ブラジルにおける判例の調べ方―連邦最高裁判所(STF)ウェブサイト
ブラジル司法機関は、主に連邦裁判所と州裁判所で構成され、連邦裁判所は、連邦政府やその機関あるいは準政府機関が当事者となる訴訟について管轄し、州裁判所は、それ以外の行政に関連しない刑事、民事、商事等に関する訴訟を管轄する。知的財産に係る訴訟については、産業財産庁の決定についての行政訴訟は連邦裁判所が、侵害案件は州裁判所が第一審となる。第一審を担当する連邦裁判所と州裁判所は、それぞれ27か所(26州と連邦区)あり、州裁判所の案件の第二審(控訴審)を担当する州高等裁判所も27か所にあるが、連邦裁判所の第二審(控訴審)の連邦高等裁判所は、6つの巡回区に一か所ずつ設けられている。
第二審の上級審として、主に憲法裁判所としての役割を担う連邦最高裁判所と、連邦法または国際条約の法解釈についての最終判断を下す連邦司法高等裁判所がある。連邦司法高等裁判所の判決に対して、憲法違反を争って連邦最高裁判所へ上訴することも可能であり、その場合は例外的に第四審までいくことになる。連邦司法高等裁判所への上訴は、「特別上訴」(ポルトガル語「Recurso Especial」、英語「Special Appeal」)と呼ばれ、州裁判所ルートからも連邦裁判所ルートからも行うことができる。
ブラジルでは、全裁判所の情報を網羅する統一ウェブサイトが存在しないため、判例検索をするには、各裁判所のウェブサイトにおいて検索することになる。以下では、連邦最高裁判所(ポルトガル語「Supremo Tribunal Federal」(略称はSTF、英語「Federal Court of Justice」。以下「STF」という。)のウェブサイトでの判例の調べ方について紹介する。ウェブサイトでの検索の入力キーワードおよび判決文は、いずれもポルトガル語のみである。
STFは、ブラジル連邦共和国の最上級裁判所であり、主に憲法裁判所としての役割を担っている。すなわち、STFの主な役割は、憲法を守り、解釈することである。ここへ直接提訴される訴訟の種類は、直接憲法違反訴訟(ポルトガル語「Ação Direta de Inconstitucionalidade」、英語「Direct Unconstitutionality Action」)、合憲性の宣言的訴訟(ポルトガル語「Ação Declaratória de Constitucionalidade」、英語「Declaratory Action of Constitutionality」)、脱落による直接憲法違法訴訟(ポルトガル語「Ação Direta de Inconstitucionalidade por Omissão」)、英語「Action of Unconstitutionality by Omission」)、そして基本的な教訓違反の主張(ポルトガル語「Arguição de Descumprimento de Preceito Fundamental」、「Claim of Breach of Fundamental Precept」)がある。
STFへの上訴は、「通常上訴」(ポルトガル語「Recurso Ordinário」、英語「Ordinary Appeal」)と「非常上訴」(ポルトガル語「Recurso Extraordinário」、英語「Extraordinary Appeal」)がある。前者は、人身保護令状、証券の令状、データ保護令状あるいは送還訴訟に対する訴訟の上訴の場合を言い(憲法問題か否かは問わない)、後者は、控訴審(州レベル、連邦レベル双方)の判断あるいは連邦司法高等裁判所(STJ)の判断が憲法条項に違反することを主張して上訴する場合をいう。
なお、STFウェブサイトは、ポルトガル語、英語、スペイン語を選択できるが、英語版・スペイン語版にはごく限られた情報のみが掲載されており、ポルトガル語版ウェブサイトでしか判例の検索はできない。そのため、以下では、ポルトガル語版ウェブサイトの使い方を説明し、次に英語版ウェブサイトについて紹介する。
1. ポルトガル語版ウェブサイトの使い方
(1) 検索方法の種類
STFウェブサイト(https://portal.stf.jus.br/)にアクセスし、トップページの上部のバーの「Jurisprudência(判例)」にカーソルを合わせると、プルダウンメニューが表示される(図1)。ここで、「Pesquisa(調査)」をクリックすると、図2の検索条件入力画面が表示される。主な調べ方は、「キーワード検索」と「項目検索」の二つがある。

(2) キーワード検索
(2-1) 検索条件の設定
「キーワード検索の方法」を紹介する。図2の赤枠で囲まれた「Pesquisar palavras-chave(キーワード検索)」という欄に任意のキーワード(ポルトガル語)を入力する。その欄の下に、左端から以下のとおりの条件ボタンがある。
e (and)
ou (or)
não (not)
“ ”(対象用語は、検索された順番と綴りどおりに検索結果に表示される。)
“ ”~(用語は、「~」の後の単語数以内で区切られていれば、そのような順番で結果文書に出る可能性がある。)
~(単語の後に「~」を置くと、その単語が少し変化した文書も検索対象となる。)
$(用語の先頭、中間、あるいは末尾の1文字以上、または0文字を置き換えた単語が対象となる。例えば、$marketと入力すれば、$の部分を変形したsupermarket、highmarket、marketなどが含まれる。)
?(疑問符は、用語の先頭、中間または末尾の1文字を置き換える単語が対象となる。例えば、market?と入力すれば、?の部分を変形したmarkets、marketなどが含まれる。)
()(括弧は、複数の条件を使用する場合の条件の優先順位を示す。 例えば、Appleとwatch、またはiwatchを含むすべてを検索する場合は、Apple e (watch ou iWatch)と入力する。)
上記の条件ボタンがあるので、必要に応じて入力する。
キーワードを入力したら、図2の入力欄の右側にある拡大鏡のアイコンをクリックする。入力事項を削除したい場合は、入力欄の左側に配置されている円形の2つの曲線矢印のアイコン「Limpar(クリア)」をクリックする。

