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(台湾)先行技術から容易に想到できる発明である場合、根拠なしで主張された補助的要因等を考慮する必要はない旨が判示された事例

2013年04月18日

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■概要
上訴人は、特許第I287489号「挟み部変形体構造の改良(三)」において、当該発明が進歩性を有するかどうかを判断する際に、商業上で成功したか、予期し得ない効果を奏するかなどの要因を考慮すべきであると主張した。判決は、特許要件である進歩性の判断ステップに従えば、出願前の先行技術の開示や教示等の内容に基づいて、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が、特許出願に係る発明が容易に想到でき、進歩性を有しないと十分に判断できるときは、補助的要因を根拠なしで主張する場合、又は、提出した理由が該進歩性判断を覆すことができない場合、それらを一々論争する必要がない旨を判示した。補助的要因として、例えば係争発明が商業上で成功したか、予期できない効果を有するか、これまで存在してきた問題を解決したかが挙げられる。
■詳細及び留意点

 特許権者は進歩性を判断する際に、容易であるか否かの客観的証拠、すなわち、いわゆる二次的考慮要素(Secondary Considerations)も考慮すべきであり、二次的考慮要素は係争発明が商業上で成功したこと、これまで存在してきた「レンチが、損傷したねじに確実に係合することができない」との技術的問題を解決できたことを含んでいると主張した。

 

 しかしながら、最高行政法院は、先行技術から容易に想到できる発明であれば、補助的要因を根拠なしで主張する場合、又は、提出した理由が該進歩性判断を覆すことができない場合、それらを一々論争する必要がないと判示して、特許権者の主張を却下し、係争発明は進歩性を有しないと判決した。

 

参考(最高行政法院判決の判決理由より抜粋):

 

另按系爭發明專利在商業上是否成功、是否具無法預期的功效、是否足以解決長久以來問題等等(專利審查基準3.4.2節參照),為判斷進步性之輔助因素,另比較法上尚有:是否長久以來需要、授權與競爭者默認、對系爭發明專利異議舉發者之倣製與讚美等等不一而足,當然均為判斷系爭專利申請進步性之輔助因素,惟上開進步性判斷輔助因素無非為避免進步性判斷標準不一致而流於主觀或判斷不明時,作為參考判斷之次要參考因素,是若依專利要件進步性判斷步驟,就申請前之先前技術所揭露、教示等之內容,以所屬技術領域中具有通常知識者,確足以判斷申請發明專利係能輕易完成,而不具進步性者,對於僅空言主張輔助因素或所提出理由不足以推翻該進步性判斷者,即無庸再予一一贅論,智慧財產法院行政判決未予以一一論究者,自難謂判決理由不備。原判決所記載「專利之核准,不在於系爭專利之實施是否成功,亦毋須計較發明人之投入心血,其主要審酌內容在於系爭專利所揭發之技術思想是否新且具進步性」,即在闡釋進步性判斷之重心,而無庸再予一一贅論上訴人於原審空言主張之輔助因素,原審理由雖有不同,自不影響於判決之結果,與所謂判決不備理由之違法情形不相當。上訴人以:另判斷系爭發明專利是否具進步性,尚應考量其是否非顯而易知之客觀證據,所謂第二重考慮因素,包括   系爭發明專利在商業上的成功及無法預期的功效,系爭發明足以解決長久以來板手「無法確實咬住嚴重打滑螺絲扣件」這樣的技術問題,上開第二重考慮因素之爭點,原判決理應於其理由項下,具體載明其意見有判決不備理由之處,有判決不備理由之處云云,無非對於原判決已予論斷之事項再予爭執,自非可採。

 

(日本語訳「係争発明が、商業上で成功したか、予期し得ない効果を奏するか、これまで存在してきた問題を解決したか(専利審査基準3.4.2節参照)は、進歩性の判断の補助的要因である。一方、比較法において、これまで存在してきたニーズ、権利授与と競争者黙認、係争発明に対する異議申立人の模造と称賛なども係争発明の進歩性を判断する補助的要因であるが、前記進歩性を判断する補助的要因は、進歩性判断の標準が一致せず主観又は判断不明になることを避けるために、判断参考用の二次的参考要因とされるので、特許要件である進歩性判断ステップに従って、その発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が、出願前の先行技術に開示又は教示された内容から容易に想到することができ、進歩性を有しない発明であると判断できれば、補助的要因を根拠なしで主張する場合、又は、提出した理由が該進歩性判断を覆すことができない場合、それらを一々論争する必要がなく、智慧財産法院行政判決が一々論究していなければ、判決理由が不備であるとはいい難い。原判決に記載の「特許の許可は係争発明の実施が成功したかどうか、及び発明者の注いだ心血を問題にする必要はなく、主要な審査内容は係争発明が開示した技術的思想が新規でかつ進歩性を有するかにある」は、進歩性判断の中心となる点であり、上訴人が原審において根拠なしで主張した補助的要因を一々論争する必要がなく、原審理由は異なっているが、判決の結果を左右せず、判決理由の不備が違法である場合に該当しない。上訴人は、係争発明が進歩性を有するか否かを判断する際に、自明であるか否かの客観的証拠、いわゆる二次的考慮要素も考慮すべきであり、二次的考慮要素は係争発明が商業上で成功したことと、予期し得ない効果とを含んでおり、係争発明がこれまで存在してきた「レンチが、損傷したねじに確実に係合することができない」との技術的課題を解決しており、前記二次的考慮要素の争点について、原判決がその理由項でその意見を具体的に明記すべきであるため、判決理由が不備である、と主張した。しかしながら、前記上訴人の陳述は原判決の論断した事項を再び争うものであるため、採用できない。」)

 

【留意事項】

 進歩性を有するか否かを判断する際に重要な点は、出願に係る発明が先行技術から容易に想到できるか否かにあり、仮に出願に係る発明が先行技術から容易に想到できる発明であれば、根拠なしで主張された補助的要因などは考慮されないと考えられる。補助的要因に基づいて進歩性を主張する場合は、その補助的要因を裏付ける十分な証拠を示すことが望ましい。

■ソース
最高行政法院判決100年度判字第646号
■本文書の作成者
知崇国際特許事務所 弁理士 松本征二
■協力
萬國法律事務所 鍾文岳
一般社団法人 日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期

2013.01.07

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