人は、先の出願の出願日後12か月の期間中、優先権の主張を伴った出願をすることができ(条例第37C条(2)、規則第31C条(1)(b))、優先権陳述書は当該後の出願とともに提出しなければならない(条例第37E条(1)、規則第31C条(3))。ただし、所定の手数料を支払いかつ出願公開の請求が行われていない場合は、優先権陳述書は、主張される最先の優先日後16月以内に提出することができる(条例第37E条(1)、規則第31C条(4),(5))。また、先の出願の謄本は、主張される最先の優先日後16月以内に提出することができる(条例第37E条(1)、規則第31C条(7))。なお、標準特許(O)出願の優先日とは、優先権が主張される先の出願の出願日である(条例第37F条(1))。
インドにおける特許の実施報告制度(2024年特許規則改正)
1. 特許発明の実施に適用される一般原則
インド特許法第83条は、特許発明の実施に適用される一般原則について規定している。とりわけ、第83条(a)項において、特許は、発明を奨励し、インドで特許発明が確実に実施されることを保証するために付与されるものであることが規定されている。
第83条 特許発明の実施に適用される一般原則 本法の他の規定を害することなく、この章によって付与された権限を行使するに当たっては、次の一般原則を参酌しなければならない。 (a) 特許は、発明を奨励するため、および当該発明がインドにおいて商業規模で、かつ、不当な遅延なしに適切に実行可能な極限まで実施されることを保証するために、付与されるものであること。((b)以降省略) |
インド特許法第83条は、一般原則を規定しているにすぎず、本条文そのものが実施を強制するものではないものの、インドで特許発明を実施することの必要性(インドにおける特許発明の実施義務)を規定している。
一方で、インド特許法第146条は、特許権者および実施権者に対して、特許発明のインドにおける商業的実施状況を報告することを求めている。特許権者および実施権者によって提出される特許発明の実施に関する情報は、インドにおいて(インド特許法が規定する)特許制度が機能しているか否かを示す有益な情報である。
第146条 特許権者からの情報を要求する長官権限 (1) 長官は、特許の存続期間中はいつでも、書面による告知をもって特許権者または排他的かもしくは非排他的かを問わずライセンシーに対して、当該告知の日から2か月以内または長官の許可する付加期間内に、インドにおける特許発明の商業的実施の程度について当該告知書に明示された情報または定期的陳述書を長官に提供すべき旨を要求することができる。 (2) (1)の規定を害することなく、各特許権者および(排他的かもしくは非排他的かを問わず)各ライセンシーは、所定の方法、様式および間隔(6か月以上)をもって、インドにおける当該特許発明の商業規模での実施の程度に関する陳述書を提出しなければならない。 (3) 長官は、(1)または(2)に基づいて受領した情報を所定の方法により公開することができる。 |
2. 国内実施報告制度
(1) 報告義務者
現存する特許権の特許権者および実施権者は、特許発明の国内実施報告書を特許庁長官に提出しなければならない(インド特許法第146条(2))。特許審査中にある特許出願人、および消滅した特許の元特許権者には、国内実施報告書を提出する義務は無い。
(2) 報告対象
すべての特許発明が国内実施報告義務の対象である(インド特許法第146条(2))。報告対象には、実施されていない特許発明も含まれる。ただし、消滅した特許発明および特許審査中の発明は報告対象ではない。国内実施報告の対象となる期間は、図1に示すように、特許が付与された会計年度の直後に始まる会計年度(4月1日~3月31日)から3年(3会計年度分)であり、1回の国内実施報告で特許権者および実施権者は当該期間(3年分)における特許発明の実施の有無および程度を報告しなければならない(特許規則131条(2))。以下、同様にして3会計年度ごとに1回の頻度で国内実施報告書を提出する。これは、2024年のインド特許規則の改正(2024年3月15日施行)により、実施報告書の提出頻度が、従来の「1会計年度ごとに1回」から「3会計年度ごとに1回」に変更されたものである。

