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(台湾)著作権による商標の保護について

2013年10月25日

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■概要
商標は商品又は役務の出所を示す図形、文字あるいは記号であり、係争商標図形の設計そのものに独創性が備わっている場合は、商標法による保護に加えて、著作権法によっても保護される可能性がある。
■詳細及び留意点

【詳細】

(1)商標の定義

 商標は、識別性を有するすべての標識を指し、文字、図形、記号、色彩、立体形状、動き、ホログラム、音等、又はそれらの結合により構成することができる(商標法第18条第1項)。識別性とは、商品又は役務の関連消費者が商品又は役務の出所を示すものであると認識するに足り、他人の商品又は役務と区別できるものを指す(商標法第18条第2項)。

 つまり、一般消費者が商品又は役務の出所を示すものであると認識するに足り、他人の商品等と区別できる全ての図形、文字あるいは記号等を、商標として出願し登録された場合、商標法の保護を受けることができる。

 

(2)商標の著作権法による保護

(i)著作権の定義

 著作権とは、著作財産権及び著作者人格権を指し、著作物とは、文学、科学、芸術又はその他の学術分野の創作を指す(著作権法第3条)。著作物には、言語の著作物、音楽の著作物、演劇、舞踏の著作物、美術の著作物、撮影の著作物、図形の著作物、視聴に供する著作物、録音の著作物、建築の著作物、コンピュータプログラムが含まれる(著作権法第5条)。言語文字、パフォーマンス、芸術の彫像、詞曲の楽譜、音あるいは映像等の内容は、いずれも著作権の保護対象になり得る。

 

(ii)著作権の保護対象となる著作物の要件

 今日の知的財産裁判所の見解によると、著作権の保護対象となる著作物は、創作者の独創性(中国語「原創性」)を有する創作でなければならない。独創性とは、著作物が著作者によって、他人の著作物に接触、または剽窃することなく、著作者の思想や感情を表現するための最低限のオリジナリティーを有していることを指す(智慧財産法院2011年12月13日付民国100年度民著訴字第22号民事判決)。詳述すると、独創性は、「原始的」「創作的」という二つの要素を含み、「原始的」とは、他人の著作物を剽窃することなく、はじめから独立して著作物を完成させることを指す。そして、「創作的」とは、作品に少なくともオリジナリティーがあり、且つ個性を表現していることを指し、古今未曾有というわけではなく、社会通念によって常識的に当該作品に従来作品と区別できる相違部分があり、著作者の個性を表すことができていれば、これに該当する(智慧財産法院2011年10月25日付民国101年度民著上字第2号民事判決)。

 

(iii)商標は著作権保護対象になりえる

 法令上では、著作権が商標権と併存してはならないという制限はないため、一定の独創性が備わっている図形あるいは符号が識別性を有する場合、著作権法の保護対象となる可能性がある。例えば、過去には、台湾で商標登録していない外国企業が、当該著作物(標章)を自社の商標として登録した台湾企業に対し、当該外国企業の著作権侵害に該当すると主張し、著作権によって権利を守ったケースが見られる(智慧財産法院2011年10月25日付民国101年度民著上字第2号民事判決)。

 

(3)商標権と著作権保護対象の異同

 著作権法と商標法の適用又は権利主張の異同について、知的財産裁判所は、「商標法と著作権法の保護対象についての違いは、著作権法により保護されるのは思想の表現方法であるいうことである。当該著作物は独創性が備わっている限り、他人の創作と重複又は類似しても、やはり著作権法の保護範囲に含まれる。一方、商標法により保護されるのは、市場の公正競争秩序と商標権と消費者の利益である(商標法第1条)。台湾商標制度は先願主義のため、後願商標の創作者は、たとえ他人の商標を剽窃していない場合でも(即ち、著作権法の概念おける、独創性が備わっている創作に該当する)、当該創作商標が先願商標と近似し、または関連公衆に混同誤認を生じさせるおそれがあるときは、後願商標の商標権は付与されるべきではない」と解している(智慧財産法院2011年10月25日付民国101年度民著上字第2号民事判決。台湾高等法院2007年3月7日付民国95年度智上更(一)字第3号民事判決でも同様の見解がみられる)。

 このことからもわかるように、商標権と著作権の行使にあたって、少なくとも以下の相違点がある。

 

(i)保護要件について

 商標権の保護対象となるには、識別性が備わっていること等が要件であり、著作権の保護対象となるには、独創性が備わっていることが前提となる。

 

(ii)権利の取得について

 台湾の商標制度は先願主義であるため、登録して始めて商標権を主張できる。

 一方、著作権法では、著作者は創作完成時に著作権を享有することができる(著作権法第10条)。

 

(iii)権利の存続について

 商標については、商標が登録公告された当日から商標権を取得でき、その存続期間は10年である。ただし更新申請をすることができ(一回で10年更新)(商標法第33条)、何度でも更新可能である。

一方、著作権の存続期間は、著作者の死亡後も永久に存続する著作者人格権を除き、原則として、著作者の存命期間及び死後50年である(著作権法第30条)。

 以上の通り、著作財産権には期限の限定があるが、商標は更新申請すれば永久的に存続させることができる。

 

(iv)権利の内容について

 商標権者は、他人が同一又は類似の商品又は役務に登録商標と同一又は近似の商標を使用し、関連消費者に混同誤認を生じさせるおそれのある行為を排除することができる(商標法第68条)。なお、「近似」とは、二つの商標が消費者に与える印象(例えば外観、観念若しくは読み方において)に似ているところがあり、関連消費者が購買時に二つの商品/役務が同一の出所若しくは二者間に関連性があると誤認するおそれがあることを指す。

