中国における外国語証拠・参考資料の提出
1. 審査請求時に提出する参考資料
特許(中国語「发明专利」)の出願人は、実体審査(中国語「实质审查」)を請求する際、その発明に関係する出願日前の参考資料を提出しなければならない(中国専利法(以下「専利法」という。)第36条第1項)。また、特許が既に外国で出願されており、審査官から、その国が当該出願の審査のために行った検索または審査結果の参考資料の提出を求められた場合には、出願人は指定期間内にその審査結果の参考資料を提出しなければならない。正当な理由なく提出しない場合、当該出願は取下げられたものとみなされる(専利法第36条第2項)。なお、正当な理由がある場合には、その旨を国務院専利行政部門へ申し出、関係資料を入手した後に追加で提出する必要がある(専利法実施細則(以下「実施細則」という。)第55条)。
実務では、提出する参考資料等については、外国語資料も認められている。外国語資料の中国語訳の提出は出願人の自由裁量に委ねられているが、審査官に外国語資料の内容をより理解しやすいよう、英語以外の外国語(日本語、韓国語、ドイツ語など)資料については、関連部分または全文の中国語訳を提出した方がよい。
2. 情報提供(中国語「提公众意见」)時に提出する先行文献、参考資料
出願公開日から公告日までの間に、特許出願に対して情報提供する際(実施細則第54条)、外国語の公報や刊行物等を先行技術文献として提出することも可能であるが、この場合も、上記第1項と同様、審査官が提出された文献の内容をより理解しやすいよう、英語以外の外国語(日本語、韓国語、ドイツ語など)文献については、関連部分または全文の中国語訳を提出した方がよい。
3. 無効審判請求(中国語「无效宣告请求」)時に提出する証拠、参考資料
中国では、登録された特許、実用新案、意匠に対して無効審判請求を行う際、外国語証拠(特許公報、刊行物、雑誌、カタログなど)を提出することが認められているが、提出された外国語証拠について、立証期間内(無効請求人の場合:無効審判請求日より1か月以内、被請求人の場合:無効審判請求された旨の通知を受け取った日より1か月以内)にその外国語証拠の全文または部分的な中国語訳を提出しなければならない。立証期間内に中国語訳を提出しない場合には、当該外国語証拠は提出していないものとみなされる(実施細則第3条第2項、審査指南第4部第3章3.8(3)、4.3、第8章2.2.1)。
部分訳を提出する場合、当該外国語証拠における中国語に訳されていない部分は、証拠として採用されない。ただし、当事者が合議体の要求に応じて当該外国語の証拠のその他の部分の中国語訳文を後から提出する場合は除く(審査指南第4部第8章2.2.1)。
外国語証拠の中国語訳に異議がある場合、指定期間内(1か月)にその外国語証拠の中国語訳を提出する必要がある。当事者双方が互いに相手方の外国語証拠の中国語訳に異議がある場合、復審・無効審理部(中国語「复审和无效审理部」)は、翻訳機関を指定し、改めてその外国語証拠の中国語訳を依頼することができる。翻訳費用は当事者双方が折半して負担し、翻訳機構の指定や費用の納付を拒否する場合、相手側が提供した翻訳文に異議がないとみなされる(審査指南第4部第3章4.4.1、第8章2.2.1)。
外国語証拠(例えば、刊行物、雑誌、カタログ等)であって、その外国語証拠が中国以外の国、地域(香港、マカオ、台湾も含む)で形成されたものである場合には、従来は、証拠形成地の国の機関による公証とその国の中国領事館による認証が必要とされていたが、2023年の審査指南の改正によって、当該国の公証機関による証明または中国と当該所在国で締結した関連条約に規定された証明手続を履行したものでよいとされ、認証は不要となった(審査指南第4部第8章2.2.2)。
さらに、2023年の審査指南の改正によって、以下の場合には当該国の公証機関による証明または中国と当該所在国で締結した関連条約に規定された証明手続の履行も不要となった。
(1) 当該証拠は、香港・マカオ・台湾地区以外の中国国内における公式ルートから取得できる場合、例えば、国務院専利行政部門から取得できる外国の専利書類、または公共図書館から取得できる外国の文献資料など。
(2) 相手側当事者が当該証拠の真実性を認可する場合。
(3) 当該証拠がすでに効力発生しており、人民法院の裁判、行政機関の決定または仲裁機構の裁判によって判断される場合。
(4) 当該証拠の真実性を証明するに足るその他証拠がある場合。
4. 留意事項
審査請求時に提出する参考資料に関する専利法第36条の規定は、アメリカのIDS情報開示義務に類似する規定であるが、実務上、アメリカのように厳しく要求されていない。明細書に従来技術がすでに記載されているため、審査請求時に出願日前の明細書に記載されていない他の参考資料を改めて提出する必要はなく、対応外国出願の審査に関連する資料の提出については、審査官に資料の提出が求められた場合にのみ提出すれば足りる。
無効審判請求に用いる外国語証拠については、上記第3項で述べた立証期間内に中国語訳を提出しなければならないことに留意すべきである。また、無効審判の当事者双方は、互いに証拠調べ、翻訳文のチェックを行うため、外国語証拠の中国語訳は原文の意味通りに正しく翻訳されている必要がある。
無効審判請求に用いる外国語証拠の数が多い場合、翻訳費用を考慮して、全文翻訳に限らず、部分翻訳で対応することも可能である。ただしこの場合、翻訳されていない部分の内容は証拠能力がなくなるため、翻訳要否の判断は、慎重に検討するべきである。
日本とインドネシアにおける意匠権の権利期間および維持に関する比較
1. 日本における意匠権の権利期間
日本における意匠権の権利期間は、出願日から最長25年をもって終了する(意匠法第21条第1項)。ただし、平成19年3月31日までに出願された意匠権は、設定登録日から15年間、平成19年4月1日から令和2年3月31日までに出願された意匠権は、設定登録日から20年間である。
なお、関連意匠の意匠権の権利期間は、その基礎意匠の出願日から25年間である(意匠法第21条第2項)。ただし、本意匠および関連意匠の双方が、平成19年3月31日以前の出願の場合は、関連意匠の意匠権の権利期間は、その本意匠の意匠権の設定登録日から15年間であり、本意匠が平成19年3月31日以前の出願で、関連意匠が平成19年4月1日から令和2年3月31日までの出願の場合は、関連意匠の意匠権の権利期間は、その本意匠の意匠権の設定登録日から20年間である。
権利維持を希望する場合は、登録日を年金納付起算日として2年次分から毎年、年金を支払う必要がある(意匠法第42条第1項、第43条第2項)。
日本意匠法 第21条 存続期間 意匠権(関連意匠の意匠権を除く。)の存続期間は、意匠登録の出願の日から25年をもって終了する。 2 関連意匠の意匠権の存続期間は、その基礎意匠の意匠登録出願の日から25年をもって終了する。 |
意匠法第42条および第43条は、省略(【ソース】の「日本国意匠法」を参照されたい。)。
2. インドネシアにおける意匠権の権利期間
インドネシアにおける意匠権の権利期間は、出願日から最長10年をもって終了する(インドネシア意匠法第5条)。登録時には登録料の納付手続はなく、登録証が発行される。登録証は、出願日から有効となる(インドネシア意匠法第29条(2))。
権利期間の間に、年金納付や更新などの意匠権を存続させるための手続はない。
インドネシア意匠法 第5条 (1) 意匠の保護は、出願日から10年間与えられる。 (2) (1)の規定における保護の開始日は、意匠一般登録簿に記録され、意匠公報により公開される。 |