(2-2) キーワードの入力
例えば、図3のように「Patentes(特許)」と入力して、右側の拡大鏡アイコンをクリックする。

(2-3) 検索の実行および結果
検索を実行すると、図4の検索結果のページが表示される。

検索結果は、図4の赤枠で囲った左上の「Base」に示されるように、上から順に以下の件数が示される。,
・Acórdãos:合議審による判決
・Repercussão Geral:一般的な影響を与える判決
・Questões de Ordem:秩序の問題
・Coletânea de acórdãos:合議審による判決の収集
・Decisões Monocráticas:単独審による判決
・Informativos:情報誌
・Súmulas:判例要旨
上記の例では、Acórdãosが689件、Decisões Monocráticasが18,891件、Informativoが99件、Súmulasが1件ヒットしたことがわかる。
例えば、図4の検索結果で 表示される情報は、以下のとおりである(記事作成時点で最初に表示された事件番号RE 601146の例を示す。)。
・Processo:事件番号(上記例ではRE 601146、「Processo」は表示されず事件番号のみが青色太字で先頭に表示される。)
・Órgão Julgador:担当法廷(上記例では、Tribunal Pleno「大法廷」)
・Relator(a):担当判事(上記例では、MARCO AURELIO判事)
・Redator(a) do acórdão: 判決起案判事(上記例では、ALEXANDRE DE MORAES判事)
・Julgamento :判決日(上記例では、2020年6月8日)
・Publicação:判決の公示日(上記例では、2020年10月21日)
・Ementa:判決要旨
・Tema:争点
・Tese:法学的見解
・Outras ocorrências:その他の事項
図4の赤枠で囲った事件番号(上記例ではRE 601146)をクリックすると、図5aおよび図5bに示す事件の詳細がテキスト形式で表示される。


また、図4の赤枠で囲った右側のPDFというアイコンをクリックすると、図6の判決全文のPDFが別ウィンドウで開き、閲覧、保存、印刷できる。

(3) 項目検索
(3-1) 検索項目の設定
もう一つの検索方法として「項目検索」も可能である。図7(前記図3の検索条件入力画面再掲)のキーワード入力欄の右側の「+」のアイコン(Pesquisa avançada(項目別検索))をクリックすると、図8のように項目が展開され、以下の項目による検索が可能となる。


検索項目
・Bases:文書の種類。「Acórdãos(合議審による判決)」、「Repercussão geral(一般的な影響を与える判決)」、「Súmulas(判例法理)」、「Decisões monocráticas(単独審による判決)」、「Informativos(情報誌)」から選択
・Pesquisa em todos os campos:キーワード検索と同様
・Pesquisa em campos específicos:特定項目検索
-Número/Classe:事件番号/分類
-Ementa/Decisão/Indexação:判決要旨、インデックスキー
-Tese:法学的見解
-Tema:争点
-Observação:備考
-Partes:当事者
・Pesquisa por legislação:適用法。ここには、法律名を入力し、その条、項、号も指定することができる。
図8の項目展開画面の左下には「Opções de pesquisa(検索オプション)」もある。「Sinônimos(類義語)」、「Plural(複数形)」、「Busca exata entre aspas(引用符で囲まれた用語に対しては、正確に一致する結果のみが検索される。)」はデフォルトで選択されている。また、「Inteiro teor(判決全文)」と「Radicais(ラジカル:接頭辞や接尾辞を除いた単語の基本形)」がある。前者にチェックすると、2012年以降の判決全文に含まれる全ての情報が検索対象となる。後者にチェックすると、同じラジカルをもつ単語が検索対象となる。
入力事項および設定した条件を削除したい場合は、図8の右下の「Limpar(クリア)」をクリックする。条件を設定したら「Pesquisar(調査)」をクリックする。
(3-2) 検索の実行および結果
例えば、図8において、Base(文書の種類)で「Decisões monocráticas(単独審による判決)」を選択し、事件番号に「ADI 5529」と入力し、「Pesquisar(調査)」をクリックすると、図9の検索結果が表示される。

この例では、「Acórdãos(合議審による判決)」が1件、「Decisões Monocráticas(単独審による判決)」が2件、「Informativo(情報誌)」が1件ヒットし、選択した「Decisões Monocráticas(単独審による判決)」の2件の内容が右側に表示されているる。
表示される情報は、以下のとおりである(最初に表示される事件番号ADI 5529 MCの例を示す。)。
・Processo:事件番号(上記例ではADI 5529 MC、「Processo」は表示されず事件番号のみが青色太字で先頭に表示される。)
・Relator(a):担当判事(上記例では、DIAS TOFFOLI判事)
・Julgamento :判決日(上記例では、2021年4月8日)
・publicação:判決の公示日(上記例では、2021年4月9日)
・Decisão:判決
2. 英語版ウェブサイトの使い方
(1) 上記第1項(1)で示したSTFウェブサイト(https://portal.stf.jus.br/)のトップページの画面上部の「Institucional(概要)」にカーソルを合わせると、プルダウンメニューが表示される(図10)。その右側(赤枠)の「Internacional(国際)」セクションで、「Internacional em português」(ポルトガル語)、「Internacional em inglês」(英語)、「Internacional em espanhol」(スペイン語)、が選択できる。

