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台湾専利間接侵害に関する実務の紹介

2013年06月04日

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■概要
専利法の規定により、特許権者は他人が特許権者の同意を得ずに製造、販売の申出、販売、使用又は上述の目的をもって当該物品を輸入し、又は使用、販売の申出、販売又は当該方法により直接作製されるものを輸入する行為を排除する権利を専有する。しかし、行為者が上記侵害行為に直接従事せずに、他人に当該侵害行為の幇助や教唆行うことがある。このような行為者の間接的な侵害行為が専利権の侵害に該当するか否かについて最近の議論を紹介する。
■詳細及び留意点

【詳細】

 (1)間接侵害の意味

 (i)台湾の専利法(2011年改正前の専利法)では、「物の発明の特許権者は、この法律に別段の規定がある場合を除き、他人がその同意を得ずに当該物品を製造、販売の予約、販売、使用若しくは前記の目的の為に当該物品を輸入することを排除する権利を有する。方法発明の特許権者は、この法律に別段の規定がある場合を除き、他人がその同意を得ずに当該方法を使用し、又は当該方法で直接製造された物品の使用、販売又は前記目的の為に当該物品の輸入を排除する権利を有する。」と規定されている(専利法第56条)。また、実用新案、意匠についても同様の規定がある(専利法第106条、第123条)。

 一般的に、行為者自身が直接製造、販売又は使用する等専利出願請求範囲のすべての要件を満たす行為を行っている場合は、上記規定によって、当該行為者の専利権侵害となる。

 

 (ii)これに対し、行為者自身の行為が専利出願請求範囲に記載されている一部の要件のみを満たしているが、当該行為が、間接的に、他人が専利出願請求範囲に記載されている要件を満たす行為を促している場合、例えば、物の専利の場合、行為者は当該専利物を製造しないときでも、当該専利物のパーツを製造したり、他人に技術を提供して、専利出願請求範囲の要件に該当する製品の製造に供するときは、当該行為者は間接専利権侵害に該当するとされる。

 

 (2)間接侵害の法的根拠

 (i)台湾の専利法では、専利権の間接侵害についての定義が明確になされていないため、根拠とする法律は一般的に民法の規定になる。実務においては、民法第185条第2項に基づき、専利権の間接侵害についての主張がなされる。

 民法第185条第2項では、「複数の者が他人の権利を不法に侵害した場合、連帯して損害賠償責任を負う。加害者が特定できない場合にも同様とする。提案者及び幇助者も共同行為人と見なす」と規定されている。ここでいう「幇助者」とは、他人が侵害行為を遂行しやすくするよう幇助する者を指し(最高裁判所2008年度台上字第2050号民事判決)、「提案者」とは、他人に侵害行為を決意させるよう教唆する者を指す(最高裁判所民事判決2012年度台上字第919号)。

 なお、提案か幇助かに係わらず、主観的には故意又は過失によるもので、客観的には発生した結果に対して因果関係を有することが要件であり、要件に該当する者は連帯して損害賠償責任を負わなければならない(最高裁判所民事判決2010年度台上字第1207号(添付))。

 

 (ii)上記の通り、間接侵害に関しては現在法律に明示的な規定や法律要件はなく、民法上の提案又は幇助に関する規定が準用される。しかし、学説上、間接侵害の要件や定義を巡る議論がなおもなされており、意見は一致しておらず、民法第185条第2項が専利の間接侵害の根拠法律であるとは認められているわけではない。

 

 (3)間接侵害の主張によく見られる状況

 法令には間接侵害の根拠規定はないが、実務上は間接侵害の主張を試みる案件が見られる。例えば、以下の状況下において当該行為を間接侵害とみなすというものである。

 (i)  薬品の説明書で薬物成分を服用するよう指導又は提案し、当該薬物成分が人体の代謝によって自然に他人の専利薬品と同一の化合物を生じさせる可能性があるとき。

 (ii) 専利物を使用又は製造することが可能な重要なパーツを他人に提供し、又は他人にパーツを組み立てるよう指導して、当該組み立て後の製品が専利出願範囲に入る可能性があるとき。

 しかしながら、法律に明文規定がないため、間接侵害の主張が認められる確率は低い。

 

 (4)知的財産裁判所の間接侵害に対する見解

 (i)専利法で間接侵害を採用するか否かに対し、知的財産裁判所は否定的な見方を示す傾向がある。例えば、当裁判所2012年度民専上易字第1号判決では、「現行の民法及び専利法の体系には『間接侵害責任』の規定はない」、当該裁判所2011年民専訴字第69号判決では、「わが国の専利法には『間接侵害責任』(第三者の直接侵害行為に対して間接侵害責任を負う)に関する概念がないため、その主観的な意図及び行為の態様を評する際、第三者の専利権侵害行為に直接参加又は介入していない場合は、ただ当該行為と第三者の侵害行為に関連があるというだけで当該者に侵害責任を命じてはならない」との見解が示されている。