インドネシア意匠法第29条は、省略(【ソース】の「インドネシア意匠法」を参照されたい。)。
日本とインドネシアにおける意匠権の権利期間および維持に関する比較
日本 | インドネシア | |
---|---|---|
権利期間 | 出願日から25年 | 出願日から10年 |
権利維持 | 登録日を年金納付起算日として2年次分から毎年、年金の支払い要 | なし(更新不可) |
中国における画像意匠の保護制度
記事本文はこちらをご覧ください。
中国における意匠の優先権主張について
1. 意匠の優先権主張(中国語「要求优先权」)の手続
1-1. 外国優先権
(1) 外国優先権について、出願人は、意匠を外国で最初に出願した日から6か月以内に、中国で同一の主題について意匠出願するときは、その外国と中国が締結した協定、共に加盟している国際条約、または優先権の相互承認原則に基づき、優先権を享受することができる(専利法第29条第1項)。外国特許出願および実用新案出願も、外国で初めて出願した日から6か月以内に、外国優先権を主張して中国に意匠出願をする際の基礎出願とすることができる(審査指南第1部第3章5.2.1.1)。
(2) 出願人が意匠の外国優先権を主張するときは、出願時にその旨の書面を提出し、後の出願から3か月以内に最初の出願時の出願書類の謄本を提出しなければならない。その旨の書面を提出しないか、または期間内に出願書類の謄本を提出しないときは、優先権を主張していないものとみなされる(専利法第30条第2項、第3項)。
(3) 外国優先権を主張する場合、出願人が提出する基礎出願の出願書類の謄本について、基礎出願の受理機関による証明を受けなければならない。国務院専利行政部門と受理機関とが締結した取り決めに従い、国務院専利行政部門が電子交換などの方法により基礎出願の出願書類の謄本を入手したときは、出願人は受理機関が証明した基礎出願の出願書類の謄本を提出したものとみなす(実施細則第34条第1項)。
なお、中国では、意匠出願について、デジタルアクセスサービス(DAS)の利用が認められる。
(4) 外国優先権を主張する出願人が基礎出願の出願人と一致しない場合、中国出願に係る出願人が基礎出願の優先権の承継人であることを証するための証明資料(優先権譲渡証明書(中国語「优先权转让证明」)を提出しなければならない(審査指南第1部第3章5.2.1.4)。
(5) 出願人は、1つの意匠出願において、複数の外国優先権を主張することができる。複数の優先権を主張する場合、当該意匠出願の期限は、最も早い優先日から起算する(実施細則第35条第1項、審査指南第4部第5章9.5)。
(6) 外国優先権を主張する中国出願の出願日から2か月以内、または受理通知書を受取った日から15日以内(期限の遅いものを基準とする)に、出願費の納付と同時に優先権主張の費用を納付しなければならない(実施細則第112条第2項、審査指南第1部第1章6.2.5、第1部第3章5.2.4)。
1-2. 国内優先権
(1) 中国国内出願からの優先権について、出願人は、中国で最初に意匠出願した日から6か月以内に国務院専利行政部門に同一の主題について意匠出願するときは、国内優先権を享受することができる(専利法第29条第2項)。なお、2023年の実施細則の改正で、基礎出願が意匠出願の場合だけでなく、特許または実用新案の出願である場合も、図面に示された意匠と同一の主題について、中国で最初に出願した日から6か月以内に、国内優先権を主張して意匠出願できることが規定された(実施細則第35条第2項)。
出願人が国内優先権を主張する場合、その先願は後願が提出された日から取り下げられたものとみなされる。ただし、意匠の出願人が特許または実用新案出願を基礎として優先権主張している場合は除く(実施細則第35条第3項)。
(2) 国内優先権を主張する場合、出願人が願書に基礎出願の出願日および出願番号を明記するときは、基礎出願の出願書類の謄本を提出したものとみなされる(実施細則第34条第1項)。
(3) 国内優先権を主張する出願人が基礎出願の出願人と一致しない場合、中国出願に係る出願人が基礎出願の優先権の承継人であることを立証するための証明資料(優先権譲渡証明書)を提出しなければならない(審査指南第1部第3章5.2.2.4)。
(4) 出願人は1つの意匠出願において、複数の国内優先権を主張することができる。複数の優先権を主張する場合、当該意匠出願の期限は、最も早い優先日から起算する(実施細則第35条第1項、審査指南第4部第5章9.5)。
(5) 国内優先権を主張する出願の出願日から2か月以内、または受理通知書を受取った日から15日以内(期限の遅いものを基準とする)に、出願費の納付と同時に優先権主張の費用を納付しなければならない(実施細則第112条第2項、審査指南第1部第3章5.2.4、第1部第1章6.2.5)。
2. 意匠の優先権主張成立の要件
(審査指南第4部第5章9.1)
2-1. 外国優先権
(1) 意匠の同一主題の認定は、後願意匠とその最初の外国出願に示した内容に基づいて判断する。同一主題に該当する意匠は以下の二つの条件を同時に満たさなければならない(審査指南第4部第5章9.2)。
(a) 同一製品における意匠に該当すること。
(b) 後願で保護を求める意匠が、その最初の出願に明確に示されていること。
例えば、最初の外国出願に斜視図、正面図、背面図、左側面図のみがあり、後願に平面図と右側面図を追加した場合、後願の正面図、背面図、左側面図および斜視図が最初の外国出願のものと同一であり、かつ平面図および右側面図の形態が最初の外国出願の斜視図に明瞭に表れているのであれば、優先権主張は成立する(審査指南第4部第5章9.2)。
また、最初の外国出願において、意匠の簡単な説明(中国語「简要说明」)を備えていない場合でも、実施細則第31条の規定に則して提出した意匠の簡単な説明*が、基礎出願書類における図面または写真に示される範囲を超えていなければ、優先権の主張には影響しない(実施細則第34条第4項)。
* 実施細則第31条
意匠の簡単な説明において、意匠物品の名称、用途および意匠の設計要点を明記し、かつ設計要点が最も明瞭に示されている図面または写真を一枚指定しなければならない。正投影図を省略するまたは色の保護を求める場合は、簡単な説明にその旨を明記しなければならない。
同一の物品における複数の類似意匠を一つの意匠専利として出願する場合、簡単な説明の中で、そのうちの一つを基本設計に指定しなければならない。
(2) 2021年6月1日以前は、外国基礎意匠出願が部分意匠であったとしても、中国出願時に当該部分意匠の点線を実線に変更して全体意匠として出願する場合には、優先権を主張できると認めていた。2021年6月1日より、中国では、部分意匠制度が導入されたが、全体意匠の出願に基づいて優先権を主張して部分意匠の出願をする場合、あるいは、部分意匠の出願に基づいて優先権を主張して全体意匠の出願をする場合、このような優先権を享有できるかどうかという点について、最新の実施細則および審査指南に明確な規定はない。しかし、実務では、全体意匠の出願に基づいた部分意匠の出願における優先権の主張、部分意匠の出願に基づいた全体意匠の出願における優先権の主張、同一の全体物品のうちの一部に係る部分意匠の出願に基づいた別の部分に係る部分意匠の出願における優先権の主張、が許されている。また、意匠の優先権主張成立の要件の同一主題の判断においても、先願と後願の保護範囲が完全に一致することは要求されておらず、後願で保護を求める意匠が、先願において明確に表示されていることが求められている。例えば、先願において破線で表示されていた部分が、後願で実線に変更された場合でも、実務上、意匠の内容に実質的な変更がなく、線の形式的な変更に過ぎないと捉えられ、後願と先願が同一主題に属すると通常見なされ、優先権主張は認められる。