(2) 図10の「Internacional em inglês」をクリックすると、図11の英語のページに切り替わる。この英語ページ上では、上欄に、「About the Court」などの項目があり、STFに関する一定の基礎情報等が英語で掲載されている。判例検索に関しては、この上覧の項目中、「CASE LAW」をクリックすると、検索サイトへのリンク案内が英語で表示される(図12)。

(3) 図12の判決文検索画面(英語)において、「Decisions of the Brazilian Supreme Court (in Portuguese)」部分をクリックすると判決文の検索ページへ移動できるように示されているが、ウェブサイトが整備されていないようであり、移動先のページは記事作成時点で無効リンクとなっている。上記第1項(2)で紹介したものと同じであるべきと考えられる。

【留意点】
STFのサイトは反応が遅い場合があり、検索時にエラーメッセージが表示される場合があるが、何度か繰り返すと表示される。また、判決全文のダウンロードも、ページ数にもよると思われるが、しばらく何も表示されないなど、時間を要する場合がある。
ベトナムにおける「.vn」ドメイン名紛争の解決
1. はじめに
ベトナムにおけるドメイン名の占拠および転売などのサイバースクワッティング(Cybersquatting)については、ベトナム知的財産法07/2022/QH15(以下「知的財産法」という。)第130条第1項d、政令第99/2013/ND-CP号(以下「政令99/2013」という。)第14条第16項a号および通達06/2024/TT-BKHCN号(以下「通達06/2024」という。)第1条第10項により改正された通達11/2015/TT-BKHCN(以下「通達11/2015」という。)第19条第2項にて、不正競争行為と規定されている。すなわち、他人の保護された商標と同一または紛らわしいほど類似するドメイン名を、そのドメインが導くサイト上で、同一・類似または関連する商品やサービスを紹介、提供、販売するために、許可なく使用する行為、当該商標の名声・評判を利用して不当な利益を得る目的でドメイン名を使用して混同を惹起する行為、当該商標の使用権を有しない悪意の他人が当該商標と混同を生じるドメイン名を所有・占有する行為などは不正競争行為とされる。
また、「.vn」ドメイン名の登録、使用および占有について紛争の処理を申し立てできる者(以下「申立人」という。)は、不正競争行為により損害を受けた、または損害を受ける可能性のある者と規定している(通達06/2024第1条第10項で改正された通達11/2015第19条第2項(a))。
一方、「.vn」ドメイン名は、ベトナム・インターネット・ネットワーク情報センター(Vietnam Internet Network Information Center:VNNIC、日本における「JPNIC」に相当。)により管理されている。VNNICは、情報通信省の管理下で、インターネットドメイン名の管理、割り当て、使用の監督および促進を担っている。「.vn」ドメイン名の取得は、先着順(first come, first served)で行われる(政令第72/2013/ND-CP号第3条第8項bおよび第12条)。
VNNICには、「.vn」ドメイン名をめぐる紛争において取消決定を下す権限はなく、(1) 適切な管轄権を有する機関による行政救済(取消決定を含むこと)、(2) 当事者間の交渉による取消決定を含む和解合意、(3) 裁判所での民事救済(取消決定を含む判決または仲裁)などの決定に基づき、VNNICが「.vn」ドメイン名取消の実務を担当する(2016年6月8日付共同通達第14/2016/TTLT-BTTTT-BKHCN号第12条)。
2. 紛争解決手続
2-1. 予備的観察
「.vn」ドメイン名に関する不正競争行為について、知的財産権者は裁判所に民事救済を求めることができるが(知的財産法第198条第1項dおよび第202条)、ベトナムにおいて極めて稀である。これは裁判所の知的財産に関する知識が不足していること、結果が出るのが遅いことおよび仲裁の裁定ならびに判決の結果予測性が低いことが原因となっている。
一方、行政救済については、知的財産法第198条第2項、政令99/2013第14条第16項aおよび通達11/2015第4条を改正した通達06/2024第1条第3項に「.vn」ドメイン名に関する不正競争行為に対する行政救済が規定された。また、政令99/2013第35条第1項には、知的財産権の不正競争行為全般については科学技術省監査局に罰則措置を講ずる権限があることが規定され、同条第3項には「.vn」ドメイン名に関する不正競争行為については、情報通信省監査局にも罰則措置を講ずる権限があることが規定されている。
よって、「.vn」ドメイン名をめぐる紛争を解決する最も一般的なルートとして、完全に満足いくものではないが、交渉と行政救済が実質的に残る選択肢となっている。以下、行政救済とそれに先立つ交渉について説明する。
2-2. 交渉
「.vn」ドメイン名をめぐる紛争の行政救済の前提要件として、警告書と事前交渉などにより合意に達することができなかったこと、との要件が通達11/2015第4条第1項bに規定されていた。この要件は通達06/2024第1条第3項に置き換わることによりなくなったが、依然として、交渉は推奨される。「.vn」ドメイン名登録者の善意次第では、行政救済よりも交渉の方がはるかに時間的効率の良い解決方法となる場合がある。また、商標出願係属中の出願人には「.vn」ドメイン名の登録取消を求める法的資格はないが、登録者が友好的な解決に同意すれば、交渉によって紛争解決の機会を得ることができる。
行政救済による法的措置が避けられない場合でも、警告書を発行して交渉を行うことは、権利者が問題を友好的に解決しようと努力した証拠となり、その後の法的措置の手続において有利になると考えられる。
交渉が不調に終わった場合は、中央または省レベルで科学技術省監査局経由での訴えを提起し、行政救済を申し立てることを推奨する(政令99/2013第16条)。
2-3. 行政救済
行政救済は、通常、次のように進められる。
ステップ1:申立書の提出
第一ステップは、知的財産権者である申立人が、科学技術省監査局など適切な管轄権を有する当局(以下「当局」という。)に、以下の(i)と、(ii)と、(iii)または(iv)との証拠を全て、ドメイン名に関する救済の申立書と同時に提供する必要がある(政令147/2024/ND-CP(以下「政令147/2024」という。)第16条および通達11/2015第19条2項を改正する通達06/2024第1条第10項c)。
(i) 不正競争行為に係わる「.vn」ドメイン名と同一または紛らわしいほど類似する商標、地理的表示もしくは商号を申立人が所有することを証明する登録証明書または同等の法的文書。
(ii) 被申立人が、不正競争行為に係わる「.vn」ドメイン名に関して、正当な権利または利益を有していないことを示す証拠。
(iii) 被申立人が申立人の商標、商号、または地理的表示の評判を不当な利益のために利用したと申立人が主張する場合、申立人は、以下のものを提出しなければならない。
・商標、商号、または地理的表示がベトナムで広く使用され、認識され、またはよく知られているとみなされていることを証明する情報。
