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ブラジルにおける判例の調べ方―連邦最高裁判所(STF)ウェブサイト

 ブラジル司法機関は、主に連邦裁判所と州裁判所で構成され、連邦裁判所は、連邦政府やその機関あるいは準政府機関が当事者となる訴訟について管轄し、州裁判所は、それ以外の行政に関連しない刑事、民事、商事等に関する訴訟を管轄する。知的財産に係る訴訟については、産業財産庁の決定についての行政訴訟は連邦裁判所が、侵害案件は州裁判所が第一審となる。第一審を担当する連邦裁判所と州裁判所は、それぞれ27か所(26州と連邦区)あり、州裁判所の案件の第二審(控訴審)を担当する州高等裁判所も27か所にあるが、連邦裁判所の第二審(控訴審)の連邦高等裁判所は、6つの巡回区に一か所ずつ設けられている。

 第二審の上級審として、主に憲法裁判所としての役割を担う連邦最高裁判所と、連邦法または国際条約の法解釈についての最終判断を下す連邦司法高等裁判所がある。連邦司法高等裁判所の判決に対して、憲法違反を争って連邦最高裁判所へ上訴することも可能であり、その場合は例外的に第四審までいくことになる。連邦司法高等裁判所への上訴は、「特別上訴」(ポルトガル語「Recurso Especial」、英語「Special Appeal」)と呼ばれ、州裁判所ルートからも連邦裁判所ルートからも行うことができる。

 ブラジルでは、全裁判所の情報を網羅する統一ウェブサイトが存在しないため、判例検索をするには、各裁判所のウェブサイトにおいて検索することになる。以下では、連邦最高裁判所(ポルトガル語「Supremo Tribunal Federal」(略称はSTF、英語「Federal Court of Justice」。以下「STF」という。)のウェブサイトでの判例の調べ方について紹介する。ウェブサイトでの検索の入力キーワードおよび判決文は、いずれもポルトガル語のみである。

 STFは、ブラジル連邦共和国の最上級裁判所であり、主に憲法裁判所としての役割を担っている。すなわち、STFの主な役割は、憲法を守り、解釈することである。ここへ直接提訴される訴訟の種類は、直接憲法違反訴訟(ポルトガル語「Ação Direta de Inconstitucionalidade」、英語「Direct Unconstitutionality Action」)、合憲性の宣言的訴訟(ポルトガル語「Ação Declaratória de Constitucionalidade」、英語「Declaratory Action of Constitutionality」)、脱落による直接憲法違法訴訟(ポルトガル語「Ação Direta de Inconstitucionalidade por Omissão」)、英語「Action of Unconstitutionality by Omission」)、そして基本的な教訓違反の主張(ポルトガル語「Arguição de Descumprimento de Preceito Fundamental」、「Claim of Breach of Fundamental Precept」)がある。

 STFへの上訴は、「通常上訴」(ポルトガル語「Recurso Ordinário」、英語「Ordinary Appeal」)と「非常上訴」(ポルトガル語「Recurso Extraordinário」、英語「Extraordinary Appeal」)がある。前者は、人身保護令状、証券の令状、データ保護令状あるいは送還訴訟に対する訴訟の上訴の場合を言い(憲法問題か否かは問わない)、後者は、控訴審(州レベル、連邦レベル双方)の判断あるいは連邦司法高等裁判所(STJ)の判断が憲法条項に違反することを主張して上訴する場合をいう。

 なお、STFウェブサイトは、ポルトガル語、英語、スペイン語を選択できるが、英語版・スペイン語版にはごく限られた情報のみが掲載されており、ポルトガル語版ウェブサイトでしか判例の検索はできない。そのため、以下では、ポルトガル語版ウェブサイトの使い方を説明し、次に英語版ウェブサイトについて紹介する。

1. ポルトガル語版ウェブサイトの使い方
(1) 検索方法の種類
 STFウェブサイト(https://portal.stf.jus.br/)にアクセスし、トップページの上部のバーの「Jurisprudência(判例)」にカーソルを合わせると、プルダウンメニューが表示される(図1)。ここで、「Pesquisa(調査)」をクリックすると、図2の検索条件入力画面が表示される。主な調べ方は、「キーワード検索」と「項目検索」の二つがある。

図1 STFトップページ

(2) キーワード検索
(2-1) 検索条件の設定
 「キーワード検索の方法」を紹介する。図2の赤枠で囲まれた「Pesquisar palavras-chave(キーワード検索)」という欄に任意のキーワード(ポルトガル語)を入力する。その欄の下に、左端から以下のとおりの条件ボタンがある。
e (and)
ou (or)
não (not)
“ ”(対象用語は、検索された順番と綴りどおりに検索結果に表示される。)
“ ”~(用語は、「~」の後の単語数以内で区切られていれば、そのような順番で結果文書に出る可能性がある。)
~(単語の後に「~」を置くと、その単語が少し変化した文書も検索対象となる。)
$(用語の先頭、中間、あるいは末尾の1文字以上、または0文字を置き換えた単語が対象となる。例えば、$marketと入力すれば、$の部分を変形したsupermarket、highmarket、marketなどが含まれる。)
?(疑問符は、用語の先頭、中間または末尾の1文字を置き換える単語が対象となる。例えば、market?と入力すれば、?の部分を変形したmarkets、marketなどが含まれる。)
()(括弧は、複数の条件を使用する場合の条件の優先順位を示す。 例えば、Appleとwatch、またはiwatchを含むすべてを検索する場合は、Apple e (watch ou iWatch)と入力する。)
上記の条件ボタンがあるので、必要に応じて入力する。

 キーワードを入力したら、図2の入力欄の右側にある拡大鏡のアイコンをクリックする。入力事項を削除したい場合は、入力欄の左側に配置されている円形の2つの曲線矢印のアイコン「Limpar(クリア)」をクリックする。

図2 検索条件入力画面(キーワード検索)

(2-2) キーワードの入力
 例えば、図3のように「Patentes(特許)」と入力して、右側の拡大鏡アイコンをクリックする。

図3 検査条件入力画面(例:patentes)

(2-3) 検索の実行および結果
 検索を実行すると、図4の検索結果のページが表示される。

図4 検索結果例

 検索結果は、図4の赤枠で囲った左上の「Base」に示されるように、上から順に以下の件数が示される。,
・Acórdãos:合議審による判決
・Repercussão Geral:一般的な影響を与える判決
・Questões de Ordem:秩序の問題
・Coletânea de acórdãos:合議審による判決の収集
・Decisões Monocráticas:単独審による判決
・Informativos:情報誌
・Súmulas:判例要旨

 上記の例では、Acórdãosが689件、Decisões Monocráticasが18,891件、Informativoが99件、Súmulasが1件ヒットしたことがわかる。
 例えば、図4の検索結果で 表示される情報は、以下のとおりである(記事作成時点で最初に表示された事件番号RE 601146の例を示す。)。

・Processo:事件番号(上記例ではRE 601146、「Processo」は表示されず事件番号のみが青色太字で先頭に表示される。)
・Órgão Julgador:担当法廷(上記例では、Tribunal Pleno「大法廷」)
・Relator(a):担当判事(上記例では、MARCO AURELIO判事)
・Redator(a) do acórdão: 判決起案判事(上記例では、ALEXANDRE DE MORAES判事)
・Julgamento :判決日(上記例では、2020年6月8日)
・Publicação:判決の公示日(上記例では、2020年10月21日)
・Ementa:判決要旨
・Tema:争点
・Tese:法学的見解
・Outras ocorrências:その他の事項

 図4の赤枠で囲った事件番号(上記例ではRE 601146)をクリックすると、図5aおよび図5bに示す事件の詳細がテキスト形式で表示される。

図5a キーワード検索結果例 詳細(前半、一部省略)
図5b キーワード検索結果例 詳細(後半、一部省略)

 また、図4の赤枠で囲った右側のPDFというアイコンをクリックすると、図6の判決全文のPDFが別ウィンドウで開き、閲覧、保存、印刷できる。

図6 上記判決全文の表紙(部分)

(3) 項目検索
(3-1) 検索項目の設定
 もう一つの検索方法として「項目検索」も可能である。図7(前記図3の検索条件入力画面再掲)のキーワード入力欄の右側の「+」のアイコン(Pesquisa avançada(項目別検索))をクリックすると、図8のように項目が展開され、以下の項目による検索が可能となる。

図7 検索条件入力画面(項目検索)
図8 検索条件入力画面(項目検索の項目展開画面)

 検索項目
・Bases:文書の種類。「Acórdãos(合議審による判決)」、「Repercussão geral(一般的な影響を与える判決)」、「Súmulas(判例法理)」、「Decisões monocráticas(単独審による判決)」、「Informativos(情報誌)」から選択
・Pesquisa em todos os campos:キーワード検索と同様
・Pesquisa em campos específicos:特定項目検索
 -Número/Classe:事件番号/分類
 -Ementa/Decisão/Indexação:判決要旨、インデックスキー
 -Tese:法学的見解
 -Tema:争点
 -Observação:備考
 -Partes:当事者
・Pesquisa por legislação:適用法。ここには、法律名を入力し、その条、項、号も指定することができる。

 図8の項目展開画面の左下には「Opções de pesquisa(検索オプション)」もある。「Sinônimos(類義語)」、「Plural(複数形)」、「Busca exata entre aspas(引用符で囲まれた用語に対しては、正確に一致する結果のみが検索される。)」はデフォルトで選択されている。また、「Inteiro teor(判決全文)」と「Radicais(ラジカル:接頭辞や接尾辞を除いた単語の基本形)」がある。前者にチェックすると、2012年以降の判決全文に含まれる全ての情報が検索対象となる。後者にチェックすると、同じラジカルをもつ単語が検索対象となる。

 入力事項および設定した条件を削除したい場合は、図8の右下の「Limpar(クリア)」をクリックする。条件を設定したら「Pesquisar(調査)」をクリックする。