(3) 実務上、中国出願と最初の外国出願の意匠の物品名は、完全に同一でなくてもよい。例えば、基礎出願が自動車用タイヤである場合、中国出願時に「タイヤ」としてもよい。また、最初の外国出願の意匠がタイヤトレッドの部分意匠である場合、中国出願時に点線を実線に変更してタイヤ全体の意匠として出願し、これに合わせて「タイヤトレッド」という物品の名称を、「タイヤ」という名称に変更することができる。
(4) また、実務上、中国出願と最初の外国出願との図面は、異なる製図方法により作成したものであってもよいが、表現する意匠は同一でなければならない。
2-2. 国内優先権
意匠の国内優先権主張の成立の要件については明確な規定はないが、基本的には外国優先権についてと同じであり、上記第2項の「2-1. 外国優先権」の内容が、国内優先権主張の成立の要件となる。
韓国における審判制度概要
1. 審判の流れ
2. 審判請求
2-1. 査定系の審判請求
査定系審判は、拒絶査定不服審判(特許法第132条の17、実用新案法第33条、デザイン保護法第120条、商標法第116条)、取消査定不服審判(デザイン保護法第120条)、訂正審判(特許法第136条、実用新案法第33条)等がある(審判便覧第1編第3章第1節)。
拒絶査定不服審判は、韓国特許庁の審査で拒絶査定を受けた場合、拒絶査定書謄本の送達日から3か月以内に特許審判院に請求することができる(特許法第132条の17、実用新案法第33条、デザイン保護法第120条、商標法第116条)。
取消査定不服審判は、意匠登録取消査定※を受けた場合、その査定謄本の送達を受けた日から3か月以内に請求することができる(デザイン保護法第120条)。
※ 意匠登録取消査定とは、意匠一部審査登録出願の異議申立(デザイン保護法第68条)においてなされる取消査定をいう。詳しくは下記の関連記事を参照されたい。
関連記事:韓国における意匠(韓国語「デザイン」)出願制度概要(2020年3月19日)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/18372/
訂正審判は、特許権者または実用新案権者が、特許権または実用新案権が設定登録された後に、特許請求範囲を減縮する場合、間違って記載されたものを訂正する場合、または発明でないように記載されたものを明確にする場合、明細書または図面の訂正を請求することができる(特許法第136条、実用新案法第33条)。
なお、「3.方式審査」以降では、代表的な査定系審判である拒絶査定不服審判の手続について説明する。図1のフローチャートも同様とする。
2-2. 当事者系の審判請求
当事者系の審判は、無効審判(特許法第133条、実用新案法第31条、デザイン保護法第121条、商標法第117条)、権利範囲確認審判(特許法第135条、実用新案法第33条、デザイン保護法第122条、商標法第121条)、取消審判(商標法第119条)等がある(審判便覧第1編第3章第2節)。
審判を請求しようとする者は、審判請求書に請求の趣旨および理由を記載して特許審判院に提出しなければならない(特許法第140条、実用新案法第33条、意匠法第126条、商標法第125条)。
2-3. 特許・実用新案登録取消申請
何人も、特許権または実用新案権の設定登録日から登録公告日後の6か月になる日まで、その特許または実用新案登録が取消理由に該当する場合に、特許審判院に取消申請をすることができる(特許法第132条の2、実用新案法第30条の2)。
特許取消申請は、公衆に特許の見直しを求める機会を与え、瑕疵ある特許を早期に是正することにより権利の安定を図るための制度であり、日本の特許異議申立制度に近い。詳しくは下記の関連記事を参照されたい。
関連記事:韓国における特許取消申請について(2020年11月12日)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/19558/
3. 方式審査
特許審判院の審判部は、審判請求時に記載要件および指定書類等の形式的な要件を審査し、瑕疵がある場合には、補正命令がなされる。瑕疵を指定期間(通常1か月。延長可能)内に補正しない場合には、決定により審判請求は却下される。ただし、補正する事項が軽微で明確な場合には、職権で補正される(特許法第141条、実用新案法第33条、デザイン保護法第128条、商標法第127条、審判便覧第3編第3章第2節)。
不適法な審判請求としてその欠陥を補正することができないときは、審判請求は審決により却下される(特許法第142条、実用新案法第33条、デザイン保護法第129条、商標法第128条、審判便覧第3編第3章第3節)。
4. 本案審理
方式審査で瑕疵がなければ本案審理段階に入り、3人または5人の審判官で構成される合議体により審理される(特許法第143条から146条、実用新案法第33条、デザイン保護法第130から133条、商標法第129条から第132条、審判便覧第4編第1章参照)。
4-1. 査定系の場合
審判部は、審判請求書の記載事項を把握し、拒絶査定不服審判では拒絶理由および不服理由を把握し、訂正審判では提出された訂正後の明細書または図面を一体不可分の一つの訂正事項として把握し、争点を整理する。査定系では、書面審理がなされるが、当事者が口頭審理を要請する場合は、書面審理のみで決定が可能な場合を除いて、口頭審理を行わなければならない(特許法第154条第1項、実用新案法第33条、デザイン保護法第142条第1項、商標法第141条第1項、審判便覧第16編第4章、第21編第7章第1節、第24編第7章第1節)。請求人が、審判官に拒絶査定の争点等の技術、意匠あるいは商標を説明したい場合は、説明会の開催を要請することができる(審判事件説明会等運営規定第5条第3項)。
4-2. 当事者系の場合
審判部は、審判が請求されると、審判請求書の副本を被請求人に送達する(特許法第147条、実用新案法第33条、デザイン保護法第134条、商標法第133条、審判便覧第2編第2章第9節)。審判部は、まず書面審理を行い、審判請求の理由および答弁や証拠資料を調べ、争点を整理する。審判請求の理由に対する答弁の指定期間は1か月である(審判事務取扱規定第22条第1項)。当事者系は原則的に、口頭審理を行わなければならない。ただし、(i) 審判請求書副本送達後の答弁書が未提出である事件、(ii) 口述審理期日前の審判請求が取下、却下等の事由で終結が予定された事件、(iii) 当事者が提出した審判書類のみで事実認定および判断が容易であると審判長が認めた事件は、書面審理により行うことができる(審判事務取扱規定第39条の2第1項)。
5. 審理終結通知
本案審理が終わり審決段階に入ると、審判の当事者へ、審理が成熟して審理が終結に近く、追加の審判書類の提出は定められた期限までのみ可能であるということを審理進行状況案内通知により案内する(審判便覧第11編第2章第1節)。同通知により審判請求理由に対する追加意見を提出する最後の機会が与えられるので、この機会を上手く活用することが望ましい。
その後、審理終結通知がなされる。審理終結通知書には、審決を行う日(審決予定日)を記載し、該当日に審決しなければならない。これは2023年に韓国特許庁の運用変更によって導入された「審決日予告制」であり、当事者に審決予定日を知らせることによって、審決日に対する不確実性を解消し、訴訟提起の要否など今後の紛争に備えた計画を可能にするなど、当事者の利便性向上を図るものである。