・被申立人が、「.vn」ドメイン名を使用して、申立人の保護された権利に関連するものと同一または類似の商品またはサービスを販売または宣伝し、混乱を引き起こし、申立人の評判から不当に利益を得ていることを示す証拠。
(iv) 被申立人の悪意を主張する場合、申立人は、以下を提供しなければならない。
・被申立人が、申立人の商標、商号、または地理的表示がベトナムで保護されていることを認識した上で、「.vn」ドメイン名を販売、譲渡、またはその他の方法で利益を得る意図を持っていることの証明。
・「.vn」ドメイン名にリンクされたウェブサイトが、保護された商標、商号、または地理的表示の評判または信用を損なうことを示す証拠。
「.vn」ドメイン名に関する不正競争行為の救済の申立は、通常、申立人の権利が「.vn」ドメイン名の登録または使用より前から存在していることを証明する必要がある。なお、新しく登録された商標に基づいて、ベトナムで当該商標が存在する前にすでに使用されていた「.vn」ドメイン名に対する申立は、当該商標が国際的に著名な場合などを除き、認められる可能性は低いと考えられる。
「.vn」ドメイン名に関する不正競争行為の救済手続において、申立の根拠となる商標自体に争いがある場合(例えば、不使用取消請求の対象となっている場合)、権利の有効性が当該救済手続において重要な要素であるため、当該救済手続は一時停止されることがある。根拠となる権利が無効とみなされるか、不使用などの理由で取り消された場合、救済の根拠はもはや存在せず、救済は認められない。
なお、知的財産権者が「vn.」ドメイン名取消の行政救済を申し立てる期限は2年である。この期限起算日は、不正競争行為を発見した日または不正競争行為が終了していた場合は行為終了日である(政令99/2013第28条第1項cに引用される行政上の罰則措置法第6条第1項aおよびb)。ただし、侵害者が不当な遅延を理由に抗弁を主張することを防ぐために、不正競争行為を発見したらすぐに救済を申し立てることが望ましい。
ステップ2:当局との面談または被申立人の施設における検査
申立書が受理された場合、当局は、通常、「.vn」ドメイン名に関する不正競争行為を主張する申立人と「.vn」ドメイン名登録者である被申立人との面談を設定し、まずは友好的に解決するよう両当事者の説得を試みる。当局は、協議のために被申立人との面談を複数回にわたり試みる場合がある。代理人が、このような面談に参加するよう要請されることがある。
被申立人が面談の要請に応じないか、これを拒絶する場合、当局は、被申立人の事業所の検査を手配する判断を下すことができる(政令99/2013第26条第3項)。
ステップ3:通知および処分決定の発行
面談または検査の後、被申立人が「.vn」ドメイン名を所有する権利を有していないと判断し、かつ、「.vn」ドメイン名の取下または譲渡に応じない場合、当局は、(i) 制裁決定を発行するか、(ii) 当該「.vn」ドメイン名が申立人の権利を侵害しているとの書面による結論を発行することができる。
(ii) の場合、当局は当該結論を申立人および被申立人に通知し、両当事者が合意するための条件を定める(政令99/2013 第27条の英文に基づく)。
両当事者が合意に達しない場合には、当局が当該案件に対処するものとし、当局は処分決定を行うことができる(政令99/2013第30条)。
例えば、「.vn」ドメイン名の取消処分決定から30日後、被申立人が「.vn」ドメイン名登録の取下を行っていない場合、処分決定を下した当局は、VNNICに対し、「.vn」ドメイン名の取消を要請することができる(政令99/2013第31条第3項)。
【留意事項】
「.vn」ドメイン名の紛争解決については、特に行政救済による「.vn」ドメイン名の取消を求める処分決定に対し、被申立人(「.vn」ドメイン名登録者)は、原則、30日以内に対応しなければならず(政令99/2013第25条第3項a)、以前に比べ改善した。しかしながら、申立人(知的財産権者)は、当該紛争に対処するよう当局を説得し、当局が相応の決定を下すよう働きかけるために、手続のすべての段階において自ら密接に関与する必要がある。一般的に、処分決定を得られるまで12~18か月かかる。
さらに、行政救済においても以下の問題点が残されている。ベトナムの制度において、行政救済による処分決定は、ベトナム国内に拠点を有しない外国人に対し発行することができない。よって、外国人が登録した「.vn」ドメイン名については、行政救済による処分決定は適用されない。また、同制度は、ベトナム人のサイバースクワッター(ドメイン占拠者)であっても「通知の送達」、すなわち居所の特定ができない者に対しては無力である。当局は裁判所と異なり、「一方的な申立による(ex parte)」事件を扱わないからである。法令の規定には、申立人が、友好的な和解期間中に登録人の変更がなされるのを防いだり、当該ドメイン名が取り消されたり別の登録人に「譲渡」されるのを防いだりするための規定も存在しない。これらの状況を打開するための解決策が検討されており、より実効的な紛争解決の手段が示されることが期待される。
シンガポールの判決等へのアクセス方法
1. Singapore Law Watch(SLW)による検索
SLWの検索データベースには、2000年以降のシンガポール最高裁判所※1の判決および2018年以降のIPOSの決定が収録されており、これらを無料で閲覧することができる。なお、SLWに掲載されていない判決および決定については、以前は、SLWでの掲載が3か月を経過するとSLWが運営するLawNet※2に移管されていたことから、それらはLawNetに掲載されている可能性がある。
※1 シンガポール最高裁判所は、高等裁判所(High Court)と上訴裁判所(Court of Appeal)からなる。IPOSの決定に不服がある場合、または侵害事件は、高等裁判所に提訴する。
参考資料:「シンガポールにおける知的財産の審判等手続に関する調査」(JETRO 2020年3月) https://www.jpo.go.jp/resources/report/document/gaikoku/singapore_202003.pdf
※2 シンガポールの一次法律資料(シンガポール判決および法律)と二次資料(議会報告書、法律ニュース、教科書、ジャーナル等)、および英国、マレーシア、インド等のコモンロー法域の判決を検索することができる、SLWが運営する有料サイト。
https://www.lawnet.sg/lawnet/web/lawnet/home
Singapore Law Watch(SLW)ウェブサイト(https://www.singaporelawwatch.sg/)にアクセスして表示されるトップ画面(図1)上部のバーの左から4番目「Judgments(判決)」にポインタを合わせると、以下の5項目が表示される。
(a) 「Court of Appeal(上訴裁判所)」
(b) 「High Court(高等裁判所)」
(c) 「Intellectual Property Office of Singapore(IPOS:シンガポール知的財産庁)」
(d) 「Personal Data Protection Commission(個人情報保護委員会)」
(e) 「Tax Boards(税審査委員会)」
これらのうち、特許・実用新案、意匠、商標等の産業財産権に関する裁判例についての検索は、(a)から(c)を用いる。