(3) 報告時期
特許発明の国内実施報告書は、報告対象の期間である3会計年度の期間の終了後6か月以内(4月1日~9月30日)に提出しなければならない(特許規則131条(2))。ただし、規則131条(2)に基づく様式4による請求をすれば、3か月の期間までは、報告書の提出の遅滞または提出の延長が容認される。また、規則138に基づく様式4による請求により、さらに6か月の期間まで報告書の提出期限を延長することができる。
(4) 報告手続
特許権者および実施権者は、様式27(FORM27)に従って特許発明の商業的実施の有無を記載し、管理官に提出しなければならない(インド特許法第146条(2)、特許規則131条(1)、様式27(2024年改正))。
国内実施報告書に記載すべき事項は、次のとおりである。
(ⅰ) 特許番号毎に実施しているか否かを記載する。
(ⅱ) 実施していない場合、実施していない理由として該当するものにチェックする。
(ⅲ) ライセンス許諾が可能か否かを記載し、ライセンス可能な場合、連絡先を記載する。
様式27(改正特許規則2024年)の抜粋(仮訳)
3. 実施/不実施 この様式を提出している各特許が実施済みか不実施かを述べてください。 | 特許番号 | 実施[該当する場合はチェック(✔)] | 未実施[該当する場合はチェック(✔)] |
4. 実施していない場合、該当する理由をチェックしてください。 | □特許発明は開発/商業試験中である。 □特許発明が規制当局の審査/承認中である。 □商業ライセンスの検討中 □その他: | ||
5. 当該特許がライセンス可能かどうか | □はい。 □いいえ。 「はい」の場合、ライセンス取得に興味のある者からの連絡を受けることに関心がありますか?関心がある場合、以下に連絡先をお知らせください。 Eメールアドレス: 連絡先番号: |
国内実施報告書には、特許権者、実施権者または代理人が署名する。権利者が同一で各特許発明から得られる収益/価値を区別できない場合、複数の関連する特許については一つの報告書にまとめて記載することができる。特許が共有に係る場合、共同で一つの実施報告書を提出することができる。
なお、旧様式27で要求されていた記載、例えば、特許発明によって得られた収益または価値の概算、実施概要の記載は、2024年特許規則改正により不要になった。また、特許発明を実施していなかった場合の理由、実施に向けて行った措置の具体的な説明は不要となり、該当する項目をチェックするだけの簡素なものとなった。
3. 国内実施報告義務違反
(1) 国内実施報告書の提出を怠った場合
国内実施報告書の提出を拒絶した者は、10万インドルピー以下の罰金に処され、拒否または不履行が継続した場合は、最初の拒否または不履行が継続した日以降、1日につき1,000ルピーの罰金に処される(インド特許法第122条(1))。
(2) 虚偽の国内実施報告を行った場合
虚偽の国内実施状況を報告すると、監査済み会計帳簿に記載された事業売上高もしくは総収入の0.5%に相当する金額、または5000万ルピーのいずれか低い金額の罰金に処される(インド特許法第122条(2))。
4. 国内実施報告書の提出率および実施状況
2021-2022年度について見てみると、有効に存在する特許権の約5割弱について国内実施報告書が提出されている。また、国内実施報告があった特許発明のうち、2割弱の特許発明(存続特許権全体の約1割弱)が実施されている(インド特許庁 年次報告 2021-2022)。

5. 国内実施報告書の公開
国内実施報告書の内容は、インド特許庁のホームページに公開されている。図2のサイトのプルダウンメニュー「Complete available for Year」で報告年度を、「Location」のメニューで特許庁(デリー、チェンナイ、コルカタ、ムンバイ)を選択し、「Search」をクリックすると、当該報告年度に提出された国内実施報告の一覧が表示される。一覧にあるリンク「View Document」をクリックすると、国内実施報告書の内容を閲覧することができる。なお、システム上の問題でリンクをクリックしても国内実施報告書のファイルが開かないことがある。この場合、出願番号を入力、クリックして出願内容の詳細を表示させ、下方にある「E-Register」ボタンをクリックする。リーガルステータス情報が表示される。その下方に「Information u/s 146 (Working of Patents)」という項目があり、提出済みの国内実施報告書へのリンク「View Document」が表示される。このリンクをクリックすると国内実施報告書の内容を閲覧することができる。

URL: https://iprsearch.ipindia.gov.in/DynamicUtility/WorkingOfPatents/Index
(最終アクセス日:2025年1月21日)
6. 改正規則の施行日前、またはその前後に登録になった特許の報告時期
特許(改正)規則2024の施行日(2024年3月15日)前に登録になった特許、施行日直後の2024年3月15日~2024年3月31日に登録になった特許についての国内実施報告書の提出時期は、次のとおりである。
(1) 2022年3月31日以前に特許された場合
2022年3月31日以前に特許された場合、2022年4月1日~2023年3月31日の特許実施状況については、2023年に提出されているため、次回の国内実施報告書の提出時期は2026年4月1日~9月30日である。

(2) 2022年4月1日~2023年3月31日に特許された場合
2022年4月1日~2023年3月31日に特許された場合、国内実施報告書の提出時期は2026年4月1日~9月30日である。

(3) 2023年4月1日~2024年3月31日に特許された場合
2023年4月1日~2024年3月31日に特許された場合、登録日が規則施行日の前か後にかかわらず、国内実施報告書の提出時期は2027年4月1日~9月30日である。

