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(韓国)開放形の記載形式による請求項の解釈に関する事例

2013年05月10日

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■概要
大法院は、請求項の記載形式に関して、特許発明の請求項が「ある構成要素を含むことを特徴とする方法(物)」の形式で記載された場合は、その請求項に明示的に記載された構成要素の全部に加えて、記載されていない要素を追加して実施する場合にも、その特許発明の権利範囲に属することは当然であり、さらに上記の形式により記載された請求項は、明示的に記載された構成要素のみならず、他の要素を追加して実施する場合までも予想していると見做される、と判示した。本件は、記載不備がないとした原審の判断を支持し、また進歩性が否定されないとした原審の判断を支持した事例である。
■詳細及び留意点

 (1) 当該事件の特許審判院の審決は、記載不備に関して、(ⅰ)当該事件の特許発明が発明の必須構成に関する記載がないため特許法第42条第4項第1号及び第3号に違反し、(ⅱ)発明の詳細な説明が特許発明を実施するのに充分な程度で技術を開示していないため第42条第3項に違反したと判断した。

 これに対して、特許法院の原審判決は、審決が指摘したキースキャンコードの記載不備などについて、発明の詳細な説明で詳しく記載しなくてもその発明の属する技術分野で通常の知識を有した者(平均的技術者)が容易に理解することができ、判定結果に応じて単語をハングルあるいは英文に変換する段階も入力語節に対するスキャンコードをハングル語節あるいは英文語節に変換するもので、平均的技術者が容易に実施できることを理由として、当該事件の特許発明の請求項は、明確に記載されており、発明の詳細な説明により実施することができる、と判断した。

 これに対して上告理由は、「語節データの管理、貯蔵及び制御過程」など(現在入力される文字列を貯蔵するだけでなく入力モードに対応する対応モードの文字列も別の貯蔵場所に貯蔵されなければならず、貯蔵された入力モードの文字列と対応モードの文字列が読み出される時点及び制御など)の記載が省略されているため、(ⅰ)必須構成要素が漏れていて請求項は記載が明確でなく、(ⅱ)発明の詳細な説明の記載が不備となったと主張した。

 

 (2) 当該事件の審決の判断と上告理由は、当該事件の特許発明が必須構成要素を漏らしたといい、原審判決は、当該事件の特許発明が記載してない構成要素は当該技術分野で通常の知識を有した者が困難を要せず追加して実施できることであるため記載不備に該当しないというものである。問題は、原審判決や上告理由が当該事件の特許発明の請求項が開放形の請求項であるか(comprising)あるいは閉鎖形の請求項であるか(consisting of)を明らかにしなかったことである。当該事件の特許発明の請求項の結論部分(最後の部分)は、全て「…含むことを特徴とする…」という型で記載されている。したがって、争点は、「…含むことを特徴とする…」という記載が「…のみで構成された発明」を意味するか、あるいは「…含むことを特徴としていて、その発明を実施することにおいて他の構成要素も追加できる発明」を意味するかである。

 

 (3) 本件の大法院判決は、特許法第42条における、請求項の記載形式とその解釈に関して、「特許発明の請求項が『ある構成要素を含むことを特徴とする方法(物)』という形式により記載された場合、その特許発明の請求項に明示的に記載された構成要素全部に加えて、記載されていない要素を追加して実施する場合も、その記載された構成要素を全て含めているという事情に変わりはないので、そのような実施がその特許発明の権利範囲に属することは当然であり、さらに上記の形式により記載された請求項は、明示的に記載された構成要素のみならず、他の要素を追加して実施している場合までも予想していると見做すべきである。」という法理を述べている。