(1) 「Court of Appeal(上訴裁判所)」による検索
図1の「Court of Appeal」をクリックすると、「Court of Appeal」のトップ画面が、図2のように、知的財産関連の判決を含む判決一覧(日付順)の形式で表示される。判決一覧には、「原告・被告名による事件名称」(最初の事件の赤枠内)、「判決の根拠(Grounds of Decision)」(最初の事件の青枠内)、「判決日(Decision Date)」(最初の事件の黒枠内)が表示される。
また、「Court of Appeal」のトップ画面(図2)右側の「Latest Judgment- Court of Appeal」の下にも判決一覧が表示されているが、これは左側の判決一覧から直近の判決を抽出したもののようであり、左側の判決一覧を見れば漏れなく判決を閲覧することができる。
なお、「Court of Appeal」のトップ画面(図2)の右上にある「Search」は、判決一覧の絞り込みを行う検索機能ではなく、SLWのコンテンツ全体を対象とする検索であるため、使用する場合は注意が必要である。

判決一覧の赤い色の「PDF」アイコンのある事件名称をクリックすると、判決文が表示される。例えば、図2の画面を下側にスクロースすると、図3のように表示される、地理的表示に関する訴訟の判決である「Fonterra Brands (Singapore) Pte Ltd v Consorzio del Formaggio Parmigiano Reggiano [2024] SGCA 53」(2024年11月22日付判決)をクリックすると、図4の判決文を閲覧でき、判決文PDFをダウンロードすることができる。


(2) 「High Court(高等裁判所)」による検索
図1の「High Court」をクリックすると、「High Court」のトップ画面が、図5のように、知的財産関連の判決を含む判決一覧の形式で表示される。画面の構成や表示される内容は、「Court of Appeal」と同じである。

判決一覧の赤い色の「PDF」アイコンのある事件名称をクリックすると、判決文が表示される。例えば、図5の画面を下側にスクロースすると、図6のように表示される判決一覧における、特許侵害の損害額算定に関する判決である「TOWA Corp v ASMPT Singapore Pte Ltd and another [2024] SGHC 163」(2024年6月27日付判決)をクリックすると、図7の判決文を閲覧でき、判決文PDFをダウンロードすることができる。