7. 留意事項
国内実施報告を怠った特許権者に対して実際に罰金が科された事例はない。しかしながら、罰金の対象として条文に明記されていることから、特許権者は国内実施報告書を提出すべきと考えられている。なお、特許発明を実施していない旨の国内実施報告書を提出することについて、不実施に基づく強制実施権の設定を過度に懸念する必要はない。
シンガポールの判決等へのアクセス方法
1. Singapore Law Watch(SLW)による検索
SLWの検索データベースには、2000年以降のシンガポール最高裁判所※1の判決および2018年以降のIPOSの決定が収録されており、これらを無料で閲覧することができる。なお、SLWに掲載されていない判決および決定については、以前は、SLWでの掲載が3か月を経過するとSLWが運営するLawNet※2に移管されていたことから、それらはLawNetに掲載されている可能性がある。
※1 シンガポール最高裁判所は、高等裁判所(High Court)と上訴裁判所(Court of Appeal)からなる。IPOSの決定に不服がある場合、または侵害事件は、高等裁判所に提訴する。
参考資料:「シンガポールにおける知的財産の審判等手続に関する調査」(JETRO 2020年3月) https://www.jpo.go.jp/resources/report/document/gaikoku/singapore_202003.pdf
※2 シンガポールの一次法律資料(シンガポール判決および法律)と二次資料(議会報告書、法律ニュース、教科書、ジャーナル等)、および英国、マレーシア、インド等のコモンロー法域の判決を検索することができる、SLWが運営する有料サイト。
https://www.lawnet.sg/lawnet/web/lawnet/home
Singapore Law Watch(SLW)ウェブサイト(https://www.singaporelawwatch.sg/)にアクセスして表示されるトップ画面(図1)上部のバーの左から4番目「Judgments(判決)」にポインタを合わせると、以下の5項目が表示される。
(a) 「Court of Appeal(上訴裁判所)」
(b) 「High Court(高等裁判所)」
(c) 「Intellectual Property Office of Singapore(IPOS:シンガポール知的財産庁)」
(d) 「Personal Data Protection Commission(個人情報保護委員会)」
(e) 「Tax Boards(税審査委員会)」
これらのうち、特許・実用新案、意匠、商標等の産業財産権に関する裁判例についての検索は、(a)から(c)を用いる。

(1) 「Court of Appeal(上訴裁判所)」による検索
図1の「Court of Appeal」をクリックすると、「Court of Appeal」のトップ画面が、図2のように、知的財産関連の判決を含む判決一覧(日付順)の形式で表示される。判決一覧には、「原告・被告名による事件名称」(最初の事件の赤枠内)、「判決の根拠(Grounds of Decision)」(最初の事件の青枠内)、「判決日(Decision Date)」(最初の事件の黒枠内)が表示される。
また、「Court of Appeal」のトップ画面(図2)右側の「Latest Judgment- Court of Appeal」の下にも判決一覧が表示されているが、これは左側の判決一覧から直近の判決を抽出したもののようであり、左側の判決一覧を見れば漏れなく判決を閲覧することができる。
なお、「Court of Appeal」のトップ画面(図2)の右上にある「Search」は、判決一覧の絞り込みを行う検索機能ではなく、SLWのコンテンツ全体を対象とする検索であるため、使用する場合は注意が必要である。

判決一覧の赤い色の「PDF」アイコンのある事件名称をクリックすると、判決文が表示される。例えば、図2の画面を下側にスクロースすると、図3のように表示される、地理的表示に関する訴訟の判決である「Fonterra Brands (Singapore) Pte Ltd v Consorzio del Formaggio Parmigiano Reggiano [2024] SGCA 53」(2024年11月22日付判決)をクリックすると、図4の判決文を閲覧でき、判決文PDFをダウンロードすることができる。


(2) 「High Court(高等裁判所)」による検索
図1の「High Court」をクリックすると、「High Court」のトップ画面が、図5のように、知的財産関連の判決を含む判決一覧の形式で表示される。画面の構成や表示される内容は、「Court of Appeal」と同じである。

判決一覧の赤い色の「PDF」アイコンのある事件名称をクリックすると、判決文が表示される。例えば、図5の画面を下側にスクロースすると、図6のように表示される判決一覧における、特許侵害の損害額算定に関する判決である「TOWA Corp v ASMPT Singapore Pte Ltd and another [2024] SGHC 163」(2024年6月27日付判決)をクリックすると、図7の判決文を閲覧でき、判決文PDFをダウンロードすることができる。


(3) 「Intellectual Property Office of Singapore」(IPOS)による検索
図1の「Intellectual Property Office of Singapore」をクリックすると、「Intellectual Property Office of Singapore」のトップ画面に、図8に示すようなIPOSの決定が一覧の形式で表示される。画面の構成は「Court of Appeal」(図2)と同じである。
決定の種類は、以下のとおりである。
「Ex Parte Hearing(拒絶査定不服)」
「Opposition to Registration(異議申立)」
「Invalidation(無効)」
「Revocation(取消)」

