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(台湾)進歩性の基本的な論理構築手法が示された事例

2013年05月16日

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■概要
進歩性の論理構築は主に、係争特許の請求の範囲の記載内容及び引証文献の開示内容をそれぞれ確認し、そして、両者の差異を比較した後、出願前のその発明の属する技術分野における技術水準及び通常の知識に基づいて、該差異の内容を容易に想到できるどうかを判断することにより行われる。また、進歩性の判断においては、顕著な効果を奏するか否かが一つのポイントとなる。
■詳細及び留意点

 智慧財産法院100年民専上字第21号事件においては、係争発明と先行技術との使用分量の相違がその発明の属する分野における通常の知識を有する者が容易に想到できるものであるか、予期し得ない効果を奏するか否かについて争われた。

 

 判決では、係争発明の出願前に、当該技術分野における通常の知識を有する者がアレンドロネートの服用による胃腸障害副作用を知っており、かつ引証文献に二通りの使用分量について開示しているため、その発明の属する分野における通常の知識を有する者が「投薬頻度の減少及び投薬の使用分量の増加が胃腸副作用を低減する可能性がある」ことを合理的に予期でき、その上、最も好ましい使用分量に調整することは一般に行われる試験に過ぎないことから、係争発明は進歩性を有しないと判示した。

 

 一方、智慧財産法院98年民専訴字第95号においては、請求項1に係る発明である、タキサン誘導体溶液のエタノール体積の百分率が5%より小さいことが、引証から容易であるか否かが争われた。

 

 判決では、エタノールを取り除いて溶液中のエタノールを少量にするとの教示は引証2に記載されているが、引証1と引証2を組み合わせても、請求項1のエタノールの体積百分率が5%より小さい必要があるとの技術的特徴を教示していないことを認定し、さらに、請求項1に係る発明の組成物は、エタノール及び界面活性剤の含量を低減でき、逆にタキサン誘導体の使用分量を増やすことができるので、先行技術と比較してエタノール及び界面活性剤が引き起こすアルコール中毒、急性アレルギーの症状を防止することができるという顕著な効果を奏することを認定し、請求項1に係る発明は進歩性を有すると判示した。

 

参考(智慧財産法院民事判決の判決理由より抜粋):

 

1.智慧財産法院100年民専上字第21号

系爭專利申請專利範圍更正本第1項之技術特徵包括「治療骨質疏鬆之醫藥組合物」、「亞倫多酸活性成份量70毫克」、「每週1 次的單位劑量」以及「錠劑」,然被證7 已揭示「每週口服1次40毫克或80毫克之亞倫多酸鹽錠劑以治療骨質疏鬆」之技術特徵,兩者之醫藥用途(治療骨質疏鬆)、所使用之活性成分(亞倫多酸鹽)以及投藥週期(每週1次)均相同,其差異僅在於劑量有70毫克與80毫克之不同,該10毫克之差異,雖上訴人主張系爭專利有降低胃腸副作用之功效,惟於系爭專利說明書並無何證明其具有無法預期之功效。又系爭專利申請前,已知口服亞倫多酸鹽用來治療骨質鬆症有胃腸之副作用及服藥困難之問題,且被證7針對治療骨質疏鬆症之治療方式,提出「每週口服1次40毫克或80毫克之亞倫多酸鹽」之建議方案,對於所屬技術領域具有通常知識者而言,已可合理預期「減少投藥頻率及提高投藥劑量」,可能有助於降低胃腸副作用、克服投藥問題,而會嘗試將每日投藥1次改成每週投藥1次且提高投藥之劑量,至於調整最佳劑量,此為一般例行性之試驗,為所屬技術領域具有通常知識者所能輕易完成者。故系爭專利申請專利範圍更正本第1 項不具進步性。

 

