アジア / 審判・訴訟実務
(中国)最高人民法院で審理されるケース
2013年04月26日
■概要
中国では現在二審制が採用されており、一つの訴訟に対し、原則的には高級人民法院を経て終審となるが、専利権訴訟のうち、請求金額が一定額を超える場合は、高級人民法院が第一審となり、その上級審は最高人民法院となる。また、一定の要件を満たせば、二審の終審後、当事者は再審を請求できる。■詳細及び留意点
最高人民法院で審理されるケースは、以下の通りである。
(1)請求金額が一定額を超える場合
訴訟請求額が2億元以上の第一審知的財産権民事案件、及び、請求額が1億元以上であり、かつ当事者一方の住所地がその管轄区にいない場合、又は渉外、渉港澳台(中国本土と香港/マカオ/台湾間における)第一審知的財産権民事事件については、高級人民法院が第一審を管轄し、その上級審は最高人民法院において行われる(2010年2月1日施行「各級人民法院が第一審知的財産権民事案件を管轄する標準に関する通知」第1項)。
(2)再審請求
二審の終審後、以下のいずれかに該当する場合には、当事者は最高位人民法院へ再審を請求することができる(最高裁判所による「中華人民共和国行政訴訟法」執行の若干の問題に関する解釈第72条)
(i)原判決、裁定認定事実の主な証拠が不足している
(ii)原判決、裁定の適用法律、法規に確かな誤りがある
(iii)法定プロセスに違反し、裁判の正確さに影響を与える可能性がある
(iv)その他法律、法規違反がある
(3)重大な影響力を有する案件等
全国で重大な影響力を有する第一審民事案件、最高人民法院が審理すべきだと考えられる案件の第一審民事案件について、最高人民法院は管轄することができる。
ただし、現時点において、最高人民法院よって第一審の知的財産事件が審理されたことはない(民事訴訟法第21条)。
【留意事項】
最近、最高人民法院が受理する各種知的財産権に係る再審件数は急増しているが、再審請求は拒絶されることが多い。統計によれば、2011年に申請された363件の知財再審のうち、256件が拒絶されており、その割合は70%にも上る。ただ、一旦受理されると翻る割合も高く、受理された案件の約80%を占める(再審請求に占める割合は約24%)。
■ソース
・中国民事訴訟法・各級人民法院が第一審知的財産権民事案件を管轄する標準に関する通知
http://www.court.gov.cn/qwfb/sfwj/tz/201002/t20100222_1511.htm ・最高裁判所による「中華人民共和国行政訴訟法」執行の若干の問題に関する解釈
・最高人民法院「最高人民法院知的財産権案件年度報告(2011)」
http://www.court.gov.cn/gaofaSearch/search/search.jsp?textfield=%E6%9C%80%E9%AB%98%E4%BA%BA%E6%B0%91%E6%B3%95%E9%99%A2%E7%9F%A5%E8%AF%86%E4%BA%A7%E6%9D%83%E6%A1%88%E4%BB%B6%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E6%8A%A5%E5%91%8A&button=%E6%90%9C%E7%B4%A2
■本文書の作成者
中原信達知識産権代理有限責任公司 副総経理 商標部部長 安翔北京林達劉知識産権代理事務所
■協力
特許庁総務部企画調査課 山中隆幸一般財団法人比較法研究センター 不藤真麻
■本文書の作成時期
2012.11.28