例えば、商標異議申立の決定である「Apple Inc v Penta Security Inc [2024] SGIPOS 10」をクリックすると、図9の決定を閲覧でき、決定のPDFをダウンロードすることができる。

2. IPOSのウェブサイトによる検索
IPOSの決定および成立した調停については、IPOSのウェブサイトからも閲覧することができる。IPOSの決定については、1999年以降の決定が閲覧可能であり、2011年以降の決定は全文、2010年末より以前については要約を閲覧できる。調停は、ASEAN調停プログラム(The WIPO-Singapore ASEAN Mediation Programme; AMP)による調停とIPOSによる調停の結果を閲覧することができる。なお、裁判所の判決は収録されていない。
(1) IPOSウェブサイトのトップ画面
IPOSウェブサイト(https://www.ipos.gov.sg/home)にアクセスして表示されるトップ画面を下側にスクロールすると、右側に図10の「Resolve IP Dispute」が表示されるのでこれをクリックする。

「Resolve IP Dispute」をクリックして表示される画面を下側にスクロールすると、図11に示すように右側に「Legal Decisions」が表示されるので、2020年以降の決定等について検索する場合は赤色文字の(i)「Legal Decisions」をクリックし、1999年から2019年までの検索を行う場合はその下の(ii)「・Legal Decisions(pre-2020)」をクリックする。次項目では2020年以降の決定等についての検索方法を説明するが、2019年以前の検索についても基本的には同じである。なお、上記(i)および(ii)において、それぞれ何年の決定が検索対象となるかは、変更される場合がある。

(2) 検索画面
「Legal Decision」をクリックして表示される検索画面を、下側にスクロールすると図12に示す「Case Search(事件検索)」が表示される。絞り込みによる検索は、下記の4項目について入力が可能である。
「Citation(事件名称)」
「Patent/Trademark/Geographical Indication(特許/商標/地理的表示)」
「Type of IP(知的財産の種類)」
「Year of Issue(発行年度)」
なお、この絞り込み検索を用いる場合に限り、「Year of Issue(発行年度)」に該当する年度を入力すれば、2019年以前の決定等も表示させることができる。

絞り込みによる検索を行わない場合は、図12の画面を下側にスクロールすると直近の決定および成立した調停が表示される(図13)。成立した調停は、「AMP Mediation Success」あるいは「Mediation Success at IPOS」として、決定を表示した枠リストの上にまとめて表示される。

図13の画面を下側にスクロールすれば、古い事件を順次表示させることができる。
該当する事件の「PDF」アイコンをクリックすると決定等が表示される。例えば、商標異議申立事件である「Google LLC v Green Radar (Singapore) Pte Ltd [2024] SGIPOS 1」の「Full Decision」部分(図13の赤枠内)をクリックすると、図14の異議決定が表示される。

3. 留意事項
通常、シンガポールの判決文は、Law WatchやLawNetを利用してオンラインで取得できる。(極めて稀であるが)判決がオンラインで公開されていない場合において利害関係を有する者が裁判所に判決文の謄写を請求する場合を除き、裁判所で判決文を謄写することは難しい。また、本稿で言及したLawNetのようなウェブサイトから判決文が入手可能な場合は、謄写申請は認められない。
トルコにおける特許の調べ方
(1) トルコ特許商標庁(TURKISH PATENT AND TRADEMARK OFFICE)の英語版のトップページ画面(https://www.turkpatent.gov.tr/en)(図1)の画面左中央の赤枠の「Patent and Utility」にポインターを合わせると図2の画面が表示される。


(2) 図2の黄色枠の「Search」をクリックすると、図3の特許検索画面「PATENT RESEARCH」が表示される。
図3の青枠の「ADVANCED RESEARCH(詳細検索)」(図4参照)、緑枠の「FILE TRACKING(番号検索)」(図5a参照)での検索も可能である。また、オレンジ枠のアイコンで法域を変更することができる。商標検索(上)、特許検索(真ん中)、意匠検索(下)の順で並んでいる。

図4の「ADVANCED SEARCH」タブでは、AND検索、OR検索が可能である。赤枠の「▼」で「or」または「and」を選択することができる。青枠の「Name of Invention」の「▼」で、項目を選択することができる。緑枠の「▼」で、「equals(等しい)」、「not equals(等しくない)」、「includes(含む)」、「not includes(含まない)」を設定することができる。


