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台湾における特許査定後の職権による取消
2013年04月04日
■概要
特許・意匠出願の査定後、専利法に違反した事由があると認めた場合、台湾特許庁は職権により審査を行い、当該特許査定/登録査定に誤りがなかったか否かを再確認する(旧専利法第67条)。詳細は以下の通りである。なお、この制度は2013年1月1日に施行された改正専利法において廃止され、2012年12月31日までに査定された出願に対して、この職権による取消制度が適用される。■詳細及び留意点
(1)職権による取消
- 特許・意匠出願の査定後、専利法に違反した事由があると認めた場合、台湾特許庁は職権により審査を行い、当該特許査定/登録査定に誤りがなかったか否かを再確認する(旧専利法第67条)。なお、職権による取消に関する処理は、無効審判請求に関する規定が準用される(旧専利法第72条第2項、旧専利審査基準第5編7.1.2)。
- 実用新案では、職権による取消制度はない(旧専利法第107条第1項)。
(2)職権による取消審査の流れ
- 職権による取消の審査を行う場合、当該特許の存続期間内にしなければならない。台湾特許庁は、具体的な証拠、理由及び条文により特許について先に予審(初歩的な審査)で当該特許に専利法に違反する事由があるかどうかを審査し、あると判断した場合、判断理由と証拠の副本を特許権者に送達し、送達の翌日から1ヶ月以内に答弁するように命じなければならならない(改正専利法施行前・旧専利審査基準第5編7.3.2)。
- 予め理由を説明して延期が認められた場合を除き、特許権者が期限を過ぎても応答しないときは、現在有している資料で直ちに審査を行う(旧専利法第72条第2項による旧専利法第69条第2項準用)。無効審判請求人が審査の途中で取り下げたが、すでに審査意見が完成していた場合において、係争特許が専利法に違反すると認定するときは、予審を行う必要がなく、直ちに当該審査理由及び証拠を特許権者に送付し、答弁させなければならない(旧専利審査基準第5編7.3.2)。
- 審査官が行政救済の段階において、或いは原処分を取消して審査をやり直すとき、初めて発見する新たな理由若しくは証拠があるとすれば、その新たな理由等について、併せて審査することはできない。つまり、別の案件として職権により審査し、予審のプロセスから始めるべきである(旧専利審査基準第5編7.4.1)。
(3)特許明細書等の訂正
- 特許権者は、特許の明細書等を訂正することで、台湾特許庁から示される取消理由を回避することが可能である。一般に、特許の明細書と図面についての訂正を請求する時期は、(a) 特許出願が特許権を取得した後に、特許権者が自ら訂正を請求するとき(旧専利法第64条第1項)と、(b) 特許が他人により無効審判を請求され、特許権者が答弁と同時に訂正を請求し、又は特許主務機関が特許権者に通知し、指定期間内に訂正するように命じるとき(旧専利法第71条第1項第3号)である。
- 特許主務機関が訂正を許可した場合、訂正後の内容が専利公報に掲載され、訂正後の内容で出願され、権利が付与されたことになる(旧専利法第64条第4項)。
- もし当該特許権が訂正されたことがあるときは、審査を行った時点で許可され公告された最も新たなものを審査の対象とする(旧専利審査基準第5編7.4.1)。
(4)職権による取消の効果
- 特許が職権により取消された後、法に基づき行政救済を提起しない場合、或いは行政救済を提起したものの、棄却が確定した場合、当該審決が確定され、当該特許権の効力は最初から存在していなかったものとみなされる(旧専利法第73条)。
【留意事項】
2013年1月1日から施行された改正専利法では職権による取消制度は削除され、改正専利法施行前に査定されていない出願については、職権による取消しはできなくなった(改正専利法第149条第1項)。なお、改正前においても、職権による取消がなされることはほとんどなかった。
■ソース
・旧専利法http://www.tipo.gov.tw/ch/MultiMedia_FileDownload.ashx?guid=4113a02a-c3d3-4557-b7b5-dbf223635979.doc ・新専利法(2013年1月1日施行法)
http://www.tipo.gov.tw/ch/MultiMedia_FileDownload.ashx?guid=490f4f9b-fa08-4d52-8587-6a8ec69989cf.doc ・旧専利審査基準 第5編 無効審判及び職権による審決
http://www.tipo.gov.tw/ch/MultiMedia_FileDownload.ashx?guid=05c463eb-1814-4675-80ed-0f91044bb5d5.doc
■本文書の作成者
聖島国際特許法律事務所■協力
一般財団法人比較法研究センター 木下孝彦特許庁総務部企画調査課 山中隆幸
■本文書の作成時期
2013.02.08