(3-2) 検索の実行および結果
 例えば、図8において、Base(文書の種類)で「Decisões monocráticas(単独審による判決)」を選択し、事件番号に「ADI 5529」と入力し、「Pesquisar(調査)」をクリックすると、図9の検索結果が表示される。

図9 項目検索結果の例

 この例では、「Acórdãos(合議審による判決)」が1件、「Decisões Monocráticas(単独審による判決)」が2件、「Informativo(情報誌)」が1件ヒットし、選択した「Decisões Monocráticas(単独審による判決)」の2件の内容が右側に表示されているる。
 表示される情報は、以下のとおりである(最初に表示される事件番号ADI 5529 MCの例を示す。)。
・Processo:事件番号(上記例ではADI 5529 MC、「Processo」は表示されず事件番号のみが青色太字で先頭に表示される。)
・Relator(a):担当判事(上記例では、DIAS TOFFOLI判事)
・Julgamento :判決日(上記例では、2021年4月8日)
・publicação:判決の公示日(上記例では、2021年4月9日)
・Decisão:判決

2. 英語版ウェブサイトの使い方
(1) 上記第1項(1)で示したSTFウェブサイト(https://portal.stf.jus.br/)のトップページの画面上部の「Institucional(概要)」にカーソルを合わせると、プルダウンメニューが表示される(図10)。その右側(赤枠)の「Internacional(国際)」セクションで、「Internacional em português」(ポルトガル語)、「Internacional em inglês」(英語)、「Internacional em espanhol」(スペイン語)、が選択できる。

図10 STFトップページ 概要プルダウンメニュー

(2) 図10の「Internacional em inglês」をクリックすると、図11の英語のページに切り替わる。この英語ページ上では、上欄に、「About the Court」などの項目があり、STFに関する一定の基礎情報等が英語で掲載されている。判例検索に関しては、この上覧の項目中、「CASE LAW」をクリックすると、検索サイトへのリンク案内が英語で表示される(図12)。

図11 英語版トップページ

(3) 図12の判決文検索画面(英語)において、「Decisions of the Brazilian Supreme Court (in Portuguese)」部分をクリックすると判決文の検索ページへ移動できるように示されているが、ウェブサイトが整備されていないようであり、移動先のページは記事作成時点で無効リンクとなっている。上記第1項(2)で紹介したものと同じであるべきと考えられる。

図12 英語表記による判決文検索画面への導入画面

【留意点】
 STFのサイトは反応が遅い場合があり、検索時にエラーメッセージが表示される場合があるが、何度か繰り返すと表示される。また、判決全文のダウンロードも、ページ数にもよると思われるが、しばらく何も表示されないなど、時間を要する場合がある。

ブラジルにおける特許・実用新案、意匠、商標の審判情報へのアクセス方法

 産業財産関連の審判情報は、INPIの産業財産関連情報の検索プラットフォームを使って閲覧できる。

1. INPIウェブサイト
 INPIウェブサイト(https://www.gov.br/inpi/pt-br)にアクセスすると図1に示すホーム画面が表示される。

図1 INPIウェブサイト ホーム画面

 次いで、スクロールダウンすると「Acesso rápido(クイックメニュー)」メニュー(図2)が表示されるので、「BUSCA DE PROCESOS Bases de dados de marcas, patentes y otros activos(検索手順 商標、特許その他のデータベース)」をクリックする。
 また、ブラウザに、検索画面のURL:https://busca.inpi.gov.br/pePI/を直接入力してアクセスすることもできる。なお、このサイトは、システムが不安定で接続できない場合もあるので、そのような場合は一定の期間をおいて再度アクセスされたい。

図2 検索画面に移動するための画面

2. 調査ログイン画面
 検索画面へのアイコンをクリック(またはURLを直接入力)すると、図3に示すログイン画面が表示される。

図3 産業財産情報調査ログイン画面

 アカウントを持っている場合は、ログインIDとパスワードを入力して調査に進む。アカウントを持っていない場合は、ID、パスワード入力欄の下の「Continuar」をクリックするとログインせずに調査に進むことができる。しかし、ログインIDとパスワードを入力せずに検索をすると、経過情報の表示画面(例えば、図8a)においてPDFのアイコンが表示されない場合があるので、ログインIDを作成することを推奨する。
 ログインIDの作成・システムへの登録の方法は、本データバンク内の関連記事「ブラジルの特許・実用新案の登録証その他関連書類の入手方法」(https://www.globalipdb.inpit.go.jp/etc/39432/)」を参照されたい。

3. 産業財産権の選択画面
 ログインまたは「Continuar」をクリックすると、調査したい産業財産権の種別を選択する画面(図4)が表示される。

図4 産業財産権種別選択画面

 検索したい産業財産権の種類に対応するアイコンをクリックすると、情報の入力画面に移動する。
 特許・実用新案、意匠、商標の他に地理的表示、コンピュータプログラム、集積回路配置、技術移転の情報を選択できる。ただし、Informação Tecnológica de Patentes(特許技術情報)を選択しても「情報がない」と表示される。

4. 特許・実用新案
 図4でPatente(特許・実用新案)のアイコンをクリックすると、簡易検索画面(図5)が表示される。

図5 特許・実用新案に関する簡易検索画面

 ここで、「Contenha o Número do Pedido(出願番号を記入する)」の右の空欄に出願番号を入力し、下部の「pesquisar(検索)」をクリックすると、検索結果が表示される。
 例として、「BR 11 2018 0728837」を入力して「pesquisar」をクリックすると、図6が表示される。

図6 BR 11 2018 072883 7の検索結果

 ここで、「Pedido(出願番号)」の下の番号部分をクリックすると、出願の詳細(図7)が表示される。

図7 特許出願の詳細

 この画面を下方にスクロールダウンすると「Publicações(公開情報)」の表(図8)が現れ、「Despacho(オーダー)」の欄の下にオフィスアクションの内容が表示される。

図8a Publicações(公開情報)

 この図8aの「Despacho(オーダー)」の欄に表1の審決関連のコード*があれば、審決の内容が確認できる。

表1. 審決関連のコード番号と内容

12.2Recurso contra o Indeferimento
拒絶査定に対する不服申立
12.3Recurso contra o arquivamento
取下げに対する不服申立
12.6Outros Recursos
その他の不服申立
18.5Recurso contra o Deferimento da Caducidade
不使用取消認容に対する不服申立
18.6Recurso contra o Indeferimento da Caducidade
不使用取消否定に対する不服申立
37Recurso Contra o Indeferimento
拒絶査定に対する不服申立
100Recurso conhecido e provido. Reformada a Decisão recorrida e deferido o pedido 
請求成立決定。審判対象の決定が変更され、付与査定。
102Recurso conhecido e provido. Desarquivado o processo para prosseguir o exame
請求成立決定。取下げが覆され、審査に進む。
103Recurso conhecido e provido. Desarquivada a petição
請求成立決定。申し立ての取下げが覆された。
104Recurso conhecido e provido. Reformada a Decisão recorrida
請求成立決定。審判対象の決定が変更された。
106Decisão de Recurso: Mantida a Prioridade Unionista
不服申立の判決:パリ条約による優先権を維持する。
112Recurso conhecido e negado provimento. Mantido o arquivamento do pedido
請求不成立決定。出願の取下げを維持する。
113Recurso conhecido e negado provimento. Mantido o arquivamento da petição
請求不成立決定。申し立ての取下げを維持する。
115Recurso conhecido e negado provimento. Mantida a Decisão recorrida
請求不成立決定。審判された決定を維持する。
116Decisão de Recurso: perda da Prioridade
不服申立の判決:優先権の喪失
130Recurso Prejudicado
争訟性を失ったことで不服申立却下決定。
131Recurso Não Conhecido
不服申立が受理されない。
* Tabela de Codigos de Despachos de Pedidos, Patentes e Certificados de Adicao de Invencao(出願、特許、発明追加証明のオーダー・コード表)
https://revistas.inpi.gov.br/rpi/download/despachos/200

 図8aでは、赤枠で囲った「Despacho(オーダー)」の「100」が表1に記載される審決関連コードで、拒絶査定不服審判の請求が認容されて特許査定されたことがわかり、「Img(イメージ)」に表示されている2つのPDFアイコンの下側をクリックすると、図8bの審決書をダウンロードすることができる。

図8b 審決書(部分)

5. 商標
 図4でMaruca(商標)のアイコンをクリックすると、簡易検索画面(図9)が表示される。

図9 商標に関する簡易検索画面

 この画面で「Nº do Processo(出願番号)」の右の空欄に出願番号を入力し、下部の「pesquisar(検索)」をクリックすると検索結果が表示される。
 例として、「910145288」を入力して「pesquisar(検索)」をクリックすると、図10が表示される。

図10 910145288の検索結果

 この画面で、「Número(番号)」の下の番号部分をクリックすると、出願の詳細(図11)が表示される。

図11 商標出願の詳細

 この画面を下方にスクロールダウンすると「Publicações(公開情報)」の表(図12)が現れ、「Despacho(オーダー)」の欄の下にオフィスアクションの内容が表示される。
この出願は、「Despacho(オーダー)」の上から2行目が「Recurso provido (decisão reformada para: Deferimento)(請求成立決定(不服申立対象の決定の修正:登録許可))」で拒絶査定不服審判の請求が認容されたことがわかる。しかし、「Inteiro Teor(全内容)」にPDFアイコンが表示されていないので、審決書は見ることができない。なお、「Despacho(オーダー)」の1行目「Concessão de registro(登録付与)」には、PDFアイコンが表示されており、登録証をダウンロードすることができる。

図12 Publicações(公開情報)

 なお、商標の「Despacho(オーダー)」では、特許のような通知コードは使用されず、下表2に示すような文言で表示される。

表2 審決関連のDespacho(オーダー)

Recurso provido (decisão reformada para: Deferimento)
請求成立決定(不服申立対象の決定の修正:登録許可)
Recurso não provido (decisão mantida)
請求不成立決定(不服申立対象の決定の維持)
Notificação de recurso
不服申立通知
Indeferimento do pedido
拒絶査定
Exigência de pagamento
審判料等の納付に関するオフィスアクション
Notificação de recurso para manifestação
審判関係人が応答するために、審判受理の通知
Exigência de mérito
オフィスアクション
Sobrestamento
保留
Ciência de parecer
審判部による意見書
Negado provimento
請求不成立決定
Provimento
請求成立決定
Outros despachos
その他の通知

