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(台湾)数値限定による選択発明が進歩性を有するか否かは、より顕著な効果を奏するか否かにより判断する旨が示された事例

2013年08月16日

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■概要
係争特許第I313310号の請求項11に係る発明は、従来技術と対比すると、相違点は噴射空気通路拡幅両側が張り出した長さを数値限定している点のみであることから、請求項11に係る発明は、数値限定による選択発明である。判決では、数値限定による選択発明が進歩性を有するか否かは、該数値限定をすることで先行技術と比較してより顕著な同一性質の効果を奏するか否かにより判断すると判示し、請求項11に記載された「5%~22%」との数値には臨界的意義がないことから、請求項11に係る発明は進歩性を有しないとした。
■詳細及び留意点

【詳細】

 係争特許第I313310号の明細書において、原告は請求項11に係る発明の構造自体は従来技術であると自認していることから、数値限定に臨界的意義があるか否かが争われた。智慧財産法院は、係争特許第I313310号の明細書から、空気撚り加工室の両側が糸通路側壁から張り出した長さが糸通路の幅の18.75%、25%、31%及び37.5%であり、18.75%の場合に最も良い効果が得られ、最も良い効果が得られた18.75%との数値は、請求項11に記載された22%から差があるため、係争特許第I313310号の明細書から得られた実験結果が22%の場合に顕著な効果を奏することを証明していない。したがって、係争特許第I313310号の請求項11に係る発明の、「空気撚り加工室の両側が糸通路側壁から張り出した長さが糸通路の幅の5%~22%である」との技術的特徴は、従来技術より進歩性を有するとは言えないとして、原告の主張を却下した。

係争特許

係争特許


従来技術

従来技術

参考(智慧財産法院民事判決の判決理由より抜粋):

 

系爭第I313310 號專利申請專利範圍第11項為數值限定之選擇發明:查系爭第I313310 號專利第11項為「一種製造多結紗用的纏結噴嘴,其結具有高度規則性,該纏結噴嘴具有一條貫行的紗處理通道及一條吹噴空氣供應通道,其中該吹噴空氣供應通道朝向該紗處理通道的縱中央軸,其特徵在:在吹噴空氣供應通道的開口區域在該紗處理通道中形成一吹噴空氣通道變寬部以形成一空氣加捻室供二股反向之位置固定的加捻流之用,其中該吹噴空氣通道變寬兩側突伸出的長度小於紗通道寬度的22%,但大於其5%,或當紗通道寬度達3mm 時,兩側突伸超出紗通道最多0.5mm 。」(詳板院卷第129-130 頁)。又原告於系爭第I313310 號專利說明書亦自承習知技術中早已存在有該空氣加捻室結構(參發明專利說明書第13a~13d 圖;第14b~14c 圖參照,附於板院卷第147-148 頁)。則系爭第I313310 號專利申請專利範圍第11 項 (其實施例可參發明專利說明書第14a 圖)與習知技術相較,差異僅在於對於吹噴空氣通道變寬兩側突伸長度所加之限制,至於纏結噴嘴具有空氣加捻室及吹噴空氣具有變寬部之結構,則已為習知技術所揭露。是系爭第I313310 號專利申請專利範圍第11項僅係對於吹噴空氣通道變寬兩側突伸長度之數值所為限定之發明,為數值限定之選擇發明,自應以該數值限定是否比先前技術產生更為顯著之同一性質之功效,作為有無進步性之判斷標準。

系爭第I313310 號專利請求項11所界定之「5%~22% 」數值並無臨界上之意義,亦未較習知技術更有進步性:查系爭第I313310 號專利說明書第20頁末一行至第21頁說明:「第16 圖a及16圖顯示比較實驗的結果。…。全部使用不具加捻室的噴嘴或具有圓形加捻室的噴嘴( 球形帽寬度K 為2.2 、2.4 、2.6 、2. 8mm)。該室設計成球形帽形。我們可明顯看出,用本發明的球形帽寬度K=2.2mm 時利用本發明的空氣加捻室達成最佳結果。在所有試驗中,紗通道寬度1.6mm ,紗通道深度1.0mm ,空氣吹入孔1. 1mm,如果另外將彈性紗一齊吹入噴嘴並與上述長紗組合,也可見到本發明的優點。」。可見系爭第I313310 號專利之說明書係以紗通道為1.6m m ,而加捻室之寬度分別為2.2mm 、2.4mm 、2.6 mm及2.8mm 進行實驗,實驗結果係以加捻室寬度為2.2mm 時效果最佳。因此系爭第I313310 號專利係以空氣加捻室突伸的量分別為0.3 、0.4 、0.5 及0.6mm 「(加捻室寬度-1.6)/22 」進行實驗,分別為紗通道寬度之18.75%、25% 、31% 及37.5% ,而以18.75%的結果最佳。而該18.75%為最佳之結果與22 % 尚有距離,因此,由系爭第I313310 號專利說明書所得之實驗結果並無法證明其於22% 時具有顯著之功效,故系爭第I313310 號專利請求項11對界定空氣加捻室兩側突伸出紗通道側壁的長度界於紗通道寬度之5%~22% 之技術特徵尚難稱較習知技術更具進步性。