(3) 「Intellectual Property Office of Singapore」(IPOS)による検索
図1の「Intellectual Property Office of Singapore」をクリックすると、「Intellectual Property Office of Singapore」のトップ画面に、図8に示すようなIPOSの決定が一覧の形式で表示される。画面の構成は「Court of Appeal」(図2)と同じである。
決定の種類は、以下のとおりである。
「Ex Parte Hearing(拒絶査定不服)」
「Opposition to Registration(異議申立)」
「Invalidation(無効)」
「Revocation(取消)」

例えば、商標異議申立の決定である「Apple Inc v Penta Security Inc [2024] SGIPOS 10」をクリックすると、図9の決定を閲覧でき、決定のPDFをダウンロードすることができる。

2. IPOSのウェブサイトによる検索
IPOSの決定および成立した調停については、IPOSのウェブサイトからも閲覧することができる。IPOSの決定については、1999年以降の決定が閲覧可能であり、2011年以降の決定は全文、2010年末より以前については要約を閲覧できる。調停は、ASEAN調停プログラム(The WIPO-Singapore ASEAN Mediation Programme; AMP)による調停とIPOSによる調停の結果を閲覧することができる。なお、裁判所の判決は収録されていない。
(1) IPOSウェブサイトのトップ画面
IPOSウェブサイト(https://www.ipos.gov.sg/home)にアクセスして表示されるトップ画面を下側にスクロールすると、右側に図10の「Resolve IP Dispute」が表示されるのでこれをクリックする。

「Resolve IP Dispute」をクリックして表示される画面を下側にスクロールすると、図11に示すように右側に「Legal Decisions」が表示されるので、2020年以降の決定等について検索する場合は赤色文字の(i)「Legal Decisions」をクリックし、1999年から2019年までの検索を行う場合はその下の(ii)「・Legal Decisions(pre-2020)」をクリックする。次項目では2020年以降の決定等についての検索方法を説明するが、2019年以前の検索についても基本的には同じである。なお、上記(i)および(ii)において、それぞれ何年の決定が検索対象となるかは、変更される場合がある。

(2) 検索画面
「Legal Decision」をクリックして表示される検索画面を、下側にスクロールすると図12に示す「Case Search(事件検索)」が表示される。絞り込みによる検索は、下記の4項目について入力が可能である。
「Citation(事件名称)」
「Patent/Trademark/Geographical Indication(特許/商標/地理的表示)」
「Type of IP(知的財産の種類)」
「Year of Issue(発行年度)」
なお、この絞り込み検索を用いる場合に限り、「Year of Issue(発行年度)」に該当する年度を入力すれば、2019年以前の決定等も表示させることができる。

絞り込みによる検索を行わない場合は、図12の画面を下側にスクロールすると直近の決定および成立した調停が表示される(図13)。成立した調停は、「AMP Mediation Success」あるいは「Mediation Success at IPOS」として、決定を表示した枠リストの上にまとめて表示される。

図13の画面を下側にスクロールすれば、古い事件を順次表示させることができる。
該当する事件の「PDF」アイコンをクリックすると決定等が表示される。例えば、商標異議申立事件である「Google LLC v Green Radar (Singapore) Pte Ltd [2024] SGIPOS 1」の「Full Decision」部分(図13の赤枠内)をクリックすると、図14の異議決定が表示される。

