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(韓国)プロダクト・バイ・プロセスクレームの進歩性の判断において、プロセスを発明の構成として考慮しなかった事案

2013年10月11日

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■概要
大法院は、物の発明の特許請求の範囲にその物を製造する方法が記載されている場合、特別な事情のない限り、当該特許発明の進歩性有無の判断においては、その製造方法自体を考慮する必要がなく、物として特定される発明だけを引用発明と比較することを判示した。
本件は、特許請求の範囲第1項及び第2項発明の方法により製造された物の発明である第3項と第4項の発明について、原審が、第1項発明の進歩性が否定されないと判断した後、直ちに第3、4項発明の進歩性も否定されないと判断した点で、原審判決には、物の発明のクレームに製造方法が記載された場合の進歩性判断に関する法理を誤解し判決に影響を及ぼした違法があるとして、原審に差し戻した事例である。
■詳細及び留意点

【詳細】

(1) 一般的に、権利範囲の解釈においては、請求項に記載されている構成要素全てが権利範囲を限定するものとして判断し、また、特許性の判断においてもその構成要素全てを考慮して判断する。しかし、製造方法により限定された物の発明、いわゆる「プロダクト・バイ・プロセスクレーム」に対する進歩性の判断は、一般的な判断とは異なる。この点につき、大法院は、「物の発明の特許請求の範囲は、発明の対象である物の構成を直接特定する方式で記載しなければならないので、物の発明の特許請求の範囲にその物を製造する方法が記載されているとしても、その製造方法によって物を特定するしかないなどの特別な事情のない限り、当該特許発明の進歩性有無を判断することにおいては、その製造方法自体を考慮する必要がなく、その特許請求の範囲の記載により物として特定される発明だけをその出願前に公知された発明などと比較しなければならない」と判示している。

 

(2) 本件事案につき、大法院は、「物の発明を内容とするこの事件の第3、4項発明に関しては、特別な事情のない限り、その特許請求範囲の記載により物として特定される発明だけを比較対象発明と比較し、その進歩性有無を判断しなければならなかったが、原審は、それに至らないまま、製造方法に関する発明の進歩性が否定されないという理由だけで、直ちにその製造方法が記載された物の発明であるこの事件の第3、4項発明の進歩性も否定されないと判断した。この原審判決には、物の発明の特許請求の範囲にその物を製造する方法が記載された場合の進歩性判断に関する法理を誤解し判決に影響を及ぼした違法があるといえる」と判示し、原審判決を破棄し、原審法院に差し戻した。

 

参考(大法院判決2009年3月26日付宣告2006후3250【拒絶決定(特)】より抜粋):

 

상고이유를 판단한다.

 

물건의 발명의 특허청구범위는 발명의 대상인 물건의 구성을 직접 특정하는 방식으로 기재하여야 한다. 그러므로 물건의 발명의 특허청구범위에 그 물건을 제조하는 방법이 기재되어 있다고 하더라도, 그 제조방법에 의해서만 물건을 특정할 수밖에 없는 등의 특별한 사정이 없는 이상, 당해 특허발명의 진보성 유무를 판단함에 있어서는 그 제조방법 자체는 이를 고려할 필요 없이 그 특허청구범위의 기재에 의하여 물건으로 특정되는 발명만을 그 출원 전에 공지된 발명 등과 비교할 것이다(대법원 2006. 6. 29. 선고 2004후3416 판결 참조).

 

원심판결 이유에 의하면, 원심은, 명칭을 “폴리테트라플루오르에틸렌 물질의 화학적 표면개질 방법”으로 하고, 표면개질 방법에 관한 청구항인 특허청구범위 제1항(이하 ‘이 사건 제1항 발명’이라 하고, 나머지 청구항도 같은 방식으로 부른다) 및 그 종속항인 이 사건 제2항 발명, 그리고 이 사건 제1, 2항 발명의 방법에 의하여 제조된 물건인 폴리테트라플루오르에틸렌 물질에 관한 이 사건 제3, 4항 발명을 특허청구범위로 하는 이 사건 출원발명(출원번호 제2002-8897호)을 원심 판시의 비교대상발명과 비교함에 있어서, 이 사건 제1항 발명의 진보성이 부정되지 않는다고 판단한 다음 곧바로 그에 따라 이 사건 제2항 발명뿐만 아니라 이 사건 제3, 4항 발명의 진보성도 부정되지 않는다고 판단하였다.

