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(台湾)2つの引用文献の技術分野同一性について争われた事例

2013年10月08日

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■概要
引用文献(以下、「引証文献」又は「引証」という)を組合せる動機付けが記載されているか否かの判断において、主に、各引証文献の技術分野が同じか類似であるかを考慮して、係争特許の属する分野における通常の知識を有する者が、これらの引証文献を参酌し、引証文献を組合せる動機付けを有するか否かを判断すべきである。
■詳細及び留意点

【詳細】

 原告は、引証二には、フッ素重合体をフッ素化合物に分散させる界面活性剤が開示されており、該界面活性剤は医療関連設備の製造工程における潤滑剤に応用できることは開示されているが、金属線材の直径縮小及び線材送りに使用可能であることは開示されていないため、引証二と引証一とを組合せる動機を有しないと主張した。

 しかしながら、智慧財産法院は、引証二と係争特許の請求項1の技術内容は、いずれもポリテトラフルオロエチレン分散液に係わり、潤滑剤の技術分野に応用されていることから、引証二と引証一とを組合せる動機付けがあると判示して、原告の主張を採用しなかった。

 

参考(智慧財産法院民事判決の判決理由より抜粋):

 

原告雖主張引證二揭示内容係一種能讓氟系聚合物分散於氟化物一體中的界面活性劑,其應用的範圍在於醫療硬體設備製造過程中的潤滑劑,説明書並未指出其可使用於金屬線料伸線及送給之用,故引證二與係争専利実屬不同領域,所屬技術領域中具有通常知識者並不會參考引證二,更無動機將引證二與引證一組合,引證一與引證二的組合並非顯而易知等語。惟査引證二所揭示之氟系聚合物分散液包含四個主要成分:一全氟溶劑、一含有水及極性有機溶劑之極性溶劑、一潤滑之氟系聚合物與一合適之表面活性劑;由引證二説明書第1 欄第21至24行之中譯内容「聚四氟乙烯是氟系聚合物中廣泛被使用者,譬如可用作為醫療硬體設備製造過程之乾性潤滑劑」,經與係争専利申請専利範圍第1 項所請潤滑劑比對,可知引證二與係争専利第1 項之技術内容皆是與聚四氟乙烯分散液有關,而運用在潤滑劑的技術領域,並無原告所稱引證二與係争専利分屬不同領域之情事,合先敘明。

 

(日本語訳「原告は、引証二には、フッ素重合体をフッ素化合物に分散させる界面活性剤が開示され、この界面活性剤が医療関連設備の製造工程における潤滑剤に応用できることは開示されているが、金属線材の直径縮小および線材送りに使用可能であることは記載及び示唆する記載もないため、引証二と係争特許は異なる分野に属し、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が引証二を参考にし、引証二と引証一とを組合せる動機を有しないため、引証一と引証二との組合せが自明でないと主張した。しかしながら、調べにより、引証二に開示されたフッ素重合体分散液は四個の主要成分を含み、すなわちパーフルオロ溶剤、水と極性有機溶剤とを含む極性溶剤および潤滑のフッ素重合体と適当な表面活性剤を含み、引証二の明細書第1欄第21行から第24行までの中訳内容「ポリテトラフルオロエチレンはフッ素重合体のうち広く使用されるものであり、例えば、医療関連設備の製造工程の乾性潤滑剤として用いられる」及び、係争特許の請求項1の潤滑剤との対比から明らかなように、引証二と係争特許の請求項1の技術内容は、いずれもポリテトラフルオロエチレン分散液に係わり、潤滑剤の技術分野に応用されており、原告の引証二と係争特許が異なる分野に属するとの主張は採用できない。」)

 

【留意事項】

 引証文献の組合せを否定する場合は、単に技術分野が異なる点を主張するのではなく、各引証文献が開示している実質的な技術内容を把握した上で、引証文献を組合せる動機付けの有無を検討すべきである。

■ソース
・智慧財産法院民事判決98年度民専訴字第151号
■本文書の作成者
知崇国際特許事務所 弁理士 松本征二
■協力
萬國法律事務所 鍾文岳
一般社団法人 日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期

2013.01.28

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