 一方、著作権法の規定では、著作権者は、複製権、翻案権、口述権、放送権、上映権、上演権、送信権、展示権、賃貸権などの著作財産権を専有する(著作権法第22条~第29条)。

 商標権若しくは著作権が他人に侵害された場合、権利者は排除又は損害賠償を請求することができる(商標法第69条、著作権法第84条)。

 

(v)権利侵害の判断

 商標権者の同意を得ずに、同一又は類似の商品又は役務に登録商標と同一の商標、あるいは同一ではないが近似した商標を使用し、消費者に混同誤認を生じさせるおそれがある場合、商標権の権利侵害に該当する(商標法第68条)。混同誤認を生じさせるおそれがあるか否かについては、下記事由も含めて判断しなくてはならない。

(a)商標の識別性の強弱

(b)商標が近似しているか、又は近似の程度

(c)商品/役務が類似しているか、又はその類似度

(d)先願者の多角経営の状況

(e)実際に混同誤認を生じた例

(f)関連消費者が各商標をどの程度よく知っているか

(g)係争商標の出願者は善意か

(h)その他混同誤認を生じさせる原因

 一方、著作権者は、他人がその著作権を侵害していると主張するとき、当該他人がかつてその著作物に接触したことがあり、両者の著作物が実質的に近似し、且つフェアユースでない形で利用されているという要件に該当しなければならない。このため、実質的に近似していても、それらが他人に依拠せずに完成された著作物であれば、著作権の保護を受けることができるため、権利侵害には該当しない。しかし、著作物が他人の商標と近似している場合は、独立して完成された商標あるいは独創性が備わっている商標如何にかかわらず、他人の商標専用権を侵害するおそれがある。

 

(4)著作権により商標権を保護するメリット

 商標は、登録手続き又は登録後に使用することで、商標権を存続し、商標権による保護を主張することができる。これに対して、著作権は原則として、創作された時点で、登録の手続きを経ずに保護を受けることができるため、手続き上安易である。

 さらに、著作権の権利侵害の主張時には、商標法の「同一又は類似の商品又は役務に登録商標と同一又は近似の商標を使用する」という制限にとらわれず、実質的に近似し、又、その使用行為がフェアユースでなければ、著作権侵害を主張できる。

 その他、損害賠償の計算につき、商標権者は、損害の金額と計算の方法について立証しなければならないが、著作権法では特別規定が定められ、損害を証明し難い場合は、裁判所に1万台湾ドル以上100万台湾ドル以下の賠償額を酌量し決定する旨、申し立てることができる。なお、故意による権利侵害を証明できる場合、酌量される最高金額は500万台湾ドルである(著作権法第88条)。

 

【留意事項】

 登録により公的な登記資料に掲載され、直接検索することで権利を確認できる商標権と異なり、著作権を有し、それにより権利を主張しようとする者は、著作権の存在を立証しなければならない。著作権の証明は、創作者は、創作過程で発生した原始文書あるいはファイル、職務著作物の場合は、創作過程の原始文書あるいはファイルの他、雇用契約中の職務創作の権利帰属に関する規定等権利帰属を証明する文書も提出しなければならない。著作権を他人に譲渡する場合は、譲渡人は創作過程における原始文書あるいはファイルを提出し、譲受人は、譲渡契約を提出して権利の出所を証明しなければならない。

■ソース
・智慧財産法院2011年10月25日付民国101年度民著上字第2号民事判決http://jirs.judicial.gov.tw/FJUD/PrintFJUD03_0.aspx?jrecno=101%2c%e6%b0%91%e8%91%97%e4%b8%8a%2c2%2c20121025%2c1&v_court=IPC+%e6%99%ba%e6%85%a7%e8%b2%a1%e7%94%a2%e6%b3%95%e9%99%a2&v_sys=V&jyear=101&jcase=%e6%b0%91%e8%91%97%e4%b8%8a&jno=2&jdate=1011025&jcheck=1
・智慧財産法院2011年12月13日付民国100年度民著訴字第22号民事判決
http://jirs.judicial.gov.tw/FJUD/PrintFJUD03_0.aspx?jrecno=100%2c%e6%b0%91%e8%91%97%e8%a8%b4%2c22%2c20111213%2c1&v_court=IPC+%e6%99%ba%e6%85%a7%e8%b2%a1%e7%94%a2%e6%b3%95%e9%99%a2&v_sys=V&jyear=100&jcase=%e6%b0%91%e8%91%97%e8%a8%b4&jno=22&jdate=1001213&jcheck=1 ・台湾高等法院2007年3月7日付民国95年度智上更(一)字第3号民事判決
http://jirs.judicial.gov.tw/FJUD/PrintFJUD03_0.aspx?jrecno=95%2c%e6%99%ba%e4%b8%8a%e6%9b%b4(%e4%b8%80)%2c3%2c20070307%2c2&v_court=TPH+%e8%87%ba%e7%81%a3%e9%ab%98%e7%ad%89%e6%b3%95%e9%99%a2&v_sys=V&jyear=95&jcase=%e6%99%ba%e4%b8%8a%e6%9b%b4(%e4%b8%80)&jno=3&jdate=960307&jcheck=2
■本文書の作成者
聖島国際特許法律事務所
■協力
一般財団法人比較法研究センター 木下孝彦
■本文書の作成時期
2013.1.18
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