 

앞서 본 법리에 비추어 볼 때, 물건의 발명을 내용으로 하는 이 사건 제3, 4항 발명에 관하여는 특별한 사정이 없는 한 각 그 특허청구범위의 기재에 의하여 물건으로 특정되는 발명만을 비교대상발명과 비교하여 그 진보성 유무를 판단하였어야 함에도, 원심은 그에 이르지 아니한 채 제조방법에 관한 발명의 진보성이 부정되지 않는다는 이유만으로 막바로 그 제조방법이 기재된 물건의 발명인 이 사건 제3, 4항 발명의 진보성도 부정되지 않는다고 판단하였다. 이러한 원심판결에는 물건 발명의 특허청구범위에 그 물건을 제조하는 방법이 기재된 경우의 진보성 판단에 관한 법리를 오해하여 판결에 영향을 미친 위법이 있다고 할 것이다. 이를 지적하는 상고이유의 주장은 이유가 있다.

 

(日本語訳「上告理由を判断する。

 

 物の発明の特許請求の範囲は、発明の対象である物の構成を直接特定する方式により記載しなければならないので、物の発明の特許請求の範囲にその物を製造する方法が記載されているとしても、その製造方法によって物を特定するしかないなどの特別な事情のない限り、当該特許発明の進歩性有無を判断することにおいては、その製造方法自体を考慮する必要がなく、その特許請求の範囲の記載により物として特定される発明だけをその出願前に公知された発明などと比較しなければならない(大法院判決2006年6月29日付宣告2004후3416参照)。

 

 原審判決理由によると、原審の特許法院は、名称を「ポリテトラフルオロエチレン物質の化学的表面改質方法」とする表面改質方法に関する請求項である特許請求の範囲第1項(以下、「この事件の第1項発明」といい、他の請求項も同じ方式でいう)及びその従属項であるこの事件の第2項発明、更にこの事件の第1、2項発明の方法により製造された物であるポリテトラフルオロエチレン物質に関するこの事件の第3、4項発明を特許請求の範囲とするこの事件の出願発明(出願番号第2002‐8897号)を原審判示の比較対象発明と比較することにおいて、この事件の第1項発明の進歩性が否定されないと判断した後、直ちにそれによりこの事件の第2項発明だけでなく、この事件の第3、4項発明の進歩性も否定されないと判断した。

 

 上述の法理に照らしてみると、物の発明を内容とするこの事件の第3、4項発明に関しては、特別な事情のない限り、その特許請求の範囲の記載により物として特定される発明だけを比較対象発明と比較し、その進歩性有無を判断しなければならなかったが、原審は、それに至らないまま、製造方法に関する発明の進歩性が否定されないという理由だけで、直ちにその製造方法が記載された物の発明であるこの事件の第3、4項発明の進歩性も否定されないと判断した。この原審判決には、物の発明の特許請求の範囲にその物を製造する方法が記載された場合の進歩性判断に関する法理を誤解し判決に影響を及ぼした違法があるといえる。これを指摘する上告理由の主張は理由がある。」)

 

【留意事項】

 物の発明の特許請求の範囲にその物を製造する方法が記載されたとしても、その製造方法によって物を特定するしかないなどの特別な事情のない限り、当該特許発明の進歩性有無を判断することにおいてその製造方法自体は考慮する必要がなく、その特許請求の範囲の記載により物として特定される発明だけをその出願前に公知された発明と比較し、進歩性の判断において方法の構成は考慮されない。ここで製造方法によって物を特定するしかないなどの特別な事情というのは、物自体が新たな物でありその構成を適切に記載することが困難な場合、製造方法に関する記載が物の性質や構造などを簡潔に表現するための場合などの例外的な場合だけを意味し、物自体は新しくないがその製造方法だけに特徴がある場合には特別な事情があるといえない(特許法院判決 2007年3月29日付宣告2006허7122【登録無効(特)】)。

 しかし、製法限定請求項の権利範囲解釈に関連して、まだ韓国では事例がない。特許法院判決2004年11月5日付宣告2004허11:上告【登録無効(特)】では、「この事件の第4項発明は物を生産する方法を含めている請求項で、いわゆる生産方法を限定した物に関する請求項(product by process claim)であるといえるところ、特許法第42条第4項第3号が『請求項は、発明の構成になければならない事項だけにより記載する』ことを要求しているので、このような請求項もその権利範囲を確定することにおいては物の生産方法に関する記載を構成要素として含めて請求項を解釈すべきであるが、…」と記載している点からみると、生産方法に関する記載により権利範囲が限定される構成として解釈される可能性があるが、まだ韓国では製法限定請求項の権利範囲解釈に関して確立された判例はなく、この点について今後の動向に注目する必要がある。

■ソース
・大法院判決2009年3月26日付宣告2006후3250
http://glaw.scourt.go.kr/jbsonw/jsp/jbsonc/jbsonc08.jsp?docID=6E9FEEBABADC61C4E043AC100C6461C4&courtValue=대법원&caseNum=2006후3250
■本文書の作成者
正林国際特許商標事務所 弁理士 北村明弘
■協力
特許法人AIP
一般社団法人 日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期

2013.01.22

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