 また、特許法第42条第4項に関して、「同項第1号は『特許請求の範囲が詳細な説明により裏付けられること』を要求している。その意味は、請求項が特許出願当時の技術水準を基準として、その発明と関連した技術分野で通常の知識を有した者(以下「通常の技術者」という)の立場から見て、その特許請求の範囲と発明の詳細な説明との各内容が一致し、その明細書だけで特許請求の範囲に属する技術構成やその結合及び作用効果を一目瞭然に理解できなければならないことである(大法院判決 2003年8月22日付宣告2003후2051、2005年11月25日付宣告2004후3362、各参照)。第2に、同項第2号は『発明が明確且つ簡潔に記載されること』を要求している。その趣旨は、特許法第97条において特許発明の保護範囲が特許請求の範囲に記載された事項により定められると規定されていることに照らすと、請求項には明確な記載だけが許容されるということであり、発明の構成を不明瞭に表現する用語は原則的に許容されない。さらに特許請求範囲の解釈は明細書を参照して行われることに鑑みると、特許請求の範囲には発明の詳細な説明で定義している用語の定義と異なる意味で用語を使用することなど、結果的に特許請求の範囲を不明瞭にすることも許容されない。最後に、同項第3号は、請求項が『発明の構成になくてはならない事項だけで記載されること』を規定していて、この規定は、出願発明の特許後にその特許請求の範囲において発明の構成に必要な構成要素を全て記載しなかった点を挙げて、特許された当時に記載されなかった構成要素をもって最初から記載されたように含めて解釈すべきであると主張することができないのはもちろん、請求項に記載された構成要素は全て必須構成要素として把握されなければならず、一部の構成要素をその重要性が劣っているなどの理由により必須構成要素ではないと主張できないこと(大法院判決 2005年9月30日付宣告2004후3553参照)を確認したと見做すべきである。」と述べている。

 特許法第42条第3項に関して、「一方、特許法第42条第3項は、発明の詳細な説明に通常の技術者が容易に実施できる程度までその発明の目的、構成及び効果を記載しなければならないと規定している。その意味は、特許出願された発明の内容を第3者が明細書だけで容易に分かるように公開し、特許権として保護を受けようとする技術的内容と範囲を明確にすることであるので、通常の技術者が明細書の記載により出願時の技術水準から見て特殊な知識を付加しなくても、当該発明を正確に理解でき、同時に再現できる程度をいう(大法院判決 1999年7月23日付宣告97후2477、2005年11月25日付宣告2004후3362など参照)。博士論文は、公共図書館や大学図書館に入庫された場合、一般公衆がその記載内容を認識できる状態にあることになり(大法院判決 1996年6月14日付宣告95후19、2002年9月6日付宣告2000후1689 など参照)、特別な事情のない限り、通常の技術者が過度な実験や特別な知識を加えなくてもその内容を理解できるといえる。」と述べている。

 

 (4) 被告は、上告理由で、当該事件の第1項ないし第16項の発明が詳細な説明により裏付けられておらず、必須構成要素(現在入力される文字列を貯蔵することだけではなく、入力モードに対応する対応モードの文字列も別の貯蔵場所に貯蔵しなければならず、貯蔵された入力モードの文字列と対応モードの文字列が読み出される時点及び制御など)を漏らしたので、第42条第4項(第1号及び第3号)に違反していると主張した。

 しかし、本件の大法院判決は、上記の法理と記録に照らして、「『韓·英自動転換方法』という名称の当該事件の特許発明の特許請求の範囲のうち、独立項の当該事件第1項及び第17項の発明は、全て『ある段階とある段階を含めて行われることを特徴とする韓·英自動転換方法』と記載されていて、明示的に記載された構成要素以外に他の要素を追加して実施することまでも予定しているといえる。さらに、当該事件の特許発明は、語節データの管理、貯蔵及び制御過程の改善に発明の目的や効果があるのではなく、また、上記過程を特許請求の範囲の構成要素の一つとして含ませることにより特許要件の判断において有利ではあるが権利範囲を狭くするか、あるいは、上記過程を特許請求の範囲の構成要素として記載しないことにより権利範囲を広めながら特許要件の判断において不利な立場に立つかは、出願人の意思及び判断に関わる問題であるので、··· 特許法第42条第4項第1号ないし第3号に違反するものであるとはいえない。」と判断した。

 

 (5) 被告は、更に上告理由で、当該事件第17項ないし第22項の発明が単語と助詞を分離する段階を必須構成要素としているにも拘わらず、これを記載しなかったので特許法第42条第4項第1号及び第3項に違反していると主張した。

 しかし、本件の大法院判決は、「当該事件の特許発明において、『語節の入力を受ける段階』は従来の公知技術のものと同一であるから、特別な説明を必要としないし、それに対する説明を省略したことは記載不備にならない。『語節で単語と助詞を分離段階』においては、··· 単に当該事件の特許発明の明細書が博士論文を引用して特許請求の範囲の内容を説明しているという事情だけでもって、明細書の発明の詳細な説明が特許法第42条第3項に違反しているといえない。・・・」と判示した。

 

 (6) 以上のとおり、大法院は、記載不備に関する原審判決の判断を支持した。さらに、進歩性についても否定されないとする原審判決の判断を支持し、上告を棄却した。

 

