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台湾商標、専利訴訟手続概要(侵害型)

2013年05月02日

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■概要
台湾では、専利権、商標権、著作権などの知的財産権の侵害訴訟は知的財産裁判所(中国語「智慧財產法院」)が管轄するが、地方裁判所を第一審の裁判所として選択することも可能である。第一審の控訴は知財裁判所に対して行い、上訴は最高裁判所(中国語「最高法院」)に対して行う。日本と同様、三審制である。
■詳細及び留意点

 

(1)訴訟提起

(ⅰ)裁判所の選択(智慧財産法院組織法第3条第1号)

専利法、商標法、著作権法、公平交易法により保護される知的財産権に関して生じた民事訴訟案件は、知的財産裁判所の優先管轄なため、知的財産の侵害案件は知的財産裁判所に提訴するのが基本であるが、一般の地方裁判所に提訴することも可能。

(ⅱ)必要書類(民事訴訟法第116条)

・  裁判所に提出する訴状には、当事者、訴訟物及び請求の趣旨を明記する。

・  訴訟代理人を委任した場合は委任状(会社印と代表者印を押捺)が必要。外国法人の場合、委任状について公証及び認証を求められる場合がある(台湾模倣品対策マニュアル145頁)。

(ⅲ)訴訟費用(民事訴訟法第77の13条)

裁判所に支払う金額は、被告への請求額の10万NTD(新台湾ドル)以下の部分は1000NTD、10万NTD超から100万NTDまでの部分には1万NTDごとに100NTD、100万NTD超から1000万NTDまでの部分には1万NTDごとに90NTDを徴収すると定められ、これらを合計した金額が裁判所に納める金額となる。例えば、請求額が500万NTDの場合、500万NTD=10万NTD+90万NTD+400万NTDのように各層に分解し、各層単位で徴収額を算出して合計し、裁判所に納める金額を算出する。

 

(2)訴訟の流れ

(ⅰ)手続審査

・  訴状を提出すると手続の不備が審査される(民事訴訟法第249条)。

・  その後、訴状の副本が被告に送付される(民事訴訟法第251条第1項)。

・  被告は答弁書を提出し、原告と争う部分と争わない部分を明確にする。答弁書の提出期限は訴状の受領後10日以内であるが、裁判所が既に口頭弁論の期日を指定している場合は、口頭弁論期日の5日前まで提出できる(民事訴訟法第267条第1項)。

・  原告及び被告は、法律上の争点、理由及び証拠などを記載した書状を提出し(民事訴訟法第266条)、攻撃防御方法を開示する。ただし、提出する攻撃防御方法が当事者又は第三者の営業秘密に関わるもので、当事者が申し立てを行い法院が適当であると認める場合、非公開で裁判を行うことができる(智慧財産案件審理法第9条、第11条、第12条等)。

(ⅱ)準備手続

・  手続審査段階で提出された原告と被告の攻撃防御方法に基づき、裁判所は争点を整理し(民事訴訟法第268の1条第2項、第270の1条第1項第3号、第2項、第3項及び第271条第3号)、証拠の調査方法や順序を確立し、審理期日を定める(民事訴訟第286条)。

・  また、原告と被告は、第1回目の口頭弁論における攻撃防御方法を記載した書状を裁判所と相手方に送付する(民事訴訟法第265条第1項)。

(ⅲ)口頭弁論

技術的範囲の解釈、権利の有効性、侵害の可否等の侵害の有無の審理と損害賠償額の審理が行われる。口頭弁論は必要に応じた回数が行われる。

 

(3) 裁判の終結

(ⅰ)判決による終結

裁判官に侵害又は非侵害の心証形成がなされると審理は終結し、判決が言い渡される(民事訴訟法第381条第1項)。

(ⅱ)和解による終結

和解は、裁判所による和解勧告や、当事者が裁判所などへの申立てによって行われる。和解が調書に記載されて成立すると、確定判決と同じ効力が発生する(民事訴訟法第377条、同第377の1条、同第380条)。

(ⅲ)調停による終結

調停には強制調停と任意調停があり、当事者が合意すれば、裁判係属中でも調停手続きに入る。双方当事者が合意して調書に記載すると、調停成立となり、確定判決と同一の効力をもつ。調停が成立しなかったときは、訴訟は続行される。

