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中国における特許・実用新案・意匠(中国語「専利」)の無効審判制度概要(中国語「専利無効宣告請求制度」)
2024年10月17日
■概要
何人も、国務院専利行政部門に対して、専利権(日本の特許権・実用新案権・意匠権が含まれるが、本記事では特許権を中心に解説する。)の無効宣告を請求することができる。無効宣告請求の審判手続は、主に(1)無効宣告請求、(2)方式審査、(3)合議審査の手順で進められる。無効宣告または権利維持の決定に対して不服がある場合は、人民法院に訴訟を提起することができる。■詳細及び留意点
無効宣告請求制度(日本の「無効審判制度」に相当する。)(中国専利法(以下「専利法」という。)第45条~第47条、中国専利法実施細則(以下「実施細則」という。)第69条~第76条、中国専利審査指南(以下「審査指南」という。)第4部第3章~第4章)の審判手続は、次の手順で進められる。
(1) 無効宣告請求
何人も、国務院専利行政部門に対して、特許権の無効宣告を請求することができる(専利法第45条)。
無効宣告請求の客体は、すでに授権された特許でなければならないが、存続期間が終了した権利や放棄された権利も対象となる(審査指南第4部第3章3.1)。
専利権の無効の事由は実施細則第69条に定められており、それ以外の事由による請求は認められない。無効宣告請求の事由は、次のとおりである。
特許/実用新案/意匠の定義(専利法第2条)
公序良俗違反(特許/実用新案/意匠)(専利法第5条)
先後願(特許/実用新案/意匠)(専利法第9条)
中国完成発明の秘密保持審査(特許/実用新案)(専利法第19条第1項)
特許、実用新案および意匠の要件(専利法第22条、第23条)
不特許事由(特許/実用新案/意匠)(専利法第25条)
実施可能要件・サポート要件(特許/実用新案)(専利法第26条第3項、第4項)
意匠出願の際の図面要件(専利法第27条第2項)
補正の範囲(特許/実用新案/意匠)(専利法第33条)
誠実信用の原則(特許/実用新案/意匠)(実施細則第11条※1)
独立クレームの要件(特許/実用新案)(実施細則第23条第2項)
分割要件(特許/実用新案/意匠)(実施細則第49条第1項)
※1 2023年の実施細則の改正によって、誠実信用の原則「専利を出願する場合は、誠実、信用の原則に則らなければならない。各種専利出願をする場合は、真の発明の創造活動に基づくものとし、虚偽を弄してはならない。」(実施細則第11条)が追加され、これに違反する場合は無効事由となる(実施細則第69条、審査指南第4部第3章4.1(1))。
無効宣告請求から1か月以内であれば、無効事由の追加と証拠の補充は可能である(実施細則71条、審査指南第4部第3章4.2(1))。この場合、無効宣告請求人は、追加した無効宣告理由を具体的に説明しなければならない。
(2) 方式審査
復審・無効審判部は、無効宣告請求書が規定の書式に合致するかどうかを審査する。合致していない場合は、無効宣告請求人は、復審・無効審判部が指定する期限内(通知書を受け取った日から15日以内)に補正しなければならない(実施細則第70条、審査指南第4部第3章3.8(1))。期限が満了になっても補正されないか、もしくは指定の期限までにこれを補正しているにもかかわらず、2回補正しても同じ欠陥が依然として存在する場合には、無効宣告請求書は提出されなかったものとみなされる(審査指南第4部第3章3.4)。
無効宣告請求書が規定の書式に合致する場合、復審・無効審判部は、無効宣告請求人と特許権者に無効宣告請求受理通知書(中国語「无效宣告请求受理通知书」)を発行し、無効宣告請求書および関連書類の副本を特許権者に転送して、通知書を受け取った日から1か月以内に回答するよう求める(実施細則第72条、審査指南第4部第3章3.8(3))。
(3) 合議審査
副本送達後、特許権者(被請求人)と無効宣告請求人の間で「意見陳述書」(中国語「陈述意见书(陳述意見書)」)と呼ばれる書面のやりとりが行われる。通常、1~2回程度の書面交換が行われる。
合議体は、当事者による請求、または案件の状況により必要に応じ、無効宣告請求に対する口頭審理を決定することができる(実施細則第74条第1項、審査指南第4部第3章4.4.2)。必ずしも、書面審理が終わった後に口頭審理が行われるという流れではない。口頭審理は、オフライン審理、オンライン審理、およびオフラインとオンラインの審理の結合などの方式が含まれる(審査指南第4部第4章2)。書面審理だけで終わるケースは稀であり、ほとんどのケースで口頭審理が実施される。口頭審理は、意見陳述書の提出の有無を問わず、通常、無効宣告請求日から3~4か月後に行われる。
無効宣告請求の審判過程において、特許権者は、特許権の権利請求の範囲に限り補正することができるが、権利範囲を拡大してはならず、かつ補正は無効宣告理由または合議体の指摘した欠陥に対して行わなければならない(実施細則第73条第1項、審査指南第4部第3章第4.6.1)※2。また、明細書と図面の補正は認められない(実施細則第73条第2項)。補正後の権利請求の範囲を基礎として特許権の有効維持が決定されるか、または一部無効の宣告が決定される場合、補正後の権利請求の範囲は、国務院専利行政部門によって公告される(実施細則第73条第1項)※3。
※2 補正内容の制限は、2023年の審査指南の改正により追加された。
※3 補正後の請求の範囲の公告は、2023年の実施細則の改正により追加された。
無効とされた特許権は、初めからなかったものとみなされる(専利法第47条第1項)。ただし、無効宣告の決定については、遡及効は執行済の侵害判決等には原則として及ばない(専利法第47条第2項)。したがって、専利権侵害の賠償金、専利使用料、専利権譲渡料を返還する必要はないが、公平の原則に明らかに違反している場合は、全額または一部を返還しなければならない(専利法第47条第3項)。
無効宣告または権利維持の決定に対して不服がある場合は、通知を受領した日から3か月以内に人民法院に訴訟を提起することができる(専利法第46条第2項)。
■ソース
・中国専利法(2020年改正)(中国語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/regulation/regulation20210601.pdf
(日本語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/regulation/20210601_jp.pdf
・中国専利法実施細則(2023年12月11日改正)
(中国語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/origin/admin20240120_1.pdf
(日本語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/admin/20240120_1.pdf
・中国専利審査指南(2023年改正)
(中国語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/section/20240120_2.pdf
(日本語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/section/20240120_1.pdf
・国務院専利行政部門(専利再審、無効)(国家知識産権局専利局(専利再審、無効))(中国語「国家知识产权局专利复审和无效」)ウェブサイト
https://www.cnipa.gov.cn/col/col2632/index.html
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■本文書の作成者
日本国際知的財産保護協会■協力
北京林達劉知識産権代理事務所■本文書の作成時期
2024.07.30