(日本語訳「訂正後の請求項1に係る発明の技術的特徴は、「骨粗鬆症を治療する医薬組成物」、「アレンドロン酸活性成分の分量70mg」、「毎週1回の単位使用分量」及び「錠剤」を含んでいる。一方、被証7は「毎週服用1回40mg又は80mgのアレンドロネート錠剤により骨粗鬆症を治療する」との技術的特徴を開示している。両者は、医薬用途(骨粗鬆症の治療)、使用する活性成分(アレンドロネート)及び投薬頻度(毎週1回)において同じであり、使用分量が70mgと80mgと異なっている点で相違する。該10mgの相違について、上訴人は、係争発明は胃腸副作用を低減する効果を奏すると主張したが、係争特許明細書からは予期し得ない効果を奏することを証明できていない。また、係争特許出願前に、アレンドロネートの服用が骨粗鬆症の治療に伴う胃腸副作用及び服薬困難との問題に有用であることが知られており、かつ被証7は骨粗鬆症の治療方法について「毎週1回40mg又は80mgのアレンドロネートの服用」を開示している。したがって、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者にとって、「投薬頻度の減少及び投薬の使用分量の増加」が胃腸副作用の低減や投薬問題の克服を助ける可能があることを合理的に予期でき、毎日投薬1回を毎週投薬1回にしたり、投薬の使用分量を増加する等の変更を試み、最も好ましい使用分量に調整することは一般に行われる試験に過ぎず、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に想到できるものである。よって、訂正後の請求項1は進歩性を有しない。」)

 

2.智慧財産法院98年民専訴字第95号

系爭專利申請專利範圍請求項1 為一未經灌注溶液稀釋的組合物,即一種包含高劑量特烷衍生物之溶液,其中乙醇體積百分比須小於5%,雖引證1 已揭示一種適合藉稀釋製備可注射灌注液之組合物,其中紫杉醇衍生物濃度為20毫克/毫升,而移除乙醇以得到少量乙醇之教示亦見於引證2,然引證1及引證2 之組合並未教示系爭專利請求項1 所示乙醇體積百分比須少於5%之技術特徵,且系爭專利請求項1 所示組合物能有效降低乙醇及界面活性劑之含量,提高組合物中特烷衍生物之劑量,避免先前技術為注射足夠劑量之活性成分而需注射大量乙醇、界面活性劑所導致之酒精中毒、急性過敏之症狀,具有顯然之進步性,故引證1 與引證2 之組合無法證明系爭專利申請專利範圍請求項1 不具進步性。

 

(日本語訳「請求項1に係る発明は、溶液の注入により希釈されていない組成物、すなわち、高使用分量を含むタキサン誘導体の溶液であり、エタノール体積の百分率が5%より小さい必要がある。一方、引証1は、希釈による注射可能な注入液の製造に適する組成物を開示しており、そのうち、タキソール誘導体の濃度が20mg/mlであり、エタノールを取り除いて少量のエタノールを得るとの教示も引証2に見られている。しかしながら、引証1と引証2を組み合わせても、請求項1に係る発明のエタノールの体積百分率が5%より小さい必要があるとの技術的特徴を教示していない。さらに、請求項1に係る発明の組成物は、エタノール及び界面活性剤の含量を有効に低減することができ、且つ組成物におけるタキサン誘導体の使用分量を増やすことができるので、先行技術において十分な使用分量の活性成分を注射するために用いられた大量のエタノール及び界面活性剤が引き起こすアルコール中毒、急性アレルギーの症状を防止することができるという顕著な効果を奏する。したがって、引証1と引証2との組み合わせは、請求項1に係る発明が進歩性を有しないことを証明していない。」)

 

【留意事項】

 引証文献が、係争発明の問題解決のための手段又は明確な示唆をしている場合であって、出願前の通常の知識から考えれば、係争発明を容易に想到できるものであれば、進歩性を有しないと判断される可能性が高い。

 

 一方、係争発明が、引証文献を組み合わせた発明より顕著な効果を奏する場合には、進歩性を有すると判断される可能性が高い。

■ソース
1.智慧財産法院100年民専上字第21号民事判決
2.智慧財産法院98年民専訴字第95号民事判決
■本文書の作成者
知崇国際特許事務所 弁理士 松本征二
■協力
萬國法律事務所 鍾文岳
一般社団法人 日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期
2013.01.07
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