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(台湾)請求項に「約」との文字が記載された場合の請求項の明確性について
2013年10月29日
■概要
数値限定条件がある請求項の記載は、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が、明細書や図面に基づいてその範囲を理解でき、明確でないことにならない場合は、請求項に「約」との文字を用いることができる。■詳細及び留意点
【詳細】
上訴人は、請求項1に「約」との文字が記載されているので、特許請求の範囲が明確ではないと主張した。
しかしながら、判決では、特許請求の範囲の用語の記載は明確ではないが、当該用語が明細書に明確に記載されている場合には、当該用語の解釈には明細書及び図面を参酌すべきとし、当該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が明細書を基礎としてその範囲を理解でき、明確でないことにならない場合には、請求項に「約」との文字を用いて表現することができる旨判示した。
参考(智慧財産法院民事判決の判決理由より抜粋):
上訴人X雖主張申請專利範圍第1項之「約值」若擴張「2Theta(θ)值」為「+/-0.1degree」,將導致申請專利範圍不明確云云。惟查,在科學實驗上,因測量儀器、樣品之取樣及準備程序並不完全等同,所以在測定數值上允許出現合理範圍之誤差或精確度上之差異,此乃該項技術領域具有通常知識者皆可接受之事實。另依83年版專利審查基準第1-3-7頁(二)2可知,申請專利範圍之記載雖不明確,但在發明說明中有明確記載者,於解釋該用語或內容時,應參酌發明說明之記載內容,如有圖式者,應一併參酌該圖式。若此類用語在特定技術領域中具有明確的涵義,或該發明所屬技術領域中具有通常知識者以發明說明為基礎能瞭解其範圍,而不會導致申請專利範圍不明確者,則申請專利範圍亦得以此類用語表現。是以,X所為系爭專利申請專利範圍含有「約」字,已違反系爭專利核准審定時專利法第26條第3 項之規定之抗辯,即不足採。
Y主張依據2006年版美國藥典±0.1度,作為解釋申請專利範圍中以「約」字定義各d 值範圍之基礎,就此X辯稱此係Y於系爭專利申請日後始提出,不足以作為系爭專利申請專利範圍解釋之依據云云。惟查,依據1995年出版之美國藥典第1844頁右欄倒數第5至9 行之2θ的範圍較2006年版的美國藥典更寬鬆,其內容為「樣品與參考物質的一致性應在繞射儀之繞射角(2θ值)的校正精確度內(2θ值應在±0.1 度或±0.2 度內具再現性),樣品與參考值間之相對強度的變異可高達20%」等語。承上可知,Y依據2006年版美國藥典±0.1 度作為解釋申請專利範圍中以「約」字定義各d值範圍之基礎,並無不當。是以,X此部分之抗辯,並非足採。
(日本語訳「上訴人Xは、請求項1の「約値」により「2Theta(θ)値」が「+/-0.1degree」に拡張されることになり、特許請求の範囲が明確でないと主張している。しかしながら、調べにより、科学実験では、測量計器、サンプルのサンプリング及び準備過程が必ずしも同じでないため、測定数値上で合理的な範囲の誤差又は精度上の差異が許容されており、これは、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、誰にでも受け入れられる事実である。また、1994年版の専利審査基準第1-3-7頁(二)2から明らかなように、特許請求の範囲の用語の記載は明確でないが、当該用語が明細書に明確に記載されている場合、該用語又は内容の解釈の際には、明細書の記載内容を参酌すべきであり、図面があった場合には、併せて該図面も参酌すべきである。このような用語が特定の技術分野において明確な意味合いを有する場合、又は該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が明細書に基づいてその範囲を理解でき、特許請求の範囲が明確でないことにならない場合には、特許請求の範囲はこのような用語で表現することができる。よって、Xによる、係争特許請求の範囲が「約」という文字を含むことで、係争特許の特許査定時の専利法第26条第3項の規定に違反しているとの抗弁は採用できない。
Yは、2006年版米国薬局方によれば、±0.1度に基づいて、特許請求の範囲における「約」による各d値の範囲の定義を解釈すると主張しているが、Xは、これはYが係争特許出願日の後に提出したものであり、係争特許の請求の範囲の解釈の証拠にはならないと主張している。しかしながら、調べによると、1995年出版の米国薬局方の第1844頁右欄下から第5行から第9行までの2θの範囲が2006年版の米国薬局方より広く、その内容は「サンプルと基準物質との一致性が自動回折計の回折角(2θ値)の校正精度内に入るべきであり(2θ値が±0.1度又は±0.2度内において再現性を有する)、サンプルと基準値との間の相対強度の偏差が20%にも達する可能性がある」となっている。以上から明らかなように、Yが、2006年版米国薬局方によれば、±0.1度に基づいて、特許請求の範囲における「約」との記載による各d値範囲の定義を解釈するとの主張は不当ではない。よって、これについてのXの抗弁は採用できない。」)
【留意事項】
請求項が不明確とならないように、一般的に請求項には「約」との文字を用いるべきではない。しかしながら、特に、科学実験において避けられない誤差値を考量する必要があり、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が、「約」の意味合いを理解できる場合は、請求項に「約」との文字を記載することができる。ただし、請求項に「約」との文字を記載する場合、拒絶理由や無効理由に有効な反論ができない場合は不明確とみなされる可能性があるので、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が理解できる内容であるのか、十分に検討した上で記載すべきである。
■ソース
・智慧財産法院民事判決98年度民専上字第57号■本文書の作成者
知崇国際特許事務所 弁理士 松本征二■協力
萬國法律事務所 鍾文岳一般社団法人 日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期
2013.01.28