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(台湾)択一形式又はマーカッシュ形式で記載された請求項の新規性・進歩性並びに訂正について

2013年06月28日

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■概要
択一形式又はマーカッシュ形式で請求項を記載する場合、各選択肢が互いに「等価な置換物」であるとみなされるので、先行技術がこれらの選択肢のいずれか一つを開示している場合は、該請求項は特許取得可能性を有しない(中華民国智慧財産法院100年民専訴字第56号民事判決)。
一方、択一形式又はマーカッシュ形式で記載された請求項を訂正する場合、請求項に記載された選択肢のうちの一つを削除することは、「特許請求の範囲を実質的に拡大又は変更する」に該当しない。これに対し、明細書に記載された一つの選択肢を択一形式又はマーカッシュ形式で記載された請求項に追加すると、特許請求の範囲を実質的に変更することとなる(中華民国智慧財産法院101年行専訴字第2号行政判決及び中華民国智慧財産法院97年行専訴字第53号行政判決)。
■詳細及び留意点

【詳細】

 智慧財産法院100年民専訴字第56号において、請求項1はマーカッシュ形式で合金線の成分を記載しているため、マーカッシュ形式で挙げられた各選択肢が互いに等価な置換物であるとみなされる。したがって、引証1がこれらの選択肢のうちの一つを開示している場合、マーカッシュ形式で記載された請求項に係る発明は特許を取得できなくなる。

 一方、智慧財産法院101年行専訴字第2号行政判決及び智慧財産法院97年行専訴字第53号行政判決においては、マーカッシュ形式で記載された請求項を訂正する場合、「特許請求の範囲を実質的に拡大又は変更する」か否かについて検討された。

 智慧財産法院101年行専訴字第2号行政判決において、法院はマーカッシュ形式で記載された一つの選択肢を削除しても「特許請求の範囲を実質的に拡大又は変更する」に該当しないと認定したのに対し、智慧財産法院97年行専訴字第53号行政判決においては、明細書に記載された一つの選択肢をマーカッシュ形式で記載された請求項に加えると、「特許請求の範囲を実質的に拡大又は変更する」に該当すると認定した。

 

参考(智慧財産法院100年民専訴字第56号、智慧財産法院101年行専訴字第2号、智慧財産法院97年行専訴字第53号の判決理由より抜粋):

 

1.智慧財産法院100年民専訴字第56号

比對引證1 與系爭專利請求項1,引證1第3頁表列:實施例1所載金合金線,該成分含有Pd為0.51%,Ca為0.0004% ;實施例2所載金合金線,成分含有Pd為1.60% ,Ca為0.0010% ;實施例12所載金合金線,成分含有Pd為1.10% ,Ca為0.0025% 。引證1 所載金合金線,成分含有Pd範圍為0.51-1.6% ,Ca範圍為0.0004-0.0025%,顯然引證1已揭示系爭專利請求項1 金合金線為高純度金中至少含有Pt或Pd,其中之一種有0.1-2.2%重量,而至少含有Be、Ge、Ca、La、Y 、Eu,其中之一種有0.0001-0.005% 重量之組合之一種…系爭專利請求項1之構件以群組擇一方式界定,群組之一為先前技術揭露時,整項群組均不具專利要件。

 

(日本語訳「引証1と請求項1に係る発明とを対比すると、引証1第3頁では、実施例1に記載された金合金線の成分としてPdを0.51%、Caを0.0004%を含有し、実施例2に記載された金合金線の成分としてPdを1.60%、Caを0.0010%含有し、実施例12に記載された金合金線の成分としてPdを1.10%、Caを0.0025%含有すると記載されている。引証1に記載された金合金線の成分としてPdの含有範囲は0.51~1.6%、Caの含有範囲は0.0004~0.0025%である。請求項1に係る発明の金合金線は、高純度金に少なくともPt又はPdが含まれ、いずれか一つは0.1~2.2%重量であり、また、少なくともBe、Ge、Ca、La、Y、Euが含まれ、いずれか一つは0.0001~0.005%重量であり、このような組み合わせの一種類は、引用1の開示範囲内であることは明らかである。…請求項1に係る発明の部材は、グループで択一方式で定義し、グループ内の一つの選択肢が先行技術に開示されているときには、グループ全体が特許要件を有しない。」)

 

2.智慧財産法院101年行専訴字第2号

更正後之系爭專利申請專利範圍第1 項加入「適當粘著材料為銦、錫或錫鉛合金等」技術特徵,對應至更正前之公告本申請專利範圍第3 項所載「適當粘著材料,通常可為銀膠、銦、錫、金錫合金、錫鉛合金」技術特徵。可認更正之專利申請範圍第1 項係原先公告本專利申請範圍第1項與第3項結合,屬於原獨立項之記載限縮為下位概念或進一步限定。再者,更正後之專利申請範圍第1 項有刪除原公告第3 項之「銀膠」、「金鍚合金」,其屬於刪除擇一記載形式或馬庫西形式中所敘述之一個選項。參諸審查基準第二篇第六章2-6-64頁之說明,該更正屬申請專利範圍之減縮。準此,更正後之專利申請範圍第1 項未逾申請時原說明書或圖式所揭露之範圍,亦未實質擴大或變更申請專利範圍。

