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(韓国)機能、効果、性質などによる特定を含む請求項の記載方式及びその解釈に関する事例

2013年05月24日

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■概要
大法院は、特許請求の範囲が機能、効果、性質などによる物の特定を含む場合、通常の知識を有した者が発明の詳細な説明や図面などの記載と出願当時の技術常識を考慮して特許請求の範囲に記載された事項から特許を受けようとする発明を明確に把握できれば、その特許請求の範囲の記載は適法である、また、 特別な事情のない限り、広範囲に規定された独立項の技術内容を、独立項よりも具体的に限定している従属項の技術構成や発明の詳細な説明に示された特定の実施例に限定して解釈すべきではない、と判示した。

本件は、機能式記載の適法性は認められたが、その記載のまま解釈されて進歩性が否定され、原審判決が破棄された事例である。
■詳細及び留意点

 (1) 機能により物が特定される場合、その特許要件の判断において、その技術内容を、それと同じ機能を有する物の全てを意味するものと解釈するか、あるいは、明細書に具体的に記載された実施態様に限定するものと解釈するか、が問題となる。

 本件判決は、機能的に表現された構成要素について発明が明確に記載されたことを認めながらも、詳細な説明に記載された手段により発明を限定解釈しなかった事例である。

 本件判決は、「特許請求の範囲が機能、効果、性質などによる物の特定を含む場合、その発明の属する技術分野で通常の知識を有した者が発明の詳細な説明や図面などの記載と出願当時の技術常識を考慮し特許請求の範囲に記載された事項から特許を受けようとする発明を明確に把握することができれば、その特許請求の範囲の記載は、適法であるといえる。また、独立項とこれを限定する従属項などの複数項により構成される請求項の技術内容を把握することにおいて、特別な事情のない限り、広範囲に規定された独立項の技術内容を独立項より具体的に限定している従属項の技術構成や発明の詳細な説明に記載されている特定実施例で限定して解釈すべきではないといえる。」という法理を判示した。

 そして、明細書の記載不備に関しては、「訂正された当該事件第6項発明の『(d)…』という構成は、通常の技術者が発明の詳細な説明や図面などの記載と出願当時の技術常識を考慮すると、上下のトレイに形成された相互補完的構造を利用して上下トレイを積層することにより、フレームワークに随伴する第1、2支持手段でボール端子集積回路部品を垂直方向に固定すると同時に、フレームワークに形成された延長部にフレームワークの内部にボール端子集積回路部品を位置させて水平方向に安定させる構成として把握できるので、当該事件の第6項発明は、明確に記載されているといえる」と判断した。

 次に、発明の進歩性に関しては、「当該事件の第6項発明は、多数のボールグリッドアレー集積回路部品を貯蔵するためのトレイシステムであるのに対し、比較対象発明2は、ピンタイプの集積回路部品を貯蔵するためのトレイシステムである点でその差があるが…技術上の困難があるとはいえない。したがって、当該事件第6項発明は、比較対象発明2から容易に発明することができ、進歩性を有しないといえる。」と判断した。

 原審判決の判断につき、「当該事件第6項発明の構成要素(d)を…任意に限定した上で…進歩性を否定することができないと判断したのは…違法がある」として、原審判決を破棄し、原審法院に差し戻した。

 本件事案は、機能的表現の請求項の記載を許容しながら、同時に、機能的表現の解釈上の特殊性を認めず、その記載のまま発明を特定し、進歩性を否定したものである。

 

 (2) 機能式請求項に対する現行判例の立場が、明細書に記載された具体的実施例に限定し解釈している、と断定することはできない。現行判例の具体的な表現も「明細書と図面に記載された実施例をはじめとする具体的な構成などを考慮し権利範囲を把握すること」又は「明細書の他の記載部分を補充し明細書全体としての特許発明の技術内容を実質的に確定すること」という表現を使用している。具体的な事案によっては、発明の詳細な説明による限定解釈に近い判断をしたと解釈できる余地のある部分もあるが、機能式請求項に対する特許要件判断に関する大法院判例のうち、詳細な説明による限定解釈の法理を正面から提示した判例は出ていない。

 

参考(大法院判決2007年9月6日付宣告2005후1486【登録無効(特)】より抜粋):

 

2. 특허요건 판단에 관하여

특허청구범위가 기능, 효과, 성질 등에 의한 물건의 특정을 포함하는 경우 그 발명이 속하는 기술분야에서 통상의 지식을 가진 자가 발명의 상세한 설명이나 도면 등의 기재와 출원 당시의 기술상식을 고려하여 특허청구범위에 기재된 사항으로부터 특허를 받고자 하는 발명을 명확하게 파악할 수 있다면 그 특허청구범위의 기재는 적법하다고 할 것이다. 그리고 독립항과 이를 한정하는 종속항 등 여러 항으로 이루어진 청구항의 기술내용을 파악함에 있어서 특별한 사정이 없는 한 광범위하게 규정된 독립항의 기술내용을 독립항보다 구체적으로 한정하고 있는 종속항의 기술구성이나 발명의 상세한 설명에 나오는 특정의 실시례로 제한하여 해석할 수는 없다고 할 것이다.

