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中国における特許・実用新案・意匠(中国語「専利」)の拒絶査定不服審判制度概要(中国語「専利復審請求制度」)

2024年09月24日

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■概要
国務院専利行政部門(「国家知識産権局専利局」を指す。)の拒絶査定に不服の場合は、国務院専利行政部門に対して、審判請求をすることができる。審判手続は、主に(1)方式審査、(2)審査部における前置審査、(3)前置審査において拒絶査定を維持しないと判断した場合は原審査部門による再審査、前置審査において拒絶査定を維持すると判断した場合は審判合議体による審理の手順で進められる。出願人は、国務院専利行政部門の不服審判の決定に不服がある場合、人民法院に訴訟を提起することができる。
■詳細及び留意点

図1. 拒絶査定不服審判手続フローチャート

 拒絶査定不服審判請求制度(中国語「专利复审请求制度」、専利法第41条*1)は、次の手順で行われる。
*1:第四次改正専利法2021年6月1日施行

(1) 請求手続
 出願人は、拒絶査定に不服がある場合、拒絶査定通知を受領した日から3か月以内に、国務院専利行政部門に審判請求書を提出して、審判を請求することができる(専利法第41条)。ただし、審判請求の期限に間に合わなかった場合は、審判請求の期限の満了日から起算して2か月以内に国務院専利行政部門に権利の回復を請求することができる(専利法実施細則(以下「細則」という。)第6条第2項)。
 出願人は、審判請求時に専利出願書類を補正することができる(細則第66条)。
 日本の拒絶査定不服審判とは異なり、後日、請求の理由を補充することはできない。

(2) 方式審査
 審判請求書が規定の書式に合致するかどうかを審査する。合致していない場合は、国務院専利行政部門の指定する期限内(15日以内)に補正しなければならない(細則第65条)。この補正は書面のみによる。

(3) 前置審査
 方式審査に合格した審判案件は審査官に転送され、審査官は転送された審判請求書に対して前置審査を行って、前置審査意見を作成する(専利審査指南(以下「審査指南」という。)第2部第8章8)*2。日本と異なり、補正の有無に拘わらず、すべて前置審査の対象となる。また、前置審査においては、出願人(審判請求人)に書類提出や審判官との面談の機会は与えられない。
 前置審査において審査部門が拒絶査定の取消に同意する場合、国務院専利行政部門は合議体による審理を行わずに原審査部門に回して審査させる旨の決定を下す(細則第67条第2項、審査指南第2部第8章8)。審査部門が拒絶査定を維持すると判断した場合は、審判合議体により審理される。

*2 第四次改正専利法に対応する実施細則、審査指南が2024年1月20日に施行された。改正実施細則では、旧実施細則第62条が削除され、前置審査における「原審査部門に戻して審査」という条件が除外された。これにより、前置審査は拒絶査定とした審査官またはその審査官の所属部門以外で行うことが可能となった。これまで、元の審査官が前置審査において拒絶査定を取り消す判断をするケースは極めて少ない状況であったが、この改正により別の審査官による異なった判断がなされることが期待されている。

(4) 合議審理
 3名または5名の合議体を結成して審理を行う(審査指南第4部第1章3)。
 合議体は、審理の結果、審判請求が専利法および関連規則の規定に合致していない、または専利出願に専利法および細則の規定に明らかに違反するその他の状況が存在する(つまり原査定の拒絶決定を維持すべき)と考える場合、審判請求人に審判通知書(審判請求口頭審理通知書を含む)(中国語「复审通知书(復審通知書)」、「复审请求口头审理通知书(復審請求口頭審理通知書)」)を送付し、指定の期間内(通常、1か月以内)に回答するよう求める(細則第67条第1項、審査指南第4部第2章4.3)。この審判通知書が出されずに拒絶査定維持の決定が出されることはない。
 審判請求人は、審判通知書を受領した場合は、指摘された欠陥に対して書面による回答を行う。審判請求口頭審理通知書を受領した場合は、口頭審理に参加するか、または指摘された欠陥に対して書面による回答を行う(審査指南第4部第2章4.3)。ただし、実務においては、口頭審理が行われることはほとんどない。
 審判請求人は、審判通知書に回答する際に、専利出願書類を補正することができる。ただし、補正は、拒絶査定または審判通知書に指摘された欠陥を解消するものに限られる(細則第66条)。
 合議体は、拒絶査定を維持する旨の決定または拒絶査定を取り消して元の審査部門に回して審査させる旨の決定を行う(細則第67条)。
 出願人は、国務院専利行政部門の決定に不服がある場合、決定の通知を受領した日から3か月以内に人民法院に訴訟を提起することができる(専利法第41条)。

■ソース
・中国専利法(2020年改正)
(中国語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/regulation/regulation20210601.pdf
(日本語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/regulation/20210601_jp.pdf
・中国専利法実施細則(2023年12月11日改正)
(中国語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/origin/admin20240120_1.pdf
(日本語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/admin/20240120_1.pdf
・中国専利審査指南(2023年改正)
(中国語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/section/20240120_2.pdf
(日本語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/section/20240120_1.pdf
・国務院専利行政部門(専利再審、無効)(国家知識産権局専利局(専利再審、無効))(中国語「国家知识产权局专利复审和无效」)ウェブサイト
https://www.cnipa.gov.cn/col/col2632/index.html
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■本文書の作成者
日本国際知的財産保護協会
■協力
北京林達劉知識産権代理事務所
■本文書の作成時期

2024.06.11

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