6. 意匠
 図4でDesenho Industrial(意匠)のアイコンをクリックすると、簡易検索画面(図13)が表示される。

図13 意匠に関する簡易検索画面

 ここで、「Contenha o Número do Pedido(出願番号を入力する)」の右の空欄に出願番号を入力し、下部の「pesquisar(検索)」をクリックすると、検索結果が表示される。
 例として「BR 30 2022 003948 9」を入力して「pesquisar」をクリックすると、図14の画面が表示される。

図14 BR 30 2022 003948 9の検索結果

 ここで、「Pedido(出願番号)」の下の番号部分をクリックすると、出願の詳細(図15)が表示される。

図15 意匠出願の詳細

 この画面を下方にスクロールダウンすると「Publicações(公開情報)」の表(図16)が現れ、商標と同じように「Despacho(オーダー)」の欄の下にオフィスアクションの内容が表示される。
 この出願は、「Despacho(オーダー)」の赤枠で囲った上から7行目に「Notificação de instauração de processo de nulidade a requerimento(請求に基づく無効審判開始の通知)」とあり無効審判が請求されたことがわかる。さらに、赤枠で囲った1行目および2行目の「Requerimento provido (nulo o registro)(請求認容(登録無効))」により、意匠登録が無効となったことがわかる。「Inteiro Teor(全内容)」にPDFアイコンが表示されているが、このPDFは経過情報のみで審決の内容を見ることはできない。

図16 Publicações(公開情報)

インドネシアにおける特許・実用新案・意匠年金制度の概要

1. 特許権
1-1. 存続期間
 インドネシアにおける特許権の権利期間は、出願日(PCT条約に基づく特許出願の場合は国際特許出願日)から20年である。権利期間は延長できない(インドネシア特許法第22条(1)および(2) )。
 なお、以下、本記事の根拠規定の表示において、単に「特許法」とある場合は、本記事末にある【ソース】に紹介する「インドネシア特許法(2016年法律第13号)および解説(英語または日本語)」を参照し、「2024年特許法」とある場合は、同じく【ソース】に紹介する「インドネシア特許法改正法(2024年法律第65号)および解説(インドネシア語または日本語)」を参照されたい。

1-2. 年金の納付期限
 年金の納付手続は、出願の審査中には発生せず、特許が付与されてから発生する。出願に対して特許が付与されると、出願日から起算した初年度分から特許が付与された年の翌年分までの年金を特許付与日から6か月以内に納付しなければならない。この特許付与時の納付年金を累積年金と言う(*下記参照)。累積年金の納付後の各年の年金は、毎年の出願日に対応する日の1か月前までに、次年度分を納付しなければならない(2024年特許法第126条(1)から(3)、およびこれに添付の「解説」の「II.逐条解説」第126条の説明参照)。

*累積年金とは、一般的には、年金納付義務が特許査定前から存在し、かつ特許査定が下されてから納付が開始される国において、登録の手続の際に納付すべき年金のことを指す。指定された年度から査定された年度までをカバーする年金をまとめて納付し、それ以降は年払いに移行する。なお、査定された時期と年金納付日の関係によっては、指定された年度から査定された年度の次の年度の分までを納付することになる場合もある。インドネシアにおける累積年金の納付に関する規定には、納付時期等やや異なる面もあり、詳細は上記のとおりである。

1-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
 納付期限日までに年金が納付されなかった場合、権利は取消となる(2024年特許法第128条(1)))。なお、期限までに年金を納付しなかった場合、6か月間の猶予期間が与えられるが、未納付に係る年金に対し100パーセントの罰金(倍額納付)が科される(2024年特許法126条(4))。なお、非常事態が生じたことにより納付期限を徒過した場合は、特許権者は緊急事態の期間終了後の3日の期間内に年金を納付することができる(特許出願に関するインドネシア共和国法務・人権省令 2018年第38号)第101条)。

1-4. 権利回復制度
 商務裁判所の判決に基づいて行われる場合を除き、インドネシアには、失効した特許権に対する権利回復手続は原則ない(特許法第141条)。

1-5. 年金の誤納
 実務上、意図しない特許権に対して年金を誤って納付してしまった場合や、所定の納付金額以上の額を誤って納付した場合にも、一度納付した年金は返還されないことがあるため注意されたい。

1-6. その他
 年金の納付金額は、請求項の数により変動する(インドネシア知的財産総局(以下、「知的財産総局」という。)サイト内 料金表)。年金の納付は、特許権者または代理人により行うことができるが、特許権者がインドネシア共和国内に住所または居所を有さない場合は、インドネシア在住の代理人により行われなければならない(特許法第127条(1)、(2))。

 上記の通り、年金納付期限日または猶予期間経過までに年金が納付されない場合、特許権は取消となるが、権利の取消を求める内容の法務人権大臣宛の書面を知的財産総局に提出することにより、自発的に権利の放棄を行うことも可能である(特許法130条(a)、131条(1))。特許権者の申立てによる権利の取消の場合も、特許法141条が適用されるため、特許権の権利回復手続は、原則ない。

 登録後の年金は、旧法においては、連続して3年間納付しなかった場合に初めて権利が消滅し、その間の年金は負債として残るという制度であったが、2016年のインドネシア特許法の改正により、1年度分だけでも納付されなかった場合には権利が消滅する制度となった。

なお、2024年特許法128条(1)は、納付期限までに特許年金の納付がなかった場合は、「取消しが宣言される(dinyatakan dihapus)」と規定しており(旧法から変更なし)、日本の特許法第112条5項または6項のように、期限までに納付しなかった場合に遡って権利が消滅した又は初めから権利が存在しなかったものとみなされるという規定になっていないため、納付期限経過後も権利が消滅せず、年金債務が発生する可能性があるという点は注意する必要がある。また、権利消滅後も既に発生した年金債務(未納分)については支払義務があるところ、完納しない限り当該権利者の新規の出願が処理されないという事態が発生している。2024年特許法も、権利消滅後の既発生の未納年金債務について特段の規定を設けていないため、今後も同様の事態が発生する可能性があることに注意が必要である。

2. 実用新案権
2-1. 存続期間
 実用新案権の権利期間は、出願日から10年である。権利期間の延長はできない(特許法第23条(1)および(2))。

2-2. 年金の納付期限
 特許法121条により、原則として同法の特許に関する規定は実用新案権にも準用されることから、年金に関する規定は、特許権の場合と同じである。年金の納付手続は、出願の審査中には発生せず、実用新案権が付与されてから発生する。出願が登録を受けると、出願日から起算した初年度分から実用新案権が付与された年の翌年分までの年金(累積年金)を実用新案付与日から6か月以内に納付する必要がある(2024年特許法第126条(1)、(2))。累積年金の納付後の各年の年金は、毎年の出願日に対応する日の1か月前までに、次年度分を納付しなければならない(同条(3))。

2-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
 追納に関する規定は、特許と同様である(特許法第128条)。

2-4. 権利回復制度
 特許権と同様、商務裁判所が決定した場合を除き、取消された実用新案権に対する権利回復の手続は原則ない(特許法第141条)。

2-5. 年金の誤納
 実務上、意図しない実用新案権に対して年金を誤って納付してしまった場合や、所定の納付金額以上の額を誤って納付した場合であっても、一度納付した年金は返還されないことがあるため注意されたい。

2-6. その他
 年金の金額は請求項の数により変動する(知的財産総局サイト内 料金表)。年金の納付は、実用新案権者または代理人により行うことができるが、実用新案権者がインドネシア共和国内に住所または居所を有さない場合は、インドネシア在住の代理人により行われなければならない(特許法第127条(1)、(2))。

 上記の通り、年金納付期限日または猶予期間経過までに年金を納めない場合、実用新案権は取消されるが、権利を放棄したい旨を記した法務人権大臣宛の書面を知的財産総局に提出することにより、自発的に放棄を行うことも可能である。書面提出による権利放棄の場合も、実用新案権の権利回復手続は原則ない。

3. 意匠権
3-1. 存続期間
 意匠権の権利期間は、出願日から10年である(インドネシア意匠法第5条(1))。権利期間の延長に関する規定はない。

3-2. 年金の納付期限
 インドネシアにおいて意匠権を維持するための年金納付に関する規定はなく、納付の必要はない。

3-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
 該当なし。

3-4. 権利回復制度
 該当なし。

3-5. 年金の誤納
 該当なし。

3-6. その他
 意匠権者が権利を放棄したい場合は、意匠登録の取消を求める旨を記載した書面を知的財産総局に提出することにより、自発的な放棄が可能である(インドネシア意匠法37条(1)、43条)。意匠法には権利回復に関する規定が設けられていない。

台湾における専利(特許/実用新案/意匠)の案件状態の調べ方-台湾経済部智慧財産局(TIPO)での専利査定または無効審判

1. 案件状態および経過情報確認
(1) 台湾経済部智慧財産局(TIPO、中国語(繁体語)「台灣經濟部智慧財產局」、https://www.tipo.gov.tw/tw/mp-1.html)のウェブサイトを開く。

図1 経済部智慧財産局トップページ

(2) 図1のトップページ「專利」のアイコンをクリックすると図2の専利の画面が表示される。

図2 「専利」画面

(3) 図2の申請專利の下にある赤枠の「專利檢索」をクリックすると、図3の「專利檢索」の選択肢画面が表示される。

図3 「専利檢索」画面

(4)出願経過情報検索は 図3赤枠の「2. 專利審查公開資訊查詢」を選択する。クリックすると図4の検索画面が表示される。

図4 「專利審查公開資訊查詢」検索画面

 初期設定では「中文」のタブが表示されている。日本語表示で検索する場合は赤枠「日本語」をクリックする。青枠「番号」の欄に出願番号、公開番号、登録番号のいずれかの番号を入力し、緑枠の「認証コード」欄の右側に表示される英字を入力し「検索」をクリックすると検索結果が表示される。
 入力した番号の桁数が適切でない場合、「查詢失敗:查詢號碼輸入錯誤,請確認長度是否正確。(検索失敗:番号の入力に誤りがあります。桁数が正しいか確認してください。)」と表示される。また、検索結果が見つからない場合、図5に示すように「データなし!!」と表示されるが、「番号」の欄に適切な番号を入力すると改めて検索することが可能である。

