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(台湾)その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が明らかに予期できる効果であるため選択発明の進歩性が否定された事例

2013年05月09日

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■概要
係争特許第I288008号の「省スペースのエリプティカル・トレーナー」では、請求項1に係る発明と証拠2との開示関係は選択発明の関係にある。すなわち、係争発明は、証拠2に明確に開示されている大きい範囲から、明確に開示されない小さい範囲にすることをその技術的特徴とする選択発明であり、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が効果を明らかに予期できると認定されたため、請求項1に係る発明は進歩性を有しないと判断された。
■詳細及び留意点

 智慧財産法院は、請求項1に係る発明と証拠2及び3との主要な差異が「ロッドの長さを縮め、フライホイールの高さを下げることにより、各ロッド又は接続点軌跡を数値上で変える」ことであるため、係争発明は、証拠2に開示されている大きい範囲から小さい範囲に選択することをその技術的特徴とする選択発明と認定した。特許権者は、証拠2に比べて本件発明は数値範囲を限定することで「省スペース」との優れた効果を奏すると主張したが、智慧財産法院は、ロッドの長さの短縮やフライホイールの高さが下がることによる省スペースは、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が明らかに予期できることから、請求項1に係る発明は容易に想到でき、進歩性を有しないと判示した。

<本願発明>

<本願発明>


<証拠2>

<証拠2>


<証拠3>

<証拠3>

 

参考(智慧財産法院行政判決の判決理由より抜粋):

 

經查,系爭專利申請專利範圍第1 項與證據2 、3 整體而論之差異,主要在桿體長度之縮短,並調低飛輪高度而已,使各桿體或接點軌跡數值上之改變。惟由系爭專利與證據2 揭露關係選擇發明關係相當,即系爭專利係從證據之較大範圍中選擇證據未明確揭露之較小範圍作為其技術特徵之發明,系爭專利桿體長度之縮減之調整或壓低飛輪與地面距離,本其然會使直接之節省空間之結果,顯為橢圓機所屬技術領域中具有通常知識者可預期,難稱有顯著之功效,故證據2 或3 可證系爭專利申請專利範圍第1 項不具進步性,證據2 結合證據3 當亦可證系爭專利申請專利範圍第1 項不具進步性。

 

(日本語訳「調べにより、請求項1に係る発明と証拠2、3との全体的に見る差異は、主にロッドの長さを縮め、フライホイールの高さを下げたのみであり、これにより、各ロッド又は接続点軌跡は数値上では変わる。しかしながら、係争発明と証拠2との開示関係は選択発明の関係に相当するものである。すなわち、係争発明は、証拠に明確に開示されている大きい範囲から、明確に開示されていない小さい範囲にすることをその技術的特徴として選択した発明である。しかしながら、係争発明におけるロッド長さの短縮調整やフライホイールの地面からの距離の短縮は、当然省スペースにつながることから、エリプティカル・トレーナーの属する技術分野における通常の知識を有する者が明らかに予期できるものであり、顕著な効果ということはできない。したがって、証拠2又は3に記載された発明に照らせば、請求項1に係る発明は進歩性を有しないことは明らかであり、更に、証拠2と証拠3に記載された発明の組み合わせからも、請求項1に係る発明が進歩性を有しないことは明らかである。」)

 

【留意事項】

 台湾専利審査基準第2-3-27頁乃至第2-3-28頁によれば、選択発明が先行技術と同一性質の効果を生じるものであって、且つ限定された数値が「臨界性(critical character)」の意義を備えるものであれば、即ち、より顕著な同一性質の効果を有する発明は容易に想到することができない、とされている。一方、その数値が「臨界性」の意義を有しなければ、該発明が容易に想到できるとされている。そして、「臨界性」は「当該分野の出願時の技術レベルに基づいて適当に解釈する。」と記載されていることから、台湾に特許出願をする際に、発明の内容が選択発明に関するものである場合、限定する数値が「臨界性」を有するかどうかについて留意する必要がある。

■ソース
智慧財産法院行政判決99年度行専訴字第145号
■本文書の作成者
知崇国際特許事務所 弁理士 松本征二
■協力
萬國法律事務所 鍾文岳
一般社団法人 日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期

2013.01.07

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