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(台湾)進歩性立証のための追加データ(実験成績証明書)について示された事例
2013年05月23日
■概要
進歩性の判断は、特許請求の範囲に記載されている技術的特徴を容易に想到できるか否かを基本としており、実験データの提出により係争発明の効果を立証し得るが、該立証する効果そのものが、その発明の属する分野における通常の知識を有する者が先行技術及び出願前の通常の知識に基づいて予期し得るものであれば、実験データを提出したとしても、進歩性を有することにはならない。■詳細及び留意点
100年民專上字第21号案において、特許権者は実験データを追加することで、係争発明が主張する効果を奏することを証明することを試みたが、追加した実験データが証明した効果は引証文献を参酌して予期し得る範囲内のものであり、且つ係争発明と引証文献との使用分量の相違により生じる効果の相違を説明していないため、係争発明の進歩性を支持することはできない旨が示された。
参考(智慧財産法院民事判決の判決理由より抜粋):
此外,上證10、11為系爭專利申請過程中所提之實驗數據,縱可證明系爭專利具有其所謂之功效,惟因該功效已為申請前所屬技術領域中具通常知識者,經由先前技術(被證7)及通常知識所能預期,難認被證7 即具進步性。且上證10、11之該等數據僅係用來證明每週1次使用70毫克之功效,並無與每週1 次使用80毫克的比較結果,並不能用以證明每週1 次使用70毫克較每週1次使用80毫克有何增進功效。
(日本語訳「この他、上証10、11は係争発明の出願中に提出された実験データであり、例え係争発明が主張する効果を奏することを証明したとしても、該効果は出願前にその発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が先行技術(被証7)及び通常の知識を介して予期し得るものであるため、被証7が進歩性を有すると認めることはできない。また、上証10、11の前記データは単に毎週1回70mgを使用する場合の効果を証明するためのものであって、毎週1回80mgを使用する場合との比較結果がないため、毎週1回70mgの使用が毎週1回80mgの使用に比べると、どれぐらい効果が増進するかを証明していない。」)
【留意事項】
実験データの追加は、係争発明の有効性(進歩性)の証明の助けになり得るが、実験データが提供する情報が引証文献を参酌して予期できる場合や、係争発明と引証文献との効果の相違を説明できない場合は、依然として係争発明が進歩性を有することの根拠としては不十分であると考えられる。
■ソース
智慧財産法院100年民専上字第21号民事判決■本文書の作成者
知崇国際特許事務所 弁理士 松本征二■協力
萬國法律事務所 鍾文岳一般社団法人 日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期
2013.01.07