「PATENT RESEARCH」および「ADVANCED RESEARCH」タブで選択できる検索項目(図5b参照)は、以下のとおりである。
・Name of Invention(発明の名称)
・Summary of Invention(要約書)
・Invention Owner(発明者)
・Application Owner(出願人)
・Application Number(出願番号)
・European Patent Application Number(欧州特許出願番号)
・PCT Application Number(PCT出願番号)
・European Patent Publication Number B1(欧州特許公報番号)
・Priority Number(優先権番号)
・PCT Publication Number(国際公開番号)
・IPC Class(国際特許分類)
・Publication Date(公開日)
・Publication End(公開終了日)
・Attorney(代理人)
・CPC Class(国際特許分類)

キーワード検索はトルコ語のみである。なお、トルコ語はアルファベットを使用するため、出願人名については、英語表記による検索は可能である。
(3) 図6は、「PATENT RESEARCH」タブで検索した例である。赤枠の出願番号欄に出願番号を入力し、緑枠の「DO QUERY(検索実行)」をクリックすると、検索結果(図7参照)が表示される。検索結果は、検索項目入力欄の下に表示される。
青枠の「RESET(リセット)」をクリックすると、入力した項目がリセットされる。

(4) 図7の検索結果一覧には、出願番号、出願日、発明の名称、権利保持者、種別が表示される。

図7の「DETAILS」(緑枠)をクリックすると詳細情報が表示される(図8aから図8e)。案件によっては閲覧できない場合もある。





詳細表示で表示される項目は、以下のとおりである。
「Application Information(出願書誌情報)」
・Application Number(出願番号):フォーマットは(出願年)/5桁の番号、例:2012/13838
・Application Date(出願日)
・Application Type(出願の種別)
・Grant Number(許可番号):フォーマットは(登録年)-G-6ケタの番号、例:2012-G-394004、登録前に付与される。
・Granted Date(許可日)
・Registration Number(登録番号):出願番号と同じ番号が登録番号として採用される、フォーマットは(出願年)+ 5桁の番号、例:2012 13838
・Registration Date(登録日)
・Protection Type(法域)
・European Patent Publication Number B1(欧州特許公報番号)
・European Patent Application Number(欧州特許出願番号)
・PCT Publication Number(国際公開番号)
・PCT Application Number(国際出願番号)
・PCT Publication Date(国際公開日)
「Applicants(出願人)」
・Person No.(出願人番号)
・Name(出願人名)
・Address(住所)
「Inventor(s)(発明者)」
・Person No.(発明者番号)
・Name(発明者名)
・Address(住所)
「Invention Information(発明の情報)」
・Name of Invention(発明の名称)
・Summary of Invention(発明の要約)
「Attorney Information(代理人情報)」
・Name(代理人名)
・Address(住所)
「Priority Information(優先権情報)」
・Date of Priority(優先日)
・Priority Number(優先権主張番号)
・Country of Priority(優先権主張国)
「Classes of the Invention(発明の分類)」
・IPC(国際分類)
「Patent Application Procedures(特許出願の経過情報)」
:出願における手続が時系列で表示されている。手続内容については、トルコ語でのみ表示される。なお、「DOCUMENTS」は閲覧できない場合もある。また、審査包袋にアクセスすることはできない。
・Date(手続日)
・Date of Notification(通知日)
・Operation(手続内容)
・Document(書類)
「Publications(公報)」:出願公開、ライセンス提供、年金未払いによる失効などの通知の記録を確認できる。
・Publication Date(公報の日付)
・Description(内容)
「Payment Dates(年金支払い情報)」
・Row(年次)
・Year(年)
・Payment Date(支払日)
・Paid Amount(₺:トルコリラ)(支払われた金額)
(5) 図8aの緑枠「DOCUMENTS」から明細書および図面をPDF形式で取得することができる(図9参照)。