審決予定日が変更された場合、審決予定日変更案内通知書を発送しなければならず、審決予定日変更案内通知書の予定日は、審理終結通知書の発送日を基準として20日を超えてはならない(審判便覧第11編第2章第2節)。
6. 審決
審理終結通知をした日から20日以内に審決をすることが原則とされている(特許法第162条、実用新案法第33条、デザイン保護法第150条、商標法第149条)。
6-1. 査定系の場合
原決定を取り消して審査部に差し戻す(認容)もしくは原査定を維持する(棄却)のいずれかの内容の審決がなされる。なお、原決定を取り消す場合は、審判部で特許査定または登録査定をすることはなく、必ず審査部に差し戻される(審判便覧第12編第4章)。
6-2. 当事者系の場合
請求棄却あるいは請求認容により審決する(審判便覧第12編第5章参照)。
台湾における特許関連番号フォーマット
台湾における特許には出願番号、公開番号、登録番号等の各種番号が付与されるが、公開明細書・登録明細書(以下、合わせて「明細書」と略す。)および公報に記載される番号フォーマットと台湾経済部智慧財産局(台湾特許庁)が提供する専利(特許、実用新案、意匠)検索システムや欧州特許庁が提供するEspacenetの入力に用いられる番号フォーマットは異なっている。本稿では、台湾の特許番号体系および台湾経済部智慧財産局(台湾特許庁)が提供する専利(特許、意匠、実用新案)検索システムや欧州特許庁が提供する無料特許調査ツール「Espacenet」における番号フォーマットの入力例を紹介する。
1. 台湾における公報および明細書記載の特許関連番号
台湾における公報および明細書に記載される番号の一例を紹介する。
1-1. 出願番号フォーマット
台湾における出願番号フォーマットは、「年(台湾暦)2桁または3桁+出願種別数字1桁+連番数字5桁」となっている。台湾暦に1911を加えると西暦年となる。西暦2011年に台湾暦100年を迎えており、現在は「台湾暦3桁+出願種別数字1桁+連番数字5桁」となっている。
出願種別数字が示す出願区別は以下のとおりである。
1:特許
2:実用新案
3:意匠
1-2. 公開番号フォーマット
台湾における公開番号フォーマットも出願番号と同じく年を含むが、台湾暦ではなく西暦であり、「西暦4桁+連番数字5桁」となっている。
1-3. 公告番号フォーマット
台湾では2004年6月30日まで公告公報が発行されており、「連番数字6桁」(年は含まれていない)となっていた。
1-4. 登録番号フォーマット
登録番号フォーマットは、「出願種別コード1文字+連番数字6桁」となっている。
出願種別コードが示す出願区別は、以下のとおりである。
I:特許
M:実用新案
D:意匠
以下に、公報および明細書(公開特許公報および公開特許明細書:図1から図4、登録特許公報および登録特許明細書:図5から図8)における番号表記例を紹介する。
図1、図2の番号等の説明
[11]公開特許番号 200834010(緑線囲い)
[21]出願番号 096138312(赤線囲い)
[22]出願日 台湾暦96年(西暦2007年)10月12日(青線囲い)
図3、図4の番号等の説明
[11]公開特許番号 202222467(緑線囲い)
[21]出願番号 109143236(赤線囲い)
[22]出願日 台湾暦109年(西暦2020年)12月8日(青線囲い)
図5、図6の番号等の説明
[11]登録番号 I437190(オレンジ線囲い)
[45]公告日 台湾暦103年(西暦2014年)5月11日
[21]出願番号 096138312(赤線囲い)
[22]出願日 台湾暦96年(西暦2007年)10月12日(青線囲い)
[11]公開特許番号 200834010(緑線囲い)
[43]公開日 台湾暦97年(西暦2008年)8月16日
図7、図8の番号等の説明
[11]登録番号 I773003(オレンジ線囲い)
[45]公告日 台湾暦111年(西暦2022年)8月1日
[21]出願番号 109143236(赤線囲い)
[22]出願日 台湾暦109年(西暦2020年)12月8日(青線囲い)
[11]公開特許番号 202222467(緑線囲い)
[43]公開日 台湾暦111年(西暦2022年)6月16日
台湾暦100年以前の出願において、公開特許公報(中国語「發明公開公報」)および登録特許公報(中国語「専利公報」)では、出願番号は「台湾暦(0を加えた3桁固定)+出願種別数字1桁+連番数字5桁」で表示されるが(図1および図5)、公開特許明細書(中国語「發明専利説明書」)および登録特許明細書(發明専利説明書公告本)では、「台湾暦(桁合わせ無しの2桁)+出願種別数字1桁+連番数字5桁」で記載されている(図2および図6)。また、出願日の記載については、公開特許公報および登録特許公報では西暦が()で併記されるが(図1および図5)、公開特許明細書および登録特許明細書では台湾暦のみが表示されているので、注意が必要である(図2および図6)。
台湾暦100年以降の出願においては、公開特許公報と公開特許明細書、および登録特許公報と登録特許明細書において、出願番号および出願日の記載に相違はない(図3、図4および図7、図8)。
2. 台湾経済部智慧財産局(台湾特許庁)専利検索システム(英語版)での検索
台湾経済部智慧財産局が提供する専利検索システム(英語版)での検索手順を紹介する。
(1) 台湾経済部智慧財産局の英語版(https://www.tipo.gov.tw/en/mp-2.html)にアクセスし、画面を下にスクロールして、画面下部「Resources and Tools」の「Search」欄の「Patents」(赤線囲いの部分)を選択(図9)すると、「全球專利檢索系統(Global Patent Search System)」(https://gpss3.tipo.gov.tw/gpsskmc/gpssbekm?@@0.3689919477811945)に接続される(図10)。
(2) 本稿では、簡易検索方法を紹介する。その他の検索方法については、「台湾における専利(特許/実用新案/意匠)公報の調べ方―台湾特許庁(TIPO)ウェブサイト」(https://www.globalipdb.inpit.go.jp/etc/26842/)を参照されたい。
検索する際、いずれかのタイミングで図11の利用者確認画面が表示される。「人間であることを確認します」(赤線囲いの部分)の欄の□をクリックすると検索を進めることができる。
簡易検索の例(図12)として、緑線で囲んである欄に登録番号「I437190」(番号の1文字目はアルファベットの「I(アイ)」)を入力し、「Search」(オレンジ線囲いの部分)をクリックすると、検索結果が表示される(図13)。なお、出願日が2010年(台湾暦99年)以前の出願番号を検索する際には台湾暦の前に“0”を補っても補わなくても検索可能である。
(3) 図13の検索結果の緑線で囲んである登録番号をクリックすると出願詳細情報が表示される(図14)。また、図13の右端(オレンジ囲いの部分)の「Gazette」をクリックすると登録特許公報(前掲図5)が、「Specifications」をクリックすると公告特許公報(前掲図6)がそれぞれ表示される。
(4) 公開特許の記録と登録特許の記録はリンクしており(各公報発行後)、図14の「Patent Number」の「Publication TW200834010A」(青線囲いの部分)をクリックすると図15が表示される。
