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マレーシアにおける商標出願の拒絶理由通知に対する応答
2015年03月31日
■概要
マレーシアにおける商標出願では、方式審査の終了後に実体審査が行われる。審査官は当該出願を拒絶するか否か、審査官の提示する条件、補正、変更または限定に同意すれば登録を認める旨を通知することができる。実体審査で拒絶理由通知書を受けた際には、出願人は拒絶理由通知書の発行日から2ヶ月以内で、回答書を提出する機会を与えられる。審査官の決定に不服がある場合には、マレーシア高等裁判所(High Court)に不服申立を提起することができる。■詳細及び留意点
【詳細】
1976年商標法(「商標法」)および1997年商標規則(「商標規則」)に基づく要件に従い、商標出願がなされ、方式審査が完了すると、マレーシア知的財産局(Intellectual Property Corporation of Malaysia: MyIPO)の商標調査・審査部(Trademarks Search and Examination Section)の審査官が当該商標出願の実体審査を開始する。実体審査には、次のものが含まれるが、それらに限定されるものではない。
(i)指定商品・役務の記述に関する審査(必要な場合)
(ii)抵触する先願・先登録の有無を確認する調査
(iii)商標の本来的な識別力に関する審査(英語辞書、電話帳、地図帳および科学技術用語辞典などの参照文書で参照する場合もある)
(iv)商標の欺瞞性その他法定の不登録事由に関する審査、たとえば周知商標、地理的名称、または王室もしくは皇室の紋章、軍の階級章、頂飾、紋(章)、記章または国旗等を示す標章、標語または文言などの一定の禁止事項により構成されるかどうかの審査
(v)登録に制限または条件を課す必要性についての検討、たとえば、標章の一定の文言または図形に対する権利不要求、余白に関する条件、使用態様に関する条件などの確認
上記の根拠に基づき出願の実体審査を終えると、審査官は当該出願を拒絶するか否か、審査官の提示する条件、補正、変更または限定に同意すれば登録を認める旨を通知することができる。
審査官には、商標法に基づく裁量が与えられており、その職権により商標を拒絶することができるが、出願人に意見を述べる機会を与えることなく自己の職権を出願人に不利な形で行使しないよう求められている(マレーシア商標法第76条)。
○拒絶理由通知に対する対応
(1)審査官が商標出願を拒絶するか、何らかの条件、補正、変更または限定(「一定条件」)に同意すれば登録を認める用意がある場合、審査官は出願人に対し書面でその拒絶理由を通知し、出願人は拒絶理由通知書の日付から2ヶ月以内で、回答書を提出する機会を与えられる。出願人が所定の期間内または審査官が認めた延長期間内に応答しない場合、当該出願を放棄したものとみなす。
(2)回答書には、審査官から通知された拒絶理由を解消するための提案、条件、補正、変更または限定などを含めることができる。さらに、当該標章が十分な本来的識別力を有していない場合や、抵触する引用商標との善意の同時使用がなされていた場合には、使用により識別力を有するに至っていることを証明するための法定宣誓書による使用証拠など、審査官から通知された拒絶理由を解消するための証拠または文書を回答書に含めることができる。
(3)審査官は、出願人の回答書を考慮した後、当該出願の登録を認めるか、拒絶理由が解消されていないと決定することができる。
(4)審査官は、拒絶理由が解消されていないと決定する場合、出願人に対し拒絶査定書を送達し、出願人は当該拒絶査定の通知の日付から2ヶ月以内に所定の料金を添えて面接を申請することができる。面接の申請を行わない場合、出願人は出願を放棄したものとみなされる。出願人が面接の申請を行った場合、審査官は、出願人が面接のために審査官と面接すべき日時を定めた通知を送達する。出願人は面接において、回答書に記載したものと同様の主張または追加の主張、提案または証拠の提出を行うことができる。
(5)面接後に審査官が下す決定は、書面で出願人に送達される。出願人は、この決定に不服がある場合、審査官に対し決定の日付から2ヶ月以内に、決定の根拠および決定に用いた資料を書面で示すよう求めなければならない。不服申立においては、この規則に基づく書面が出願人に交付された日を審査官による決定の日付とみなす。
(6)出願人は、審査官の上記通知に対する応答期間として、商標法または商標規則に規定される応答期限の延長について申請することができる。
(7)審査官の決定に不服がある場合には、マレーシア高等裁判所に不服申立を提起することができる。裁判所は、必要な場合は出願人と審査官の審理を行い、出願の登録を認めるべきか否か、さらに場合に応じてどのような条件、補正または限定を付して認可すべきかを決定する。審査官が決定を下すために用いた資料に基づき審理が行われ、裁判所が許可した場合を除き、審査官は新たな拒絶理由を追加することは認められない。裁判所が認めた新たな拒絶理由が追加された場合、出願人は所定の方法により出願を取り下げることができる。その際には、出願に関する費用は一切かからない。
(8)裁判所が不服申立を認めた場合には、商標法の規定に従い審査官は出願を登録しなければならず、その期限も判決日から3ヶ月以内または裁判所が認めるまでと定めてられている(マレーシア商標法第29条の(2))。
【留意事項】
審査官は、出願の登録を認めたことが誤りであったと認める場合には、その職権により、登録前のいかなる段階においても当該出願に対する登録査定を取り消すことができる。このような場合、出願人には、新たな拒絶理由に対してヒアリングおよび不服申立の機会が与えられる。
■ソース
・マレーシア商標法・マレーシア商標規則
・マレーシア商標法および実務マニュアル第2版
■本文書の作成者
SKRINE Chang Yen May■協力
日本技術貿易株式会社 商標部■本文書の作成時期
2015.01.26