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中国における商標不服審判制度(中国語「申請復審制度」)の概要(その1:拒絶査定不服審判)
2023年10月31日
■概要
商標審査部(中国語「国家知識産権局商標局審査処」)による拒絶査定、登録不許可決定、登録商標無効宣告決定、不使用取消決定に不服がある場合は、商標審判部(中国語「国家知識産権局商標局評審処」)に不服審判を請求することができる。拒絶査定不服審判手続は、(1)請求人による審判請求、(2)方式審査、(3)審判合議体による審理、(4)審決という手順で進められる。請求人は、商標審判部が下した審決に不服がある場合、人民裁判所(中国語「人民法院」)に行政訴訟を提起することができる。■詳細及び留意点
1.不服審判請求の種類
商標審査部による拒絶査定通知、登録不許可決定書、登録商標無効宣告決定、不使用取消決定に不服がある場合は、商標審判部に対して不服審判請求する。
不服審判請求には次の4種類がある。
(1) 商標審査部が下した商標登録出願の拒絶査定に対する、中国商標法(以下「商標法」という。)第34条に基づく不服審判請求事件
(2) 商標審査部が下した登録不許可決定に対する、商標法第35条に基づく不服審判請求事件
(3) 商標審査部が下した登録商標無効宣告決定に対する、商標法第44条に基づく不服審判請求事件
(4) 商標審査部が下した登録商標の取消決定または非取消決定に対する、商標法第54条に基づく不服審判事件
2.拒絶査定不服審判の審理手続の流れ
拒絶査定不服審判以外の審理手続きの流れについては、別の記事である「中国における商標不服審判制度(中国語「申請復審制度」)の概要(その2:登録不許可不服審判)」、「中国における商標不服審判制度(中国語「申請復審制度」)の概要(その3:登録商標無効宣告不服審判)」、「中国における商標不服審判制度(中国語「申請復審制度」)の概要(その4:不使用取消不服審判)」をご参照ください。
中国商標拒絶査定不服審判フロー
商標審判部における拒絶査定不服審判手続は、(1) 請求人による審判請求、(2) 方式審査、(3) 審判合議体による審理、(4) 審決という手順で進められる。
(1) 請求人による不服審判請求および補足
拒絶査定について商標登録出願人に不服があるときは、通知を受領した日から15日以内に、商標審判部に不服審判を請求することができる(商標法第34条)。
不服審判請求をする場合、商標審判部に書面の請求書類1部を提出する。また、請求書類を提出した後、証拠を補足する必要がある場合、請求書において声明し、かつ請求日から3か月以内に補足証拠を提出しなければならない。
上述の法定補足期間は延長不可である。実務では、法定期間を過ぎても、引き続き補足証拠を提出できるが、特別な状況でなければ、審判官の参考資料としてのみ扱われる(商標審判規則(以下「審判規則」という。)第23条)。
(2) 方式審査
商標審判部は、審判請求書を受領した後、方式審査の要件を具備するか否か、つまり、請求書と証拠が所定の様式で記載されているか否かなどを審理する。要件を具備するときは、その請求を受理し、請求人に受理通知書を送付する。要件を具備しないときは、請求人に不受理通知書を送付し、かつその理由を説明する。補正が必要な場合、補正通知書を送付し、それを受領した日から30日以内に補正するよう請求人に通知する(商標法実施条例(以下「実施条例」という)第57条、審判規則第17条)。
(3) 審判合議体による審理
審理は、原則として合議制を採用する。通常、3名以上の奇数人数の商標審判官により構成される合議体を結成して審理を行う。ただし、審理事実が明らかで、事情や状況が簡潔な事件について、商標審判官1名の単独審判を行うことができる(審判規則第6条、第27条)。
商標審判事件の審理は、原則として書面審理にて行う。ただし、実施条例第60条の規定により口頭審理を行うと決定された場合は、この限りでない(審判規則第4条)。なお、口頭審理の請求は、必ずしも許可されるとは限らない。実施条例第60条の規定によれば、当事者は口頭審理を要求することができる。この場合、口頭審理を行う必要性についての具体的理由を提出しなければならない。商標審判部は、当事者が提出した理由が十分であるか否かを考慮し、口頭審理を行うか否かを判断することになる。通常は、口頭審理を行わず、書面審理で進められる比率が圧倒的に大きい。
以下のいずれかに該当する場合、審判を終了し、結審する(審判規則第32条)。
(i) 請求人が死亡した、または終止した後に相続人がいない、または相続人が審判権を放棄した場合。
(ii) 請求人が審判請求を取り下げた場合。
(iii) 当事者が自己により又は調停を経て合意して結審できる場合。
(iv) 審判を終了すべきその他の場合。
(4) 審決
商標審判部は、請求人が陳述した理由と提出した証拠を審理して審決を下し、書面の審決を請求人に送付する。請求人は、審決に不服がある場合、審決を受領した日から30日以内に、人民裁判所に対して行政訴訟を提起することができる(商標法第34条)。
3.証拠提出の留意点
請求人は、請求の事実に対して挙証責任を有し、請求時に、相応する証拠資料を提出しなければならない。証拠には、書証、物証、視聴資料などが含まれる。
証拠提出の際には、次の点に留意する必要がある。
(1) 審判請求人が商標審判部に書証を提出するときは、原本を提出しなければならない(審判規則第40条)。全ての証拠について原本を提出することは困難であるが、実務上、重要な証拠は、できるだけ原本またはその公証本を提出すべきである。
(2) 中国以外の領域で形成された証拠は、その証拠が形成された国で公証・認証手続きを行わなければならない(審判規則第41条)。
(3) 外国語証拠を提出するときは、その中国語の翻訳文を添付しなければならない(審判規則第42条)。
■ソース
・中国商標法(日本語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/regulation/20191101law_2_jp.pdf ・中国商標法実施条例(日本語)
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/admin/20140501_rev.pdf ・中国商標審判規則(日本語)
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/section/20140601_rev.pdf
■本文書の作成者
北京林達劉知識産権代理事務所■協力
日本国際知的財産保護協会■本文書の作成時期
2023.08.08