図15の「Legal Status」(オレンジ線囲いの部分)をクリックすると図16が表示され、中国語の出願詳細情報を確認することができる。また、図16の「公開號」の「公告I437190」(赤枠囲いの部分)をクリックする中国語での登録特許の詳細情報を確認することができる。
(5) 図16の緑線で囲んである「E」をクリックすると、Espacenetのレコードに遷移し、出願詳細画面が表示される(図17)。台湾経済部智慧財産局の専利検索システムはEspacenetとリンクしているので、対応外国特許等を確認する際には便利である。
3. Espacenetでの検索
Espacenetの「Advanced Search(詳細検索)」(https://worldwide.espacenet.com/advancedSearch)で検索する際の入力例を紹介する。
(1) 出願番号の検索
図18のApplication number(出願番号)の項目に「国コード+西暦4桁(台湾暦+1911)+出願種別数字1桁+連番数字5桁」を入力する。先ほどの「I1437190」の出願番号は「096138312」(前掲図5)なので、国コード「TW」+上3桁(096)に1911を加算した「2007」+「138312」である「TW2007138312」を「Application number」欄に入力し「Search」をクリックすると検索結果が表示され、さらに検索結果(図19)の発明の名称「Light emitting diode lighting device」をクリックすると、図20が表示される。
なお、Espacenetでの出願番号および出願日は、「Application number」(緑線囲いの部分)の欄に示しているように西暦(台湾暦+1911)に変換されている(図20)。
(2) 公開特許番号および登録特許番号での検索
Publication number(公報番号)の項目に、公開特許番号の場合は「国コード+西暦(4桁)+連番数字5桁」番号(図21)を、登録特許番号の場合は「国コード+出願種別コード1文字+連番数字6桁」番号(図22)を入力すると、検索結果が表示される(図19)。
上記入力例における番号フォーマットの比較
種別 | 明細書 | 公報 | 台湾経済部智慧財産局DB | Espacenet |
---|---|---|---|---|
出願番号 | 96138312 | 096138312 | 096138312 | TW2007138312 または TW20070138312 |
公開番号 | 200834010 | 200834010 | 200834010 | TW200834010 |
登録番号 | I437190 | I437190 | I437190 | TWI437190 |
韓国の判例の調べ方
(1) 総合法律情報のウェブサイト(https://glaw.scourt.go.kr/wsjo/intesrch/sjo022.do)にアクセスする。総合法律情報のウェブサイトを開くと、下記のトップ画面(図1)が表示される。
(2) 次に、トップ画面(図1)の上部にある「검색(検索)」ボックス(図2)に、キーワード、事件名、法令名、条文番号、事件番号、当事者名等を数字または韓国語で入力し、検索ボックスの上の左から2番目のチェックボックス「판례(判例)」にチェックを入れて右側の「검색(検索)」ボタンをクリックする。(初期画面では「☑전체(全体)」が選択されている。)
なお、チェックボックス欄は左から順に、「검색대상(検索対象)」、「전체(全体)」、「판례(判例)」、「법령(法令)」、「조약(条約)」、「문헌(文献)」、「규칙/예규/선례(規則/例規/先例)」となっているので、判例以外について絞り込み検索をすることも可能である。
また、この画面で、総合検索以外の検索も可能である。トップ画面(図1)最上部(図3.)の「통합검색(統合検索)」、「판례(判例)」、「법령(法令)」、「조약(条約)」、「문헌(文献)」、「규칙/예규/선례(規則/例規/先例)」のうち、左から2番目の「판례(判例)」にマウスポインタを合わせると、下方に「단순검색(単純検索)」、「상세검색(詳細検索)」、「디렉토리검색(ディレクトリ検索)」が表示される。
(3) まず、「단순검색(単純検索)」から説明する。図3の「단순검색(単純検索)」をクリックして、検索ボックスにキーワード等を入力してから、「검색(検索)」ボタンをクリックすると、該当する判例を見ることができる。例えば、「大法院2007年10月11日付言渡2007フ1422拒絶決定(特)」の原文詳細を確認したい場合、事件番号部分を韓国語に翻訳し、「2007후1442」と入力して検索ボタンをクリックすると、下記の検索結果が表示され(図4)、表示されている番号をクリックすると判決全文を見ることができる(図5)※1。
※1 使用しているブラウザによっては、新しいタブで判決全文画面(図5)が自動的に開くことがある。
なお、韓国総合法律情報ウェブサイト検索結果の判決全文は、印刷および保存することができ、判決全文を印刷する場合は、以下の要領で行う。
まず、図5の画面右上にある「본문출력(本文出力)」(図6)をクリックすると、印刷範囲を指定するウィンドウ(図7)が表示されるので、「본문(本文)」(すべて印刷の場合)、「일부출력(一部出力)」(部分的に印刷したい場合)、「판시사항(判示事項)」、「판결요지(判決要旨)」、「참조조문(参照条文)」、「참조판례(参照判例)」、「전문(全文)」、「관련자료(関係資料)」、「옵션(オプション)」の「□큰글씨출력(大きい文字で出力)」を適宜チェックして、その下の「출력하기(出力する)」をクリックし、必要な範囲を印刷する。
また、判決全文の保存をしたい場合は、以下の要領で行う。
まず、図5の画面右上の「본문저장(本文保存)」(図6)をクリックすると、ファイル形式の選択および保存範囲を指定するウィンドウ(図8)が表示されるので、「파일형식(ファイル形式)」でPDFを選択し※2、下にある「저장(保存)」をクリックすることで、必要な範囲をPDFファイルとして保存することができる。
※2 図8.の「HWP」とは、韓国の代表的なワープロソフトのドキュメントファイルである。
(4) 次に、「상세검색(詳細検索)」について説明する。
図3で表示された「상세검색(詳細検索)」をクリックすると、下記の図9が表示されるので、各々の検索ボックスにキーワードを入力したり、チェックボックスに✔(チェック)を入れたりして、検索することができる。
(5) 最後に、「디렉토리검색(ディレクトリ検索)」を説明する。図3で表示された「디렉토리검색(ディレクトリ検索)」をクリックすると、下記の図10が表示される。ここでは判例を法条文別または法律名別に検索することができる。
左段の該当する分野別ディレクトリ(図10の青枠内)で希望の項目を選択すると、結果が表示される。例えば、図11のように法分野別ディレクトリで「제30편 공업소유권(第30編 工業所有権)」を選択するとその下に、「제1장 행정조직·통칙(第1章 行政組織・通則)」、「제2장 특허·실용신안(第2章 特許・実用新案)」、「제3장 의장·상표(第3章 意匠・商標)」の項目が表示され、関連する判例等を法条文別または法律名別で検索することができる。
さらに、図11の検索結果の中から希望の法律名等を選択すると別ウィンドウが開くので、左段から希望の項目を選択すると、図12のように判例リストが表示される。
判例リストの中から表示されている件名(図12の黄色枠)をクリックすると、図5のような判決全文を確認することができる。
メキシコにおける特許・意匠・商標公報のアクセス方法
1. 特許、実用新案、意匠公報検索