図5 検索結果画面(データなし)

 図4の右側の「說明」の「發明案件(特許)」、「新型案件(実用新案)」、「設計案件(意匠)」、「舉發案件(無効審判請求案件)」の確認したい項目をクリックすると、検索対象とされる案件の範囲と内容の解説がそれぞれ表示される。例えば、「發明案件」をクリックすると、図6の画面が表示される。

図6 検索対象、表示内容の説明画面(「發明案件」の例)

(5) 図7aおよび図7bは図4の番号欄に意匠出願番号「108307488」を入力し検索した案件の詳細画面の例である。

図7a 案件詳細画面1(日本語版)

 図7aに示す案件詳細画面の上部には以下のような案件の書誌事項が表示される。
・出願番号
・出願日
・出願人
・登録番号
・代理人
・発明の名称
・同じ創造が複数の出願の声明:1件の出願において複数の意匠が含まれているか。
・特許の種類
・Dossier Information Exchange(各国の特許出願情報):各国に出願されたファミリー特許があれば、その情報を見ることができる。
・ケースのステータス(案件状態)
・関連情報:無効審判請求の記録が表示される。青字の番号をクリックすると、詳細を確認することができる(後述「2. 無効審判案件の検索」では別の検索方法を紹介している。)。

図7b 案件詳細画面2(日本語版)

 図7bが示す案件詳細画面の下部「收發文歷程(経過情報)」には、審査過程で出願人が提出した文書およびTIPOが発行した文書のリストが表示される。
 青枠の表示は出願人からの提出文書(收文)、緑枠表示はTIPOが発行した文書(發文)である。
 各項目の右側に表示される青字の文書名をクリックすると、該当文書が表示される。

図8 案件詳細画面2(中国語版)

 図8は中国語の案件詳細画面である。図7bの日本語版画面の翻訳表示に適切でない部分があるため、中国語版画面を例に掲載されている書類を紹介する。

・申請設計專利(意匠出願)
・初審審查意見通知函(拒絶理由通知)
・申覆核駁理由(意見書)
・初審核准審定(登録査定)
・請領專利證書(特許性証明書の申請)
・函知證書作廢勿再使用(証明書が無効であり、再使用しないことを通知)

(6) 中国語版画面では、書類の全選択ボタンがある。また、書類を選択すると「下載」ボタンが表示され、ダウンロードすることができる。
 例えば、「申請書」を選択し、「下載」ボタンをクリックすると、図9の画面が表示される。ダウンロードには、「即時下載(直接ダウンロード)」または「寄送連結下載(ダウンロードリンクを送信)」の選択肢がある。

図9 ダウンロード方法選択画面1(中国語版)「即時下載」選択

 「即時下載(直接ダウンロード)」を選択した場合、操作したPCのダウンロード・フォルダにZip形式でPDFファイルとファイルリストをダウンロードすることができる。

図10 書類ダウンロード確認画面2(中国語版)「寄送連結下載」選択

 「寄送連結下載(ダウンロードリンクを送信」を選択した場合、ダウンロード用リンクの送信先メールアドレスを入力すると、図11の画面が表示される。

図11 ファイルダウンロード情報画面

 15分から30分待つと入力したメールアドレスにダウンロード用のURLが送られてくる。そのURL(メール本文には青字で「檔案」と表示されている)をクリックすると、ファイルおよびファイルリストをダウンロードすることができる。ファイルの容量が50MBを超える場合、「ダウンロードリンクを送信」のみが選択可能である。
 図12は、ダウンロードした書類(願書)の例である。

図12 ダウンロードした書類(願書)

2. 無効審判案件の検索
(1) すべての無効審判案件を検索する場合は、図13(図3再掲)の「専利檢索」画面で「4.中華民國專利資訊檢索系統」を選択すると図14の検索画面が表示される。

図13 「専利檢索」画面(図3再掲)

(2) 図14の赤枠の「檢索設定(検索設定)」欄に無効審判案件の記号「N01」と入力してオレンジ枠の「檢索(検索)」をクリックすると、図15の検索結果の一覧が表示される。

図14 「中華民國專利資訊檢索系統」検索画面
図15 無効審判案件の検索結果一覧

 図15の青枠の「案件狀態」で「核准」と表示されている案件は無効審判を経て登録維持となったもの、「消滅」と表示されている案件は無効になったもの、「撤銷」と表示されている案件は取下げになったものである。
 赤枠の「公開公告號(公開・登録番号)」をクリックすると、案件の詳細を確認することができる。また、虫めがねアイコンをクリックすると、一覧の上部に図16の入力欄が表示され、検索結果に対して更に条件を設定して再検索することができる。

図16 再検索入力欄
図17 検索結果(出願番号108307488)

 図17の赤枠の「公開公告號(公開・登録番号)」列の「D208123」をクリックすると、図18の案件詳細画面が表示される。

図18 案件詳細画面

(4) 図18の案件詳細画面で赤枠の「雜項(その他)」をクリックすると、図19の画面が表示される。

図19「雜項(その他)」表示画面(登録番号D208123(出願番号:108307488))

 本件は、登録となった後に、無効審判が請求され、審判の結果、無効とされたものであるが、図19の赤枠の「理由」の欄に、その経緯が記載されている。

(注)上記第2項で使用した検索サイト「中華民國專利資訊檢索系統」の使用方法については、下記関連記事も参照されたい。
関連情報:
「台湾における専利(特許/実用新案/意匠)公報の調べ方―台湾経済部智慧財産局(TIPO)ウェブサイト」(2022.10.27)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/etc/26842/

シンガポールの判決等へのアクセス方法

1. Singapore Law Watch(SLW)による検索
 SLWの検索データベースには、2000年以降のシンガポール最高裁判所※1の判決および2018年以降のIPOSの決定が収録されており、これらを無料で閲覧することができる。なお、SLWに掲載されていない判決および決定については、以前は、SLWでの掲載が3か月を経過するとSLWが運営するLawNet※2に移管されていたことから、それらはLawNetに掲載されている可能性がある。

※1 シンガポール最高裁判所は、高等裁判所(High Court)と上訴裁判所(Court of Appeal)からなる。IPOSの決定に不服がある場合、または侵害事件は、高等裁判所に提訴する。
参考資料:「シンガポールにおける知的財産の審判等手続に関する調査」(JETRO 2020年3月) https://www.jpo.go.jp/resources/report/document/gaikoku/singapore_202003.pdf

※2 シンガポールの一次法律資料(シンガポール判決および法律)と二次資料(議会報告書、法律ニュース、教科書、ジャーナル等)、および英国、マレーシア、インド等のコモンロー法域の判決を検索することができる、SLWが運営する有料サイト。
https://www.lawnet.sg/lawnet/web/lawnet/home

 Singapore Law Watch(SLW)ウェブサイト(https://www.singaporelawwatch.sg/)にアクセスして表示されるトップ画面(図1)上部のバーの左から4番目「Judgments(判決)」にポインタを合わせると、以下の5項目が表示される。

(a) 「Court of Appeal(上訴裁判所)」
(b) 「High Court(高等裁判所)」
(c) 「Intellectual Property Office of Singapore(IPOS:シンガポール知的財産庁)」
(d) 「Personal Data Protection Commission(個人情報保護委員会)」
(e) 「Tax Boards(税審査委員会)」

 これらのうち、特許・実用新案、意匠、商標等の産業財産権に関する裁判例についての検索は、(a)から(c)を用いる。

図1 Singapore Law Watch(SLW)ウェブサイト トップ画面

(1) 「Court of Appeal(上訴裁判所)」による検索
 図1の「Court of Appeal」をクリックすると、「Court of Appeal」のトップ画面が、図2のように、知的財産関連の判決を含む判決一覧(日付順)の形式で表示される。判決一覧には、「原告・被告名による事件名称」(最初の事件の赤枠内)、「判決の根拠(Grounds of Decision)」(最初の事件の青枠内)、「判決日(Decision Date)」(最初の事件の黒枠内)が表示される。

 また、「Court of Appeal」のトップ画面(図2)右側の「Latest Judgment- Court of Appeal」の下にも判決一覧が表示されているが、これは左側の判決一覧から直近の判決を抽出したもののようであり、左側の判決一覧を見れば漏れなく判決を閲覧することができる。

 なお、「Court of Appeal」のトップ画面(図2)の右上にある「Search」は、判決一覧の絞り込みを行う検索機能ではなく、SLWのコンテンツ全体を対象とする検索であるため、使用する場合は注意が必要である。

図2 「Court of Appeal」判決一覧(部分)

 判決一覧の赤い色の「PDF」アイコンのある事件名称をクリックすると、判決文が表示される。例えば、図2の画面を下側にスクロースすると、図3のように表示される、地理的表示に関する訴訟の判決である「Fonterra Brands (Singapore) Pte Ltd v Consorzio del Formaggio Parmigiano Reggiano [2024] SGCA 53」(2024年11月22日付判決)をクリックすると、図4の判決文を閲覧でき、判決文PDFをダウンロードすることができる。

図3 「Fonterra Brands (Singapore) Pte Ltd v Consorzio del Formaggio Parmigiano Reggiano [2024] SGCA 53」を含む判決一覧(部分)
図4 「Fonterra Brands (Singapore) Pte Ltd v Consorzio del Formaggio Parmigiano Reggiano」判決文

(2) 「High Court(高等裁判所)」による検索
 図1の「High Court」をクリックすると、「High Court」のトップ画面が、図5のように、知的財産関連の判決を含む判決一覧の形式で表示される。画面の構成や表示される内容は、「Court of Appeal」と同じである。