 

(日本語訳「訂正後の請求項1に加えられた「適当な粘着材料は、インジウム、すず、及びすず鉛合金である」との技術的特徴は、訂正前の公告公報の請求項3に記載された「適当な粘着材料は、通常、銀ベースト、インジウム、すず、金すず合金、及びすず鉛合金である」との技術的特徴に対応する。訂正後の請求項1は、原公告公報の請求項1と第3項が組合わせられたものであり、公告時の独立項の記載を下位概念に減縮したもの又はさらに限定したものであると認定された。さらに、訂正後の請求項1において、公告時の請求項3の「銀ペースト」及び「金すず合金」が削除され、この削除は択一記載形式又はマーカッシュ形式で記載された一つの選択肢を削除することである。審査基準第二篇第六章2-6-64頁の説明を参照にすると、該訂正は特許請求の範囲の減縮に属する。これによれば、訂正後の請求項1は出願時の原明細書又は図面に開示された範囲を超えておらず、かつ特許請求の範囲を実質的に拡大又は変更していない。」)

 

3.智慧財産法院97年行専訴字第53号

本件原告將申請專利範圍第9 項原內容「‧‧‧上述分散劑係,水溶性有機高分子,水溶性陰離子界面活性劑,水溶性胺類中所選用之至少一種;‧‧‧」更正為「‧‧‧上述分散劑係,水溶性有機高分子,水溶性陰離子界面活性劑,水溶性非離子性界面活性劑,水溶性胺類中所選用之至少一種;‧‧‧」,雖然於說明書已經揭示「分散劑」包括「水溶性非離子性界面活性劑」之記載,惟該等記載只能證明原告之更正「未超出申請時原說明書或圖式所揭露之範圍」,但仍不能證明該更正符合「且不得實質擴大或變更申請專利範圍」之規定。而原告將原三種分散劑選用至少一種更正為四種分散劑選用至少一種,屬於上述審查基準「對於擇一記載形式(或馬庫西形式)的請求項,將發明說明中所記載之ㄧ個選項增加至請求項中」之態樣,依據上述發明審查基準第2篇第6章2.3 及2.4 節規定,本案之更正已擴大原請求之內容,且已涉實質變更。從而被告以原告上開申請專利範圍之更正不符合專利法第64條第1 項第1 款及第2 項規定而為不准更正之處分,並無不當。

 

(日本語訳「本件原告は請求項9の原内容「‧‧‧上述した分散剤は、水溶性有機高分子、水溶性陰イオン界面活性剤及び水溶性アミンから選ばれる少なくとも一種類‧‧‧」を「‧‧‧上述した分散剤は、水溶性有機高分子、水溶性陰イオン界面活性剤、水溶性非イオン性界面活性剤及び水溶性アミンから選ばれる少なくとも一種類‧‧‧」に訂正しており、明細書は「分散剤」が「水溶性非イオン性界面活性剤」を含んでいることを開示していた。しかしながら、これらの記載は原告の訂正が「出願時の原明細書又は図面に開示された範囲を超えていない」を証明しているに過ぎず、依然として、該訂正が「かつ特許請求の範囲を実質的に拡大又は変更できない」との規定に符合することを証明していない。三種類の分散剤から少なくとも一種類を選ぶことを四種類の分散剤から少なくとも一種類を選ぶことに訂正することは、前記審査基準の「択一記載形式(又はマーカッシュ形式)の請求項について、明細書に記載された一個の選択肢を請求項に加える」との態様に属しており、前記発明審査基準第2篇第6章2.3及び2.4節規定によれば、本件訂正は原請求の内容を拡大し、かつ実質的に変更している。したがって、上記特許請求の範囲の訂正が専利法第64条第1項第1款及び第2項規定に符合しないとして訂正を許可しなかった被告の処分は不当ではない。」)

 

【留意事項】

 マーカッシュ形式で請求項を記載する場合、マーカッシュ形式に包含される各選択肢は互いに等価置換物であると出願人が自認したと判断される。したがって、引証文献が一つの選択肢のみしか開示していない場合でも、特許が取得できない可能性がある。

 そこで、マーカッシュ形式で請求項を記載する場合、包含される選択肢の中で異なる効果を奏するグループがある場合には、別々の請求項として記載することも一案である。

■ソース
・智慧財産法院100年民専訴字第56号民事判決
・智慧財産法院101年行専訴字第2号行政判決
・智慧財産法院97年行専訴字第53号行政判決
■本文書の作成者
知崇国際特許事務所 弁理士 松本征二
■協力
萬國法律事務所 鍾文岳
一般社団法人 日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期

2013.01.07

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