(1) メキシコ産業財産庁(IMPI)が提供する産業財産権情報システム(SIGA(https://siga.impi.gob.mx/))へアクセスし、表示された画面(トップページ)(図1)の下方の赤枠の「Ejemplares(公報)」をクリックする(図1)。
(2) 公報検索画面が表示される(図2)。
(i) 赤枠の「Área(分野)」をクリックすると表示されるプルダウンメニューの、「Patentes」を選択する。なお、「Patentes」には特許、実用新案、意匠公報が含まれている。
(ii) 青枠の「Fecha de Puesta en Circulación(公報発行日)」のカレンダーマークをクリックし、期間を指定する。
(iii) 緑枠の「Gacetas(公報)」をクリックすると、プルダウンメニューが表示されるので、検索したい公報の種類によって適切なメニューを選択する。
・公開公報を検索する場合:「Solicitudes de Patente, de Registros de Modelo de Utilidad y de Diseños Industriales(特許、実用新案登録および工業意匠出願)」を選択。以降、「1-1 公開公報検索」に続く。
・登録公報を検索する場合:「Patentes, Registros de Modelos de Utilidad y de Diseños Industriales(特許、実用新案登録、意匠登録)」を選択。以降、「1-2 登録公報検索」に続く。
1-1. 公開公報検索
(1) 図3のように検索条件を設定し、「Buscar(検索)」をクリックすると、画面下方に公報がリストとして表示される(図4)。期間を指定しない場合は、直近の10か月分の公報のリストが表示される。「Limpiar(消去)」をクリックすると入力した条件が消去される。
(2) 図4の赤枠の「Ver」をクリックすると、HTML形式の公報が表示される(図5)。図5は、2024年7月5日に掲載された公報を選択した例である。
(3) 図5の赤枠の「Buscardor(検索用語)」に、調べたい用語、例えば出願番号を入力すると、該当する箇所に黄色ハイライトが表示される(図6)。
図5の画面から特許、実用新案および意匠の出願公開公報を確認することができる。図5の左青枠内に示される「Secciones(区分)」のいずれかを選択すると、区分ごとに表示することができる。初期設定では、「Solicitudes de Patent(特許出願)」が選択されている。なお、選択した区分に該当する件数が多い場合は、案件表示に時間がかかることもある。
選択できる区分は、以下のとおり。
・Solicitudes de Patent(特許出願)
・Solicitudes de Patente conforme al Tratado de Cooperación en Materia de Patentes(特許協力条約に基づく特許出願)
・Solicitudes de Patente publicadas anticipadamente(早期公開された特許出願)
・Solicitudes Divisionales de Patente(分割特許出願)
・Fe de Erratas de Solicitudes de Patente conforme al Tratado de Cooperación en Materia de Patentes(特許協力条約に基づく特許出願の正誤表)
・Solicitudes de Registro de Modelo de Utilidad(実用新案登録出願)
・Solicitudes de Registro de Modelo de Utilidad conforme al Tratado de Cooperación en Materia de Patentes(特許協力条約に基づく実用新案登録出願)
・Solicitudes Divisionales de Registro de Modelo de Utilidad(実用新案登録の分割出願)
・Solicitudes de Registro de Diseño Industrial(工業意匠登録出願)
・Solicitudes de Registro de Diseño Industrial Divisionales(工業意匠登録の分割出願)
・Solicitudes de Registro de Diseño Industrial conforme al Sistema de la Haya(ハーグ制度に基づく工業意匠登録出願)
・Solicitudes Divisionales de Registro de Diseño Industrial conforme al Sistema de la Haya(ハーグ制度に基づく工業意匠登録の分割出願)
なお、意匠出願の書誌事項画面にはURLが記載されている。図6-2の赤枠で示すURLをクリックすると、後述の図9の画面が表示され出願書類を確認することができる。
(4) 図6-1の赤枠の「Extracto de Gaceta(公報抜粋)」をクリックすると、図7のように該当する公報の表紙ページが表示される。
図6-1の青枠の「Expediente de Electrónico(電子ファイル)」をクリックすると、図8のように経過情報一覧が表示される。
図6-1の緑枠の「Ver Solicitud(出願書類閲覧)」をクリックすると、図9のように出願時の明細書等の出願書類を閲覧することができる。
1-2. 登録公報検索
(1) 前掲の図2の公報検索画面において、登録公報を検索すべく検索条件を設定し、検索する。図10は、赤枠の「Área(分野)」を「Patentes(特許)」、緑枠の「Gacetas(公報)」を「Patentes, Registros de Modelos de Utilidad y de Diseños Industriales(特許、実用新案登録、意匠登録)」として条件設定し、オレンジ枠の「Buscar(検索)」をクリックし、検索結果を表示した画面である。なお、案件表示に時間がかかる場合がある。
(2) 図10のピンク枠の「Ver」をクリックすると、HTML形式の公報が表示される(図11)。図11は、2024年7月9日に掲載された公報を選択した例である。登録日は図11の赤枠で示す「[45] Fecha de concesión」の項目から確認することができる。
表示される登録公報には、特許、実用新案および意匠が含まれている。図11の青枠で示す「Secciones(区分)」のいずれかを選択すると、区分ごとに表示することができる。初期設定では「Patentes(特許)」が選択されている。なお、選択した区分に該当する件数が多い場合は、案件表示に時間がかかることもある。
選択できる区分は、以下のとおり。
・Patentes(特許)
・Registros de Modelos de Utilidad(実用新案登録)
・Registros de Diseños Industriales: Modelos y Dibujos Industriales(工業意匠登録:工業モデルおよび図面)
・Registros de Diseños Industriales conforme al Arreglo de la Haya: Modelos y Dibujos Industriales(ハーグ協定に基づく意匠登録:工業モデルおよび図面)
・Esquemas de Trazado de Circuitos Integrados(集積回路のレイアウト図)