図5 「High Court」判決一覧(部分)

 判決一覧の赤い色の「PDF」アイコンのある事件名称をクリックすると、判決文が表示される。例えば、図5の画面を下側にスクロースすると、図6のように表示される判決一覧における、特許侵害の損害額算定に関する判決である「TOWA Corp v ASMPT Singapore Pte Ltd and another [2024] SGHC 163」(2024年6月27日付判決)をクリックすると、図7の判決文を閲覧でき、判決文PDFをダウンロードすることができる。

図6 「TOWA Corp v ASMPT Singapore Pte Ltd and another」を含む判決一覧(部分)
図7 「TOWA Corp v ASMPT Singapore Pte Ltd and another」判決文

(3) 「Intellectual Property Office of Singapore」(IPOS)による検索
 図1の「Intellectual Property Office of Singapore」をクリックすると、「Intellectual Property Office of Singapore」のトップ画面に、図8に示すようなIPOSの決定が一覧の形式で表示される。画面の構成は「Court of Appeal」(図2)と同じである。

 決定の種類は、以下のとおりである。
「Ex Parte Hearing(拒絶査定不服)」
「Opposition to Registration(異議申立)」
「Invalidation(無効)」
「Revocation(取消)」

図8 「Intellectual Property Office of Singapore」決定一覧(部分)

 例えば、商標異議申立の決定である「Apple Inc v Penta Security Inc [2024] SGIPOS 10」をクリックすると、図9の決定を閲覧でき、決定のPDFをダウンロードすることができる。

図9 「Apple Inc v Penta Security Inc [2024] SGIPOS 10」異議決定

2. IPOSのウェブサイトによる検索
 IPOSの決定および成立した調停については、IPOSのウェブサイトからも閲覧することができる。IPOSの決定については、1999年以降の決定が閲覧可能であり、2011年以降の決定は全文、2010年末より以前については要約を閲覧できる。調停は、ASEAN調停プログラム(The WIPO-Singapore ASEAN Mediation Programme; AMP)による調停とIPOSによる調停の結果を閲覧することができる。なお、裁判所の判決は収録されていない。

(1) IPOSウェブサイトのトップ画面
 IPOSウェブサイト(https://www.ipos.gov.sg/home)にアクセスして表示されるトップ画面を下側にスクロールすると、右側に図10の「Resolve IP Dispute」が表示されるのでこれをクリックする。

図10 IPOSウェブサイトの「Resolve IP Dispute」表示

 「Resolve IP Dispute」をクリックして表示される画面を下側にスクロールすると、図11に示すように右側に「Legal Decisions」が表示されるので、2020年以降の決定等について検索する場合は赤色文字の(i)「Legal Decisions」をクリックし、1999年から2019年までの検索を行う場合はその下の(ii)「・Legal Decisions(pre-2020)」をクリックする。次項目では2020年以降の決定等についての検索方法を説明するが、2019年以前の検索についても基本的には同じである。なお、上記(i)および(ii)において、それぞれ何年の決定が検索対象となるかは、変更される場合がある。

図11 IPOSウェブサイトの「Legal Decision」表示

(2) 検索画面
 「Legal Decision」をクリックして表示される検索画面を、下側にスクロールすると図12に示す「Case Search(事件検索)」が表示される。絞り込みによる検索は、下記の4項目について入力が可能である。

 「Citation(事件名称)」
 「Patent/Trademark/Geographical Indication(特許/商標/地理的表示)」
 「Type of IP(知的財産の種類)」
 「Year of Issue(発行年度)」

 なお、この絞り込み検索を用いる場合に限り、「Year of Issue(発行年度)」に該当する年度を入力すれば、2019年以前の決定等も表示させることができる。

図12 絞り込み検索の単語入力画面

 絞り込みによる検索を行わない場合は、図12の画面を下側にスクロールすると直近の決定および成立した調停が表示される(図13)。成立した調停は、「AMP Mediation Success」あるいは「Mediation Success at IPOS」として、決定を表示した枠リストの上にまとめて表示される。

図13 2024年の決定一覧表示(部分)

 図13の画面を下側にスクロールすれば、古い事件を順次表示させることができる。
 該当する事件の「PDF」アイコンをクリックすると決定等が表示される。例えば、商標異議申立事件である「Google LLC v Green Radar (Singapore) Pte Ltd [2024] SGIPOS 1」の「Full Decision」部分(図13の赤枠内)をクリックすると、図14の異議決定が表示される。

図14 「Google LLC v Green Radar (Singapore) Pte Ltd [2024] SGIPOS 1」異議決定

3. 留意事項
 通常、シンガポールの判決文は、Law WatchやLawNetを利用してオンラインで取得できる。(極めて稀であるが)判決がオンラインで公開されていない場合において利害関係を有する者が裁判所に判決文の謄写を請求する場合を除き、裁判所で判決文を謄写することは難しい。また、本稿で言及したLawNetのようなウェブサイトから判決文が入手可能な場合は、謄写申請は認められない。

日本と香港における意匠権の権利期間および維持に関する比較

1. 日本における意匠権の権利期間
 日本における意匠権の権利期間は、出願日から最長25年をもって終了する(意匠法第21条第1項)。ただし、平成19年3月31日までに出願された意匠権は、設定登録日から15年間、平成19年4月1日から令和2年3月31日までに出願された意匠権は、設定登録日から20年間である。

 なお、関連意匠の意匠権の権利期間は、その基礎意匠の出願日から25年である(意匠法第21条第2項)。ただし、本意匠および関連意匠の双方が、平成19年3月31日以前の出願の場合は、関連意匠の意匠権の権利期間は、その本意匠の意匠権の設定登録日から15年間であり、本意匠が平成19年3月31日以前の出願で、関連意匠が平成19年4月1日から令和2年3月31日までの出願の場合は、関連意匠の意匠権の権利期間は、その本意匠の意匠権の設定登録日から20年間である。

 権利維持を希望する場合は、登録日を年金納付起算日として、2年次分から毎年、年金を支払う必要がある(意匠法第42条第1項、第43条第2項)。

日本意匠法第21条 存続期間
意匠権(関連意匠の意匠権を除く。)の存続期間は、意匠登録の出願の日から25年をもって終了する。
2 関連意匠の意匠権の存続期間は、その基礎意匠の意匠登録出願の日から25年をもって終了する。

 意匠法第42条および第43条は、省略(【ソース】の「日本国意匠法」を参照されたい。)。

2. 香港における意匠権の権利期間
 香港における意匠権の権利期間は、出願日から最長25年をもって終了する(香港意匠条例第28条第1項、第2項)。

 なお、最長25年までの権利維持を希望する場合には、出願日を起算日として、5年ごと(5、10、15、20年次の満了前3か月以内)に年金を支払う必要がある(香港意匠条例第28条第3項)。

香港意匠条例 第28条 登録の存続期間
登録の存続期間
(1) 意匠登録の最初の存続期間は、登録出願の出願日に始まる5年間である。
(2) 意匠登録の存続期間は、各5年の期間追加延長することができる。ただし、登録の全期間が登録出願の出願日に始まる25年を越えることはできない。
(3) 登録意匠の所有者が更に5年間の登録期間の更新を希望する場合は、所定の年金を、現在の登録期間の終了前に納付しなければならない。ただし、現在の登録期間の終了日の直前3月より前であってはならない。
(4) (3)に定める年金納付がされない場合は、当該意匠登録は、現在の登録期間終了時に効力を失うものとする。
(5) (4)に定める期間終了の直後6月の期間内に、年金および所定の追徴金が納付される場合は、当該意匠登録は、効力を失わなかったものとして取り扱われ、したがって、
(a) 当該期間中所有者によりまたは当該人の同意を得て、当該意匠に係る権利に基づきもしくは関してなされる事柄は、効力を有するものとみなされ、
(b) 登録が効力を失っていなかったならば意匠の侵害を構成したであろうと考えられる行為は、かかる侵害を構成するとみなされ、また
(c) 登録が効力を失っていなかったならば当該意匠の政府使用を構成したであろうと考えられる行為は、政府使用を構成するとみなされる。

 日本と香港における意匠権の権利期間および維持に関する比較

日本香港
権利期間出願日から25年出願日から最長25年
権利維持登録日を年金納付起算日として、2年次分から毎年、年金の支払い要出願日を起算日として、5年ごと(5、10、15、20年次の満了前3か月以内)に年金の支払い要

ベトナムにおける意匠の調べ方

 IP Viet Namは、2022年9月1日からの工業所有権デジタルライブラリー(IPLIB)の運用停止、WIPO PUBLISHツールへの切替えを発表した(https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Ipnews/asia/2022/vn/20220913.pdf)。

(1) IP Viet Namウェブサイト英語版(https://ipvietnam.gov.vn/en/web/english/home)へアクセスし、トップページ中段、図1の「IP INFORMATION SEARCH」の赤線で囲んである「WIPO PUBLISH(Designs)」をクリックすると図2の画面が表示される。または、http://wipopublish.ipvietnam.gov.vn/wopublish-search/public/home?1&lang=jpに直接アクセスすると図3の画面が表示される。
 なお、図3の緑線で囲んでいる画面右上部で、言語表記を変更することができる。初期設定は英語である。本稿では、日本語表記画面の紹介をする。
 図3の画面右上部の赤線で囲んでいる「意匠」をクリックすると、図2の画面が表示される。

図1 IP Vietnamトップページ(英語版)
図2 検索画面(日本語)
図3 WIPO PUBLISH IP VIETNAM画面(日本語)

(2) 検索画面(図2)の緑線で囲んでいる初期設定で表示される項目は、以下のとおりである。日本語への翻訳が不正確と思われる項目があるので、参考に日本語、英語を併記する。
・出願番号(Filing Number)
・名称(Title)
・出願人(Applicant)

