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台湾における特許の「権利消尽」の訴訟実務

2014年07月11日

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■概要
本件は、製造業者が特許権者から実施許諾された製造設備を購入した後、その製造設備を「使用」して製品を製造することについて権利消尽原則を主張できるか否かが争われた事案である。2013年9月16日付民国101年度民專訴字第73号判決は、知的財産法院によりはじめてその見解を示し、権利消尽原則を適用するかについては、特許権者が二重利益を獲得していないか及び商品取引の流通を妨げていないかをもとに判断すべきであるとした。
■詳細及び留意点

【詳細】

 台湾の特許訴訟実務において、権利消尽原則の主張の可否の判断についての確固とした基準はなかった。そのような状況において、知的財産法院は、2013年9月16日付民国101年度民專訴字第73号判決で初めてその見解を示し、製造業者が特許権者から合法的使用許諾を受けた製造設備を購入した後、当該製造設備を「使用」して製造された商品が権利消尽を主張できるかについては、規範の目的及び具体的案件の状況を総合に考慮して、権利消尽原則の本質からその適用・効力を探求すべきであると明確に示した。そして、本判決は、権利消尽原則を適用するかについて、特許権者が二重利益を獲得していないか及び商品取引の流通を妨げていないかをもとに判断すべきであるとした。

 

(1) 事案の概要

 本件は、発明「mビット情報語の系列を変調信号に変換する方法、記録担体、符号化装置、復号装置、記録装置、書き込み装置、信号を製造する方法及び記録担体」の特許権者である原告が、被告が製造したDVD-R光ディスクが当該特許権を侵害していると主張して訴訟を提起した事案である。被告側は、当該特許について原告から許諾を受けたA社から光学ドライブを購入してDVD-R光ディスクを「mビット情報語の系列を変調信号に変換」したものであり、旧専利法第57条第1項第6号の規定により、原告がA社の製造、販売する光学ドライブが市場に出回ることを許可した以上、原告が有する当該特許権の効力は、A社により販売された光学ドライブには及ばず、当該光学ドライブを使用してデータを光ディスクに書き込む行為にも及ばない、と主張していた。

 

(2) 知的財産法院の権利消尽原則の適用に関する見解

 改正前専利法第57条第1項第6号(注:現行法第59条第1項第6号)は「特許権の効力は、特許権者が製造し、又はその同意を得た上で製造された特許物が販売された後、当該物品を使用する又は再販売する行為には及ばない。ここでいう製造、販売行為は台湾国内に限られない。」と規定している。…その立法理由は「特許権者が本国で特許権を取得した後に市場を独占することを防ぐために、専有販売権の保護範囲に対して合理的な制限をし、発明者が他者に賃貸または譲渡した特許権の実施により製造された商品を海外から輸入することを許可することによって、本国の経済的利益を保護する。」というものである。

 上記の立法理由からも分かるように、この規定は、特許権者が有する配布権と再製物所有者の所有権のバランスを取って両者の利益を調和させ、特許権者が特許権の譲渡又は使用許諾による合理的な報酬を得た後、被譲渡者又は被許諾者が当該特許権のある商品を販売することができるようにし、当該商品が経済または文化的価値において、最大限に利用されるという目標に到達させることを意図し、特許権者の二重利得を得ることを避け、商品取引の流通における阻害を取除くために定められた制限規定である。

参考:按修正前專利法第57條第1項第6款規定:發明專利權之效力,不及於專利權人所製造或經其同意製造之專利物品販賣後,使用或再販賣該物品者;上述製造、販賣不以國內為限。…其立法理由為:「為免專利權人在本國取得專利權後,壟斷市場,對於專有販賣權之保護範圍,應作合理限制,准許他人自國外輸入原發明人租與讓與他人實施所產製之物品,藉以維護本國之經濟利益。」。

 上開立法理由雖以國外輸入作為說明,然由其規定意旨可知,是為平衡專利權人所擁有之散布權利與重製物所有人之所有權,調和兩者之利益,使專利權人讓與或授與專利權獲得合理報償後,受讓人或被授權人得以銷售該具有專利權之產品,使其在經濟或文化價值上充分利用,達到物盡其用目標。故為避免專利權人雙重得利,亦為使商品交易流通自由,而作限制規定。

 

(3) 本件へのあてはめ

 知的財産法院は、上記のように述べた上で、本件において特許権者が二重利益を獲得しているか、商品取引の流通を妨げているかについて、以下のように判断して被告の権利消尽の抗弁は採用できないとした。

 

