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台湾における知的財産に関する特許庁の審判決定に対する行政不服審査手続の概要
2024年02月01日
■概要
台湾特許庁(中国語「智慧財產局」)が行った出願に対する拒絶査定または無効審判の審決に不服がある場合、訴願法の規定に従って行政不服申立を行う。この訴願による決定を受けた後でなければ、知的財産・商業裁判所(中国語「智慧財產及商業法院」)に拒絶査定または審決の取消を求めることはできない。この知的財産・商業裁判所の判決に不服がある場合は、最高行政裁判所(中国語「最高行政法院」)に提訴することができる。本稿では、訴願法による不服申立について説明する。■詳細及び留意点
出願に対する拒絶査定または無効審判の審決への不服申立手続の流れは、図1のとおりである。
図1:拒絶査定または無効審判の審決への不服申立手続の流れ
(1) 行政不服(中国語名「訴願」)の提起
(ⅰ) 訴願できる者
・出願手続で拒絶査定を受けた出願人
・無効審判で無効審決を受けた被請求人
・無効審判で棄却審決(権利維持審決)を受けた請求人
(ⅱ) 訴願の期間
・行政処分の送達後の翌日または公告期間満了の翌日から30日以内(訴願法第14条第1項)。
・拒絶査定や無効審決が送達された日の翌日から30日以内に、経済部経済法制司の訴願審議委員会*1に行政処分に不服がある旨を意思表示した場合も、30日以内に訴願書を補足することを条件に、法定期間内の訴願とみなされる(訴願法第57条)。
*1:2023年9月26日より、従来の台湾法規委員会および台湾経済部訴願審議委員会は、「台湾経済部経済法制司」に統合された(https://www.moea.gov.tw/Mns/populace/news/News.aspx?kind=1&menu_id=40&news_id=112374)。
(ⅲ) 訴願書
・訴願書には、訴願法第56条第1項に規定された事項(申立人・代理人に関する事項、原処分機関、請求の趣旨、事実及び理由、証拠等)を記載し、また原行政処分の写しおよび証拠(書類の場合は謄本または写し)を添付する。(訴願法第56条を参照)。
・訴願書不備の補正命令への応答期間は20日である(訴願法第62条)。
(ⅳ) 訴願への参加
訴願人と利害関係が一致する者は、訴願の受理機関の許可を得て、訴願人の利益のために当該訴願に参加できる。また、訴願決定が原処分の取消または変更により第三者の利益に影響を及ぼす場合は、訴願受理機関は訴願決定をする前に、当該第三者に対して、訴願手続に参加し、意見を述べるよう通知をしなければならない(訴願法第28条)。
(2) 訴願審議委員会による審議
各機関は、訴願を処理するために、訴願審議委員会を設置する。訴願審議委員会は法律家等の専門家で構成され、訴願を審議する(訴願法第52条第1項、第2項)。書面審査が原則である(訴願法第63条第1項)。
(3) 訴願決定
(ⅰ) 決定の手続
訴願決定には、訴願審議委員会の委員の過半数が出席し、出席した委員の過半数の同意が必要となる(訴願法第53条)。訴願決定は、原則として、訴願書の受領日の翌日から3か月以内に行われる(訴願法第85条)。
(ⅱ) 訴願決定の内容
訴願に理由がない場合は、棄却する決定、訴願に理由がある場合は、原処分を取り消して処分内容を変更する決定、または、処分を取り消して台湾特許庁に差し戻す決定(訴願法第81条第1項)がなされる。
(ⅲ) 訴願の取下げ
訴願の取下げは、訴願提出後決定書が送達されるまで可能。取り下げた場合、同一の不服申立ができないことに注意が必要である(訴願法第60条)。
(4) 留意事項
・拒絶査定や無効審判の審決に対して不服がある場合、まず訴願法に基づく不服申立手続を行わなければならず、訴願を経ずに、知的財産・商業裁判所に拒絶査定や無効審判の審決の取消を求めることはできない。
・条文上、訴願審議委員会の求めに応じ、意見陳述や口頭弁論(訴願第65条、第66条)、調査・現場検証・鑑定などを行うことができるとされているが(訴願法第67条-第74条)、運用としては書面審査のみであるため、それを想定して準備を行うことが望ましい。
・2023年に行政院で可決され、国会に提出された専利法改正案では、出願の拒絶査定または無効審判の審決への不服申立手続について、大幅な改正が含まれている。この改正案が成立し、施行された後は、本稿で紹介した訴願手続は、出願の拒絶査定または無効審判の審決への不服申立手続には、適用されなくなる見込みである。したがって、改正の動向に注意する必要がある。
■ソース
・行政院法務部全国法規資料庫/訴願法https://law.moj.gov.tw/LawClass/LawAll.aspx?PCode=A0030020
・専利審査基準第五篇第一章専利無効審判及び職権による審査
https://topic.tipo.gov.tw/patents-tw/cp-682-870058-c26a6-101.html
・台湾経済部 2023年9月26日 組織改革に関する記事
https://www.moea.gov.tw/Mns/populace/news/News.aspx?kind=1&menu_id=40&news_id=112374
■本文書の作成者
理律法律事務所(Lee and Li, Attorneys-at-Law)■協力
日本国際知的財産保護協会■本文書の作成時期
2023.10.13