 図2の赤線で囲んでいる欄から、検索項目を選択追加することができる。以下に、主な検索項目を紹介する。
・国(Countries)
 〇出願人国籍(Applicant Country)
 〇デザインカントリー(Design Country)
 〇優先権の詳細(Priority Details)
・ファイル
 ○ステータスコード(Status Code)
・種別(Classification)
 〇LOCARNO分類(Locarno Classes)
 〇分類(Classification)
・年月日(Dates)
 〇出願日(Filing Date)
  ■今日(Today)
  ■過去6か月(Last 6 Months):選択すると本日から過去6か月が設定される。
  ■年から日付(Year to Date):選択すると本年の元日から本日が設定される。
  ■特定日(Specific Date):カレンダーまたは直接入力(yyyy.mm.dd)して日にちを特定することできる。
  ■すべての日以前(All Dates Before):カレンダーから特定した日以前が設定される。
  ■すべての日以降(All Dates After):カレンダーから特定した日以降が設定される。
  ■期間(Date Range):調査したい日付(開始日と終了日)を選択し、Applyボタンをクリックすると設定される(図4を参照)。
 〇公開日(Publication Date)
 〇登録日(Registration Date)
 〇優先日(Priority Date)
・国別ファイルを作成する(Designs)
 ○創作者情報(Designer information)
 ○名称(Title)
・名前(Names)
 〇出願人(Applicant)
 ○創作者(Designer)
 〇代理人名(Representative Name)
・計数(Numbers)
 〇登録番号(Registration Number)
 〇優先権主張番号(Priority Number)
 〇出願番号(Filing Number)
 〇出願番号(Filing Number)
 ○公開番号(Publication Number)
 ○元の登録番号(Original Registration Number)
・雑用(Miscellaneous)
 〇出願人住所(Applicant Address)
 〇代理人住所(Representative Address)
 ○デザイン住所(Design Address)
 ○官庁コード(Office Code)
 ○ステータス(Status)
 ○内部ステータスラベル(Internal Status)
 ○公報発行日(Gazette Date )
 ○公報番号(Gazette Number)
 ○REG_TYPE
 ○REG_SER
 ○REG_NBR

(3) 以下に、出願人、出願人国籍、日付を条件設定し、検索した例を紹介する。
 (3-1) 図4のオレンジ線で囲んである「出願人(Applicant)」の欄に「HONDA MOTOR CO., LTD.」と入力する。
 (3-2) 赤線で囲んである項目一覧の「出願人国籍(Applicant Country)」を選択すると、入力欄が追加される。青線で囲んである「出願人国籍」の欄に「JP」と入力する。
 (3-3) 赤線で囲んである項目一覧の「出願日(Filing Date)」を選択すると、入力欄が追加される。「出願日(Filing Date)」の空欄をクリックすると緑線で囲んであるカレンダーと7つの設定項目が表示されるが、この内で使用できるのは下記の3つの設定項目のようである(検索時期により状況が異なる場合もあるようである)。
 ○今日
 ○過去6か月
 ○年月日
 「今日」をクリックすると、検索を行っている日付が表示される。その他の日付を表示したい場合は、「今日」をクリックして表示された日付を修正することにより、設定することができる。
 「過去6か月」をクリックすると、例えば、「2024.07.30 TO 2025.01.30」のように、検索を行っている日付(2025.01.30)から6か月前に遡った期間が表示される。また、「年月日」をクリックすると、例えば、2025年1月30日に検索を行った場合は「2025.01.01 TO 2025.01.30」のように、検索日までの一定期間が表示される。その他の期間を表示したい場合は、「過去6か月」または「年月日」をクリックして表示された期間を修正することにより、設定することができる。
 図4では検索期間を、2024年1月1日から2025年1月30日までに設定した。
 (3-4) 水色線で囲んである「検索」をクリックすると検索結果が表示される(図5)。

図4 検索事例画面
図5 検索事例結果画面

(4) 確認したい案件にポインターを当て、任意の個所をクリックすると案件の詳細が表示される(図6aおよび図6b)。確認したい欄をクリックすると詳細が表示される。図6aは、図5に示す画面の1番上の件(出願番号:VN 3-2024-01787)の詳細情報画面である。図6bは、図6aに示す画面の1番下に表示された「イベント(Event)」と「図面(Drawings)」をクリックした例である。図面は、矢印ボタンをクリックすることで順次表示させることができる。

図6a 案件詳細画面1
図6b 案件詳細画面2

(5) 図7の右上の青線で囲んであるごみ箱マークをクリックすると設定した検索条件を全てクリアすることができる。また、検索結果画面上部にある緑線で囲んである「×」を個別にクリックすると個別の検索条件をクリアすることができるが、残った検索条件の結果が表示されることはなく、全ての条件をクリアした結果が表示される。

図7 検索結果画面(図5再掲)

マレーシアの意匠公報の調べ方

1. マレーシア知的財産公社トップページ
 マレーシア知的財産公社(Intellectual Property Corporation of Malaysia;以下、「MyIPO」)の英語版ウェブサイトhttps://www.myipo.gov.my/en/home/にアクセスすると以下の図1の画面が表示されるので、画面右側の「ONLINE SERVICES」(赤枠部分)のアイコンをクリックすると図2の画面が開く

図1 「MyIPOトップページ」画面

2. 「ONLINE SERVICES」の画面
 図2の「ONLINE SERVICES」の選択肢から左上の「IP ONLINE SEARCH & FILING」のアイコン(赤丸囲い部分)をクリックすると、図3の画面が表示される。

図2 「ONLINE SERVICES」画面

3. 「IP ONLINE SEARCH & FILING」の画面
 「IP ONLINE SEARCH & FILING」の画面(図3)を下方にスクロールし、「Industrial Design」のアイコン(図4の赤囲い部分)をクリックすると、図5の意匠の簡単なガイドと検索アイコンが表示される。

図3 「IP ONLINE SEARCH & FILING」画面(上部)
図4 「IP ONLINE SEARCH & FILING」画面(下部)

4. 「意匠の簡単なガイドと検索アイコン」の画面
 図5の画面で「Search Now」をクリックすると、図6に示す「ログイン、ログイン情報の登録、各種知財」の選択画面が表示される。

図5 「意匠の簡単なガイドと検索アイコン」画面

5. 「ログイン、ログイン情報の登録、各種知財」の選択画面
 図6の画面で、「Industrial Design」の下の「Search」をクリックすると、図7に示す「簡易検索(Simple Search)」の画面が表示され、「出願番号(Application Number)」、「物品(Article Name)」、「ロカルノ分類(Locarno)」の入力画面と、「Advanced Search」画面への移動アイコンが表示される。

図6 「ログイン、ログイン情報の登録、各種知財」選択画面

6. 検索画面
 検索画面(図7)においては、「出願番号(Application Number)」、「物品名(Article Name)」、「ロカルノ分類(Locarno)」の項目に条件を入力/指定して検索することが可能である。出願番号、物品名の各入力欄にマウスオーバーすると画面中央に簡単な入力方法として、下記6-1項の内容が表示される(入力作業を行うと消える)ので、参照されたい。ロカルノ分類の条件指定方法については、下記6-2項で説明する。

図7 「簡易検索」画面

6-1. 「出願番号」「物品名」検索条件の入力方法

出願番号(Application Number)・出願番号を入力する(例:00-00000-0000)。
・コンマを使って複数検索が可能である。
・最大1500文字まで検索可能である。
物品名(Article Name)・検索したい物品名を入力する(例:「Bottle」、「Computer」)。
・複数のキーワードを「AND」、「OR」、「NOT」で結合して使うことができる。
・括弧を使って、より複雑な検索を行うことができる。
例:(Orange OR Apple) NOT (juice OR Drink)
・500文字まで検索可能である。

6-2. 「ロカルノ分類」検索条件の指定方法
 図7の検索画面の「ロカルノ分類(Locarno)」の右横の「Search」をクリックすると、図8の「ロカルノ分類検索(Locarno Search)」が表示される。「主分類(Main Class)」と「キーワード(Keyword)」検索が可能である。
 例えば、「主分類(Main Class)」に「20」を入力して、「Search」をクリックすると、図9の検索結果が表示される。ここには、主分類20下のサブクラスが表示されるので、検索対象としたい項目を選択する(複数選択可能)。例えば、図9の上部、赤枠で囲った行(「サブ分類(Sub Class)」が「01」の「自動販売機(AUTOMATIC VENDING MACHINES)」(第12版(Version 12)))にチェックを入れて選択し、右下部にある「Select」をクリックすると、図10のように選択結果が検索画面に反映され、検索条件が指定される。

図8 「ロカルノ分類(Locarno)検索」画面
図9 「ロカルノ分類検索結果」画面
図10 「ロカルノ分類の検索条件が指定された検索結果」画面

7. 検索結果
 次に、検索結果の見方について説明する。簡易検索画面(図7)において、例えば、「物品名」にキーワード「Bottle」を入力し、下方にある「Search」ボタンをクリックし検索した場合、下記のような検索結果一覧が表示される。各意匠出願の出願番号、物品名、代表図が表示される。

図11 「検索結果一覧」画面

7-1. 案件ごとの詳細表示
 青色表示となっている「出願番号」をクリックすると意匠の詳細情報が表示される。例えば、図11の出願番号00-00010-0101をクリックすると、図12から図14に示す詳細が表示される。

図12 「案件ごとの詳細(出願情報の部分)」画面
図13 「案件ごとの詳細(連絡先の部分)」画面
図14 「案件ごとの詳細(出願形式と意匠の詳細の部分)」画面

 案件ごとの詳細に表示される主な項目は、以下のとおりである。

7-1-1. 出願情報(Application Date)

状態(Status)消滅日(Expiration Date)
出願番号(Application Number)提出日(Submission Date)
出願形式(Application Type)出願日(Filing Date)
公開番号(Journal Number)受理日(Acceptance Date)
公開日(Latest Publication Date)証明日(Certificate Date)
登録日(Registration Date)失効日(Lapse Date)

7-1-2. 連絡先(Contact)

出願人(Applicant)
創作者(Author)
通知先(Correspondent)
通知先住所(Address for Service)
連絡手段(Notification Method)
正当な出願人であることの声明(Statement Justifying Applicant’s Right)