3. 留意事項
通常、シンガポールの判決文は、Law WatchやLawNetを利用してオンラインで取得できる。(極めて稀であるが)判決がオンラインで公開されていない場合において利害関係を有する者が裁判所に判決文の謄写を請求する場合を除き、裁判所で判決文を謄写することは難しい。また、本稿で言及したLawNetのようなウェブサイトから判決文が入手可能な場合は、謄写申請は認められない。
韓国における知的財産基礎情報について
「韓国知的財産基礎情報」(2024年2月、日本貿易振興機構 ソウル事務所)
1. 知的財産保護体制 P.2
(知的財産保護に関連する法律名の一覧を紹介している。また、知識財産基本法、特許法、実用新案法、デザイン保護法および商標法の最新公布日、法律の概要、ならびに知的財産関連の国際条約の韓国国内での発効日および関係機関を紹介している。)
(1) 関連法 P.2
(2) 韓国産業財産権基礎情報 P.2
①知識財産基本法
②特許法
③実用新案法
④デザイン保護法
⑤商標法
⑥韓国の知的財産権加盟条約
(3) 関係機関 P.3
2. 出願、審査、登録、審判などの統計 P.5
(特許、実用新案、デザイン(意匠)および商標について、出願件数(2010年から2022年まで)、外国からの出願件数(2015年から2022年まで)および審査処理件数(2014年から2022年まで)を紹介するとともに、特許および実用新案の出願、審査請求、審査終結、一次審査処理および審査未処理の件数比較(2017年から2022年まで)ならびに特許、商標およびデザイン(意匠)の一次審査処理期間(2017年から2022年まで)を紹介している。また、特許、実用新案、デザイン(意匠)および商標の登録件数(2014年から2022年まで)ならびに審判院(2017年から2022年まで)、特許法院(2011年から2022年まで)および上告(2011年から2022年まで)について、請求件数および処理件数の統計情報を紹介している。)
(1) 出願件数 P.5
(2) 外国からの出願件数 P.6
(3) 審査処理件数 P.7
(4) 特許、実用新案の出願、審査請求、審査処理件数の比較 P.7
(5) 1次審査処理期間 P.8
(6) 登録件数 P.8
(7) 審判種類別請求及び処理件数 P.9
①審判院
②特許法院(決定系+当事者系)
③上告
3. 取締り/権利紛争状況 P.11
(特許庁(2017年から2022年まで)、検察庁(2017年から2022年まで)、税関(2019年から2022年まで)の取締り実績、知的財産訴訟(民事)新受件数(2018年から2022年まで)、特許法院の処理件数と上告率等(2010年から2022年まで)、各調停委員会の受付件数(2017年から2022年まで)の統計情報を紹介している。)
(1) 特許庁による2020年度の取締り実績 P.11
(2) 検察庁による類型別取締り実績 P.11
(3) 税関における通関後の知財権侵害物品取締り状況 P.12
(4) 知的財産訴訟(民事)新受件数 P.12
(5) 特許法院の年度別の処理件数と上告率など P.13
(6) 各調停委員会の受付件数 P.13
4. その他 P.14
(韓国特許庁職員数および組織図、知的財産権関連法律体系、関連機関および団体ならびに代理人に関する情報が図や一覧表等で紹介されている。)
(1) 韓国特許庁職員数及び組織図 P.14
(2) 知的財産権関連法律体系表 P.15
(3) 関連機関及び団体一覧 P.16
(4) 代理人 P.19
台湾における著作権保護について(「台湾知的財産保護マニュアル」より)
「台湾知的財産保護マニュアル(旧 台湾模倣対策マニュアル)」(2022年3月、日本台湾交流協会)(著作権関連部分の抜粋)
本マニュアル中、著作権に関連する項目の概要は以下のとおりである。
第1章第1節、一の第2項では、台湾において著作権の登録は保護要件ではない旨の説明を提示し、四では、台湾における著作権保護の基本情報および関連する法律を紹介している。同第2節では、主な知的財産関連当局を紹介している。同第3節では、統計情報(検察処理件数および税関での輸入差止め件数)に基づき模倣品取締の動向を解説している。
第2章第5節では、著作権の一般的保護要件および外国人の著作物の保護について解説している。
第3章第1節では、知的財産権の侵害が発生した場合の対策(模倣品の発見から撲滅までの流れ)を説明している。同第2節では、知的財産の譲渡およびライセンス契約について詳しく紹介している。
以下、本マニュアルの目次および小見出し等に沿って、著作権に関連する項目の内容を紹介する。
第1章 台湾の知的財産の概況
第1節 保護される知的財産と関連法規
一、はじめに
(略)
(二)登録の要否及び属地主義(日本で保護されている知的財産権は、台湾でも保護されるか) P.6
(略)
2. 登録が不要な知的財産権(著作権、営業秘密) P.7
(略)
四、著作権法 P.17
(台湾の著作権について専利や商標と比較しながら簡潔に説明している。また、著作権法における刑事罰、および著作権法違反の場合の対応について解説している。)
(一)定義 P.17
(二)侵害行為 P.18
(三)著作権取得のための要件及び外国の著作物の保護 P.19
(四)刑事罰等 P.19
(略)
六、公平交易法 P.24
(台湾の公平交易法は、日本の独占禁止法及び不正競争防止法に相当する法律である。公平交易法第25条(取引秩序に影響を及ぼし得る欺罔行為等の禁止)の違反については、行政処分が規定されている。)
(略)
(二)公平交易法第25条違反 P.25
1. 警告書の送付
2. 公平交易法第25条の事件に関する公平交易委員会の処理原則
3. 第25条違反の法的効果
(三)ライセンス契約についての規制 P.26
第2節 主な知的財産関連当局
(知的財産に関連する機関、および法令違反があった場合の管轄機関を紹介している。)
一、知的財産局 P.28
二、税関 P.29
三、警察・法務部調査局、検察庁 P.29
四、裁判所 P.30
五、公平交易委員会 P.31
六、小括 P.32
第3節 最近の台湾の知的財産の動き P.32
(2010年から2021年までの検察による処理件数、および税関での輸入差止め件数をグラフで紹介している。)
(略)
四、統計情報から見る最近の模倣品取締の動向 P.37
第2章 権利取得手続き
(略)
第5節 著作権 P.132
(台湾における著作権保護の要件を解説している。)
一、保護要件 P.43
(一)一般的要件 P.132
(二)外国人の著作物について P.133
第3章 知的財産権の保護・活用
第1節 模倣品対策 P.144
(台湾において著作権を含む知的財産権侵害が発生した場合の模倣品対策について説明している。)
一、取り得る手段 P.145
(一)警告書送付 P.145
(二)税関の水際対策 P.147
(三)警察・検察庁への刑事告訴・告発 P.149
(四)民事訴訟 P.150
(五)権利種別と取り得る手段との関係 P.152
二、模倣品対策の基本的な考え方 P.152
(一)警告書送付の意義 P.152
(二)税関か警察かの選択 P.153
(三)刑事手続き又は民事手続きの選択 P.153
(略)
(六)自らの著作権の権利存在の立証 P.155
第2節 権利譲渡・ライセンスの留意点 P.156
(知的財産の譲渡およびライセンス契約について詳しく紹介している。)
一、知的財産の譲渡
(一)知的財産の譲渡の可否 P.156
(著作権のうち、著作財産権は譲渡可能であるが、著作者人格権は譲渡不可能とされている。)
(二)知的財産の譲渡の際の登録 P.157
(三)譲渡の登録手続き P.159
二、ライセンスの類型 P.159
(一)ライセンス契約の類型 P.159
(略)
三、ライセンス契約の留意点 P.161
(一)専属ライセンス及び非専属ライセンス P.161
(二)公平交易委員会の「ライセンス処理原則」の要点 P.162
(略)
五、ライセンス料に掛かる税金 P.169
シンガポールにおける知的財産法改正について
記事本文はこちらをご覧ください。
インドネシアのその他の法律、規則、審査基準等
特許・実用新案、意匠、商標を除き、その他知的財産と関連するインドネシアの法律、規則等は現地語のみで提供されており、以下のとおりである。なお、審査基準は公開されていない。ブラウザの設定によっては、URLをクリックするとPDFファイル等が直接ダウンロードされる場合がある。
韓国の判例の調べ方
(1) 総合法律情報のウェブサイト(https://glaw.scourt.go.kr/wsjo/intesrch/sjo022.do)にアクセスする。総合法律情報のウェブサイトを開くと、下記のトップ画面(図1)が表示される。