参考 (大法院判決2006年11月24日付宣告2003후2072【登録無効(特)】より抜粋):

 

1. 기재불비에 관한 상고이유에 대한 판단

가. 특허법 제42조의 해석

(1) 청구항의 기재 형식과 그 해석에 관하여

특허발명의 청구항이 ‘어떤 구성요소들을 포함하는 것을 특징으로 하는 방법(물건)’이라는 형식으로 기재된 경우, 그 특허발명의 청구항에 명시적으로 기재된 구성요소 전부에 더하여 기재되어 있지 아니한 요소를 추가하여 실시하는 경우에도 그 기재된 구성요소들을 모두 포함하고 있다는 사정은 변함이 없으므로 그와 같은 실시가 그 특허발명의 권리범위에 속함은 물론이며, 나아가 위와 같은 형식으로 기재된 청구항은 명시적으로 기재된 구성요소뿐 아니라 다른 요소를 추가하여 실시하는 경우까지도 예상하고 있는 것이라고 볼 것이다.

 

(日本語訳「1. 記載不備に関する上告理由に対する判断

イ.特許法第42条の解釈

(1)請求項の記載形式とその解釈に関して

特許発明の請求項が「ある構成要素を含むことを特徴とする方法(物)」という形式により記載された場合、その特許発明の請求項に明示的に記載された構成要素全部に加えて記載されていない要素を追加して実施する場合も、その記載された構成要素を全て含めているという事情に変わりはないので、そのような実施がその特許発明の権利範囲に属することは当然であり、さらに上記の形式により記載された請求項は、明示的に記載された構成要素のみならず、他の要素を追加して実施している場合までも予想していると見做すべきである。」)

 

【留意事項】

 必須構成要素に関する旧特許法規定によると、第42条第4項は、「特許請求の範囲には、保護を受けようとする事項を記載した項(以下『請求項』という)が1又は2以上でなければならない。その請求項は次の各号に該当しなければならない」と規定し、「1.発明の詳細な説明により裏付けられること、2.発明が明確且つ簡潔に記載されること、3.発明の構成になくてはならない事項だけで記載されること」などを列挙し、請求項は、(ⅰ)発明の詳細な説明により裏付けられていて、(ⅱ)明確·簡潔でなければならず、(ⅲ)請求項の記載事項は全て必須構成要素であることを規定する一方、同条第3項は、「発明の詳細な説明には、その発明の属する技術分野で通常の知識を有した者が容易に実施できる程度までその発明の目的·構成及び効果を記載しなければならない」と規定し、請求項は発明の詳細な説明により平均的技術者が実施できることを規定している。

 

 しかし、第42条第4項第3号の場合、これをあまり厳格に適用すると全ての構成要素を全部記載するよう強いることとなり、請求項に記載された構成要素は全て必須構成要素である原則が当然受け入れられている状況下でこれを敢えて請求項の記載要件として規定する必要があるかに関しては疑問があり、必要な構成要素がないため希望する効果が得られない場合に対する記載不備の根拠条文は、第42条第4項第3号ではなく、同項第1号や第2号であることが妥当である。同項第3号の規定と同一規定を有していた日本特許法では1994年の改正により同号と対応する規定が削除され、韓国特許法でも2007年1月3日付の改正特許法で同号の規定が削除された。韓国法は、同号の規定を削除した代わりに、第42条第6項に「第2項第4号の規定により特許請求の範囲を記載するときには、保護を受けようとする事項を明確にするため発明を特定するのに必要であると認められる構造·方法·機能·物質又はこれらの結合関係などを記載しなければならない」という規定を新設した。この新設規定は、拒絶理由ではないため、宣言的意味だけを有し、請求項の記載事項中の一つとして「機能」を例示することにより請求項に機能を記載すること自体を明示的に許容しているが、その「機能」の記載内容は、依然として「明確性」と「簡潔性」の記載要件を充足しなければならない。

■ソース
大法院判決2006年11月24日付宣告2003후2072
http://glaw.scourt.go.kr/jbsonw/jbsonc08r01.do?docID=350F354FBA61B0AAE0438C013982B0AA&courtName=대법원&caseNum=2003후2072&pageid=#
■本文書の作成者
正林国際特許商標事務所 弁理士 北村明弘
■協力
特許法人AIP
一般社団法人 日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期
2013.01.08
■関連キーワード
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