(6) トルコ特許商標庁の提供するデータベースには英語版があるが、キーワード検索で使用可能な言語はトルコ語のみである点に注意が必要である。データベースには、収録もれの可能性が皆無とはいえず、また、収録されていても、表記ゆれや用語の不統一などの理由から、検索できない場合もある。トルコにおいて問題になる特許の有無の判断は、トルコ特許商標庁データベースにおける検索結果に加え、他国での特許調査の結果を参考にする、または、専門家に相談して調査を実施するなどして、複数の観点から判断することが望ましい。
インドにおける特許制度のまとめ-手続編
1. 出願に必要な書類
特許権を受けようとする者は、以下の書類および手数料を提出しなければならない。
(1) 有効出願日を確保するために必要な書類
・願書
・明細書(直接出願の場合、完全明細書または仮明細書。条約出願や国内段階出願の場合、完全明細書)
・発明者である旨の宣言書
・手数料
(2) 必要に応じて提出する書類
・出願権の証拠(出願人が発明者ではない場合)
・委任状(現地代理人に代理権を与える場合)
・外国出願に関する陳述書および誓約書(インド特許出願と実質的に同じ内容の外国出願がある場合)
・優先権書類とその翻訳文(優先権を主張する場合)
関連記事:「インドにおける特許出願制度概要」(2019.6.13)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17416/
関連記事:「日本とインドにおける特許出願書類の比較」(2019.10.29)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17838/
(注:上記記事は、本稿作成後、2025年1月14日付で更新されています。
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/40433/)
2. 出願の言語
ヒンディー語または英語(インド特許規則(以下「特許規則」という。)9(1)(a))。外国語出願制度はない。
3. グレースピリオド
(1) 意に反する公開:出願人から取得され、その者の意に反して発明が公開された場合であって、その公開後、速やかに特許出願が行われた場合、当該発明は新規性を失わない(インド特許法(以下「特許法」という。)第29条(2)、(3))。
(2) 政府への伝達:特許出願に係る発明は、当該発明もしくはその価値を調査するため政府もしくは政府により委任された者に当該発明を伝達した場合であっても、新規性を失わない(特許法第30条)。
(3) 博覧会などにおける発表:特許出願に係る発明は、以下の行為が行われても、その最初の発表後12か月以内に特許出願を行った場合に限り、新規性を失わない(特許法第31条)。
(i) 中央政府によって官報で指定された博覧会において、真正かつ最初の発明者、または発明者から権原を取得した者の同意を得て行われた発明の展示、またはその開催場所において当該博覧会を目的としてその者の同意を得て行われた発明の実施
(ii) 博覧会における発明の展示または実施の結果としての当該発明の説明の公開
(iii) 発明が博覧会において展示もしくは実施された後、および博覧会の期間中、真正かつ最初の発明者などの同意を得ないで何人かが行った発明の実施
(iv) 真正かつ最初の発明者が学会において発表した論文に記載され、またはその者の同意を得て当該学会の会報に公表した発明の説明
(4) 試験目的の実施:特許出願に係る発明は、特許出願の優先日前1年以内に、出願人またはその同意を得た者が、特許出願に係る発明の適切な試験目的のためにインドにおいて公然と実施したとしても、新規性を失わない(特許法第32条)。ただし、発明の内容に鑑み、その試験を公然と実施する合理的必要性があった場合に限る。
(5) 仮出願の後の実施および公開による先発明:仮出願を行った場合、仮出願後、仮明細書に記載された事項がインドで実施され、またはインドまたは他の地域で公開されても新規性を喪失しない(特許法第33条)。
関連記事:「インドにおける特許新規性喪失の例外」(2017.6.1)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/13770/
(注:上記記事は、本稿作成後、2024年12月24日付で更新されています。
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/40392/)
4. 審査
(1) 実体審査
実体審査:あり
審査請求制度:あり(特許法第11B条(1))
審査請求期間:出願日(優先日)から31か月以内(特許法第11B条(1)、特許規則24B(1))
請求人:出願人および利害関係人(特許法第11B条(1))
2024年の特許規則の改正(2024年3月15日施行)により、審査請求期間について、従来の「出願日(優先日)から48か月以内」が、「出願日(優先日)から31か月以内」に短縮された。
(2) 早期審査(優先審査)
以下の要件のうちのいずれかに該当する場合、早期審査請求を行うことができる(特許規則24C(1))。
(a) 出願人が、国際出願の国際調査機関または国際予備審査機関として、インド特許意匠商標総局(the Office of the Controller General of Patents, Designs & Trade Marks (CGPDTM)、以下「インド特許庁」という。)を選択している。
(b) 出願人が、インド国内外を問わず、スタートアップ企業である。(スタートアップ企業の定義:設立から5年以内で、年間売上高が2億5千万ルピー(約3億8千万円)未満の事業体、特許規則2(fb))
(c) 出願人が、小規模団体(small entity)である。
(d) 出願人が、全員が自然人であって、そのなかに女性が含まれている。
(e) 出願人が、政府系機関である。
(f) 出願人が、中央政府もしくは州政府によって設立された機関であって、中央政府が所有もしくは管理する機関である。
(g) 出願人が、2013年会社法の第45の2条に定義される「政府系企業」である。
(h) 出願人が、政府が実質的に資金を提供している機関である。
(i) 政府の要請に基づいて指定された産業に関連する出願である。
(j) 出願人が、インド特許庁と他国特許庁との合意に従って出願を処理するための資格を有する(いわゆるPPHを申請している)。
(3) 出願を維持するための料金
特許権を維持するためには、所定の納付期間内に更新手数料を納付しなければならない(特許法第53条(2))。
関連記事:「インドの特許関連の法律、規則、審査マニュアル」(2019.2.14)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16518/
(注:上記記事は、本稿作成後、2024年12月10日付で更新されています。
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/40308/)
関連記事:「インド特許庁の特許審査体制」(2018.7.19)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/etc/15442/
関連記事:「インドにおける特許審査および口頭審理」(2018.4.17)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/14828/
関連記事:「インドの特許出願審査における「アクセプタンス期間」」(2016.4.19)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/11118/
関連記事:「インドにおける迅速な特許審査着手のための出願実務の迅速化」(2015.9.1)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/8544/
5. 出願から登録までのフローチャート
(1) 出願から登録までの特許出願のフローチャート