(3) 図12は、図11の下方の画面である。各案件の公報の下にある項目をクリックすると該当する書類が表示される。
(i) 赤枠の「Extracto de Gaceta(公報抜粋)」をクリックすると、該当する公報の表紙ページが表示される。
(ii) 青枠の「Expediente de Electrónico(電子ファイル)」をクリックすると、経過情報が表示される。
(iii) 緑枠の「Ver Título(タイトル閲覧)」(特許公報の場合のみ表示される)をクリックすると、登録された明細書および図面を閲覧することができる。
2. 商標公報検索
(1) メキシコ産業財産庁(IMPI)が提供する産業財産権情報システム(SIGA(https://siga.impi.gob.mx/))へアクセスし、赤枠の画面下方「Ejemplares(公報)」をクリックする(図13)。
(2) 図14は、下記の(i)から(iv)に従って検索条件を設定し、検索結果を表示した画面である。なお、案件表示に時間がかかる場合がある。
条件の設定は以下のとおりである。
(i) 赤枠の「Área(分野)」をクリックすると、プルダウンメニューが表示されるので、「Marcas(商標)」を選択する。
(ii) 青枠の「Fecha de Puesta en Circulación(公報発行日)」のカレンダーマークをクリックし、期間を指定する。なお、期間を指定しない場合は、直近の10件分の公報がリストに表示される。
(iii) 緑枠の「Gacetas(公報)」をクリックすると、プルダウンメニューが表示されるので「Notificación de Resoluciones, Requerimientos y demás Actos(決議、要件およびその他の法律の通知)」を選択する。
(iv) オレンジ枠の「Buscar(検索)」をクリックすると、画面下方にリストが表示される。
「Limpiar(消去)」をクリックすると、入力した条件が消去される。
(3) 図14のピンク枠の「Ver」をクリックすると、HTML形式の公報が表示される。図15は、2024年7月15日に発行および公開された公報(「Ejemplar 1 (公報1)」を選択した例である。
(4) 例えば、リスト中の登録番号2727448の情報を確認したい場合、 図15の赤枠のURLをクリックすると、図16のように詳細情報が表示される。
図15の青枠のアイコン(「Extracto de Gaceta(公報抜粋)」)をクリックすると、図17のように該当日に発行された公報の一覧が表示される。
図15の緑枠の「Expediente de Electrónico(電子ファイル)」をクリックすると、図18のように経過情報一覧が表示される。PDFをクリックすると該当文書を閲覧することができる。
中国における専利出願時等の委任状の取扱い
1. 委任が必要な場合
(1) 中国大陸に常時居住地もしくは営業所のない外国人、外国企業、または外国のその他の組織(香港、マカオ、台湾地区の出願人も含む)が、中国で専利出願およびその他の専利事務手続を行う場合、または先頭署名出願人(代表者)として、中国大陸の出願人と共同で専利出願およびその他の専利事務手続を行う場合、中国大陸の専利代理機構(中国語「专利代理机构」)※に委任しなければならない。なお、中国大陸の個人または企業等は、国内での専利出願およびその他の専利事務手続を行う際に、専利代理機構に委任することができる(中国専利法(以下「専利法」という。)第18条、中国専利審査指南(以下「審査指南」という。)第1部第1章6.1.1)。
※ 専利代理機構とは、専利代理管理弁法に基づき設立されたパートナ形式または有限責任公司形式の代理機構をいう(専利代理管理弁法第9条)。
(2) 方式審査において、上記の中国大陸に常時居住地または営業所のない出願人が、専利出願およびその他専利事務手続を行うにあたって委任状を提出していないことが判明した場合、補正命令が出され、出願人が指定された期間内に応答しない場合には、その出願は取下げられたものとみなされる(中国専利法実施細則(以下「実施細則」という。)第50条、審査指南第1部第1章6.1.1)。出願人が指定された期間内に意見を陳述し、あるいは補正をしても、専利法第18条第1項の規定に合致しない(専利代理機構に適切に委任されていない)場合には、その出願は拒絶される(審査指南第1部第1章6.1.1)。
2. 委任状の提出時期等
出願人は、専利代理機構に委任する場合、委任状の原本を国務院専利行政部門(国家知識産権局専利局)に提出しなければならない(審査指南第1部第1章6.1.2)。
通常、出願またはPCT出願の中国国内移行と同時に委任状を国務院専利行政部門(国家知識産権局専利局)へ提出する(実施細則第17条第2項、審査指南第3部第1章5.1.2)。
実務では、出願時またはPCT出願の中国国内移行時に提出できない場合は、委任状が未提出である旨の補正命令が発せられるまで、いつでも自発的に補充することが可能である。また、国務院専利行政部門から委任状が未提出である旨の補正命令を受領して2か月以内であれば補充することができる(実施細則44条第1項(5)、審査指南第1部第1章3.2、第5部第7章1.2)。
しかし、中国大陸に常時居住地または営業所のない出願人が、この補充期限を逃すと、当該専利出願は拒絶される(審査指南第1部第1章6.1.2)。
ただし、不可抗力の事由や正当な理由によって期限を徒過した場合は、この補充期限に対しては、最長2か月の期間延長を請求することができる(実施細則第6条第1項、審査指南第5部第7章4.)。
3. 委任状への署名または捺印
出願人が個人である場合、出願人は、委任状に署名または捺印しなければならない。
出願人が企業である場合、企業の公印を捺印するものとし、同時にその法定代表者の署名または捺印を付しても良い。
出願人が2名以上いる場合、出願人全員が署名または捺印しなければならない。
委任状に専利代理機構の公印を捺印しなければならない(審査指南第1部第1章6.1.2)。
4. 包括委任状
出願人は、専利出願等(無効審判請求を委任する場合は、別途委任状が必要である)に関する業務を包括的に専利代理機構に委任する場合、包括委任状を提出することができる。国務院専利行政部門は、規定に合致する包括委任状を受取った後、包括委任状に番号を付け、専利代理機構に通知しなければならない。包括委任状を交付済みである場合、専利出願を提出する時に、包括委任状番号を提示しなければならない(審査指南第1部第1章6.1.2)。なお、商標局が国家知識産権局の組織となった現在でも、専利と商標は異なる機関で受理・審査されるため、専利と商標とでは別個に包括委任状を提出する必要がある。
5. 出願人または専利権者自ら行うことができる手続
2023年の実施細則の改正によって、専利代理機構に委任した出願人または権利者が、自ら行える下記(i)~(iii)の手続が規定された。これにより、日本の出願人または権利者は、これらの手続を自ら国務院専利行政部門に対して直接行うことができる(実施細則第18条)。
(i) 優先権の主張を伴った専利出願において、最初に提出した専利出願の書類の副本を提出する場合
(ii) 費用を納付する場合
(iii) 国務院専利行政部門によって規定されたその他の業務
【留意事項】
中国以外の外国国籍の出願人が国務院専利行政部門に専利出願等の手続を行う場合、法により設立された中国の専利代理機構に委任しなければならず(専利法第18条)、外国国籍の出願人が代理人に委任せずに国務院専利行政部門に直接出願した場合、その出願が拒絶されることに留意すべきである。