7-1-3. 出願の形式(Type of Application)

意匠の形式(Type of Design)
物品の説明(Product Description)
公開日の延期(Degermation of Publication date) 

7-1-4. 意匠の詳細(Design Details)

新規性の特徴(Statement of Novelty)
優先権
物品の詳細(Article Details)
物品名(Article Name)
物品の図面(Views)
公報に掲載する図面の数(Number of views to be in gazette)
ロカルノ分類(Locarnos)

7-2. 複数の詳細表示
 複数案件の詳細結果を表示させるには、メールで情報を受領する必要がある。
 各案件に表示されている「選択(Select)」をクリックすると、選択された案件が青色に反転するので、表示させたい案件を選択した後に、図11の検索結果一覧の画面を下にスクロールして、最下部に表示されている「Get Report list」をクリックする。例えば、出願番号01-00248-0102と01-00248-0202を選択した最下部の画面を図15に示す。

図15 「検索結果一覧」画面(下部)

 図15の「Get Report list」をクリックすると、図16のコメントが表示されるので、Emailアドレスと受けとるデータの書式(ExcelかPFD)を入力して、「Continue」をクリックすると、図17のようなExcelデータが、記入したメールアドレスに送付される。データは、テキスト情報だけなので、図面が必要な場合は上述の「7-1. 案件ごとの詳細表示」で検索する必要がある。

図16 「メールアドレスの入力」画面
図17 「MyIPOから送付されたExcelデータ」

8. 詳細検索画面
 図7の「Advanced Search」をクリックすると、図18、19に示す詳細検索画面が表示される。

図18 「詳細検索」画面(上部)
図19 「詳細検索」画面(下部)

 詳細検索画面での設定可能項目を以下に示す。

出願番号(Application Number)・出願番号を入力する(例:00-00000-0000)。
・コンマを使って複数検索が可能である。
・最大1500文字まで検索可能である。
物品名(Article Name)・検索したい物品名を入力する(例:「Bottle」、「Computer」)。
・複数のキーワードを「AND」、「OR」、「NOT」で結合して使うことができる。
・括弧を使って、より複雑な検索を行うことができる。
例:(Orange OR Apple) NOT (juice OR Drink)
・500文字まで検索可能である。
出願日(Filing Date)・出願日を入力する。
・入力方法は、直接日付を入力する方法(例:「DD/MM/YYYY(2013年10月1日であれば「01/10/2013」)」)と、2つの日付入力欄の間にあるカレンダーをクリックして日付を選択する方法がある。前者の場合、2つの日付入力欄のそれぞれに異なる日付を入力すれば期間指定となり、同じ日付を入力すれば日付指定となる。
公告日(Publication of Registration Date)・公告日を入力する。
・入力方法は「出願日」と同じである。
公開日(Latest Publication Date)・公開日を入力する。
・入力方法は「出願日」と同じである。
存続期間満了日(Expiration Date)・意匠権存続期間の満了日を入力する。
・入力方法は「出願日」と同じである。
失効日(Lapsing Date)・意匠権が消滅した日を入力する。
・入力方法は「出願日」と同じである。
登録日(Registration Date)・登録日を入力する。
・入力方法は「出願日」と同じである。
ロカルノ分類(Locarno)・意匠の分類番号を入力する(例:「10-01」、「02-01」)。
登録番号(Registration Number)・登録番号を入力する(例:MY 00-00000-0000)。
代理人(Agent(s))・青色の「Search」をクックすると入力画面が表示されるので、代理人の「名前(Name)」、「代理人番号(Agent Number)」等を入力する。
出願人/意匠権者(Applicant/Owner)
・青色の「Search」をクックすると入力画面が表示されるので、出願人の「名前(Name)等を入力する。
創作者(Author)・青色の「Search」をクックすると入力画面が表示されるので、創作者の「名前(Name)」等を入力する。
優先権主張国(Priority Country)・選択ボタン(デフォルトは「No selection」)をクリックして、表示される国から該当する国名を選択する。
状態(Status)・「Select」をクリックすると、「未提出(Unsubmitted)」、「提出済(Submitted)」等の選択画面が表示されるので、該当する状態を選択する。
顧客リファレンス(Client Reference)・何らかの整理番号と推察されるが、詳細は不明である。
親出願(Parent)・分割出願の場合は、親出願の出願番号を入力する。
分割出願(Association)・分割出願の番号を入力する。

 必要項目を選択した後に、最下段の「Search」をクリックすると、「簡易検索(Simple Search)」と同様の検索結果が表示される(図11)。検索結果の詳細は、「簡易検索(Simple Search)」と同じように表示させることができる。

9. 留意事項
 意匠公報については、上記手順により検索できるのは登録公報のみである。

ブラジルにおける意匠の調べ方-ブラジル産業財産庁(INPI)の調査サイト

(1) ブラジル産業財産庁(INPI)ウェブサイトのトップページ(https://www.gov.br/inpi/pt-br)(図1)へアクセスする。

図1 INPIウェブサイトのトップページ

(2) トップページをスクロールダウンし、「Acesso rápido(クイックメニュー)」メニュー(図2)にたどり着いたら、「BUSCA DE PROCESOS Bases de dados de marcas, patentes y otros activos(検索手順 商標、特許その他のデータベース)」をクリックする。

図2 INPIトップページ「Acesso rápido」メニュー

(3) 次にログイン画面(図3)が表示されるので、登録済の場合は「Login(ログインID)」、「Senha(パスワード)」を入力する。登録していない場合は、空欄のまま「Continuar(続行する)」をクリックすることで利用できる。
 ログインIDの作成・システムへの登録の方法は、本データバンク内の関連記事「ブラジルの特許・実用新案の登録証その他関連書類の入手方法」(https://www.globalipdb.inpit.go.jp/etc/39432/)を参照されたい。

図3 ログイン画面

(4) INPIデータベースの選択画面(図4)が表示されるので、ページの中央にあるメニューから「Desenho Industrial(工業意匠)」を選択する。

図4 INPIデータベース選択画面

(5) 「Base-Desenhos(意匠データベース調査)」の画面(図5)が表示されるが、ここは「PESQUISA BASICA(簡易検索)」のページで、リーガルステータスの確認と一般検索ができる。

図5 INPI工業意匠検索トップページ

(6) 特定の出願・登録番号についてのリーガルステータスを確認するには、「Contenha o Número do Pedido(出願番号を記入する)」に出願番号を入力して、「pesquisar(検索する)」をクリックする。なお、入力事項を消去するためには、「limpar(消去する)」をクリックする。
 例として、出願番号の箇所に「DI 6401132-1」を入力して「pesquisar(検索)」をクリックすると、下記の画面(図6)が表示される。
 表示される情報は、「Pedido(出願番号)」、「Depósito(出願日)」と「Título(タイトル)」、「Clas(分類記号)」である。
 出願番号「DI 6401132-1」をクリックすると、出願・登録の詳細情報ページ(図7)が表示される。

注)画面上では「Pedido(出願番号)」と表示されているが、実際には「Nº do Registro(登録番号)」でも検索することができる。なお、今回の例で使用した「DI 6401132-1」は登録番号である。

図6 出願・登録番号検索結果例
図7 出願・登録の詳細情報ページ

(7) キーワード検索をするには、検索画面(図5)の「Contenha(含む)」の欄に検索事項を入力する。

(7-1) 左端の欄をクリックすると、以下を含むプルダウンメニュー(図8)が表示され、これらの中から一つ選ぶことができる。
「todas as palavras(全てのキーワードを含む)」
「a expressão exata(語順も含め完全一致)」
「qualquer uma das palavras(いずれかのキーワードを含む)」
「a palavra aproximada(キーワードに類似する言葉を含む)」

図8 Contenhaの左欄プルダウンメニュー

(7-2) 中央の欄に、キーワードをポルトガル語で入力する。文字数や単語数の制限はない。

(7-3) 右端の欄をクリックすると、以下を含むプルダウンメニュー(図9)が表示され、これらの中から一つ選ぶことができる。
「Título(タイトル)」
「Nome do Depositante(出願人)」
「Nome do Autor(創作者)」
「CPF do Autor(創作者の納税者番号)」

図9 Contenhaの右欄プルダウンメニュー

 例として、左の欄で「todas as palavras(全てのキーワードを含む)」を選択し、中央の欄にキーワードとして「ESPELHO DE MAÇANETA(ドアノブの錠前板)」と入力し、右の欄で「Título(タイトル)」を選択し、「pesquisar(検索)」をクリックすると、以下の検索結果(図10)が表示される。
 表示される情報は、「Pedido(出願番号)」、「Depósito(出願日)」と「Título(タイトル)」「Clas(分類記号)」である。
 入力事項を消去するには、「limpar(クリア)」のボタンをクリックする。

図10 キーワード検索結果例

(8) 高度な検索をするには、検索画面(図5)で「「Pesquisa Avançado(高度検索)」をクリックする。

(9) 高度検索画面(図11)が表示される。

注)ページ選択の順番によっては、前記(3)のログイン画面が表示されるので、(3)と同様に「Continuar(続行する)」をクリックすることで再び利用することができる。

図11 高度検索画面

 緑色で表示されている項目が選択されている項目で、赤色で表示されている項目が選択されていないことを示している。各項目のボタンをクリックすると、選択・非選択が入れ替わり、表示色が変化する。また、選択された項目は、入力欄が表示されるようになる。

 全項目を選択すると、次に示す画面(図12)になる。

図12 高度検索画面(全項目選択)

検索項目は、上から順に、以下のとおりである。
Números(番号)
(21) No do Pedido(出願番号)
(31)/(33) No do Prioridade/País(優先番号/優先国)
Datas(日付)
(22) Data Depósito(出願日)(範囲入力可)
(32) Data da Prioridade(優先日)(範囲入力可)
Classificação(分類)
(52) Classificação(国際分類)
Palavra Chave(キーワード)
(54) Título(タイトル)
Depositante/Titular/Autor(出願人/権利者/創作者)
(71/73) Nome do Depositante/Titular(出願人/権利者)
(72) Nome do Autor(創作者)
CPF/CNPJ do Depositante(出願人の個人/法人納税者番号)

