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(中国)立体商標の特別顕著性(識別性)について
2013年04月30日
■概要
商標法第11条は「顕著な特徴がない標章は商標として登録することができない。但し、使用を通じて顕著な特徴を獲得して容易に識別できるものとなった場合には、商標として登録することができる」と規定する。いわゆる商標の特別顕著性(識別性)の規定であるが、本件は、指定商品において通常見られるような包装形状は商標としての特別顕著性は認められず、使用による特別顕著性も認められないとされた判決である。■詳細及び留意点
本案に関する商標は添付写真が示すように、球体形状の3つのお菓子を含む包装物を立体商標(中国語「三维标志」)として出願したものである。この商標について高級人民法院は「全体から見ると、出願商標の透明な長方形容器は通用される包装物であり、その表面上の装飾帯は、出願商標の外観全体に占める割合は大きくなく、そのラベルは何れも空白である。容器を通してその中の金色の球状物を見ることができるが、出願商標が関係する公衆に与える視覚効果の主要なものは、内容物がある透明な長方形の容器であるため、商品の出所を識別する商標として機能することはない」と判断した。
また、使用による特別顕著性(識別性)獲得について、提出された証拠に示されている商標は「FERRERO ROCHER」の文字がラベルに表示されているが、出願商標のラベルでは同文字が消されている相違に着目して、「费列罗有限公司が原審において提出した上述の証拠は何れも、「FERRERO ROCHER」の字句を含まない出願商標が、中国大陸地区で既に使用を通じて顕著な特徴を取得したことを示すことは不可能である」として、使用による特別顕著性(識別性)獲得は立証されていなかったとして、一審判決を支持した。
参考(北京市高級人民法院行政判決书2008年3月12日付(2008)高行终字第28号より抜粋):
商标法第十一条规定,缺乏显著特征的标志不得作为商标注册;但经过使用取得显著特征,并便于识别的,可以作为商标注册。对于三维标志来说,仅有指定使用商品通用或者常用的包装物或者整体不能起到区分商品来源作用的,应当认定为缺乏显著特征。
本案中,申请商标的外观是一个透明的长方体容器,容器外有装饰带和标签,在未被装饰带和标签遮挡的部分能够看到容器内部排列的若干球状物。从整体上看,申请商标的透明长方体容器是一种通用的包装物,其上的装饰带在整个申请商标外观中所占比例不大,其标签也均为空白标签,虽然能够透过容器看到其中的金色球状物,但申请商标给相关公众带来的视觉效果主要还是有内容物的透明长方体容器,无法作为识别商品来源的标志,因此申请商标本身并不具有显著特征。
费列罗有限公司在原审中提交的用以证明申请商标已通过使用取得显著特征的证据并未在商标驳回复审阶段提交,费列罗有限公司也未就其没有提交上述证据的原因作出合理的解释。而且,上述证据仅有部分内容涉及申请商标在其申请日之前在中国大陆地区的使用情况,而在这部分证据中又有相当多的内容或是费列罗有限公司自行统计的数据、或是只有案外人的声明而无能够支持该声明内容真实性的证据。再者,由上述所有证据中的图片可以看出,费列罗有限公司并未实际使用过申请商标,其实际使用的是在显著位置标有“FERRERO ROCHER”字样的透明长方体容器及其装饰。综上,从上述证据提交的时间和证据的实质内容两方面进行分析,费列罗有限公司在原审中提交的上述证据均不能表明不含“FERRERO ROCHER”字样的申请商标在中国大陆地区已经通过使用取得了显著特征。
综上,申请商标缺乏便于相关公众识别商品来源的显著特征,不符合商标注册条件,费列罗有限公司关于其申请商标具有显著特征的上诉主张于法无据,本院不予支持。
(参考訳)
商標法第11条は「顕著な特徴がない標章は商標として登録できない。但し、使用を通じて顕著な特徴を獲得して容易に識別できるものとなった場合には、商標として登録できる」と規定する。立体商標について、単なる指定商品の通用又は常用の包装形式や全体として商品の出所を区別する役割を果たせないものは、顕著な特徴を欠如すると認定すべきである。
本案において、出願商標の外観は透明な長方形の容器であり、容器の外側に装飾帯とラベルを施し、装飾帯とラベルで遮られていない部分から、容器内部に配列されたいくつかの球体物が見える。全体から見ると、出願商標の透明な長方形容器は通用される包装物であり、その表面上の装飾帯は出願商標の外観全体に占める割合は大きくなく、そのラベルは何れも空白である。容器を通してその中の金色の球状物を見ることができるが、出願商標が関連公衆に与える視覚効果の主要なものは、内容物がある透明な長方形の容器であり、商品の出所を識別する商標として機能することはないから、出願商標本体が顕著な特徴を具備することはない。
费列罗有限公司は、原審において提出した出願商標が既に使用を通じて顕著な特徴を獲得したことを証明するための証拠を商標拒絶不服審判の段階で提出しておらず、费列罗有限公司は上述の証拠を提出しなかった理由についても、合理的な説明をしていない。また、上述の証拠は、一部だけは、出願商標がその出願日前に中国大陸における使用状況に関する内容であるが、この部分は相当多くの内容、费列罗有限公司が自ら行った統計データ又は訴外人の声明を含むが、その声明内容の真実性を支持する証拠はない。さらに、上述全ての証拠に含まれる写真から見ると、费列罗有限公司は実際に出願商標を使用しておらず、実際に使用しているものは、目立つ位置に「FERRERO ROCHER」の字句が表示された透明な長方形容器及び装飾である。上記を踏まえて、上述の証拠を提出した時期と証拠の実質内容の二つの面から分析すると、费列罗有限公司が原審において提出した上述の証拠は何れも、「FERRERO ROCHER」の字句を含まない出願商標が中国大陸地区で既に使用を通じて顕著な特徴を取得したことを示すことは不可能である。
よって、出願商標は関連公衆が容易に商品の出所を識別できる顕著な特徴を欠如しており、商標登録要件を具備しておらず、出願商標が顕著な特徴を有しているとの费列罗有限公司の上訴主張は法的根拠はなく、当裁判所は支持しない。
【留意事項】
商品の包装を立体商標として出願する場合、通常見られる包装形式と見られないようにする必要があるが、本案のように実際の使用態様を部分修正して出願すると、全体として特別顕著性(識別性)がないと判断された場合、使用による特別顕著性獲得を立証できなくなり、権利化の可能性を狭めてしまう恐れがある。特別顕著性(識別性)の立証に不安がある場合、使用による特別顕著性(識別性)獲得を主張する観点から、実際の使用態様で出願することを検討すべきである。
■ソース
北京市高級人民法院行政判決书2008年3月12日付(2008)高行终字第28号■本文書の作成者
特許庁総務部企画調査課 根本雅成■協力
北京林達劉知識産権代理事務所■本文書の作成時期
2012-08-23