 

가. 명세서 기재불비에 관하여

위 법리와 기록에 비추어 살펴보면, 정정된 이 사건 제6항 발명의 ‘(d) 제1 트레이(10) 및 제2 트레이(10A)를 적층함으로써 제1 트레이(10) 및 제2 트레이(10A)가 집적회로 부품(11)을 감싸 고정하고, 근접하게 적층된 트레이 내의 프레임워크 수단(24)은 상응하는 저장 포켓영역 내에서 프레임워크 수단(24)을 가로지르는 집적회로 부품의 위치를 안정시키기 위한 수단’이라는 구성은 통상의 기술자가 발명의 상세한 설명이나 도면 등의 기재와 출원 당시의 기술상식을 고려할 때, 상·하의 트레이에 형성된 상호보완적인 구조를 이용하여 상·하 트레이를 적층함으로써 프레임워크에 수반하는 제1, 2 지지수단으로 볼 단자 집적회로 부품을 수직방향으로 고정함과 동시에 프레임워크에 형성된 연장부로 프레임워크의 내부에 볼 단자 집적회로 부품을 위치시켜 수평방향으로 안정시키는 구성으로 파악할 수 있으므로, 이 사건 제6항 발명은 명확하게 기재되었다고 할 수 있다.

 

(日本語訳「2.特許要件の判断に関して

 特許請求の範囲が機能、効果、性質などによる物の特定を含む場合、その発明の属する技術分野で通常の知識を有した者が発明の詳細な説明や図面などの記載と出願当時の技術常識を考慮し特許請求範囲に記載された事項から特許を受けようとする発明を明確に把握することができれば、その特許請求の範囲の記載は、適法であるといえる。また、独立項とこれを限定する従属項などの複数項により構成される請求項の技術内容を把握することにおいて、特別な事情のない限り、広範囲に規定された独立項の技術内容を独立項より具体的に限定している従属項の技術構成や発明の詳細な説明に記載されている特定実施例で限定して解釈すべきではないといえる。

 

イ.明細書の記載不備に関して

 上記の法理及び記録により察すると、訂正された当該事件第6項発明の「(d)第1トレイ(10)及び第2トレイ(10A)を積層することにより第1トレイ(10)及び第2トレイ(10A)が集積回路部品(11)を囲んで固定し、近接して積層されたトレイ内のフレームワーク手段(24)は、相応する貯蔵ポケット領域内でフレームワーク手段(24)を横切る集積回路部品の位置を安定させるための手段」という構成は、通常の技術者が発明の詳細な説明や図面などの記載と出願当時の技術常識を考慮すると、上下のトレイに形成された相互補完的構造を利用して上下トレイを積層することにより、フレームワークに随伴する第1、2支持手段でボール端子集積回路部品を垂直方向に固定すると同時に、フレームワークに形成された延長部にフレームワークの内部にボール端子集積回路部品を位置させて水平方向に安定させる構成として把握できるので、当該事件の第6項発明は、明確に記載されているといえる。))

 

【留意事項】

 米国のように一定の要件を備えた場合を機能式請求項として認め、その機能式請求項の処理を別途に規定していない以上、機能式請求項であっても一律的に発明の詳細な説明に開示された構造、材料、行為とその均等物に限定されると出願発明を限定解釈するのは許容されないと見做すべきである。特許要件を判断するために発明の技術構成を特定するに当たって、特別な事情のない限り、特許請求の範囲の記載に基づいて特定しなければならず、発明の詳細な説明や図面などの他の記載により特許請求の範囲を限定解釈することはできないというのが大法院判例の基本的立場である。米国から導入した概念である機能式請求項を、これを直接規律する法規定がない状態で、特許請求の範囲の解釈方法に適用される一般原則と完全に離れて機能式請求項だけに対して具体的実施例を中心に限定解釈するのは特許法全体の調和の取れた解釈、運営の面でも好ましくないと考えられる。ただし、権利範囲確認、侵害訴訟の大法院判例は、機能式(機能的表現)請求項に対して、公知技術除外、出願経過参酌、詳細な説明のサポート不足などの理由で発明の保護範囲を限定することを出願審査段階より広く許容していて、特許要件の判断においても時々このような解釈基準が適用されているので、請求項の機能的表現の解釈においては上記のような点を参酌し機能的表現により特定される発明が何であるかを探求することに注意を傾ける必要がある。

■ソース
大法院判決2007年9月6日付宣告2005후1486
http://glaw.scourt.go.kr/jbsonw/jbsonc08r01.do?docID=3D5FC82B3D2DA046E043AC100C64A046&courtName=대법원&caseNum=2005후1486&pageid=#
■本文書の作成者
正林国際特許商標事務所 弁理士 北村明弘
■協力
特許法人AIP
一般社団法人 日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期

2013.01.08

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