 全項目を入力しなくても検索可能である。

 例として、「(71/73) Nome do Depositante/Titular(出願人/権利者)」の項目に「HONDA」と入力し、「pesquisar(検索)」をクリックすると、検索結果ページ(図13)が表示される。表示される情報は「pedido(出願番号)」、「Depósito(出願日)」と「Título(タイトル)」「Clas(分類)」である。

図13 高度検索結果例

 ここで、「pedido(出願番号)」をクリックすると、前記(6)と同様に各案件の詳細が表示される。例として、「BR 30 2023 003071 9」を選択すると、下図の詳細(図14)が表示される。

図14 「出願番号」検索結果例

【留意事項】
 検索で使用できる言語は、ポルトガル語のみである。また、当該ウェブサイトでは、書誌情報と要約等の情報が閲覧できるのみであり、明細書全文を閲覧することはできない。
 検索画面の入力・出力表示として「Pedido(出願番号)」と示されているが、実際には「No do Registro(登録番号)」の入力でも検索され、また、出力表示される。

台湾意匠における立体図

1. 立体図(中国語「立體圖」)の役割
 意匠登録を受けようとする物品が立体物である場合、立体図は、図面において必要な内容となる。

(1) 意匠は、物品の全部または一部についての形状、模様、色彩またはその結合で、視覚を通じて訴える創作物と定義される(台湾専利法(以下「専利法」という。)第121条第1項)。意匠登録を出願する際、出願人は、願書、明細書、および図面を備えなければならない(専利法第125条第1項)。

(2) 意匠登録出願の図面を作成する場合、工業製図の方法を参照し、黒線図、コンピューター・グラフィックス、または写真で表さなければならない。そして、各図面をその三分の二に縮小した場合でも図面の各細部をはっきりと識別できるようにするほか、各図面の名称を表記し、立体図、またはその意匠を最も代表する図面を代表図として指定しなければならない。

(3) 意匠登録を受けようとする物品が立体物である場合、図面がはっきりとその物品の立体感を表現できるようにするために、少なくとも立体図一点を含まなければならない。そして、その立体物の意匠の特徴をはっきりと表すために、原則的には、最もその意匠の重点を表せる視面を選ぶべきである。例えば、下図で示したように、立体図と全六面図(図1-1)、または立体図と六面図の一部(図1-2)で意匠の全体的外観を表すことができる。一方、図2のとおり、二点以上の立体図だけでも立体物の意匠を表現することができる(専利審査基準第3篇第1章3.1.1)。

図1-1 立体図および全ての面が揃った六面図による開示
図1-2 立体図および六面図の一部による開示
(専利審査基準第3篇「設計専利実体審査」第1章「明細書及び図面」から抜粋)
図2 二点以上の立体図による開示
(専利審査基準第3篇「設計専利実体審査」第1章「明細書及び図面」から抜粋)

(4) 意匠登録を受けようとする物品が立体物である場合、通常、立体図と他図面(例えば、もう一点の立体図、または正面図・背面図・左側面図・右側面図・平面図・底面図等の図面)で登録を受けようとする意匠の全ての内容を充分に表さなければならない。図面に開示されていない部分は、原則的に「登録を受けようとしない部分」とみなされるべきであるが、それらの図が同一または対称であることや、その他の事由のために省略されている場合、省略された内容が「登録を受けようとしない部分」に属するわけではないため、省略した理由を意匠の説明欄に明記しなければならない(専利審査基準第3篇第1章2.3.3)。

(5) 色彩の登録を求める場合、図面にて、その色彩を表さなければならない(専利法施行細則第53条第4項)。なお、色彩の登録を求めない場合、図面は線図、グレースケールのコンピューター・グラフィックス、またはモノクロ写真の方法で表すべきで、図面にその色彩を施し、「図面に開示された色彩は、本案の意匠を主張しない部分である」と意匠の説明欄に記載しなければならない(専利審査基準第3篇第1章3.2.5)。

(6) 部分意匠の場合は、意匠登録を受けようとする部分と、意匠登録を受けようとしない部分をはっきりと区別できる方式で図面に表さなければならない。部分意匠における「意匠を主張しない部分」を表示する場合は、破線またはその他の断線(例えば一点鎖線、二点鎖線等)または半透明色付けで表示することができる(専利審査基準第3篇第1章3.2.1)。部分意匠出願の際、その意匠の色彩を主張しない場合は、「登録を受けようとする部分」と「登録を受けようとしない部分」を、点線、破線その他の方法で明確に分けることができない場合、単色で遮る方式で「登録を受けようとしない部分」を表すことができ、そして意匠の説明欄に記載しなければならない(専利審査基準第3篇第1章3.2.5)。

(7) 意匠登録を受けようとする物品が平面的なもの(例えばハンカチ)である場合、その特徴はその物品の平面的意匠にあるため、意匠登録出願をする際に、正面図と背面図のみで表すことができる(図3-1)。意匠の特徴が一面のみに存在する場合、正面図または平面図のみで表すことができる。意匠が連続する平面(例えば生地)である場合、その平面的な意匠のユニット図(図3-2)を含まなければならない(専利法施行細則第53条第1項後段、専利審査基準第3篇第1章3.1.1)。

図3-1 平面的な物品の正面図、背面図
(専利審査基準第3篇「設計専利実体審査」第1章「明細書及び図面」から抜粋)
図3-2 平面的な物品の平面図およびユニット図
(専利審査基準第3篇「設計専利実体審査」第1章「明細書及び図面」から抜粋)

2. 立体図の製図方法
(1) 立体図は、三次元の立体的な物品を平面上に表す図面であり、意匠登録を受けようとする物品を表現するための基本的な図面の一つである。よく見られる立体図の製図方法には、軸測投影図法、斜投影図法、および透視投影図法がある(設計専利の明細書および図面の作成の手引3.1.2)。

(2) 軸測投影図法の製図原理につき、図4-1(a)のように、物体を前投影面と平行な元の位置から、図4-1(b)のように平面投影面と直交する軸に沿って角度αで回転させてから、図4-1(c)のように側投影面と直交する軸に沿って角度βで回転させると、前投影の方向から物体の三つの主要な平面が見える図4-1(d)の軸測投影図となる。

図4-1 軸測投影図法
(設計専利の明細書及び図面の作成の手引、8頁から抜粋)

(3) 異なる回転角により、例えば図4-2の等角投影、二等角投影、不等角投影などの異なる軸測投影図法の製図方法を利用することができる。出願人は、その出願しようとする意匠の特徴に応じて、最適な投影法を選ぶことができる(図4-3)。

図4-2 各種の軸測投影による製図方法
(設計専利の明細書及び図面の作成の手引、8頁から抜粋)
図4-3 軸測投影図法による図面の例
(設計専利の明細書及び図面の作成の手引、9頁から抜粋)

(4) 斜投影図法で図面を作成する場合は、主要な平面を選択してそれを投影面と平行にし、平行投影軸と投影面が90度にならないようにすれば、斜視図を得られる。一般的に、斜視図は、図5のように等斜図と半斜図に分けられる。斜投影図法で立体図を作成する際、ゆがみが生じやすくなるため、正方形柱または円柱等、斜投影法に適するシンプルな幾何形体でない場合は、軸測投影法か透視投影法を採用するのが好ましい。

図5 斜投影
(設計専利の明細書及び図面の作成の手引、9頁から抜粋)

(5) 図6のように、透視投影を採用する場合、観察者と物体の間に投影面を設け、観察者の物体の各点に対する視線と投影面が交わって構成された図形が透視図と呼ばれる。

図6 透視投影の原理
(設計専利の明細書及び図面の作成の手引、10頁から抜粋)

(6) 透視投影で得た図面は、比較的、視覚でとらえる真実のイメージに近いものの(例えば、図7のバス)、物品の外観について図面を見る者に誤解を生じさせないために(例えば、図8のミニ折り畳み自転車)、図面を作成する際には、実際のサイズに適う透視投影の方法を選択する必要がある。

図7 透視投影で得た立体図は視覚でとらえるイメージに近い
(設計専利の明細書及び図面の作成の手引、10頁から抜粋)
図8 透視投影では過度な表現となり誤解をさせる図面になる可能性がある
(設計専利の明細書及び図面の作成の手引、10頁から抜粋)

3. 留意事項
(1) 写真またはコンピューター・グラフィックスに関する注意事項
 意匠登録出願の図面を作成する場合、図9のコンピューター・グラフィックス(CG)や、図10の写真で表すこともできる。コンピューター・グラフィックスで表す場合、図面がぼやけたり解像度が悪くて縁に鋸歯状のギザギザが発生したりすることを避け、画像の背景を単色にするべきである。写真で表す場合は、正投影のような撮影の角度を維持すべきであり、写真の背景を単色にして、撮影時の照度を意匠の各細部が明らかに識別できるように調整すべきである。カラー写真またはコンピューター・グラフィックスで「登録を受けようとしない部分」を表す場合、半透明の色で表現すべきである(図9の右図)。

図9 CGで意匠を表す場合
(設計専利の明細書及び図面の作成の手引、24頁から抜粋)
図10 写真で意匠を表す場合
(設計専利の明細書及び図面の作成の手引、24頁から抜粋)

(2) 図面の重要性
 登録意匠の侵害鑑定を行う場合において、意匠の権利範囲を解釈するときには、図面を基準とし、明細書の内容を斟酌することができるとされている。このため、意匠の図面は、権利範囲を解釈する際の主要な基礎であり、各図面(立体図、六面図、平面図、ユニット図、その他の補助図を含む)により表されている具体的な意匠に、明細書の記載を斟酌してその範囲を定義することができる。

(3) 立体図の重要性
 意匠登録を受けようとする物品の図面につき、各図の名称を表記し、立体図または最も意匠を表すことができる図面を代表図として指定すべきであるとする専利法施行細則第54条第1項の規定から、立体図の重要性がわかる。