 被告は購入したA社光学ドライブで記録用光ディスクを製造し、年間製造量は少なくとも1億枚に達しており、…2012年の売上高は43億元、2002年から2012年の光学ドライブ購入費用は46,794,703元(2012年は4000台購入、260万元)であるのに、被告は原告に何らの使用許諾料も支払っておらず、光学ドライブの使用許諾料としてA社が原告に支払ったのは、多くとも270,400米ドルであったことから、両者は明らかにバランスが取れていない。また、原告がA社と締結した使用許諾契約名は「記録型光学ドライブ使用許諾契約」であって、その「使用許諾の商品」は光学ドライブであり、光ディスクではない。後者は光学ドライブの製品であり、原告がすでに光学ドライブの使用許諾をしたため、元来の権利が消尽するとの被告の主張は、契約に定められた内容と一致していない。さらに、使用許諾契約…によれば各DVD-R光学ドライブの使用許諾料は5米ドル、DVD-R及びDVD-R光学ドライブの使用許諾料は10米ドル、「DVD-R/-RW光学ドライブの販売時は、領収書の発行又は商品が第三者に送付されたとき」であり、当該使用許諾契約において、原告が、光学ドライブを販売する際の領収書の発行又は第三者に送付したことを使用許諾料徴収の根拠としていたことがわかる。また、当該使用許諾契約…において、被許諾者に秘密保持義務及び適切に特許名を表記することを求めていることから、原告は使用許諾契約を締結するときに、被許諾者に対し、販売された光ディスクの数量を確認して費用を徴収していないことが分かり、当該使用許諾の範囲を光学ドライブのみに限定し、光ディスクは含まれていないと認められる。この他、原告は光学ドライブの一般消費者を個人使用者とし、マニュアルにおいてその使用してはならないと限定しており、これは、被告が…長期に渡ってA社を通じて大量の光学ドライブを購入し、機械により数台の光学ドライブで製造したものを各国に輸出して多額の収入を得る営業方式と異なっており、明らかに原告が締結した使用許諾の本意ではない。原告は光学ディスク1台について多くても10米ドルしか徴収しておらず、被告に光ディスクを製造させ、数十億元の収入を獲得させる意思がないことは極めて明白である。上述の状況によれば、原告が当該特許の使用許諾によって二重利益を得ることはなく、光学ドライブで光ディスクを製造することについても、一般利用者の使用を妨げていない。よって、当該特許の効力は被告が製造した光ディスクに及び、権利を主張できる。

参考:被告係以購買0000000光碟機27,040台,製造空白光碟片,年度總產能至少可達1億片,…以101年度此類銷售金額有43億餘元,而其自91年至101年間全部購買光碟機之成本僅為46,794,703元(於101年購買新光碟機4,000台,金額為260萬元…),被告並未支付原告任何授權權利金,而光碟機之權利金由0000000公司支付予原告,至多為美金270,400元,兩者顯不合比例。又原告與0000000光碟之授權契約,其契約名稱為「寫入型光碟機授權契約」,而其1.22條亦明確記載「授權產品」( Licensed Product) 為光碟機(DVD-R DATA RECORDER)(見本院卷三第197 頁),而非光碟片,後者為光碟機之產品,被告謂原告已授權光碟機,原權利耗盡,與契約所定內容並不相同。再者,依同契約第4.2條約定任一DVD-R光碟授權金額為5美元、兼具DVD-R及DVD-RW光碟機授權金額為10美元,「DVD-R/-RW 光碟機出售之時點為已開發票或將產品送至第三人處」(見本院卷五第138頁),可知原告於授權契約係按以出售光碟機之發票或送至第三人處作為收取授權金數量之依據,又同契約第7條、第8條要求被授權人負有保密義務及適當標記專利名稱等,可見原告於簽訂授權契約時並無針對被授權人就所出售之光碟片數量確認收費,亦可認其授權之意思範圍應僅限定於光碟機,而非光碟片,且原告應僅係就一般消費者購買該光碟機,作個人使用,乃於手冊限定相關電源之使用,此與被告10年間長期透過訴外人0000000公司在臺代理商購買大量光碟機,數部光碟機透過機械手臂同時製造,以外銷各國獲取高額收入之營業使用方式者不同,顯非原告訂立上開授權契約之本意。因之,原告收取1台光碟機最多10美元,其無授權被告製造光碟片使其能獲取數10億元之收入之意思甚明,依上述情形,原告未因系爭專利之授權而獲得雙重利益,對該光碟機製造光碟片亦無妨害其流通予一般使用者之意思,是系爭專利效力對被告製造之光碟片,仍得主張權利。

 

【留意事項】

 台湾に進出する日本企業が製造設備の特許権者である場合、権利許諾の契約の際に、許諾対象が製造設備であること、また、当該設備により製造された製品にも特許権が消尽しないことを明文規定することが望ましい。なお、当該製造設備の販売数を使用受諾料の計算基準にしておくことにより、後日当該設備を使用して製造された製品をめぐって特許権が消尽するか否かの争議の発生を回避し得ると思われる。

 本稿において紹介した判決内容は現時点における知的財産裁判所の見解であり、最高裁判所が特許の権利消尽についてどのような見解を示すか、今後も経過を観察する必要がある。

■ソース
・台湾専利法
・2013年9月16日付民国101年度民專訴字第73号判決(下記URLで検索が可能)
http://jirs.judicial.gov.tw/Index.htm
■本文書の作成者
聖島国際特許法律事務所
■協力
一般財団法人比較法研究センター 不藤真麻
■本文書の作成時期

2014.01.22

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