(ⅳ)訴訟の取下げ

・  判決が確定するまで、原告は訴えの全部又は一部を取下げることができる。被告が既に口頭弁論を行っている場合は、被告の同意が必要となる(民事訴訟法第262条-第263条)。

・  訴訟費用は原告負担となる。第一審口頭弁論終結前に取下げると、取下げ後三ヶ月以内であれば、当該審級で納付した裁判費用の3分の2の還付を請求できる(民事訴訟法第83条)。法廷外での和解交渉妥結により取り下げる場合がある。

 

(4)知的財産裁判所(第二審)への上訴

(ⅰ)上訴期間

・  第一審の判決の送達を受けた翌日から20日以内(民事訴訟法第440条)である。この期間は不変期間(延長不可)である。

・  判決の宣示若しくは公告後送達前に提起した上訴も有効とされる(民事訴訟法第440条)。

(ⅱ)審理

・  第一審と概ね同じといえる。

・  新たな攻撃防御方法の提出は、第一審裁判所に法例違反があって提出できなかった場合、第一審口頭弁論手続きが終結した後に発生した事実、第一審で提出済みの攻撃防御方法の補足に該当するなど一定の場合のみ認められる(民事訴訟法第447条)。

(ⅲ)上訴の取下げ

・  終結判決が出る前まで取下げ可能である(民事訴訟法第459条)。

・  取下げ後3ヶ月以内に当該審級で納付した裁判費用の3分の2の還付請求ができる(民事訴訟法第83条)。

 

(5)最高裁判所(中国語「最高法院」)(第三審)への上訴

(ⅰ)上訴期間

・  第二審判決の送達を受けた翌日から20日以内(不変期間)である。

・  判決の宣示や公告後送達前に提起した上訴も有効である(民事訴訟法第481条において準用する同法第440条)。

(ⅱ)上訴要件

民事訴訟法第466条第1項は上訴要件の一つとして、上訴により得られる利益が100万NTDを超えることとしているが、同条第3項に基づいて、司法院は上訴利益の金額を150万NTD超に上方修正している(民事訴訟法第466条第1、3項、2002-1-29司法院(91)院台庁民一字第03075号通知)。

(ⅲ)審理

・  法律審のため、第二審判決に法令違反があることを理由とするものでなければならない(民事訴訟法第467-469条)。

・  上訴状の副本の送達を受けた被上訴人は、上訴状の送達後15日以内に答弁書を提出することが可能である(民事訴訟法第470条-第472条)。

(ⅳ)上訴の取下げ

・  終結判決が出る前まで取下げ可能である(民事訴訟法第469条)。

・  取下げ後3ヶ月以内に当該審級で納付した裁判費用の3分の2の還付請求可能である(民事訴訟法第83条)。

 

■ソース
・智慧財産法院組織法(日本語版)
http://ipc.judicial.gov.tw/ipr_japan/index.php?option=com_content&task=view&id=19&Itemid=117 ・智慧財産案件審理法(日本語版)
http://ipc.judicial.gov.tw/ipr_japan/index.php?option=com_content&task=view&id=20&Itemid=121 ・法院組織法
http://law.moj.gov.tw/LawClass/LawAll.aspx?PCode=A0010053 ・民事訴訟法(英文あり)
http://law.moj.gov.tw/LawClass/LawAll.aspx?PCode=B0010001 ・2002-1-29司法院(91)院台庁民一字第03075号通知
http://jirs.judicial.gov.tw/FINT/PrintFInt04.asp?etype=I00000%2C+I001**&hir=all&N0=&sel_jword=&N1=&N2=&Y1=&M1=&D1=&Y2=&M2=&D2=&kt=&kw=%A4W%B6D%B2%C4%A4T%BCf&keyword=%A4W%B6D%B2%C4%A4T%BCf&sdate=&edate=&ktitle=&lc1=&lc2=&lc3=&hi=all&EXEC=%ACd++%B8%DF&datatype=etype&typeid=I00000&page=1&recordNo=10 ・特許庁委託台湾模倣対策マニュアル(2013年3月)
http://www.jpo.go.jp/torikumi/mohouhin/mohouhin2/manual/pdf/taiwan7.pdf
■本文書の作成者
聖島国際特許法律事務(作成:2012年10月3日)
特許庁総務部企画調査課 根本雅成(改訂:2013年5月2日)
■協力
一般財団法人比較法研究センター 木下孝彦
特許庁総務部企画調査課 山中隆幸
■本文書の作成時期

2013.05.02

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