(2) フローチャートに関する簡単な説明
ⅰ) 特許出願の種類は、直接出願(本出願および仮出願)、国際出願、国際出願の国内段階移行出願、パリ条約に基づく条約出願がある。
ⅱ) 特許出願の出願日(優先日)から18か月が経過すると、特許出願は公開される。特許出願は、公開される前に取下げることができる。
ⅲ) 審査請求がなされた出願は、(方式および実体)審査が行われる。審査請求を行わなかった場合、出願は取下げられたものとみなされる。
ⅳ) 審査の結果は、最初の審査報告(FER:First Examination Report)として出願人に通知される。FERの発送日は、拒絶理由解消期間(6か月)の起算日になる。出願人は、拒絶理由解消期間内に、特許出願を許可される状態にしなければならない(特許法第21条)。後続の審査報告(SER:Subsequent Examination Report)が発行されても、拒絶理由解消期間は延長されない。拒絶理由解消期間は、最長3か月延長できる。特許出願を許可される状態にするというのは、すべての拒絶理由を解消するような応答書(意見書、補正書)を提出することを意味する。
ⅴ) 応答書が提出されていれば、インド特許庁はもう一度審査を行う。拒絶理由があり、拒絶理由解消期間が経過していない場合は、SERが出願人に通知され、拒絶理由解消期間が経過している場合で出願人から聴聞申請があれば、聴聞通知が出願人に発送される。聴聞が行われた後に、出願人に応答書(意見書、補正書)を提出する機会が与えられる。
ⅵ) 拒絶理由がすべて解消すると、特許査定(Notice of Grant)が通知され、特許公報(Publication of Grant)が発行される、特許証が交付され、設定登録によって特許権が発生する。拒絶理由が残っている場合、拒絶査定(Notice of Refusal)が通知される。
ⅶ) 特許権の存続期間は出願日(優先日)から20年である。特許権を存続期間中維持するためには、特許権者は、更新手数料を納付しなければならない。
ⅷ) 何人も特許出願に対して、出願公開後、特許権付与前までに付与前異議申立て(特許法第25条(1))を請求することができる。付与後異議申立ては、利害関係人が、特許公報発行後、1年以内に請求することができる(特許法第25条(2))。
ⅸ) インド特許庁の決定、指示、指令に対して不服がある場合、決定、指示、指令の通知日から3か月または高等裁判所が制定した規則に従って許可する付加期間内に、高等裁判所に不服申立ての訴えを提起することができる(特許法第117A、Tribunals Reforms Act 2021第13条)。従来は、知的財産審判委員会(IPAB: Intellectual Property Appellate Board)に審判請求をおこなっていたが、2021年裁判所改革法(Tribunal Reforms Act)によって、IPABが廃止され、インド特許庁の決定等に対する不服申立ての管轄権は高等裁判所に移管された。
ⅹ) 利害関係人は、所定の無効理由の1つまたは複数に基づいて、特許の取消を求めて高等裁判所に無効訴訟を提起することができる(特許法第64条(1))。
関連記事:「インドにおける特許制度の運用実態」(2015.12.4)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/10062/
関連記事:「日本とインドの特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較」(2023.10.26)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/37601/
[権利設定前の争いに関する手続]
6. 拒絶査定に対する不服
出願人は、インド特許庁の(特許出願を拒絶する)決定に対して不服がある場合、決定の通知日から3か月または高等裁判所が制定した規則に従って許可する付加期間内に、高等裁判所に拒絶査定の取消を求める不服申立ての訴えを提起することができる(特許法第117A条(2)、Tribunals Reforms Act 2021第13条)。
関連記事:「インドにおける知的財産審判委員会(IPAB)の廃止 -その後-」(2022.1.11)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/judgment/21344/
関連記事:「インドにおける特許出願から特許査定までの期間の現状と実態に関する調査」(2018.1.18)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/14428/
7. 権利設定前の異議申立て
何人も特許出願に対して付与前異議申立て(特許法第25条(1))を行うことができる。付与前異議申立ては、出願公開後、特許権付与前までに請求することができる。
[権利設定後の争いに関する手続]
8. 権利設定後の異議申立て
利害関係人は、特許公報発行後、1年以内に付与後異議申立てを請求することができる(特許法第25条(2))。
関連記事:インドにおける特許無効手続に関する統計データ(前編:特許付与後の異議申立)」(2018.3.15)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/statistics/14664/