出願人が企業の場合、委任状に企業の公印を捺印しなければならないが、企業の法定代表者の署名または捺印はなくても良い。委任状に公印の捺印などに関する形式的な不備がある場合、補正命令を受けてから2か月以内に委任状を再提出することが可能である。委任状の形式要件に関しては、基本的には現地代理人に任せておくことで差支えないだろう。
中国における意匠出願制度概要
1. 出願手続
(1) 出願
出願書類は、願書、意匠の図面または写真、意匠の簡単な説明等が必要である(中国専利法(以下「専利法」という。)第27条第1項、専利法実施細則(以下「実施細則」という。)第30条第1項、同第31条第1項)。
すべての書類は、中国語で提出する必要があり、中国語でない場合は不受理となる(実施細則第3条第1項、第44条第1項第2号)。外国語書面出願制度はない。
パリ条約を利用した優先権主張は、外国で初めて出願した日から6か月以内にしなければならない(専利法第29条第1項)。また、国内優先権の主張を伴った出願も可能である(専利法第29条第2項)。この場合は、中国に最初に専利出願を提出した日から6か月以内に出願しなければならない。なお、2023年の実施細則の改正※で、基礎出願が意匠の場合だけでなく、特許または実用新案の出願である場合も、図面に示された意匠と同一の主題について、国内優先権を主張して意匠出願できることが規定された(実施細則第35条第2項)。また、意匠出願を基礎として国内優先権を主張して意匠出願をしたときは、先の意匠出願は取下げられたとみなされるが、特許・実用新案出願を基礎にした場合は、先の特許・実用新案出願は取り下げられたものとはみなされない(実施細則第35条第2項)。
※ 意匠の国内優先権についての改正で、パリ優先権については、従来から、外国特許・実用新案・意匠出願を基礎に、パリ優先権を主張して中国に意匠出願をすることができたが(審査指南第1部第1章5.2.1.1)、国内優先権についても、意匠出願だけでなく、特許・実用新案出願を基礎にすることができることを明確にしたものである。
部分意匠の出願が可能である(専利法第2条第4項)。2023年の実施細則、中国専利審査指南(以下「審査指南」という。)の改正により、部分意匠の図面、簡単な説明、物品名等の記載要件が規定された(実施細則第30条第2項、第31条第3項、審査指南第1部第3章4.4.1から4.4.3)。
なお、日本と異なり秘密意匠制度はないが、遅延審査制度が存在する(実施細則第56条第2項)。出願と同時に遅延審査を請求することで、月単位で最大36か月審査を遅延させることができる(審査指南第5部第7章8.3)。
(2) 方式審査(中国語「初步审查(初歩審査)」)
願書や添付書類などが所定の方式に適合しているか否か、および明らかに不登録事由に該当するか否かの審査が行われ、必要に応じ、指定期限内に意見の陳述または補正をするよう通知される(専利法第40条、実施細則第50条第1項第3号、第4号)。
従来、方式審査において、明らかに新規性の規定に違反していないかの審査が行われていたが、2023年の実施細則の改正により、創作非容易性の規定(専利法第23条第2項)に関しても明らかに違反していないかの審査が行われることになった(実施細則第50条第1項第3号)。
出願公開制度および審査請求制度はない。
意匠出願が拒絶された場合には、出願人は、拒絶査定の通知受領日から3か月以内に国務院専利行政部門(中国語「国务院专利行政部门」)に対して、不服審判(中国語「复审(復審)」)を請求することができる(専利法第41条第1項)。
国務院専利行政部門の不服審判の決定について不服がある場合、通知受領日から3か月以内に人民法院に提訴することができる(専利法第41条第2項)。
(3) 登録・公告
審査の結果、出願を拒絶する理由が存在しない場合には、権利付与決定の後、意匠権(中国語「外观设计专利权(外観設計専利権)」)が付与され、その旨が公告される。意匠権は、公告日から有効となる(専利法第40条)。
意匠の登録手続を行う際には、登録料、および専利権付与年の年金を、専利権付与通知と登録手続実行通知書に基づき、遅滞なく納付期限日までに納付しなければならない(実施細則第114条、審査指南第5部第8章1.2.3.1)。納付期限は、国務院専利行政部門が発行した専利権付与通知書と登記手続実行通知書を、出願人が受け取った日から起算して2か月以内である(審査指南第5部第2章1.(6))。
意匠権の存続期間は、出願日から15年である(専利法第42条第1項)。なお、出願日は初日として算入する(審査指南第5部第7章2.1)。
2. 類似意匠(中国語「相似外观设计」)・組物(中国語「成套产品的外观设计」)の意匠
原則として一意匠一出願であるが、同一製品における二つ以上の類似意匠、あるいは同一種類でかつセットで販売または使用する製品の二つ以上の意匠は、一件の出願として提出することができる(専利法第31条第2項、実施細則第40条)。なお、一件の意匠出願で最大10の類似意匠を出願できる(実施細則第40条第1項)。
3. グラフィカルユーザーインターフェースに係る物品の意匠
出願人は、物品の全体意匠の方式または部分意匠の方式で、グラフィカルユーザーインターフェース(以下「GUI」という。)に係る物品の意匠出願を提出することができる(審査指南第1部第3章4.5)。また、GUIが適用される物品を含む方式による出願や、GUIが適用される物品を含まない方式による出願のいずれでも出願が可能である(審査指南第1部第3章4.5.2.1、4.5.2.2)。
2023年の審査指南の改正により、GUIに係る物品の意匠出願についての図面、簡単な説明、物品名等の記載要件が規定された(審査指南第1部第3章4.5)。
4. 自発補正
出願人は、出願日より2か月以内に、意匠出願を自発的に補正(中国語「修改」)することができる。出願書類の補正は、元の図面または写真で表示した範囲を超えてはならない(専利法第33条、実施細則第57条第2項)。
5. 評価報告書
意匠権に関する侵害紛争において、人民法院または専利業務管理部門は、意匠権者、または利害関係者に対し、意匠権侵害紛争を審理し、処理するための証拠として、国務院専利行政部門が関連する意匠について検索、分析、評価を行ったうえで作成した専利権評価報告書を提出するよう要求することができる(専利法第66条第2項)。ここで、利害関係者とは、人民法院に侵害訴訟を提起する権利を有する原告、例えば、意匠権者、専用実施権者、および意匠権者から契約等により訴権を取得した通常実施権者をいう。
2023年の実施細則の改正により、評価報告書の申請適格者、申請時期および国務院専利行政部門による発行期間について規定された(実施細則第62条第1項、第63条第1項)。
6. 意匠の国際出願
国務院専利行政部門は、専利法第19条第2項および第3項の規定に基づき意匠の国際登録に関するハーグ協定(以下「ハーグ協定」という。)に基づく国際意匠出願を取り扱う。
ハーグ協定にしたがって既に国際登録日が確定され、かつ中国を指定した国際意匠出願は、国務院専利行政部門に提出された意匠出願とみなされ、国際登録日が出願日とみなされる(実施細則第137条)。
2023年の実施細則の改正により、中国を指定した国際意匠出願の手続の根拠、出願日の決定、審査の時期および通知、優先権の主張、新規性喪失の例外、分割出願の時期、簡単な説明のみなし提出、保護の付与および発効、権利変更の手続等が新たに規定された(実施細則第136条から第144条)。また、2023年の審査指南の改正により、新たに第6部が設けられ、意匠の国際出願の事務処理および審査が詳細に規定された(審査指南第6部)。