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(台湾)進歩性を証明するための実験データは、実験条件等の記載に不備がある場合や実験結果が従来技術を単に示している場合は参酌されない旨が判示された事例

2013年04月19日

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■概要
上訴人は、請求項1に係る発明が進歩性を有することを証明するために実験データを提出した。しかしながら、判決は、該実験条件等の情報、例えば、どの様な実験器具を用いたのか、どの様な検出方法を用いたか等の情報が記載されておらず、また、例え該実験結果が信用できたとしても、出願時の従来技術を証明したに過ぎないことから、請求項1に係る発明は進歩性を有しないと判示した。
■詳細及び留意点

 特許権者は、実験データを提出して請求項1に係る発明が進歩性を有することの証明を試みたが、智慧財産法院はこの主張を採用しなかった。

 すなわち、該実験データは、例えば、該実験が誰により行われたのか、どの様な器具を用いたのか、どの様な検出方法を用いたのか、試験対象が何であるのか、試験目的が何であるのか等の詳しい情報が欠如していることから、その実験内容等が真正であるか疑わしい旨が示され、記述と図面における角度が一致していないこと、どこの角度を計測したのか明記していないこと、計測した力の値の対象を説明していないことからも、実験データは疑わしい旨が示された。

 さらに、智慧財産法院は、該実験結果が信用できるとしても、「夾角が小さいほどきつく挟まれる」との技術的事項は当業者であれば周知の物理現象を証明しているに過ぎず、請求項1に係る発明が進歩性を有することを証明していないため、特許権者の主張は採用できないと判示した。

 

参考(智慧財産法院民事判決の判決理由より抜粋):

 

上訴人雖提出上證三實驗,稱系爭專利申請專利範圍第1項有進步性云云。惟上訴人並未說明該實驗由何人進行、採用何儀器、採用何檢測方法、測試對象為何、測試目的為何、如何得出該等實驗數據、報告由何人作成…等,其形式及實質之真正均屬可疑。況就上證三號實驗之數據,亦有下列可疑:上證三號第1頁(1)的橫向測試中,角度僅有90度、89度、88度,但曲線圖卻出現89.5度、88.5度所對應之數據;上證三號第2 頁(2)量測角度,但夾角的量測定義未標示說明,例如究竟是量測水平端與垂直端的內側邊緣或外側邊緣之夾角;上證三號第2 頁(3)雖記載為測量力量值,惟其測量之對象為何種力量?均未說明;上證三號第3 頁(4)的扣合外觀中,90度、89度、88度係人為標示,而非儀器量測之數據。且縱使實驗數據或實驗可信,其亦僅證明「夾角愈小夾得愈緊」此一熟悉該項技術者均知悉之物理現象,無法證明系爭專利申請專利範圍第1 項何以具有進步性。換言之,上訴人之實驗僅證明了申請專利當時習知之知識,且正因一般熟習該項技藝之人均知「夾角愈小夾得愈緊」,更足以證明系爭專利申請專利範圍第1 項「夾角略小於90度」之結構係熟習該項技藝之人可輕易思及完成者,而不具進步性。上訴人上開主張亦不足採。

 

(日本語訳「上訴人は上証三号の実験を提出して、請求項1に係る発明が進歩性を有すると主張した。しかしながら、上訴人は、該実験が誰により行われたのか、どの様な器具を用いたのか、どの様な検出方法を用いたのか、試験対象が何であるのか、試験目的が何であるのか、どの様にこれらの実験データを得たのか、報告が誰によって作成されたのかなどを説明していないため、その形式及び実験内容が真正であるのか疑わしい。また、上証三号の実験データは次のように疑わしい。上証三号第1頁(1)の横方向試験において、角度が90度、89度、88度となっているが、グラフにおいては89.5度、88.5度に対応するデータが記載されている。上証三号第2頁(2)において、角度の計測が記載されているが、夾角の計測の定義が説明されておらず、水平端及び垂直端の内側縁又は外側縁の何れの夾角を計測したのかも明らかではない。また、上証三号第2 頁(3)において、力の値と記載されているが、計測する対象が何の力であるのか不明である。更に、上証三号第3頁(4)の係合外観において、90度、89度、88度との数値は、器具によって計測したデータではなく、出願人が恣意的に記載した値と言わざるを得ない。そして、例え実験データ又は実験が信用できたとしても、「夾角が小さいほどきつく挟まれる」との技術的事項は当業者であれば周知の物理現象を証明しているに過ぎず、請求項1に係る発明が進歩性を有することを証明していない。言い換えれば、上訴人の実験は特許出願当時の従来技術を証明したに過ぎず、また、当該技術を熟知する者であれば「夾角が小さいほどきつく挟まれる」ことは周知であるので、請求項1に係る発明の「夾角がやや90度より小さい」との構造は、当業者であれば容易に想到できるものであり、進歩性を有しない。上訴人の上記主張も採用できない。」)

 

【留意事項】

 特許出願において、実験データは専利法第25条第1項規定の必要な記載事項ではないが、特許出願人は訴訟中に、補助的な証拠として関連する実験データを提出することができる。しかしながら、実験条件を明記する等、当該実験が客観的に行われたことを示すとともに、該実験データから得られた結論が、単に従来技術を追試したのではなく、進歩性を主張するに値するデータであることに留意すべきである。

■ソース
智慧財産法院民事判決97年度民専上字第9号
■本文書の作成者
知崇国際特許事務所 弁理士 松本征二
■協力
萬國法律事務所 鍾文岳
一般社団法人 日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期
2013.01.07
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