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(台湾)医薬組成物関連の発明において実験結果の記載要件が争われた事例
2013年07月09日
■概要
医薬組成物関連の発明においては、明細書に記載された効果が実際に得られたことを証明するデータが必要である。つまり、例えば、病気に対する治療効果を主張するのであれば、治療効果を有することを証明すればよく、安全性又は副作用を証明する必要はない。■詳細及び留意点
【詳細】
本件では、医薬組成物関連の発明において、その発明の効果を証明するために必要なデータについて争われた。
判決では、特許審査に必要なデータは個別の事例に基づいて決められ、例えば、特許出願に係る発明の技術重点が病気に対する治療効果であれば、治療効果を有することを証明すればよく安全性又は副作用を証明する必要はなく、また、安全性の向上又は副作用の低減が発明の重点であると出願人が主張すればその関連データがあればよく、薬品審査と特許審査に必要なデータは異なると判示した。
参考(智慧財産法院民事判決の判決理由より抜粋):
有關醫藥相關發明之申請,為佐證所請之發明的功效時,說明書需提供相關實驗數據資料。然而,專利法或審查基準中並未限定需提出何種實驗數據之模式或種類,亦即並未限定需提出人體臨床試驗,其他的實驗室體外試驗或動物實驗亦可用來證明發明之功效,需視具體個案來決定。於一般醫藥相關發明之申請過程,申請人僅需證明所請之發明(例如醫藥組合物)是否具有所稱之治療疾病的效果,並不需要進一步證明該醫藥組合物之安全性或副作用。倘申請人主張增加安全性或降低副作用為其發明重點,始審查是否有相關數據可達到所述之功效…醫藥專利案之申請,申請案說明書會有各種藥效、藥理、物化等等相關實施例所呈現之實驗數據,供審查人員參考,惟所請範圍是否過廣而涉及說明書可以支持或是說明書有揭露未充分等情事,參加人審查人員將依個案的說明書揭露內容與界定之請求範圍加以判斷,必要時得以通知函告知申請人補提相關數據資料,審查人員可依據申請人所提資料來審酌其具有專利性與否,並非所請發明必須人體實驗數據始滿足專利要件,此為參加人所敘明(本院卷第3 冊第154 頁),益徵藥品審查之要件與專利審查之不同。我國專利法及專利審查基準均未規定醫藥相關發明之專利申請案應提出人體試驗數據方可取得專利,亦未規定附有人體臨床數據之先前技術,方能作為證明是否可取得專利之引證案。倘若醫藥專利之審查同採藥品查驗登記審查之標準,則所有醫藥相關發明之專利申請案豈非均需提出人體臨床試驗方可取得專利?
(日本語訳「医薬関連発明の特許出願は、その発明の効果を証明するために、明細書において関連実験データを提供する必要がある。しかし、専利法や審査基準は、どの様な実験データが必要であるのか規定していない。すなわち、人体臨床試験に限定されず、他の実験室における体外試験又は動物実験も発明の効果の証明に用いられてもよく、具体的には個別の事例に基づいて決められる。一般的な医薬関連発明の出願中に、出願人は特許出願に係る発明(例えば医薬組成物)が主張する病気の治療効果を有することを証明すればよいのであって、さらに該医薬組成物の安全性又は副作用を証明する必要はない。仮に安全性の向上又は副作用の低減が発明の重点であると出願人が主張すれば、関連データが明細書に記載された効果を奏するのか審査する。…(訳注:「…」は当所が重要でない部分を省略したことを示す)。医薬の特許出願では、その明細書に各種の薬効、薬理、物理化学などの関連実施例に基づく実験データを審査官が参照するが、請求の範囲が広すぎて明細書に支持又は十分に開示していないかについては、参加人・審査官は個別案件の明細書の開示内容と請求の範囲の記載に基づいて判断し、必要に応じて関連データを追って提出するように出願人に通知することができる。審査官は、出願人が提出した資料に基づいて特許性の有無を審査できるのであって、特許出願が人体実験データを有することで特許要件を満足するのではなく、これは参加人が述べたこと(本院卷第3冊第154頁)に過ぎず、薬品審査の要件と特許審査とは異なる。わが国専利法及び専利審査基準はいずれも、医薬関連発明の特許出願が人体試験データを提出してから特許を取得できるとは規定しておらず、また、人体臨床データ付きの先行技術のみが特許を取得できるかを証明する引証案に成り得るとも規定していない。仮に医薬特許の審査が薬品査験登記審査と同じ基準を採用すれば、すべての医薬関連発明の特許出願は、特許の取得に先立ち人体臨床試験を提出する必要があるだろうか。」)
【留意事項】
医薬組成物関連の発明においては、薬理試験結果は必ずしも必要ではなく、必要なデータは、特許出願に係る発明が有すると主張する効果により決まる。
■ソース
・智慧財産法院100年民専上字第21号民事判決■本文書の作成者
知崇国際特許事務所 弁理士 松本征二■協力
萬國法律事務所 鍾文岳一般社団法人 日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期
2013.01.07