9. 設定された特許権に対して、権利の取消を申し立てる制度
利害関係人は、所定の無効理由の1つまたは複数に基づいて、特許の取消を求めて高等裁判所に取消訴訟を提起することができる(特許法第64条(1))。
関連記事:「インドにおける特許無効手続に関する統計データ(後編:取消請求および訴訟)」(2018.3.15)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/statistics/14680/
10. 権利設定後の権利範囲の訂正
特許出願の願書および明細書などの補正は、特許権付与前はもちろんのこと、特許権付与後においても行うことができる(特許法第57条(1))。しかし、拒絶査定がなされた後は補正を行うことができない。明細書の補正は、権利の部分放棄、訂正、または釈明による方法で行わなければならず、事実の挿入を目的とするものでなければならない(特許法第59条(1))。
特許権付与後に補正申請が行われた場合、インド特許庁は、その補正の内容が本質的(実体的)なものか否かを審査し、補正内容が本質的なものである場合、補正申請の内容を公告する(特許法第57条(3)、特許規則81(3)(a))。補正内容が形式的なものである場合でも、管理官の裁量によって公告することもできる(特許法第57条(3))。利害関係人は、補正の内容に異議がある場合、補正申請の公告の日から3か月以内に異議申立てを行うことができる(特許法第57条(4)、特許規則81(3)(b))。
11. その他の制度
(1) 外国出願許可(特許法第39条)
特許法は、外国へ特許出願を行おうとする「インドに居住する者」に対して、外国出願許可(FFL:Foreign Filing License)の取得を義務付けている。インドに居住する者は、原則として外国出願許可を取得しなければインド国外で特許出願を行い、またはさせてはならない(特許法第39条(1))。また、当該発明が国防目的または原子力に関連する判断した場合、インド特許庁は、中央政府の事前承認なしに外国出願許可を付与できない(特許法第39条(2))。発明者および出願人の一人でもインドに居住する者であれば本法は適用される。ただし、保護を求める出願が、インド国外居住者によりインド以外の国において最初に出願された発明に関しては、本法は適用されない(同第39条(3))。外国出願許可の規定に違反した場合、対応するインド特許出願は放棄されたものとみなされ、付与された特許権は無効理由を有する(特許法第64条(1)(n))。また、外国出願許可の規定に違反した者は、禁固もしくは罰金に処され、またはこれらが併科される(特許法第118条)。
(2) 国内実施報告制度(特許法第146条)
インドには、特許発明の商業的実施状況を定期的に報告することを毎年、特許権者および実施権者に義務付ける独自の制度が存在する。排他的権利を有する特許権者に対して、インドにおける特許発明の適正な実施を促すための制度である。実施状況の報告を怠ると罰金の対象となり、実施状況の虚偽報告を行った者には罰金刑または禁固刑、またはこれらが併科される。インド特許庁は、実施の状況を公開することができる。インドにおいて適正に実施されていない特許に対して、利害関係人が強制実施権を申請できる。
2024年の特許規則の改正(2024年3月15日施行)により、実施報告書の提出頻度が「1会計年度ごとに1回」から「3会計年度ごとに1回」に変更された(特許規則131(2))。
(3) 拒絶理由解消期間(特許法第21条)
特許法においては、所定の期間内(拒絶理由解消期間)に特許出願を特許権付与可能な状態にしなければ、特許出願は放棄されたものとみなされる。拒絶理由解消期間は、最初の審査報告(FER:First Examination Report、日本の拒絶理由通知書に相当)の発送日(The date of issue (dispatch):FERに記載された日)から6か月である(特許法第21条、特許規則24B(5))。
(4) 聴聞(特許法第14条)
インドにおいて聴聞(Hearing)は、特許審査手続を構成する重要な手続の1つである。出願人から聴聞の申請があれば、インド特許庁は出願人に不利な決定を行う前に出願人に聴聞を受ける機会を与えなければならない。インド特許庁は、職権で聴聞を設定することもできる。出願人は、拒絶理由解消期間内に応答書を提出し、聴聞の申請を行えば、拒絶査定が行われる前に聴聞を受ける機会が出願人に付与され(特許法第14条)、拒絶理由解消期間経過後も、特許出願をインド特許庁に係属させることができる。
関連記事:「日本とインドの特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較」(2023.10.26)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/37601/
関連記事:「インド国内で生まれた発明の取扱い―インド国外への特許出願に対する制限」(2019.9.26)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17745/
関連記事:「インドにおける特許の実施報告制度(2020年特許規則改正)」(2022.7.12)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/license/24051/