 

 (ii)ここで注目されるのは、裁判所が個別の案件において、行為者が原告の専利に損害が発生することを予知又は回避できる可能性があるにも係わらず、注意を怠り、第三者が専利権を実施するために製品と規格書を市場に流通できる状況を放任し、他人がこれを実施して専利権を侵害した場合には、専利法第84条第1項、民法第184条第1項の侵害行為及び民法第185条第2項の規定による提案、幇助による共同侵害行為に該当するとの見解を示していることである(知的財産裁判所2010年度民専訴字第59号民事判決)。これにより、知的財産裁判所は、現在間接侵害の概念を認めていないものの、前記民法第185条規定の要件に該当すれば、提案又は幇助による侵害行為を主張できる可能性がある。

 

【留意事項】

  • 2013年1月1日に施行された改正専利法(2011年改正法)では、改正前専利法第56条の規定が改正され、「物の発明の特許権者は、この法律に別段の定めがあるときを除き、他人が特許権者の同意を得ずに当該発明を製造、販売の申出、販売、使用又は上述の目的をもって当該物品を輸入することを排除する権利を専有する。方法発明の特許権者は、法律に別段の定めがあるときを除き、他人が特許権者の同意を得ずに当該方法を使用することと使用、販売の申出、販売又は上記目的をもって当該方法により直接作成されるものを輸入することを排除する権利を専有する」と修正された(改正専利法第58条)。同様に実用新案、意匠に関する規定も改正されたが(改正専利法第120条による第58条準用、第136条)、特許・実用新案・意匠、いずれも基本的に改正前の内容と大差はない。
  • 専利法修正案はこれまでに一度、間接侵害について規定が盛り込まれたが、国会での審議を通過しなかった。よって、専利法に間接侵害を明文規定するべきか否かについては、さらに各界の考察検討を待つこととなる。

 個別の案件において、被告の行為が専利出願請求範囲の要件の一部に該当するのみであるとき、原告が勝算を高めるためには、ただ単に「間接侵害」だけを主張する方法は適切ではない。この場合は、民法第185条の規定によって起訴の根拠を主張する方法が妥当である。民法の提案又は幇助による侵害に関する規定では、その提案又は幇助によって侵害行為がなされたことが前提となる点に留意すべきである。この点に関しては、起訴時に挙証の問題と合わせて考慮する必要がある。

■ソース
・台湾専利法
・知的財産裁判所2012年度民専上易字第1号判決
http://jirs.judicial.gov.tw/FJUD/PrintFJUD03_0.aspx?jrecno=101%2c%e6%b0%91%e5%b0%88%e4%b8%8a%e6%98%93%2c1%2c20120607%2c2&v_court=IPC+%e6%99%ba%e6%85%a7%e8%b2%a1%e7%94%a2%e6%b3%95%e9%99%a2&v_sys=V&jyear=101&jcase=%e6%b0%91%e5%b0%88%e4%b8%8a%e6%98%93&jno=1&jdate=1010607&jcheck=2 ・知的財産裁判所2011年度民専上易字第69号判決
http://jirs.judicial.gov.tw/FJUD/PrintFJUD03_0.aspx?jrecno=100%2c%e6%b0%91%e5%b0%88%e8%a8%b4%2c69%2c20120511%2c3&v_court=IPC+%e6%99%ba%e6%85%a7%e8%b2%a1%e7%94%a2%e6%b3%95%e9%99%a2&v_sys=V&jyear=100&jcase=%e6%b0%91%e5%b0%88%e8%a8%b4&jno=69&jdate=1010511&jcheck=3 ・経済部台湾専利庁2008年10月31日「侵権法律改正関連議題諮問会」議事録
http://www.tipo.gov.tw/ch/News_NewsContent.aspx?NewsID=3294 ・知的財産裁判所100年度民専字第59号民事判決
http://jirs.judicial.gov.tw/FJUD/PrintFJUD03_0.aspx?jrecno=99%2c%e6%b0%91%e5%b0%88%e8%a8%b4%2c59%2c20120614%2c2&v_court=IPC+%e6%99%ba%e6%85%a7%e8%b2%a1%e7%94%a2%e6%b3%95%e9%99%a2&v_sys=V&jyear=99&jcase=%e6%b0%91%e5%b0%88%e8%a8%b4&jno=59&jdate=1010614&jcheck=2
■本文書の作成者
聖島国際特許法律事務所
■協力
一般財団法人比較法研究センター 木下孝彦
■本文書の作成時期
2012.12.28
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