 

 

(日本語訳「係争特許第I313310号の請求項11は、数値限定による選択発明である。調べにより、係争特許第I313310号の請求項11は「貫通する一本の糸処理通路および一本の噴射空気供給通路を有し、その噴射空気供給通路が該糸処理通路の長手方向の中心軸を向いている、撚目の規則正しい星糸を製造するための交絡ノズルにおいて、噴射空気供給通路の開口区域において該糸処理通路に噴射空気通路拡幅部が形成され、二筋の互いに反対方向の位置に固定されたねじり流れ用の空気撚り加工室が形成され、そのうち、その噴射空気通路拡幅両側が張り出した長さは、糸通路幅の22%より小さく、その5%より大きく、又は、糸通路幅が3mmに達すると、両側は糸通路から多くとも0.5mm張り出していることを特徴とする交絡ノズル。」(詳しくは板院卷第129-130頁)に関する発明である。また、原告が係争特許第I313310号の明細書において、該空気撚り加工室の構造が早くから存在していた従来技術であると自認している(板院卷第147-148頁に添付されている特許明細書第13a~13d図、第14b~14c図参照)。そうすると、係争特許第I313310号の請求項11に係る発明(その実施例は特許明細書第14a図参照)は、従来技術に比べて、噴射空気供給通路拡幅両側が張り出した長さを数値限定している点で相違するに過ぎず、交絡ノズルが空気撚り加工室を有し噴射空気が拡幅部を有するとの構造は既に従来技術に開示されている。よって、係争特許第I313310号の請求項11に係る発明は、噴射空気供給通路拡幅両側が張り出した長さを、数値を用いて限定した発明であるに過ぎず、該数値限定の選択発明が進歩性を有するか否かについて、該数値限定をすることにより先行技術より顕著な同一性質の効果を奏するか否かにより判断するのは言うまでもない。

係争特許第I313310号の請求項11で定義されている「5%~22%」について、当該数値に臨界的意義はないし、従来技術に比べても進歩性を有していない。調べにより、係争特許第I313310号の明細書第20頁最終行から第21頁までの説明によれば、「第16図aおよび16図は実験の比較結果を示している。…。いずれも撚り加工室を有しないノズル又は円形の撚り加工室を有するノズルを使用する(球冠の幅Kが2.2、2.4、2.6、2.8mmである)。該室を球冠の形に形成した。本発明の球冠の幅がK=2.2mmである場合に、本発明の空気撚り加工室により最も良い結果が得られることは明らかである。すべての実験において、糸通路の幅は1.6mmであり、糸通路の深さは1.0mmであり、空氣を吹き込む孔は1.1mmであった。エラスタンの糸を一緒にノズルに吹き込んで、上述したフィラメント糸と組合わせた場合にも、本発明の利点を認めることができる。」と記載されている。該記載から明らかなように、係争特許第I313310号の明細書においては、糸通路を1.6mmとし、撚り加工室の幅をそれぞれ2.2mm、2.4mm、2.6mmおよび2.8mmとした場合の実験を行い、実験結果は撚り加工室の幅を2.2mmとした場合に最も良い効果が得られた。したがって、係争特許第I313310号において、空気撚り加工室の張り出し量をそれぞれ0.3、0.4、0.5および0.6mm「(撚り加工室の幅-1.6)/22」として実験を行い、それぞれが糸通路の幅の18.75%、25%、31%および37.5%であり、18.75%の場合に最も良い結果が得られた。最も良い結果が得られた18.75%との数値は、22%から差があるため、係争特許第I313310号の明細書から得られた実験結果からでは、22%の場合に顕著な効果を奏することを証明していない。よって、係争特許第I313310号の請求項11に係る発明における、空気撚り加工室の両側が糸通路側壁から張り出した長さが糸通路の幅の5%~22%であるとの技術的特徴が従来技術から進歩性を有すると言うことはできない。」)

 

【留意事項】

 台湾専利審査基準第2-3-27頁乃至第2-3-28頁によれば、「選択発明が先行技術と同一性質の効果を奏し、かつ限定する数値が『臨界的意義(critical character)』を有する、すなわち、同一性質の効果であっても顕著な効果を奏すれば、該発明が容易に想到できないと認定する」としている一方、「該数値が『臨界的意義』を有しなければ、請求項に係る発明は容易に想到できる」とされている。したがって、数値限定により進歩性を主張する場合は、数値を限定することで顕著な効果を奏することが明細書に記載されているか台湾出願時に再確認すべきである。

 なお、本係争特許の明細書では、18.75%、25%、31%および37.5%の4通りの実施例が記載されているが、請求項は実施例で具体的に実施した数値を用いて限定を行っていない。判決内容を考慮すると、数値限定により進歩性を主張する場合は、請求項に記載した数値は少なくとも実施例で実施した数値とし、且つ、その数値が臨界的意義を有することを明細書に記載すべきである。

■ソース
・智慧財産法院民事判決100年度民専訴字第64号
■本文書の作成者
知崇国際特許事務所 弁理士 松本征二
■協力
萬國法律事務所 鍾文岳
一般社団法人 日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期
2013.01.28
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