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(台湾)機能及び特性等の記載

2013年06月21日

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■概要
性質がその物質自身が有する固有なものである場合、該物質の技術的特徴が、引証に開示された技術的特徴と同じであれば、その性質が引証に明確に記載されていなかったとしても、進歩性は認められない。
■詳細及び留意点

【詳細】

 100年行専訴字第32号案において、上訴人は係争発明の請求項の前提部分に記載された「皮膚の真皮層に浸透させる」との特性により引証2と区別できると主張した。しかしながら、「皮膚の真皮層に浸透させる」とは皮膚外用薬剤自身の固有特性であると認定され、引証2に示された薬剤である高濃度のアスコルビン酸のL体が皮膚の真皮層に伝送することが明確に記載されていなかったとしても、引証2に開示された主要な技術的特徴はいずれも本件特許と同じであるから、「皮膚の真皮層に浸透させる」との性質を有するものであるといえるとされ、進歩性は認められなかった。

 

参考(智慧財産法院民事判決の判決理由より抜粋):

 

惟查,本件專利申請專利範圍第1項前言部分所述之「使…浸透於皮膚真皮層」,應係界定該組成物之固有性質,尚難稱其為一種新用途。縱使將該敘述列入考量,則該文字敘述之含意係指將所欲之組成物塗抹於皮膚而使抗壞血酸釋放到真皮層,然引證2 之過飽和抗壞血酸溶液及含有其之組成物之用途亦同樣係用於皮膚之塗抹,且其目的亦在於將高濃度之L-抗壞血酸遞送至皮膚,雖然引證2 並未明確記載該組成物是否已遞送至真皮層,然因引證2揭示之主要技術特徵均與本件專利相同,即其亦使用相同濃度之相同有效成分、相同之載體及相同之溶解方式,故理論上應也可得到「使…浸透於皮膚真皮層」之相同性質的組成物,因此,難謂因引證2 之實施例未測定該抗壞血酸可釋放到真皮層之相關實驗,即謂引證2 之抗壞血酸組成物不具有浸透於皮膚真皮層之性質。是以,本件專利申請專利範圍第1 項界定之「使…浸透於皮膚真皮層」技術特徵亦為該發明所屬技術領域中具有通常知識者,基於引證2 之內容及申請前之一般知識透過例行性實驗而可輕易完成者。

 

(日本語訳「ただ、調べにより、請求項1の前提部分に述べた「…を皮膚の真皮層に浸透させる」は、該組成物の固有性質を定義するものであり、それを新用途とは言い難い。該記載を考慮したとしても、該記載の意味合いは、所望の組成物を皮膚に塗布してアスコルビン酸を真皮層に放出することであるが、引証2の過飽和アスコルビン酸溶液及びそれを含有する組成物の用途も皮膚への塗布であり、かつその目的も高濃度のアスコルビン酸のL体を皮膚に伝送することにある。引証2には、該組成物が真皮層に伝わったことを明確に記載していないが、引証2に開示された主要な技術的特徴はいずれも本件発明と同じである。すなわち、同じ濃度、同じ有効成分、同じキャリヤ及び同じ溶け方、であるため、理論上、引証2に記載されている発明も「…を皮膚の真皮層に浸透させる」との同じ性質の組成物も得られる。更に、引証2の実施例は該アスコルビン酸が真皮層に放出しているか否かを測定しておらず、引証2のアスコルビン酸組成物が皮膚の真皮層に浸透する性質を有していないとはいい難い。したがって、本件特許の請求項1に記載されている「…を皮膚の真皮層に浸透させる」との技術的特徴は、該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が引証2の内容及び出願前の一般知識に基づくルーチンの実験を介して容易に想到できるものである。」)

 

【留意事項】

 特許出願に係る発明のすべての構成成分が引証文献に開示されているならば、該発明が有する特性・機能は原則としてその発明品自身の固有性質と見なされ、引証に該特性・機能が明記されていなくても進歩性は否定され得る。したがって、意見書等においては、引証には請求項に係る機能等が記載されていないと主張するだけでなく、請求項に係る発明と引証の構成成分(構成部品)に相違点がある場合は、その相違点により異なる特性・機能が生じる旨を主張する必要がある。

■ソース
・智慧財産法院100年行専訴字第32号民事判決
■本文書の作成者
知崇国際特許事務所 弁理士 松本征二
■協力
萬國法律事務所 鍾文岳
一般社団法人 日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期

2013.01.07

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