(2) 次に、トップ画面(図1)の上部にある「검색(検索)」ボックス(図2)に、キーワード、事件名、法令名、条文番号、事件番号、当事者名等を数字または韓国語で入力し、検索ボックスの上の左から2番目のチェックボックス「판례(判例)」にチェックを入れて右側の「검색(検索)」ボタンをクリックする。(初期画面では「☑전체(全体)」が選択されている。)
なお、チェックボックス欄は左から順に、「검색대상(検索対象)」、「전체(全体)」、「판례(判例)」、「법령(法令)」、「조약(条約)」、「문헌(文献)」、「규칙/예규/선례(規則/例規/先例)」となっているので、判例以外について絞り込み検索をすることも可能である。

また、この画面で、総合検索以外の検索も可能である。トップ画面(図1)最上部(図3.)の「통합검색(統合検索)」、「판례(判例)」、「법령(法令)」、「조약(条約)」、「문헌(文献)」、「규칙/예규/선례(規則/例規/先例)」のうち、左から2番目の「판례(判例)」にマウスポインタを合わせると、下方に「단순검색(単純検索)」、「상세검색(詳細検索)」、「디렉토리검색(ディレクトリ検索)」が表示される。

(3) まず、「단순검색(単純検索)」から説明する。図3の「단순검색(単純検索)」をクリックして、検索ボックスにキーワード等を入力してから、「검색(検索)」ボタンをクリックすると、該当する判例を見ることができる。例えば、「大法院2007年10月11日付言渡2007フ1422拒絶決定(特)」の原文詳細を確認したい場合、事件番号部分を韓国語に翻訳し、「2007후1442」と入力して検索ボタンをクリックすると、下記の検索結果が表示され(図4)、表示されている番号をクリックすると判決全文を見ることができる(図5)※1。
※1 使用しているブラウザによっては、新しいタブで判決全文画面(図5)が自動的に開くことがある。


なお、韓国総合法律情報ウェブサイト検索結果の判決全文は、印刷および保存することができ、判決全文を印刷する場合は、以下の要領で行う。
まず、図5の画面右上にある「본문출력(本文出力)」(図6)をクリックすると、印刷範囲を指定するウィンドウ(図7)が表示されるので、「본문(本文)」(すべて印刷の場合)、「일부출력(一部出力)」(部分的に印刷したい場合)、「판시사항(判示事項)」、「판결요지(判決要旨)」、「참조조문(参照条文)」、「참조판례(参照判例)」、「전문(全文)」、「관련자료(関係資料)」、「옵션(オプション)」の「□큰글씨출력(大きい文字で出力)」を適宜チェックして、その下の「출력하기(出力する)」をクリックし、必要な範囲を印刷する。


また、判決全文の保存をしたい場合は、以下の要領で行う。
まず、図5の画面右上の「본문저장(本文保存)」(図6)をクリックすると、ファイル形式の選択および保存範囲を指定するウィンドウ(図8)が表示されるので、「파일형식(ファイル形式)」でPDFを選択し※2、下にある「저장(保存)」をクリックすることで、必要な範囲をPDFファイルとして保存することができる。
※2 図8.の「HWP」とは、韓国の代表的なワープロソフトのドキュメントファイルである。

(4) 次に、「상세검색(詳細検索)」について説明する。
図3で表示された「상세검색(詳細検索)」をクリックすると、下記の図9が表示されるので、各々の検索ボックスにキーワードを入力したり、チェックボックスに✔(チェック)を入れたりして、検索することができる。

(5) 最後に、「디렉토리검색(ディレクトリ検索)」を説明する。図3で表示された「디렉토리검색(ディレクトリ検索)」をクリックすると、下記の図10が表示される。ここでは判例を法条文別または法律名別に検索することができる。

左段の該当する分野別ディレクトリ(図10の青枠内)で希望の項目を選択すると、結果が表示される。例えば、図11のように法分野別ディレクトリで「제30편 공업소유권(第30編 工業所有権)」を選択するとその下に、「제1장 행정조직·통칙(第1章 行政組織・通則)」、「제2장 특허·실용신안(第2章 特許・実用新案)」、「제3장 의장·상표(第3章 意匠・商標)」の項目が表示され、関連する判例等を法条文別または法律名別で検索することができる。

さらに、図11の検索結果の中から希望の法律名等を選択すると別ウィンドウが開くので、左段から希望の項目を選択すると、図12のように判例リストが表示される。

判例リストの中から表示されている件名(図12の黄色枠)をクリックすると、図5のような判決全文を確認することができる。